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ド田舎王家は自給自足
薄暗い厨房とスラリーな料理人
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薄暗い階段を降りて一階、渡り廊下を通って本館(円卓の間とかがあったとこ)へ。
床がむき出しの地面になっている、小さな仄暗い角部屋がどうやら厨房になってるようだった。
A4下敷きくらいの大きさの窓から弥生土器みたいな色したパイプが突き出している。レンガ造りのかまどから伸びてるあたり煙突なんだろう。
そういうとこも含め、部屋全体に滲む急ごしらえ感が半端ない。
失礼しますと言葉を添えるラフロイグに続き、俺、赤髪娘の順に段差を一つ降りて部屋に入る。……どうもエーテルの動きがおかしい。俺の後ろに来るよう立ち回ってる。なんとなく気分が大きくなる。フハハ。この俺の(タヨリナイ)背中でよければ存分に使うがよい。
出迎えたのは俺と年が近そうな、白衣(病院じゃなくて理科室で見る系のヤツ)を着た女。
「待ってたわ。食事はそこにあるから」
耳に覚えのある凛とすました声。逆光でイマイチよく見えないけれど、髪も目も黒系だ。器量は良いのに、洗った後乾かしもせず放置したようなくしゃくしゃのショートボブと、理知的とも気だるげともいえそうな瞳、斜に構えた態度、そういうのがやけに湿っぽいキャラを演出している。声とのギャップ……!
腕組みして奥の壁にもたれかかったまま、彼女は部屋の中央にある日曜大工然としたテーブルに顔を向ける。鉄っぽい材質のトレーが三つ。上には白いお椀と肉まんらしき物体が乗っている。
外見で肉まんつったけど、かの物体が真に肉入りの中華まんじゅうである可能性は極めてわずかである。表面シワねえし。
「はじめまして。お守りの山田です」
「ああ、昨日の」
俺が自己紹介すると彼女は腕組みを解いて壁から離れた。相槌打ちながら眉一つ動かない。これはこれで、陛下とはまた違った趣の不気味さがある。笑ったらもっと可愛いだろうにもったいないなあ。
「はじめまして。私はハーパー。ここの料理人よ」
「お世話になります」
「ええ、よろしく」
そこで話が途切れるかと思ったが、彼女は霊媒師のごとくじーっとこちらを見ている。なんだろう。後ろにはやけにおとなしいエーテルがいるくらいだけど。
ラフロイグの方は厨房を徘徊している。
「あの、どうしました」
「……ずいぶんはしたない、いえ、変わった格好ね」
「えっ」
「そう、まるで、部屋で人目を気にせず自堕落に過ごす時のような……」
「大概あってるんでその辺で勘弁してもらっていいですか」
はしたないかどうかはともかく、そうだよ、俺、白シャツと短パンっていつもの就寝コーディネートだったんだよ。南の島の観光客かよ。
少年少女の応対が自然すぎてスルーしてたけど、あんまり改まった場に出る時の格好じゃないよな。
「まあ気にしなくていいわ。みんなそんなもんよ」
「そうなんですか?」
「ええ。人も数えるほどしかいないし、全員ここに住んでる。私も含めてね」
「陛下がこの前、『ウチは王家というより極道だな』って言ってましたねえ」
なにやら甕のフタを開けて覗き込んでるラフロイグが割って入る。おいまたおかしな日本語が飛び出してきたぞ。いいのか。それでニュアンスあってるのか。
フタを手にしたラフロイグが振り返る。
「ハーパーさん、これのアク抜き手伝いましょうか?」
「いいわ。ルビーがもったいないし」
ルビー? アク抜きにルビー? 梅干しじゃなくて?
「アク抜きは普通にやりますよ」
「どちらにせよ人手は足りてるわ。あなたたちは予定通り中庭を手入れして」
わかりました、とだけ言ってラフロイグがフタをする。二人とも表情が動かないせいですさまじく事務的なやりとりだった。
そしてなんとなく、エーテルが俺の背後に回る理由がわかったような気がした。俺もこの人と仲良くなるにはほろ○いとかの力が必要かもしれない。
戻ってきたラフロイグがトレーを頭の上に乗せる。ああ、俺もガキん時やったよ。机にダイレクトアタックしたきな粉パン(おかわり)の味が忘れられない。食べ物は大切にね。
「では頂いていきます。ありがとうございました」
「お世話になります」
「(……!) ありがとうございます……」
ようやく赤髪娘が声を発する。お礼はぎこちないし、顔は少しこわばっている。ただ単に苦手、ってわけでもないのだろうか。
少年少女が部屋を出て行く。俺も続こうとすると、ハーパーさんに呼び止められた。
立ち止まって振り向くと彼女は無音で距離を詰める。怖い。そして近い。顎の下あたりに頭がある。
髪や瞳は近くで見ると紺色だった。
そうして、白衣のネーちゃんは誰に話してるかもわからないくらいの声で呟く。
「あの魔女をよろしく頼むわね。あなたには懐いてるみたいだし」
床がむき出しの地面になっている、小さな仄暗い角部屋がどうやら厨房になってるようだった。
A4下敷きくらいの大きさの窓から弥生土器みたいな色したパイプが突き出している。レンガ造りのかまどから伸びてるあたり煙突なんだろう。
そういうとこも含め、部屋全体に滲む急ごしらえ感が半端ない。
失礼しますと言葉を添えるラフロイグに続き、俺、赤髪娘の順に段差を一つ降りて部屋に入る。……どうもエーテルの動きがおかしい。俺の後ろに来るよう立ち回ってる。なんとなく気分が大きくなる。フハハ。この俺の(タヨリナイ)背中でよければ存分に使うがよい。
出迎えたのは俺と年が近そうな、白衣(病院じゃなくて理科室で見る系のヤツ)を着た女。
「待ってたわ。食事はそこにあるから」
耳に覚えのある凛とすました声。逆光でイマイチよく見えないけれど、髪も目も黒系だ。器量は良いのに、洗った後乾かしもせず放置したようなくしゃくしゃのショートボブと、理知的とも気だるげともいえそうな瞳、斜に構えた態度、そういうのがやけに湿っぽいキャラを演出している。声とのギャップ……!
腕組みして奥の壁にもたれかかったまま、彼女は部屋の中央にある日曜大工然としたテーブルに顔を向ける。鉄っぽい材質のトレーが三つ。上には白いお椀と肉まんらしき物体が乗っている。
外見で肉まんつったけど、かの物体が真に肉入りの中華まんじゅうである可能性は極めてわずかである。表面シワねえし。
「はじめまして。お守りの山田です」
「ああ、昨日の」
俺が自己紹介すると彼女は腕組みを解いて壁から離れた。相槌打ちながら眉一つ動かない。これはこれで、陛下とはまた違った趣の不気味さがある。笑ったらもっと可愛いだろうにもったいないなあ。
「はじめまして。私はハーパー。ここの料理人よ」
「お世話になります」
「ええ、よろしく」
そこで話が途切れるかと思ったが、彼女は霊媒師のごとくじーっとこちらを見ている。なんだろう。後ろにはやけにおとなしいエーテルがいるくらいだけど。
ラフロイグの方は厨房を徘徊している。
「あの、どうしました」
「……ずいぶんはしたない、いえ、変わった格好ね」
「えっ」
「そう、まるで、部屋で人目を気にせず自堕落に過ごす時のような……」
「大概あってるんでその辺で勘弁してもらっていいですか」
はしたないかどうかはともかく、そうだよ、俺、白シャツと短パンっていつもの就寝コーディネートだったんだよ。南の島の観光客かよ。
少年少女の応対が自然すぎてスルーしてたけど、あんまり改まった場に出る時の格好じゃないよな。
「まあ気にしなくていいわ。みんなそんなもんよ」
「そうなんですか?」
「ええ。人も数えるほどしかいないし、全員ここに住んでる。私も含めてね」
「陛下がこの前、『ウチは王家というより極道だな』って言ってましたねえ」
なにやら甕のフタを開けて覗き込んでるラフロイグが割って入る。おいまたおかしな日本語が飛び出してきたぞ。いいのか。それでニュアンスあってるのか。
フタを手にしたラフロイグが振り返る。
「ハーパーさん、これのアク抜き手伝いましょうか?」
「いいわ。ルビーがもったいないし」
ルビー? アク抜きにルビー? 梅干しじゃなくて?
「アク抜きは普通にやりますよ」
「どちらにせよ人手は足りてるわ。あなたたちは予定通り中庭を手入れして」
わかりました、とだけ言ってラフロイグがフタをする。二人とも表情が動かないせいですさまじく事務的なやりとりだった。
そしてなんとなく、エーテルが俺の背後に回る理由がわかったような気がした。俺もこの人と仲良くなるにはほろ○いとかの力が必要かもしれない。
戻ってきたラフロイグがトレーを頭の上に乗せる。ああ、俺もガキん時やったよ。机にダイレクトアタックしたきな粉パン(おかわり)の味が忘れられない。食べ物は大切にね。
「では頂いていきます。ありがとうございました」
「お世話になります」
「(……!) ありがとうございます……」
ようやく赤髪娘が声を発する。お礼はぎこちないし、顔は少しこわばっている。ただ単に苦手、ってわけでもないのだろうか。
少年少女が部屋を出て行く。俺も続こうとすると、ハーパーさんに呼び止められた。
立ち止まって振り向くと彼女は無音で距離を詰める。怖い。そして近い。顎の下あたりに頭がある。
髪や瞳は近くで見ると紺色だった。
そうして、白衣のネーちゃんは誰に話してるかもわからないくらいの声で呟く。
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