異世界ですよ、山田さん!

S?kouji

文字の大きさ
14 / 15
ド田舎王家は自給自足

薄暗い厨房とスラリーな料理人

しおりを挟む
薄暗い階段を降りて一階、渡り廊下を通って本館(円卓の間とかがあったとこ)へ。
床がむき出しの地面になっている、小さな仄暗い角部屋がどうやら厨房になってるようだった。
A4下敷きくらいの大きさの窓から弥生土器みたいな色したパイプが突き出している。レンガ造りのかまどから伸びてるあたり煙突なんだろう。
そういうとこも含め、部屋全体に滲む急ごしらえ感が半端ない。

失礼しますと言葉を添えるラフロイグに続き、俺、赤髪娘の順に段差を一つ降りて部屋に入る。……どうもエーテルの動きがおかしい。俺の後ろに来るよう立ち回ってる。なんとなく気分が大きくなる。フハハ。この俺の(タヨリナイ)背中でよければ存分に使うがよい。
出迎えたのは俺と年が近そうな、白衣(病院じゃなくて理科室で見る系のヤツ)を着た女。

「待ってたわ。食事はそこにあるから」

耳に覚えのある凛とすました声。逆光でイマイチよく見えないけれど、髪も目も黒系だ。器量そざいは良いのに、洗った後乾かしもせず放置したようなくしゃくしゃのショートボブと、理知的とも気だるげともいえそうな瞳、斜に構えた態度、そういうのがやけに湿っぽいキャラを演出している。声とのギャップ……!
腕組みして奥の壁にもたれかかったまま、彼女は部屋の中央にある日曜大工然としたテーブルに顔を向ける。鉄っぽい材質のトレーが三つ。上には白いお椀と肉まんらしき物体が乗っている。
外見で肉まんつったけど、かの物体が真に肉入りの中華まんじゅうである可能性は極めてわずかである。表面シワねえし。

「はじめまして。お守りの山田です」
「ああ、昨日の」

俺が自己紹介すると彼女は腕組みを解いて壁から離れた。相槌打ちながら眉一つ動かない。これはこれで、陛下とはまた違った趣の不気味さがある。笑ったらもっと可愛いだろうにもったいないなあ。

「はじめまして。私はハーパー。ここの料理人よ」
「お世話になります」
「ええ、よろしく」

そこで話が途切れるかと思ったが、彼女は霊媒師のごとくじーっとこちらを見ている。なんだろう。後ろにはやけにおとなしいエーテルがいるくらいだけど。
ラフロイグの方は厨房を徘徊している。

「あの、どうしました」
「……ずいぶんはしたない、いえ、変わった格好ね」
「えっ」
「そう、まるで、部屋で人目を気にせず自堕落に過ごす時のような……」
「大概あってるんでその辺で勘弁してもらっていいですか」

はしたないかどうかはともかく、そうだよ、俺、白シャツと短パンっていつもの就寝コーディネートだったんだよ。南の島の観光客かよ。
少年少女の応対が自然すぎてスルーしてたけど、あんまり改まった場に出る時の格好じゃないよな。

「まあ気にしなくていいわ。みんなそんなもんよ」
「そうなんですか?」
「ええ。人も数えるほどしかいないし、全員ここに住んでる。私も含めてね」
「陛下がこの前、『ウチは王家というより極道だな』って言ってましたねえ」

なにやらかめのフタを開けて覗き込んでるラフロイグが割って入る。おいまたおかしな日本語が飛び出してきたぞ。いいのか。それでニュアンスあってるのか。
フタを手にしたラフロイグが振り返る。

「ハーパーさん、これのアク抜き手伝いましょうか?」
「いいわ。ルビーがもったいないし」

ルビー? アク抜きにルビー? 梅干しじゃなくて?

「アク抜きは普通にやりますよ」
「どちらにせよ人手は足りてるわ。あなたたちは予定通り中庭を手入れして」

わかりました、とだけ言ってラフロイグがフタをする。二人とも表情が動かないせいですさまじく事務的なやりとりだった。
そしてなんとなく、エーテルが俺の背後に回る理由がわかったような気がした。俺もこの人と仲良くなるにはほろ○いとかの力が必要かもしれない。

戻ってきたラフロイグがトレーを頭の上に乗せる。ああ、俺もガキん時やったよ。机にダイレクトアタックしたきな粉パン(おかわり)の味が忘れられない。食べ物は大切にね。

「では頂いていきます。ありがとうございました」
「お世話になります」
「(……!) ありがとうございます……」

ようやく赤髪娘が声を発する。お礼はぎこちないし、顔は少しこわばっている。ただ単に苦手、ってわけでもないのだろうか。

少年少女が部屋を出て行く。俺も続こうとすると、ハーパーさんに呼び止められた。
立ち止まって振り向くと彼女は無音で距離を詰める。怖い。そして近い。顎の下あたりに頭がある。
髪や瞳は近くで見ると紺色だった。
そうして、白衣のネーちゃんは誰に話してるかもわからないくらいの声で呟く。

「あの魔女をよろしく頼むわね。あなたには懐いてるみたいだし」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...