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ド田舎王家は自給自足
この素晴らしいあさげに食卓を!
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再び、俺が最初に来た赤髪娘の部屋に戻ってくる。自然光をふんだんに取り入れるデケエ窓(開放型)、石の壁、冷たく硬い床、それだけ。家具なんて微塵もない。
というわけで少年少女は床の真ん中あたりに直接座って、メシを乗せたトレーも直置きする。
俺もそれに倣って彼らと円を作ったけれど、クッションやらオフィスチェアやらに溢れた、モダンスタイルとは程遠い劣悪な環境に腰とケツが早くも悲鳴をあげそうになる。
なんでもいい。アマ○ンのダンボール箱でも、あるならひな壇で菱餅を載せてたりする台(三方のこと)とかでもいいから、卓と座布団が欲しい。
せめてメシくらいはマトモであってくれ。彼らが不憫すぎる。そんなことを思いながら、まず肉まん大の白い物体を手に取り、かじりつく。
ヤツは俺の歯が当たったとたん乾いた泥団子のようにボロっと分裂し、口の中に片割れが転がり込んできた。そして口の中でも猛烈な勢いで水分を吸収しながら、噛むたびに味のしない細かな粉体へとほどけてゆく。口どけまるで砂。例えるほどもないくらい砂。
「……ごふっ」
俺はむせた。
え、なにこれ。どんな顔して食えばいいの。確かパンって言ってたよな。まるきり未知との遭遇なんだけど。
「……」
ラフロイグは無心にかじりついている。モフモフの毛先が光の中でキラキラしている。一般人に比べて、彼の毛髪はかなり細い方なのかもしれない。
そんな彼はいつもと変わらないように見えて、その目は遠く、壁の高いところに焦点が合っている。
作業だ。摂食は彼にとって、空腹を満たし生命活動のためのエネルギーを得るのに避けては通れない行為という、それだけの意味を持った作業でしかないのだ。
胸の奥底が塩辛い。エーテルはどうだろう。流石の彼女も、これにはあのジョイフルスマイルを保ってはいられないんじゃ。
「……」
しかし彼女は笑顔だった。口角を上げた笑顔を顔にはりつけたまま、乾いた瞳で手にした白い砂団子の向こうにある床を見つめている。
時々思い出したように、赤髪娘は小さな口を開いて凝集した粉体を砕き、もぐもぐと口を動かす。そうしているうちに、俺は現代人が忘れてしまったっぽい何か大切なことを悟り、手元の物体を消滅せしめる作業に戻った。腹は膨れるから、いいさ。それだけで幸せだよ……。
崩し、咀嚼し、むせ返し、飲み込む。諦念と、ある種の悟りが入り混じる静寂の中、俺はそれを繰り返す。
パンの残りがようやく三分の一ほどとなったところで、静寂を打ち破るスットンキョーな声が聞こえた。この妙に抑揚のない感じはラフロイグか。顔を向けると、パンを片付けた彼が小鉢のマメをつまみ始めていた。
白いパチンコ玉(雑魚豆とかいうやつ)を口に運びつつ、目は相変わらず焦点が合ってない。
「ででっぽー」
「……どうしたの」
「トリの真似です」
「……なぜ?」
「彼らはマメにひたむきですから……。同じ境地に立てば、このマメも至高の珍味に相成るというものです」
どうやら視(え)ている世界がちがうようだ。彼の世界はこの白団子の茫漠な味とは裏腹に塩辛い———。
「ででっぽー」
もう一人いた。
「「「ででっぽー」」」
俺がようやくパン(たぶん縄文人もこれよりいいものを食ってたんじゃないか)を食い終わった時、赤髪娘はまだマメにも行けず白い物体と格闘していた。
てか進んでない。半分くらい残して、あのはりついた笑顔のまま止まってる。
「ねえ、知ってる? ラフロイグ」
赤髪娘が口を開いて、静かに言葉を紡いでいく。
心なしか瞳が潤んでいるようにも……。
「涙って、しょっぱいんだよ……」
言い終わって、一筋、凍りついた表情の上を涙が伝っていった。
———とは言いながら、流石のエーテルも己の涙を塩がわりに使う茶番(半分は本気だったかもしれないけど)には走らなかった。
というわけで少年少女は床の真ん中あたりに直接座って、メシを乗せたトレーも直置きする。
俺もそれに倣って彼らと円を作ったけれど、クッションやらオフィスチェアやらに溢れた、モダンスタイルとは程遠い劣悪な環境に腰とケツが早くも悲鳴をあげそうになる。
なんでもいい。アマ○ンのダンボール箱でも、あるならひな壇で菱餅を載せてたりする台(三方のこと)とかでもいいから、卓と座布団が欲しい。
せめてメシくらいはマトモであってくれ。彼らが不憫すぎる。そんなことを思いながら、まず肉まん大の白い物体を手に取り、かじりつく。
ヤツは俺の歯が当たったとたん乾いた泥団子のようにボロっと分裂し、口の中に片割れが転がり込んできた。そして口の中でも猛烈な勢いで水分を吸収しながら、噛むたびに味のしない細かな粉体へとほどけてゆく。口どけまるで砂。例えるほどもないくらい砂。
「……ごふっ」
俺はむせた。
え、なにこれ。どんな顔して食えばいいの。確かパンって言ってたよな。まるきり未知との遭遇なんだけど。
「……」
ラフロイグは無心にかじりついている。モフモフの毛先が光の中でキラキラしている。一般人に比べて、彼の毛髪はかなり細い方なのかもしれない。
そんな彼はいつもと変わらないように見えて、その目は遠く、壁の高いところに焦点が合っている。
作業だ。摂食は彼にとって、空腹を満たし生命活動のためのエネルギーを得るのに避けては通れない行為という、それだけの意味を持った作業でしかないのだ。
胸の奥底が塩辛い。エーテルはどうだろう。流石の彼女も、これにはあのジョイフルスマイルを保ってはいられないんじゃ。
「……」
しかし彼女は笑顔だった。口角を上げた笑顔を顔にはりつけたまま、乾いた瞳で手にした白い砂団子の向こうにある床を見つめている。
時々思い出したように、赤髪娘は小さな口を開いて凝集した粉体を砕き、もぐもぐと口を動かす。そうしているうちに、俺は現代人が忘れてしまったっぽい何か大切なことを悟り、手元の物体を消滅せしめる作業に戻った。腹は膨れるから、いいさ。それだけで幸せだよ……。
崩し、咀嚼し、むせ返し、飲み込む。諦念と、ある種の悟りが入り混じる静寂の中、俺はそれを繰り返す。
パンの残りがようやく三分の一ほどとなったところで、静寂を打ち破るスットンキョーな声が聞こえた。この妙に抑揚のない感じはラフロイグか。顔を向けると、パンを片付けた彼が小鉢のマメをつまみ始めていた。
白いパチンコ玉(雑魚豆とかいうやつ)を口に運びつつ、目は相変わらず焦点が合ってない。
「ででっぽー」
「……どうしたの」
「トリの真似です」
「……なぜ?」
「彼らはマメにひたむきですから……。同じ境地に立てば、このマメも至高の珍味に相成るというものです」
どうやら視(え)ている世界がちがうようだ。彼の世界はこの白団子の茫漠な味とは裏腹に塩辛い———。
「ででっぽー」
もう一人いた。
「「「ででっぽー」」」
俺がようやくパン(たぶん縄文人もこれよりいいものを食ってたんじゃないか)を食い終わった時、赤髪娘はまだマメにも行けず白い物体と格闘していた。
てか進んでない。半分くらい残して、あのはりついた笑顔のまま止まってる。
「ねえ、知ってる? ラフロイグ」
赤髪娘が口を開いて、静かに言葉を紡いでいく。
心なしか瞳が潤んでいるようにも……。
「涙って、しょっぱいんだよ……」
言い終わって、一筋、凍りついた表情の上を涙が伝っていった。
———とは言いながら、流石のエーテルも己の涙を塩がわりに使う茶番(半分は本気だったかもしれないけど)には走らなかった。
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