白宮の聖女

sara

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第二章 慈愛の夜

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 後日、タランは騎士の腕を活かした仕事に神殿内で就いた。神殿の護衛兵だ。訓練場での鍛錬に参加して時には指南役を受け負ったり、見廻りや門兵に借り出される事もあった。
 本来なら神殿宮や聖女の周りで仕事を探すがサディアスは滅多に神殿の敷地内を出ないので護衛は必要ないと断られ、白宮も巧妙に隠されているのでそもそも護衛などいらなかった。

 その日は日暮れの神殿内の見回りをまかされていた。
 騎士の鎧とは比べ物にならないほど軽い革の鎧で腰に剣をぶら下げて歩いていた。
 ふと足音が近づいてくる。
「おーい。タランー」飄々ひょうひょうとした男が姿を現す。
「…‥あー」この青年が貴族だったと思い出し言い淀む。
「ロウエルだよ。敬称とか敬語とかはいいから」面倒くさそうに手を振る。
「あんた、あれからサディアスの部屋に出向いてないだろ」彼は面白がっているようだ。
 たしかにタランは白宮に召し上げられた日以降サディアスの部屋に近寄らなかった。
 タランはサディアスと行為に及ぶことに罪悪感を持ち、出来るだけ避けたいと思っていたのだ。
 サディアスは宮中でタランを見かけるたびに抱擁したり、断るタランに半ば無理やり口づけをすることで力を注いでくれていたがタランはそれすらも後ろめたかった。
「騎士道ってやつかな。体、しんどいでしょ」
 ロウエルの言う通りだった。
 体は次第に重くなり、頭痛や耳鳴りがし始めた。傷があった腹の部分がジンジンと痛むこともあった。
 そして何より自分の中の欲望が膨れ上がっていくのだ。体がサディアスを欲している。それはいくら自分で手淫しようと楽になることはなかった。
「サディアスが心配してる。あんた、明日あたり手足を結ばれて犯されるかも。そういうのが趣味ならいいけどさ」
 彼は思いついたと指を鳴らした。
「抱きたくないなら他の供奉人経由で神聖力をもらうっていう手もあるけど、供奉人はみんな男なんだ。してくれそうな奴がいるけど、あんたは男もいけるかな?」
 もちろんそんなことは無かったし、男を抱くのも抱かれるのもごめんだった。急いで首を振って否定する。
「あんまり我慢すると反動がでて、獣のようにサディアスのことめちゃくちゃにしちゃうよ。あんた体力ありそうだし壊れちゃうかもね」
 それは初耳だった。確かにあの晩のように理性が飛べば、また抱き潰してしまう気がした。
 あれから何度もなく思い返した、力なく横たわる聖女の姿がまた脳裏に浮かぶ。
「それは避けたいな」タランがうつむく。
「どうせサディアスの情けが無くちゃ生きられないんだし、適度に通って力貰ってかなきゃ」
 ロウエルがタランの肩に手を置いて言った。
「お前、意外といい奴なんだな」タランが呟いく。
「違うよ。ぼくはあんたが思ってたとおりの狂った奴で、サディアス以外はどうでもいい」
 ロウエルはにやりと笑った。
「あんまり2人でいるときにサディアスからあんたの名前聞きたくないんだ」
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