のんびりダンジョン

水野(仮)

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髭と宗教と私

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「誰も来ないねぇ」
「大惨事の中心地帯に来ようとは思わないと思う」
「だよねぇ」

私もそんな気はしてた。
やっべ、シルが病むってことしかあの時は考えてなかったからさぁ。

「その後にゴーレム騎兵で街道整備したのも不味かったですね」
「偵察に来た軍とか探索者とかち合って殲滅しちゃいましたからね」
「あれには私は無関係だよ」
「土木作業を命じた時に、侵入者排除の取り消しをしていれば良かったんですよ」

いや、だってあっちがさ、襲ってきてからさ。
しょうがないじゃないね?

「偵察に行ったトワさんたちの話だと、この辺りの街や村は殆ど人が残ってないんだとか」
「こちらにその気がなくても、彼らはしりませんからねぇ」
「宣伝するのも変だし…」

スラム街みたいなとことか貧民街に孤児とかが置き去りにされてることを期待してたんだけど、誰も居なかったね。

「唯一居たのがこのおじさんと」
「私はまだおじさんって年齢じゃない、まだ29だ」
「その髭がおじさんと言われる理由だと思うよ」

私たちは塔の3階にある町中華で呑んでいる。
人が何百人も来たらダーツバーだけでは足りないと言う髭のアドバイスに従い、繁華街に作り替えられた3階は私や配下の子たちの憩いの場となっている。
料理が得意な魂を入れたホムンクルスとか、夜の街で働いていた魂を入れたホムンクルスにサキュバスなどなど、子供は入ってはいけないダンジョンになりつつある。

「色々作ったけどさ、ここで悪いお酒とか悪い女に捕まった連中が居続けて4階へ行かないんじゃないかって気がしてならないんだけど、あと子供の教育に悪い」
「なら2階に4階へ行く扉を付ければ良いんじゃないか?」
「あー、それで良いか」

髭を最初連れてきた時は警戒心高くて「私から情報を引き出せると思うな!」とか言ってたんだけど、うちの飯とか酒とか呑ませてたらこんな感じになってた。
髭は城塞都市とやらの1番偉い人だったらしいんだけど、本当はそんなのやる気が無くて20歳くらいまで探索者とか夜の街で用心棒とかやっていたらしい。将来は適当な女のところに転がり込んで暮らすつもりだったらしいクズ男は、戦争やら後継者争いで親族が居なくなってしまい仕方なく当主なってしまったと言う。
「投げ出したら配下とか街の連中が困るだろ?」
クズ男かと思ったら、わりとまともな部分も残ってるみたいでビックリした。

「とりあえず、撮影班の評判悪いんでさっさとその髭は剃ってよ髭」
「名前を呼べ名前を」
「じゃあ髭剃れ」

人間の仲間が加わると言う、謎な事になった。



「髭のくせに爽やかお兄さんだと…」
「剃ったんだから髭って言うなよ、威厳を出す為に生やしてたんだよ髭は」

髭は髭を剃ったら爽やかお兄さんだった。
短めに刈られた銀髪に青い目、白人に近い肌にキリッとした顔、引き締まった身体に武士みたいな鎧…武士みたいな鎧?

「なにその装備?」
「トワさんが作ってくれたんだけど、変か?」
「違和感しかない」

トワに聞いたら戦国武装というゲームに出てくる銀髪キャラの鎧を作ってみたんだとか、私ゲームはノータッチだからわからないんだよなぁ。
素材はドラゴンケンタウルらしいが、あれは丸ごと売ったような…コアに頼んで出してもらって解体した? そうですか。

髭にはダンジョンの難易度確認と撮影班のモデルという仕事をしばらくしてもらう。
ここで飲み食い出来て3階の繁華街が無料で使えるなら給料とか要らないと本人が言うのでそれで良いか。
後日、やっぱ金が欲しいと言うので理由を訊ねたら、替えの下着とか服が欲しいと言うのでホームセンターカタログから適当に服を出したら満足してた。この世界の髭的にGYOUは有りらしい。

ふと思ったが、髭が言った適当な女のところに転がり込んで暮らすって今の状況そのものじゃ…。
わ、私は髭に心開かないからノーカンで!



髭のアドバイス通りに塔の周りに簡易テントを作ってホムンクルスとか人型魔物とか住まわせてたら何時の間にか人間が増えてた。
安全だといくら叫んだところで人は来ないが、人が普通に暮らしてるところには誰かがやってくるものらしい。髭を生やしてただけのことはあるわ、為になるな。

それから1年くらいはわりと平和だったのだが、ダンジョン産の野菜や果物が幾つかの国で流通し始めると変な奴等が出てきた。
ここはどの国も所有権を持っていない土地なのに、偉そうな奴が兵士を連れて私の土地だとか言ってきたので丸ごと灰にした。

元髭が言うには、髭の国に攻め入ろうとしてた国の連中らしく、異教徒は異教徒と言うだけで殺して奪っても良いと言う頭のおかしい連中らしい。
この塔の街を支配下に置いて、他の国を攻める拠点にするつもりなんじゃって話だ。
荷電粒子砲で作った道は森に阻まれて自由に行き来できなかった国々を繋げてしまったらしい、それは接点の無かった他の国に迷惑をかけたなぁ。



「第12師団前進」

クリスの号令のもと、複数のゴーレム騎兵が宗教的侵略国家に向けて走っていく。
街の人々は何事かと思って見てるか建物の中に籠るかしている。

「まぁ、突然あんな数のゴーレムが草原に出たらビビるわな」
「貴方でも怖いの?」
「お前、俺をなんだと思ってるの? 夢に見るくらい怖い思い出しかないんだけど?」

そう言えば、テストプレイとしてゴーレム騎兵の居るフロアに突っ込んだら、出してくれと泣き叫んでたっけか。

「ゴーレムってのはもっと動きが鈍くて攻撃は殴るとか蹴るくらいしか無いんだぞ。それなのに遠くから飛び道具撃ってくるし、すごい速さで向かってくるんで接触するだけでもダメージ食らうし、その上逃げた先逃げた先に居るし、終いには何十騎にも取り囲まれるしで倒せる気がしねーわ!」
「思い出して震える程怖かったかぁ」
「あんなのに襲われる連中には同情するわ」

後日、もう辞めてくだいみたいなことを言う自称聖女たちが街にやってきたが無視した。
貴方達の行いは神の意志に背いていますとか、いずれ神罰が~だとか言わなければ引き上げても良かったんだけどさ。

「許して欲しいとか言うわりに、脅してくるのはどうなんだろうね?」
「一応神罰を行う魔法師団みたいのが有るって話だから、嘘ではないかも知れんな。警戒はした方が良いか」
「街を壁で囲めるけど、やった方が良いかな?」
「変なのが入り込まないようにはした方が良いかも知れんが、住人達が混乱するかもな」
「まぁ、混乱しても良いかな。出て行くならそれはそれで」
「人間のことについては相変わらず適当だな」

街を囲むように壁を作り、聖女達一行を森の中に転移させた。街道に撒かれた私の血の影響が薄いところなので、頑張ってください。



「ただいま帰りました!」
「どうだった?」
「気持ち良かったです!」
…そんなことは聞いてないが。

殲滅するのはめんどうなので、街の壁と教会を中心に破壊してきたのだとか。
ただ、首都は魔法使いの集団との戦闘で半分くらい破壊してしまったらしい。
助けを求めて祈りを捧げる信者を取り囲み、「神は死んだ」とか言ったとかなんとか、クリスに騎兵を与えてはならなかったのだ…。

「まぁ、復興するのに忙しくてしばらくこっちには来ないんじゃないか?」
「念のためアイアンドラゴンを街道の宗教国家側に置いておきましょう、人間の集団が近付いたら適当に攻撃しといてって命令して」
「しばらくどころか、永遠に来ないな」


***

ゴーレム騎兵に拘りを持つ子はクリスと言うらしい。
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