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相反する二つの条件が成り立つ状況【問題編】

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「ところでさ。『吾輩は猫である』のオマージュなのか偶々なのか分からないけど、『ぼくは犬、あたしはウサギ』って、知ってる? 」
 僕の質問に、勇も忠宏も首を傾げた。
「う~ん、聞いたことあるような、ないような」
「俺は知らねぇな。似たようなタイトルの作品なら読んだことあるけど」

 ネタバレしちゃって大丈夫かな――勇と忠宏に断ってから、僕は次の二つのことを明かした。 
 1、この童話に出てくる〝ぼく〟も〝 あたし〟も 〝実は、人間〟
 2、〝ぼく〟も〝 あたし〟も 決して嘘はついていない 

「矛盾してるとしか思えねぇけど……どういうことなんだろうな」
 勇は腕を組み、考えるモードに入る。
 が、忠宏は割とすぐに答えを返してきた。
「学芸会とかで〝ぼく〟は犬、〝あたし〟はウサギの役をやるってことじゃない? 二人ともその役に成りきってるんだよ。だから」
 なるほど、たしかに そうだ。だけど、この作品の内容とは異なる。 
「それもありだと思うんだけどさ。役に成りきる以外で――心身ともに人間のままの状態で『ぼくは犬、あたしはウサギ』が成り立つシチュエーションがあるんだ。それはどういう時だと思う? 」
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