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本編
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夏休みも最終日になり、ぼくは冷房のかかった部屋でひとり、ベッドで横になっていた。宿題はすでに済んでいるので、気持ちとしては気楽なものがあった。
枕の横に置いていた携帯電話が鳴り、ぼくはおもむろに画面を開くと、メールの着信がひとつだけあった。
中を見てみると、送り主は幼なじみの奈美だった。仲がよくて、通っている中学校は同じだった。
「なんだろう?」
ぼくは口にしながら、メールの文面を読んだ。
『今日、会える?』
書かれていたものはそれだけで、どういう内容で会おうかなどはひとつも書かれていなかった。
ぼくは宿題が終わっているので、どうせ暇ならという理由で、『いいよ。どこで会う?』という内容のメールを送った。
奈美は駅前のコーヒーショップで今からという待ち合わせを指定してきたので、ぼくは急いで身なりを整えてから家を出た。
冷房の効いた家の中とちがい、蒸し暑さがいやでも感じる駅前のところへ行くと、待ち合わせとしていたコーヒーショップ前で、奈美は立っていた。
近づくと、彼女は手を合わせて、頭を下げた。
「ごめんね。急に呼び出したりして。今日のコーヒー代とかはおごるから」
「べつにいいけど、今日はどうしたの?」
「そのことは中に入ってから話そう」
奈美は言うと、先にコーヒーショップの中へ入っていった。どうやら、外ではできないほど、重要な話のようだった。
彼女はぼくが言ったアイスコーヒーをふたつ頼むと、お盆にそれらを乗せて持ってきて、先に取っておいたテーブルの上に置いた。
「それにしても、暑いね」
「そうだね。今日も三十度を超すってテレビで言っていたからね」
ぼくは当たり障りのない話に受け答えするも、内心では今日呼んだ理由はなんだろうと奈美の顔を見つめて、それをわかろうとしていた。
奈美はアイスコーヒーにストローを入れてから、急に緊張したような表情をした。
「今日、呼んだのはね、じつは、沢田くんのことで話をしたかったの」
「たしか、三日前にぼくも含めて一緒に映画を見に行ったよね?」
「うん。沢田くん、かっこよかったね」
奈美はこぼらすと、アイスコーヒーのストローに口をつけて飲んだ。
ぼくはその様子に対して、戸惑いを抱いて眺めていた。クラスメイトの沢田は、女子の間で人気があるほど、端正な顔つきをしていた。
「それでなんで、ぼくを呼んだの?」
「わかるでしょ?わたしがこういう話をするなら‥‥」
奈美の言葉に、ぼくは、やっぱりそうなんだと感じていた。
「彼のことが好きなの?」
「うん‥‥。二学期がはじまったら、告白しようと思ってる」
打ち明けた恥ずかしさからか、奈美は頭を自然と垂れていた。
ぼくは先ほど抱いていた戸惑いが収まらず、この感情をどうすればいいか困っていた。
「そうか‥‥。だけど奈美、本当に彼が好きなの?かっこいい男なんて、ほかにもいると思うけど?」
「そういう表面的なもので好きになったんじゃないの。ただ、沢田くんじゃないとだめっていう感情があって‥‥」
「そっか‥‥。彼に完全に一目ぼれしているんだね」
「うん‥‥。だから、本当に告白したらいいのかどうかと思って、今日、呼んだの」
奈美は恥ずかしがるように言うと、頬を赤く染めた。
ぼくはどう答えていいか悩んだ末、目を向けた。
「告白したほうがいいよ。結果はどうなるかわからないけど、それだけでも自分の気持ちを伝えられるんだから、しないよりいいと思うよ」
ぼくが答えると、奈美は顔を上げた。
「そうだよね。やっぱり怖がらずにそれをやったほうがいいよね」
おもむろに言う奈美は、間を置くようにアイスコーヒーを飲んだ。
「ありがとう。なんだか、告白しようっていう勇気が湧いてきた」
奈美は口にすると、先ほどまで不安げだった表情に笑みがこぼれてきていた。
コーヒーショップを出ると、奈美は軽く頭を下げた。
「ありがとう。とりあえず、やってみる」
「うん‥‥。なんだか、ありふれた助言しかできなくて悪かったね」
「ううん。なにか言ってもらえただけでも充分うれしいよ」
奈美は言葉をこぼしてから、手を振って、去っていった。
ぼくは彼女に手を振り返してからも、抱いている戸惑いの感情を意識していた。
「これでいいのかな‥‥。やっぱり言ったほうがよかったのかな‥‥。だけど‥‥」
ぼくは言ってから、これからどうしようかと頭で巡らせた。
ぼくがまさか、沢田くんと付き合っている彼女なんて、奈美に教える勇気が出なかったことを今さらになって後悔した。
枕の横に置いていた携帯電話が鳴り、ぼくはおもむろに画面を開くと、メールの着信がひとつだけあった。
中を見てみると、送り主は幼なじみの奈美だった。仲がよくて、通っている中学校は同じだった。
「なんだろう?」
ぼくは口にしながら、メールの文面を読んだ。
『今日、会える?』
書かれていたものはそれだけで、どういう内容で会おうかなどはひとつも書かれていなかった。
ぼくは宿題が終わっているので、どうせ暇ならという理由で、『いいよ。どこで会う?』という内容のメールを送った。
奈美は駅前のコーヒーショップで今からという待ち合わせを指定してきたので、ぼくは急いで身なりを整えてから家を出た。
冷房の効いた家の中とちがい、蒸し暑さがいやでも感じる駅前のところへ行くと、待ち合わせとしていたコーヒーショップ前で、奈美は立っていた。
近づくと、彼女は手を合わせて、頭を下げた。
「ごめんね。急に呼び出したりして。今日のコーヒー代とかはおごるから」
「べつにいいけど、今日はどうしたの?」
「そのことは中に入ってから話そう」
奈美は言うと、先にコーヒーショップの中へ入っていった。どうやら、外ではできないほど、重要な話のようだった。
彼女はぼくが言ったアイスコーヒーをふたつ頼むと、お盆にそれらを乗せて持ってきて、先に取っておいたテーブルの上に置いた。
「それにしても、暑いね」
「そうだね。今日も三十度を超すってテレビで言っていたからね」
ぼくは当たり障りのない話に受け答えするも、内心では今日呼んだ理由はなんだろうと奈美の顔を見つめて、それをわかろうとしていた。
奈美はアイスコーヒーにストローを入れてから、急に緊張したような表情をした。
「今日、呼んだのはね、じつは、沢田くんのことで話をしたかったの」
「たしか、三日前にぼくも含めて一緒に映画を見に行ったよね?」
「うん。沢田くん、かっこよかったね」
奈美はこぼらすと、アイスコーヒーのストローに口をつけて飲んだ。
ぼくはその様子に対して、戸惑いを抱いて眺めていた。クラスメイトの沢田は、女子の間で人気があるほど、端正な顔つきをしていた。
「それでなんで、ぼくを呼んだの?」
「わかるでしょ?わたしがこういう話をするなら‥‥」
奈美の言葉に、ぼくは、やっぱりそうなんだと感じていた。
「彼のことが好きなの?」
「うん‥‥。二学期がはじまったら、告白しようと思ってる」
打ち明けた恥ずかしさからか、奈美は頭を自然と垂れていた。
ぼくは先ほど抱いていた戸惑いが収まらず、この感情をどうすればいいか困っていた。
「そうか‥‥。だけど奈美、本当に彼が好きなの?かっこいい男なんて、ほかにもいると思うけど?」
「そういう表面的なもので好きになったんじゃないの。ただ、沢田くんじゃないとだめっていう感情があって‥‥」
「そっか‥‥。彼に完全に一目ぼれしているんだね」
「うん‥‥。だから、本当に告白したらいいのかどうかと思って、今日、呼んだの」
奈美は恥ずかしがるように言うと、頬を赤く染めた。
ぼくはどう答えていいか悩んだ末、目を向けた。
「告白したほうがいいよ。結果はどうなるかわからないけど、それだけでも自分の気持ちを伝えられるんだから、しないよりいいと思うよ」
ぼくが答えると、奈美は顔を上げた。
「そうだよね。やっぱり怖がらずにそれをやったほうがいいよね」
おもむろに言う奈美は、間を置くようにアイスコーヒーを飲んだ。
「ありがとう。なんだか、告白しようっていう勇気が湧いてきた」
奈美は口にすると、先ほどまで不安げだった表情に笑みがこぼれてきていた。
コーヒーショップを出ると、奈美は軽く頭を下げた。
「ありがとう。とりあえず、やってみる」
「うん‥‥。なんだか、ありふれた助言しかできなくて悪かったね」
「ううん。なにか言ってもらえただけでも充分うれしいよ」
奈美は言葉をこぼしてから、手を振って、去っていった。
ぼくは彼女に手を振り返してからも、抱いている戸惑いの感情を意識していた。
「これでいいのかな‥‥。やっぱり言ったほうがよかったのかな‥‥。だけど‥‥」
ぼくは言ってから、これからどうしようかと頭で巡らせた。
ぼくがまさか、沢田くんと付き合っている彼女なんて、奈美に教える勇気が出なかったことを今さらになって後悔した。
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