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第92話 攻略! 中級ダンジョン『ボルケーノケイブ』④
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「えー、皆さん。まずは中級ダンジョン『ボルケーノケイブ』の攻略、おめでとうございます」
中級ダンジョン『ボルケーノケイブ』のボスモンスター、ボルケーノ・ドラゴンを投石攻撃で倒し、歓声を上げる部下達に対し、俺は軽く手を叩きながら称賛の言葉を贈る。
正直、投石攻撃でボスモンスターが倒せるとは驚きだ。
俺は素手でダンジョンを攻略しろと命じたつもりだったが、投石も素手の延長みたいな所があるし、まあ良しとしておこう。
とりあえず、ナイスピッチング!
君達の腕があれば、上級ダンジョン攻略も簡単だね!
「――という事で、やってきました。上級ダンジョン『デザートクレードル』」
パチパチパチ!
青褪めた表情を浮かべる部下達を前に、俺は笑顔で手を叩く。
「中級ダンジョンも問題なく攻略できた事だし、レベリングをするならやっぱりここだよね? と、言う事で皆さん。今日から三日間、朝から晩までここでレベリングして貰い、最終日にはこのダンジョンを攻略して貰いたいと思います」
レベル百五十オーバーとなった今、中級ダンジョンでのレベリングでは効率が悪い。
こいつ等のレベルを効率よく上げるには、やはり上級ダンジョンが一番だ。
「もちろん、万全を期す為、皆さんには、更なる呪いの装備を付けて頂く予定です」
「「!?」」
そう告げると、部下達がピクリと反応を示した。
部下達に与えている装備は、二点。
物理・魔法攻撃を完全に無効化する効果を持つ『命名神の怒り』
そして、HPの十パーセントを消費する事で、その百倍の威力の雷を出す事のできる自爆武器『命名神の嘆き』
そして、こいつ等に授ける装備は『ああああ』唯一のアイデンティティー、『命名神の逆鱗』……。
物理・魔法攻撃反射・ドレイン効果を持つ破格の装備である。
手元に『命名神の逆鱗』を用意した途端、『ああああ』が悲しそうな表情を浮かべる。
もしかして、アイデンティティーの喪失を気にしているのだろうか?
まあ、割かしどうでもいい事だ。
話しが逸れたな。
『ああああ』には、また新たな『命名神』シリーズ装備を渡すとして、今はこいつ等を最強に育て上げる事の方が肝要。
「サア、コノ装備ヲ着ケレバ最強ニ成レルヨ……」
黒く……怪しく光る『命名神の逆鱗』。
『命名神の怒り』『命名神の嘆き』『命名神の逆鱗』
……並べて見ると凄い名前の装備だ。ゲーム制作陣の狂気が装備名に現れている。
しかし、その効果は折紙付き。
ゲーム制作陣が何を考えてこんな壊れ性能の装備を作成したのかはまったくの不明だが、『命名神』シリーズがこの世界最強クラスの装備であるという点に間違いはない。
五人一列に並んだ部下達の前に寄り、一人一人に『命名神の逆鱗』を手渡していく。
『命名神の逆鱗』を手渡した瞬間呪いの装備が纏っていた黒い謎の物質が部下達の身体に吸収されていくのが見て取れた。
「「お、おおっ……」」
皆がそう感嘆の声を漏らす中、最後の一人に『命名神の逆鱗』を手渡すと、俺は部下達の前に立ち声を上げる。
「さて、『命名神の逆鱗』を装備した今、皆さんはこの世界の最強格プレイヤーの一人と成りました。後は、このダンジョンでレベリングをし、攻略をするだけ……四日後には、この世界が現実になって初めて上級ダンジョンを攻略した者。つまり、攻略者としての名声を得る事ができます――」
正直、エレメンタル達が護衛に就いている今、俺一人でも上級ダンジョンの攻略は容易。しかし、俺は目立ちたくない。
上級ダンジョンの初攻略だなんて名声は、この世界で生きていく上で、非常に邪魔な称号だ。国や冒険者協会に目を付けられたら目も当てられない。
まあ、Sランク冒険者って時点で目立っているような気がするし、協会長には既に目を付けられているが、それはそれ……。
Sランク冒険者だけど上級ダンジョンを攻略できるほどの力を持っている訳ではない程度の名声の方が色々と都合が良い。
「――さあ、残り三日。訓練終了と共に、君達はこの世界に生きる立派な冒険者として生まれ変わる。地位や名声が欲しくないか? 大金を稼ぎたくないか? この訓練を終えれば、すべてを手に入れる事ができるぞ?」
まあ、『俺に逆らわない限り』という条件付きだけどね。
契約書で交わした内容に反する行為や、俺に反旗を翻した場合、問答無用でレベル一に戻ってもらう。
ほくそ笑みながら、そう言うと部下達の目にやる気の炎が宿る。
一方、『ああああ』は冷めた目をしていた。
まるで『ああ、上手い事乗せられて……本当にチョロイんだから、人生そんなに甘くないぞ』と言わんばかりの冷めた目だ。
大正解である。
経った一週間の訓練を終えただけで、すべてを手に入れる事ができれば苦労はしない。まあ、上級ダンジョン攻略の名声だけは本当だけど……。
正直、上級ダンジョン攻略が与える影響は計り知れない。
というより、攻略時、周囲にどんな影響が出てくるのか予想ができずにいる。
とはいえ、この世界はレベル至上主義。
レベルが高ければ上級ダンジョンの攻略も容易。
モンスターも簡単に倒せるし、金を稼ぐ事も可能。
だから、嘘は言っていない。
実際、上級ダンジョンを最強装備を身に付け、アヒルの行進してるだけでレベルを上げる事ができるんだ。
『命名神の逆鱗』があれば何でもできる。ぶっちゃけ、上級ダンジョン『デザートクレードル』のボスモンスター、アントライオン・ネオだって、倒す事すら可能。
もちろん、上級ダンジョンのボスモンスターなので『命名神の逆鱗』があるからといって、簡単に倒す事はできない。しかし、地道にボスモンスターの攻撃を反射し続ければ、いつかは倒せる。
「さあ行こう。栄光の未来を掴みに――」
「「「おおっ!!!」」」
そう発破をかけると、割れんばかりの歓声がダンジョン内に上がる。
数日前までお荷物だった転移組のカースト最下層はもういない。
いや、俺が追放した五人がいたか……まあそれはノーカウントという事にしておこう。
上級ダンジョン『デザートクレードル』に棲息するモンスター、アントライオンに直進していく部下達を後目に、俺は『ああああ』に話しかける。
「……さて、後の事はお前にすべて任せる。最終日だけ、俺も同行するからさ。それと、これはお前に対する報酬だ」
そう言って手渡したのは蒼色に怪しく光るペンダント。
「こ、これは……?」
「成り行きとはいえ、お前のアイデンティティを奪っちまったからな。これは『命名神の悲劇』。効果は……まあ使ってからのお楽しみだ」
そう。この『命名神の悲劇』なる呪いの装備の効果は、簡単に言えば、パルプンテ。
何が起こるかまったくわからない呪いの装備だ。
「い、いや、『命名神の悲劇』って、ちょっと名前からして嫌な予感がするんだけど……」
「……そうだな」
『ああああ』にしては勘が鋭いじゃないか。
正直、俺もそう思う。だが、もう遅い。
『命名神の悲劇』を渡した瞬間、ペンダントが纏っていたオーラが、『ああああ』に吸収されていく。
そして、次の瞬間には、『ああああ』の首にペンダントがかけられていた。
「なっ!? なんでペンダントが首にっ!?」
「おお、中々、似合っているじゃないか『ああああ』。オシャレだぞ。そしておめでとう。お前は『命名神の悲劇』に選ばれたんだよ」
自分で言っていて、何を言っているかよくわからないが、とりあえず、適当にそう言うと、『ああああ』は悲劇の主人公の如く地面に拳を打ち付けた。
「ぜ、全然、嬉しくないよ!?」
「まあ、そうだろうな……」
しかし命名神様からは逃れられない。
というより、今の言葉、普段から命名神様の力に頼っている奴が言っていい言葉ではない。
むしろ、お前に装備される命名神様の方が可哀想だ。
正に悲劇。まあ、その悲劇を引き起こしたのは俺だけど。
「……まあなんだ。その装備を使いこなせる様になったら、更なる呪いの装備を装備させてやるから楽しみにしておけよ」
そう言うと、『ああああ』は苦い表情を浮かべる。
「……ねえ、気付いてる? カケル君的には、強力な装備をやるってニュアンスで言ってくれているのかも知れないけど、当事者として言わせてもらえば全然、そう聞こえないからね?」
「えっ? マジで?」
全然、気付かなかった。
俺的には、いつの間にかマイルームの倉庫に入っていた装備やアイテムを僅かな対価で施してやっている気分だったんだけど……おかしいな……。
もしかして普段の言動に問題があるのか?
収入の十パーセントを対価に、名を変え『命名神の怒り』『命名神の嘆き』『命名神の逆鱗』の三大装備を与え、一週間限定で飲食無料の宿を提供し、お金迄手渡している。
その上、レベルも百五十オーバーにしてやり、上級ダンジョンですら難なく攻略できるよう手配もしてやった。
善意の押し売りと言われればそうなのかもしれないが、元は転移組の副リーダー、ルートの奴の一言が原因だ。
俺はルートの言う通り、こいつ等を育て上げたに過ぎない。
うーん。解せぬ……。解せぬが、まあいいか。
別にこいつ等にどう思われようが、どうでもいいし、俺的には死なない程度に頑張って、俺に稼いだ金の十パーセントを運んできてくれればそれでいい。
頭の中で気分を切り替えると、俺は『ああああ』に話しかける。
「……まあ、その話は置いておこう。っていうか、どうでもいいや」
「いや、どういう事っ!? 全然、文脈繋がってないんですけど!?」
そりゃそうだ。文脈なんてすべてぶった切ってそう言ったんだから。
「まあ、人の評価なんてどうでもいい事だしな。それより、お前に一つ伝えておく事があった」
「えっ? 伝えておく事?」
「ああ、この『命名神の悲劇』の使い方についてだ……。そのネックレスを握り『命名神の悲劇』と言ってみろ」
そう言うと、『ああああ』は素直にネックレスを握り「命名神の悲劇」と呟く。
すると、『命名神の悲劇』が黒く輝き、空から轟音が聞こえてきた。
「うん? なんだ……って、げえっ!?」
空を見上げると、無数の隕石が流れていくのが見える。
その隕石は部下達が戦うモンスターに向かって落ちると、落下の衝撃が部下達を襲った。
砂漠が一転して爆心地に変わった事に冷や汗が流れる。
で、でもまあ、部下達には『命名神の怒り』の効果により物理・魔法攻撃が効かないから大丈夫かな?
あ、怯えながらもピンピンしてる。
ま、まあ、終わりよければすべてよしだ。
今のはただの事故だ。仕方がない。
「……と、まあ、これが『命名神の悲劇』の効果だ。何が起こるかわからないから、使う時は気を付けて使えよ」
「う、うん……」
そう言うと、『ああああ』は顔を青褪めさせた。
中級ダンジョン『ボルケーノケイブ』のボスモンスター、ボルケーノ・ドラゴンを投石攻撃で倒し、歓声を上げる部下達に対し、俺は軽く手を叩きながら称賛の言葉を贈る。
正直、投石攻撃でボスモンスターが倒せるとは驚きだ。
俺は素手でダンジョンを攻略しろと命じたつもりだったが、投石も素手の延長みたいな所があるし、まあ良しとしておこう。
とりあえず、ナイスピッチング!
君達の腕があれば、上級ダンジョン攻略も簡単だね!
「――という事で、やってきました。上級ダンジョン『デザートクレードル』」
パチパチパチ!
青褪めた表情を浮かべる部下達を前に、俺は笑顔で手を叩く。
「中級ダンジョンも問題なく攻略できた事だし、レベリングをするならやっぱりここだよね? と、言う事で皆さん。今日から三日間、朝から晩までここでレベリングして貰い、最終日にはこのダンジョンを攻略して貰いたいと思います」
レベル百五十オーバーとなった今、中級ダンジョンでのレベリングでは効率が悪い。
こいつ等のレベルを効率よく上げるには、やはり上級ダンジョンが一番だ。
「もちろん、万全を期す為、皆さんには、更なる呪いの装備を付けて頂く予定です」
「「!?」」
そう告げると、部下達がピクリと反応を示した。
部下達に与えている装備は、二点。
物理・魔法攻撃を完全に無効化する効果を持つ『命名神の怒り』
そして、HPの十パーセントを消費する事で、その百倍の威力の雷を出す事のできる自爆武器『命名神の嘆き』
そして、こいつ等に授ける装備は『ああああ』唯一のアイデンティティー、『命名神の逆鱗』……。
物理・魔法攻撃反射・ドレイン効果を持つ破格の装備である。
手元に『命名神の逆鱗』を用意した途端、『ああああ』が悲しそうな表情を浮かべる。
もしかして、アイデンティティーの喪失を気にしているのだろうか?
まあ、割かしどうでもいい事だ。
話しが逸れたな。
『ああああ』には、また新たな『命名神』シリーズ装備を渡すとして、今はこいつ等を最強に育て上げる事の方が肝要。
「サア、コノ装備ヲ着ケレバ最強ニ成レルヨ……」
黒く……怪しく光る『命名神の逆鱗』。
『命名神の怒り』『命名神の嘆き』『命名神の逆鱗』
……並べて見ると凄い名前の装備だ。ゲーム制作陣の狂気が装備名に現れている。
しかし、その効果は折紙付き。
ゲーム制作陣が何を考えてこんな壊れ性能の装備を作成したのかはまったくの不明だが、『命名神』シリーズがこの世界最強クラスの装備であるという点に間違いはない。
五人一列に並んだ部下達の前に寄り、一人一人に『命名神の逆鱗』を手渡していく。
『命名神の逆鱗』を手渡した瞬間呪いの装備が纏っていた黒い謎の物質が部下達の身体に吸収されていくのが見て取れた。
「「お、おおっ……」」
皆がそう感嘆の声を漏らす中、最後の一人に『命名神の逆鱗』を手渡すと、俺は部下達の前に立ち声を上げる。
「さて、『命名神の逆鱗』を装備した今、皆さんはこの世界の最強格プレイヤーの一人と成りました。後は、このダンジョンでレベリングをし、攻略をするだけ……四日後には、この世界が現実になって初めて上級ダンジョンを攻略した者。つまり、攻略者としての名声を得る事ができます――」
正直、エレメンタル達が護衛に就いている今、俺一人でも上級ダンジョンの攻略は容易。しかし、俺は目立ちたくない。
上級ダンジョンの初攻略だなんて名声は、この世界で生きていく上で、非常に邪魔な称号だ。国や冒険者協会に目を付けられたら目も当てられない。
まあ、Sランク冒険者って時点で目立っているような気がするし、協会長には既に目を付けられているが、それはそれ……。
Sランク冒険者だけど上級ダンジョンを攻略できるほどの力を持っている訳ではない程度の名声の方が色々と都合が良い。
「――さあ、残り三日。訓練終了と共に、君達はこの世界に生きる立派な冒険者として生まれ変わる。地位や名声が欲しくないか? 大金を稼ぎたくないか? この訓練を終えれば、すべてを手に入れる事ができるぞ?」
まあ、『俺に逆らわない限り』という条件付きだけどね。
契約書で交わした内容に反する行為や、俺に反旗を翻した場合、問答無用でレベル一に戻ってもらう。
ほくそ笑みながら、そう言うと部下達の目にやる気の炎が宿る。
一方、『ああああ』は冷めた目をしていた。
まるで『ああ、上手い事乗せられて……本当にチョロイんだから、人生そんなに甘くないぞ』と言わんばかりの冷めた目だ。
大正解である。
経った一週間の訓練を終えただけで、すべてを手に入れる事ができれば苦労はしない。まあ、上級ダンジョン攻略の名声だけは本当だけど……。
正直、上級ダンジョン攻略が与える影響は計り知れない。
というより、攻略時、周囲にどんな影響が出てくるのか予想ができずにいる。
とはいえ、この世界はレベル至上主義。
レベルが高ければ上級ダンジョンの攻略も容易。
モンスターも簡単に倒せるし、金を稼ぐ事も可能。
だから、嘘は言っていない。
実際、上級ダンジョンを最強装備を身に付け、アヒルの行進してるだけでレベルを上げる事ができるんだ。
『命名神の逆鱗』があれば何でもできる。ぶっちゃけ、上級ダンジョン『デザートクレードル』のボスモンスター、アントライオン・ネオだって、倒す事すら可能。
もちろん、上級ダンジョンのボスモンスターなので『命名神の逆鱗』があるからといって、簡単に倒す事はできない。しかし、地道にボスモンスターの攻撃を反射し続ければ、いつかは倒せる。
「さあ行こう。栄光の未来を掴みに――」
「「「おおっ!!!」」」
そう発破をかけると、割れんばかりの歓声がダンジョン内に上がる。
数日前までお荷物だった転移組のカースト最下層はもういない。
いや、俺が追放した五人がいたか……まあそれはノーカウントという事にしておこう。
上級ダンジョン『デザートクレードル』に棲息するモンスター、アントライオンに直進していく部下達を後目に、俺は『ああああ』に話しかける。
「……さて、後の事はお前にすべて任せる。最終日だけ、俺も同行するからさ。それと、これはお前に対する報酬だ」
そう言って手渡したのは蒼色に怪しく光るペンダント。
「こ、これは……?」
「成り行きとはいえ、お前のアイデンティティを奪っちまったからな。これは『命名神の悲劇』。効果は……まあ使ってからのお楽しみだ」
そう。この『命名神の悲劇』なる呪いの装備の効果は、簡単に言えば、パルプンテ。
何が起こるかまったくわからない呪いの装備だ。
「い、いや、『命名神の悲劇』って、ちょっと名前からして嫌な予感がするんだけど……」
「……そうだな」
『ああああ』にしては勘が鋭いじゃないか。
正直、俺もそう思う。だが、もう遅い。
『命名神の悲劇』を渡した瞬間、ペンダントが纏っていたオーラが、『ああああ』に吸収されていく。
そして、次の瞬間には、『ああああ』の首にペンダントがかけられていた。
「なっ!? なんでペンダントが首にっ!?」
「おお、中々、似合っているじゃないか『ああああ』。オシャレだぞ。そしておめでとう。お前は『命名神の悲劇』に選ばれたんだよ」
自分で言っていて、何を言っているかよくわからないが、とりあえず、適当にそう言うと、『ああああ』は悲劇の主人公の如く地面に拳を打ち付けた。
「ぜ、全然、嬉しくないよ!?」
「まあ、そうだろうな……」
しかし命名神様からは逃れられない。
というより、今の言葉、普段から命名神様の力に頼っている奴が言っていい言葉ではない。
むしろ、お前に装備される命名神様の方が可哀想だ。
正に悲劇。まあ、その悲劇を引き起こしたのは俺だけど。
「……まあなんだ。その装備を使いこなせる様になったら、更なる呪いの装備を装備させてやるから楽しみにしておけよ」
そう言うと、『ああああ』は苦い表情を浮かべる。
「……ねえ、気付いてる? カケル君的には、強力な装備をやるってニュアンスで言ってくれているのかも知れないけど、当事者として言わせてもらえば全然、そう聞こえないからね?」
「えっ? マジで?」
全然、気付かなかった。
俺的には、いつの間にかマイルームの倉庫に入っていた装備やアイテムを僅かな対価で施してやっている気分だったんだけど……おかしいな……。
もしかして普段の言動に問題があるのか?
収入の十パーセントを対価に、名を変え『命名神の怒り』『命名神の嘆き』『命名神の逆鱗』の三大装備を与え、一週間限定で飲食無料の宿を提供し、お金迄手渡している。
その上、レベルも百五十オーバーにしてやり、上級ダンジョンですら難なく攻略できるよう手配もしてやった。
善意の押し売りと言われればそうなのかもしれないが、元は転移組の副リーダー、ルートの奴の一言が原因だ。
俺はルートの言う通り、こいつ等を育て上げたに過ぎない。
うーん。解せぬ……。解せぬが、まあいいか。
別にこいつ等にどう思われようが、どうでもいいし、俺的には死なない程度に頑張って、俺に稼いだ金の十パーセントを運んできてくれればそれでいい。
頭の中で気分を切り替えると、俺は『ああああ』に話しかける。
「……まあ、その話は置いておこう。っていうか、どうでもいいや」
「いや、どういう事っ!? 全然、文脈繋がってないんですけど!?」
そりゃそうだ。文脈なんてすべてぶった切ってそう言ったんだから。
「まあ、人の評価なんてどうでもいい事だしな。それより、お前に一つ伝えておく事があった」
「えっ? 伝えておく事?」
「ああ、この『命名神の悲劇』の使い方についてだ……。そのネックレスを握り『命名神の悲劇』と言ってみろ」
そう言うと、『ああああ』は素直にネックレスを握り「命名神の悲劇」と呟く。
すると、『命名神の悲劇』が黒く輝き、空から轟音が聞こえてきた。
「うん? なんだ……って、げえっ!?」
空を見上げると、無数の隕石が流れていくのが見える。
その隕石は部下達が戦うモンスターに向かって落ちると、落下の衝撃が部下達を襲った。
砂漠が一転して爆心地に変わった事に冷や汗が流れる。
で、でもまあ、部下達には『命名神の怒り』の効果により物理・魔法攻撃が効かないから大丈夫かな?
あ、怯えながらもピンピンしてる。
ま、まあ、終わりよければすべてよしだ。
今のはただの事故だ。仕方がない。
「……と、まあ、これが『命名神の悲劇』の効果だ。何が起こるかわからないから、使う時は気を付けて使えよ」
「う、うん……」
そう言うと、『ああああ』は顔を青褪めさせた。
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