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第227話 記者会見②
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一般社団法人ふらっとわーく、村井枝子代表理事からの電話。
何だか嫌な予感しかしない。
恐る恐る電話に出ると、電話口から枝子代表理事の怒声が響く。
『――電話を取るのが遅いっ! 今すぐ川口に代わりなさい! あの娘、私からの電話に出やしない。早く会見を中断させないと大変な事になるわ!』
どうやらSNSのリアルタイム中継を見て電話をかけてきたようだ。
川島は怒り狂う枝子代表理事を刺激しないよう言葉を選びながら状況を説明する。
「――も、申し訳ございません。そ、そうしたい所ではありますが、実は私、会場から追い出されてしまいまして……」
『――な、何ですってっ!? ふざけるんじゃないわよ! だったら誰が会見を止めるのっ! 強引に突っ込んででも会見を止めなさい! 早くっ!』
「――わ、わかりましたっ!」
そう言って、電話を切ると川島は警備員に視線を向ける。
「――と、いう訳だ。今すぐそこをどきなさいっ!」
「…………」
しかし、警備員は黙ったまま動かない。
川島は一緒に会見場から追い出された横沢議員に対し、助けを求めるように視線を向ける。
すると、横沢議員は警備員を恫喝するように怒声を上げた。
「――あなた、黙ってないで、いいから会場に入れなさいっ! 私は村井枝子代表理事に呼ばれてここに来たのよ! そもそも、この会場を予約したのは村井さんじゃない! その村井さんが会見を中止しろと言っているんだから中止するのがスジというものでしょう!」
キンキン声が喧しい。
流石は横沢議員。国会でヤジをよく飛ばすだけの事はある。
と、なれば、私も負けては居られない。
横沢議員に加勢する形で、川島も声を上げる。
「――君、名前は? どこの警備会社か知らないが、これは問題じゃあないかな? もし君がこれ以上、邪魔をするのであれば、私は君の問題行動を上長に報告しなくてはならなくなるのだが……」
「…………」
しかし、警備員の表情に変化はない。
それ所か、更に三名ほど警備員の数が増えた。
「――くっ、こんなの許される訳がないわ。正式に抗議させて頂きますからねっ!」
そう言い残すと、横沢議員は怒りの表情を浮かべたまま、コンベンションホールを去っていく。
このまま話をしていても平行線。今、この場で抗議しても何も変わらないと判断したのだろう。私も警備員を睨み付けると、横沢議員に続き、コンベンションホールを去る。
「――くそっ! 一体、何が起きているんだっ! 中の様子はどうなっている!」
スマホを手に取り、動画アプリを立ち上げると、会場内の様子が映し出される。
『――と、いう事で私達は、これらの書類を持ちまして、一般社団法人ふらっとわーく、その他の団体が東京都から随意契約されている事業につき、住民監査請求を起こしたいと思います』
「――な、なにぃぃぃぃ!?」
住民監査請求だとぉぉぉぉ??
住民監査請求とは、議会の同意を得て、長から選任された監査委員が、地方自治行政における公正と効率の見地から、第三者執行機関として、地方自治法の規定に基づいて設けられた監査委員により、財政に関する事務執行及び経営に係る事業の管理などが法令などに従って適正に行われるかどうかを審査するものだ。
監査委員は、人格が高潔で財務管理、事業の経営管理、その他の行政運営に関し優れた見識を有する者から、長が議会の同意を得て選任するものとされているが、実質、そんな高潔な監査委員は選出された例はほぼない。
そんな清廉潔白万能超人みたいな人間いるはずがないからだ。
結局の所、都議会議員や区議会議員の中から選任する長にとって都合のいい人間が選ばれる。
その為、多少、都道府県が便宜を図った団体が住民監査請求を起こされ、不正があったとしても、マスコミが飛び付かず、話題とならねば、『監査実施せず(却下)』の一文で話を終える事ができる。
しかし、今は状況が違う。
「――何をふざけた事を言っているんだっ!」
自分の所の職員に住民監査請求されるなんて聞いた事がない。
枝子代表理事が憤慨するのも当然だ。
すると、川口は川島が雇った五人の弁護士の紹介を始める。
『――こちらの方々が、今回、住民監査請求を担当して下さる弁護団の皆さんです』
「――は、はぁああああっ!? 住民監査請求を担当して下さる弁護団の皆さんんんんっ!?」
自身が紹介した弁護団がいつの間にか敵側に回っている事に激しく動揺する川島。
『ご紹介に与りました弁護団代表の磯崎です。住民監査請求は我々、弁護団が責任を持って担当させて頂きます』
――い、いやいやいやいや、磯崎ぃぃぃぃ! 担当させて頂きますじゃあない。お前等弁護士を紹介したのはこの私なんだぞ!?
住民監査請求なんて馬鹿げた事をさせる為に雇った訳ではない!
それに今、住民監査請求されるのも時期が悪い。最近、ニュースで話題となっている都知事が任命した都知事とは独立した監査委員(都知事が任命している時点で全然独立していない)もまるで人が変わったかの様に厳しい監査を行なっていると聞く。
これまで補助金を満額貰う為に、適当に数字合わせしただけの経費報告書を体裁を整えて提出すれば、例えそれが間違っていたとしても『今回はしょうがない。次から気を付けろよ』といった社会通念上、民間企業がやったら一発アウトな事でも見逃し対応をしてくれる監査委員が、今は人が変わったかの様に数字の整合性や用途を調査し、不正が見つかれば、まるで税務署の様に容赦なく返還要請。補助金や助成金。随意契約を打ち切られる。
私が知る限りでも、既に二件、起訴され、追徴金と懲役刑を求刑された。
ましてや自分が紹介した弁護士が住民監査請求を仕掛けてきましただなんてシャレにもならない。
「――ど、どうする。私はどうしたらいい!?」
会見動画を見ながらあたふたしていると、スマホの画面が切り替わり電話アプリが立ち上がる。
「……ま、拙い」
スマホの画面に表示された名前を見て、川島は顔を強ばらせる。
「……は、はい。川島です」
そう言って、電話に出ると村井元事務次官の声が聞こえてきた。
『――村井だが……川島君、中々、やってくれるじゃあないか……』
い、怒りで声が震えている……。相当、お怒りの様だ。
川島は直立姿勢を取ると、謝罪をする様に頭を下げる。
「――も、申し訳ございませんでした。私もまさかこんな事になるとは思わず……」
そう弁解するも、怒り狂った村井元事務次官には通じない。
『――なるほど、私も騙されたよ。まさに獅子身中の虫。最初からそのつもりだった訳だ……? まさかこんな手段を使って、私が事務次官時代から計画してきた団体を潰そうとするとはな……』
――ま、拙い。誤解を解かねば……。
「ち、違います。私はそんなつもりでは……弁護士を紹介したのも、スラップ訴訟を起こし、あいつに精神的苦痛を与えるつもりで……」
『――精神的苦痛ね。確かに受けているな。君の思惑通りにね』
――ち、違う。そうじゃないっ!?
「わ、私は、少しでも村井様の助けになろうと……!」
――ピンポーン
そう言葉を発した瞬間、電話の向こう側でチャイムを鳴らす音が聞こえてくる。
『――君のお陰で大変な事になったな……』
「な、何をっ……」
『東京国税局査察部です』
――はっ? と、東京国税局査察部ぅぅぅぅ!?
何で、村井元事務次官の下に国税局が……いや、今はそれ所ではない!
『あ、あなたっ! た、大変よ。こ、国税局が――』
枝子代表理事もパニックに陥っている。
当然だ。国税局査察部といえば、悪質な脱税に対して調査を行ない、検察に告発する組織。
査察部による脱税の摘発は、それによる見せしめのような、一罰百戒の性格もあるため、厳しく罰せられる。
『――落ち着きなさい。やましい事はないんだ。彼等を家の中に上げて差し上げなさい』
『な、なんであなたは落ち着いていられるのっ! 国税局が来たのよっ!?』
『――いいから彼等を家に上げなさい! さて、川島君……これも君の差し金か? そんなに私の事が憎いかね』
か、完全に誤解されている。
「い、いえ……ですから、それは私ではなく……」
『――惚けた事を……いいか? 一つだけ言っておく』
村井元事務次官は話を一度区切り、計り知れない怒りを込めて言う。
『――いい気になるなよ。私が事務次官時代に立案した委託事業や補助金の交付。確かに、これを利用し、便宜を図った見返りを貰っていた事は認めよう。しかし、この補助金交付により助かった団体は星の数ほどある。君はその全団体を敵に回したのだ。私はこんな所では終わらない。精々、背後に気を付けて正義の味方ごっこに勤しむ事だな……』
村井元事務次官がそう言い終わると電話アプリが終了する。
「――む、村井様? 村井様!? 違うんです! 私の話を聞いて下さい!」
そうスマホに向かって話しかけるも、当然、電話アプリは落ちている。
「そ、そんな……そんな馬鹿な……そんな馬鹿なぁぁぁぁ!」
川島はスマホを持っていた利き手をだらりと下げると、両膝を付いて愕然とした表情を浮かべた。
◇◆◇
「――なんか、凄い事になってるな……」
この国は、相当汚職が蔓延っていた様だ。
村井元事務次官の関連団体及び省庁に対し、少しの不正も許さない高潔な精神で真摯に職責を果たすよう洗脳しただけで膿が沢山出てきた。
まあ、国も企業と同じで、トップが腐っていると幾らガバナンスを整えていてもまったく効果を発揮しない。
人事権を持つ社長が怖くて何も言う事ができなくなる周りの取締役のようなものだ。
国に当てはめると酷さがより引き立つ。
税金を取る時は厳しく取り立て、補助金や助成金として懇意にしている特定団体に配る時はゆるゆる。
例え社会通念上許されない様な問題が起きても東京都であったり、国のトップが『ヨシ』とすれば、それで済んでしまう。
働く筈の自浄作用が働いていないのだから当たり前の事だ。
住民監査請求についても同じ。監査委員がトップと利害関係がある時点でお察しのとおりである。こうでもしなければ、汚職はなくならない。
「でもまあ、まさかこんな事になるとは思わなかったかな……?」
新聞の一面に視線を向けると、そこには『相次ぐ汚職に怒れる民衆。申告納税制度の崩壊』といった見出しが掲載されていた。
---------------------------------------------------------------
次回は2023年3月12日AM7時更新となります。
何だか嫌な予感しかしない。
恐る恐る電話に出ると、電話口から枝子代表理事の怒声が響く。
『――電話を取るのが遅いっ! 今すぐ川口に代わりなさい! あの娘、私からの電話に出やしない。早く会見を中断させないと大変な事になるわ!』
どうやらSNSのリアルタイム中継を見て電話をかけてきたようだ。
川島は怒り狂う枝子代表理事を刺激しないよう言葉を選びながら状況を説明する。
「――も、申し訳ございません。そ、そうしたい所ではありますが、実は私、会場から追い出されてしまいまして……」
『――な、何ですってっ!? ふざけるんじゃないわよ! だったら誰が会見を止めるのっ! 強引に突っ込んででも会見を止めなさい! 早くっ!』
「――わ、わかりましたっ!」
そう言って、電話を切ると川島は警備員に視線を向ける。
「――と、いう訳だ。今すぐそこをどきなさいっ!」
「…………」
しかし、警備員は黙ったまま動かない。
川島は一緒に会見場から追い出された横沢議員に対し、助けを求めるように視線を向ける。
すると、横沢議員は警備員を恫喝するように怒声を上げた。
「――あなた、黙ってないで、いいから会場に入れなさいっ! 私は村井枝子代表理事に呼ばれてここに来たのよ! そもそも、この会場を予約したのは村井さんじゃない! その村井さんが会見を中止しろと言っているんだから中止するのがスジというものでしょう!」
キンキン声が喧しい。
流石は横沢議員。国会でヤジをよく飛ばすだけの事はある。
と、なれば、私も負けては居られない。
横沢議員に加勢する形で、川島も声を上げる。
「――君、名前は? どこの警備会社か知らないが、これは問題じゃあないかな? もし君がこれ以上、邪魔をするのであれば、私は君の問題行動を上長に報告しなくてはならなくなるのだが……」
「…………」
しかし、警備員の表情に変化はない。
それ所か、更に三名ほど警備員の数が増えた。
「――くっ、こんなの許される訳がないわ。正式に抗議させて頂きますからねっ!」
そう言い残すと、横沢議員は怒りの表情を浮かべたまま、コンベンションホールを去っていく。
このまま話をしていても平行線。今、この場で抗議しても何も変わらないと判断したのだろう。私も警備員を睨み付けると、横沢議員に続き、コンベンションホールを去る。
「――くそっ! 一体、何が起きているんだっ! 中の様子はどうなっている!」
スマホを手に取り、動画アプリを立ち上げると、会場内の様子が映し出される。
『――と、いう事で私達は、これらの書類を持ちまして、一般社団法人ふらっとわーく、その他の団体が東京都から随意契約されている事業につき、住民監査請求を起こしたいと思います』
「――な、なにぃぃぃぃ!?」
住民監査請求だとぉぉぉぉ??
住民監査請求とは、議会の同意を得て、長から選任された監査委員が、地方自治行政における公正と効率の見地から、第三者執行機関として、地方自治法の規定に基づいて設けられた監査委員により、財政に関する事務執行及び経営に係る事業の管理などが法令などに従って適正に行われるかどうかを審査するものだ。
監査委員は、人格が高潔で財務管理、事業の経営管理、その他の行政運営に関し優れた見識を有する者から、長が議会の同意を得て選任するものとされているが、実質、そんな高潔な監査委員は選出された例はほぼない。
そんな清廉潔白万能超人みたいな人間いるはずがないからだ。
結局の所、都議会議員や区議会議員の中から選任する長にとって都合のいい人間が選ばれる。
その為、多少、都道府県が便宜を図った団体が住民監査請求を起こされ、不正があったとしても、マスコミが飛び付かず、話題とならねば、『監査実施せず(却下)』の一文で話を終える事ができる。
しかし、今は状況が違う。
「――何をふざけた事を言っているんだっ!」
自分の所の職員に住民監査請求されるなんて聞いた事がない。
枝子代表理事が憤慨するのも当然だ。
すると、川口は川島が雇った五人の弁護士の紹介を始める。
『――こちらの方々が、今回、住民監査請求を担当して下さる弁護団の皆さんです』
「――は、はぁああああっ!? 住民監査請求を担当して下さる弁護団の皆さんんんんっ!?」
自身が紹介した弁護団がいつの間にか敵側に回っている事に激しく動揺する川島。
『ご紹介に与りました弁護団代表の磯崎です。住民監査請求は我々、弁護団が責任を持って担当させて頂きます』
――い、いやいやいやいや、磯崎ぃぃぃぃ! 担当させて頂きますじゃあない。お前等弁護士を紹介したのはこの私なんだぞ!?
住民監査請求なんて馬鹿げた事をさせる為に雇った訳ではない!
それに今、住民監査請求されるのも時期が悪い。最近、ニュースで話題となっている都知事が任命した都知事とは独立した監査委員(都知事が任命している時点で全然独立していない)もまるで人が変わったかの様に厳しい監査を行なっていると聞く。
これまで補助金を満額貰う為に、適当に数字合わせしただけの経費報告書を体裁を整えて提出すれば、例えそれが間違っていたとしても『今回はしょうがない。次から気を付けろよ』といった社会通念上、民間企業がやったら一発アウトな事でも見逃し対応をしてくれる監査委員が、今は人が変わったかの様に数字の整合性や用途を調査し、不正が見つかれば、まるで税務署の様に容赦なく返還要請。補助金や助成金。随意契約を打ち切られる。
私が知る限りでも、既に二件、起訴され、追徴金と懲役刑を求刑された。
ましてや自分が紹介した弁護士が住民監査請求を仕掛けてきましただなんてシャレにもならない。
「――ど、どうする。私はどうしたらいい!?」
会見動画を見ながらあたふたしていると、スマホの画面が切り替わり電話アプリが立ち上がる。
「……ま、拙い」
スマホの画面に表示された名前を見て、川島は顔を強ばらせる。
「……は、はい。川島です」
そう言って、電話に出ると村井元事務次官の声が聞こえてきた。
『――村井だが……川島君、中々、やってくれるじゃあないか……』
い、怒りで声が震えている……。相当、お怒りの様だ。
川島は直立姿勢を取ると、謝罪をする様に頭を下げる。
「――も、申し訳ございませんでした。私もまさかこんな事になるとは思わず……」
そう弁解するも、怒り狂った村井元事務次官には通じない。
『――なるほど、私も騙されたよ。まさに獅子身中の虫。最初からそのつもりだった訳だ……? まさかこんな手段を使って、私が事務次官時代から計画してきた団体を潰そうとするとはな……』
――ま、拙い。誤解を解かねば……。
「ち、違います。私はそんなつもりでは……弁護士を紹介したのも、スラップ訴訟を起こし、あいつに精神的苦痛を与えるつもりで……」
『――精神的苦痛ね。確かに受けているな。君の思惑通りにね』
――ち、違う。そうじゃないっ!?
「わ、私は、少しでも村井様の助けになろうと……!」
――ピンポーン
そう言葉を発した瞬間、電話の向こう側でチャイムを鳴らす音が聞こえてくる。
『――君のお陰で大変な事になったな……』
「な、何をっ……」
『東京国税局査察部です』
――はっ? と、東京国税局査察部ぅぅぅぅ!?
何で、村井元事務次官の下に国税局が……いや、今はそれ所ではない!
『あ、あなたっ! た、大変よ。こ、国税局が――』
枝子代表理事もパニックに陥っている。
当然だ。国税局査察部といえば、悪質な脱税に対して調査を行ない、検察に告発する組織。
査察部による脱税の摘発は、それによる見せしめのような、一罰百戒の性格もあるため、厳しく罰せられる。
『――落ち着きなさい。やましい事はないんだ。彼等を家の中に上げて差し上げなさい』
『な、なんであなたは落ち着いていられるのっ! 国税局が来たのよっ!?』
『――いいから彼等を家に上げなさい! さて、川島君……これも君の差し金か? そんなに私の事が憎いかね』
か、完全に誤解されている。
「い、いえ……ですから、それは私ではなく……」
『――惚けた事を……いいか? 一つだけ言っておく』
村井元事務次官は話を一度区切り、計り知れない怒りを込めて言う。
『――いい気になるなよ。私が事務次官時代に立案した委託事業や補助金の交付。確かに、これを利用し、便宜を図った見返りを貰っていた事は認めよう。しかし、この補助金交付により助かった団体は星の数ほどある。君はその全団体を敵に回したのだ。私はこんな所では終わらない。精々、背後に気を付けて正義の味方ごっこに勤しむ事だな……』
村井元事務次官がそう言い終わると電話アプリが終了する。
「――む、村井様? 村井様!? 違うんです! 私の話を聞いて下さい!」
そうスマホに向かって話しかけるも、当然、電話アプリは落ちている。
「そ、そんな……そんな馬鹿な……そんな馬鹿なぁぁぁぁ!」
川島はスマホを持っていた利き手をだらりと下げると、両膝を付いて愕然とした表情を浮かべた。
◇◆◇
「――なんか、凄い事になってるな……」
この国は、相当汚職が蔓延っていた様だ。
村井元事務次官の関連団体及び省庁に対し、少しの不正も許さない高潔な精神で真摯に職責を果たすよう洗脳しただけで膿が沢山出てきた。
まあ、国も企業と同じで、トップが腐っていると幾らガバナンスを整えていてもまったく効果を発揮しない。
人事権を持つ社長が怖くて何も言う事ができなくなる周りの取締役のようなものだ。
国に当てはめると酷さがより引き立つ。
税金を取る時は厳しく取り立て、補助金や助成金として懇意にしている特定団体に配る時はゆるゆる。
例え社会通念上許されない様な問題が起きても東京都であったり、国のトップが『ヨシ』とすれば、それで済んでしまう。
働く筈の自浄作用が働いていないのだから当たり前の事だ。
住民監査請求についても同じ。監査委員がトップと利害関係がある時点でお察しのとおりである。こうでもしなければ、汚職はなくならない。
「でもまあ、まさかこんな事になるとは思わなかったかな……?」
新聞の一面に視線を向けると、そこには『相次ぐ汚職に怒れる民衆。申告納税制度の崩壊』といった見出しが掲載されていた。
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