飯が出る。ただそれだけのスキルが強すぎる件

びーぜろ

文字の大きさ
12 / 31
第1章 城塞都市マカロン

第12話 エターナル・ペイン(尿路に創造した塩の塊)

しおりを挟む
「……ほう。面白いことをいう童だ。このワシを前にして大言を吐くか」

 テールスが乗り移ったヒナタの言葉に憤りを感じているのだろう。
 ティル・ヴィングの発する言葉の一つ一つに棘がある。
 しかし、それはテールスも同じ。
 神対人間……。神であるテールスからすれば、ティル・ヴィングの発する言葉の一つ一つが大言荘厳。
 ただの人間が、神仏相手に唾を吐きかける行為となんら変わらない。

「『――御託はいいから早く勝負を着けましょう? あなたの吐く息……。臭いんですよ。ちゃんと歯を磨いていますか? 2秒で勝負を着けてあげますから、虫歯にならないためにも、決着後すぐに歯医者さんの予約……。取った方がよろしいですよ? あ、歯医者の予約の仕方、知ってます? もしよろしければ、お勧めの歯医者を紹介しますよ?』」
「――若さ故とはいえ言葉が過ぎるな。童……。吐いた唾は飲み込めぬぞ?」
「『ええ、もちろん。あなたが負けた後、お勧めの歯医者を紹介してあげますよ』」

 観客に聞こえぬよう双方、近くに寄って煽っている。神も剣匠もイメージが大事ということだろうか?
 テールスがそう煽ると、先にティル・ヴィングの方が我慢の限界を迎えた。

「そういうことを言っている訳ではないわっ! 誰が歯医者の紹介なんぞ頼むかっ!」

 鞘から黒剣を抜くと、剣先をヒナタ(テールス)に向け構える。

「――このワシを2秒で倒せるというのであれば、倒してみるがいい。まあ、そんなことできるはずもないがな……」
「『――よく喋るお爺ちゃんですね……。まあ、いいでしょう』」

 2人が向かい合うのを見て実況のピエールが声を上げる。

『――どうやら双方共に試合の準備ができたようです! 果たして、どんな勝負を見せてくれるのでしょうか! お待たせしました。それでは、第1試合、開始ですっ!』

 ――カーンッ!(ゴング音が鳴る音)

 すると、闘技場内に試合開始のゴングが鳴り響く。

「――それでは、いくぞ。童ぁぁぁぁ!」

 相当、怒りを堪えていたようだ。
 いい大人(65歳)が幼気な子供(外見年齢14歳)相手に向けていた剣を思い切り振りかぶる。

「死ねぇぇぇぇ!」
「『――エターナル・ペイン尿路に創造した塩の塊』」

 そんなティル・ヴィングの様子を片目に捉えながら微笑を浮かべると、テールスは軽く指を弾いた。

「――ぎゃあああああっー!?」

 その瞬間、ティル・ヴィングは振りかぶったままの姿勢で剣から手を放し、叫び声を上げ、腰から背中を仰け反らせながら崩れ落ちる。

『ど、どーした、ティル・ヴィング~!? 試合開始早々、ティル・ヴィング選手が自慢の黒剣を落とし、絶叫を上げて倒れ込んでしまいました! 一体、なにがあったというのでしょうかっ!?』

 突然の事態に実況のピエールも驚いているようだ。
 一体、なにが起こったのか理解できず唖然としていると、テールスが地に伏し悶絶するティル・ヴィングに優しく話しかける。

「『あなたの尿道に塩の結晶を創造しました。いかがですか? お産の次に痛いとされる尿路結石の痛みは……。言葉通り、2秒でケリを着けましたが、今、負けを認めるのであれば、その苦しみから解放して差し上げますよ?』」

 しかし、尿路結石を仕込まれたティル・ヴィングはそれ所ではないようで、悶絶していて声を出すことすらできずにいる。
 尿路結石に苦しむティル・ヴィングを見て、テールスは少し考え込む。

「『……おや、もしかして、痛みで声が出ないのですか? これは想定の範囲外ですね……。で、あれば、他の方に勝敗をつけてもらいましょう。審判員さーん!』」

 闘技場の外側で様子を伺っていた審判員に声をかける。
 すると、様子を見ていた審判員がリングに上がりティル・ヴィングの下にやってきた。
 集まってきた審判員は片膝を着くと、危険な状態だと判断し、担架を呼ぶ。

「こ、これは……。すいませんっ! どなたか担架を持って来て下さいっ!」

 ざわざわと騒がしくなる闘技場内。
 そんな中、審判員に向かってテールスがポツリと言う。

「『――担架で運ばれるということは、勝負は私の勝ちということでよろしいのですよね?』」
「ああ、勝ちでいい! そんなことより担架を早く!」
「ま、待て……。まだ勝負は終わってなどおらぬ……!」

 絶え間なく襲いくる尿路結石の激痛にティル・ヴィングは顔を歪めながら立ち上がる。
 自慢の黒剣は最早、立ち上がるための杖としての役割しか果たしていない。
 だが、今のティル・ヴィングの姿を見て声を上げる観客は誰もいなかった。

 ティル・ヴィングの尿道に創造した塩の結晶が大き過ぎたためか、ティル・ヴィングを中心に血の水溜まりができている。
 それだけではない。
 お産の次に痛い尿路結石の攻撃を尿道内部からダイレクトアタックされたティル・ヴィングはケツから脱糞していた。
 ティル・ヴィングの顔を見ると、尋常ではない涙と涎を流している。相当、痛いのだろう。

 テールスはそんなティル・ヴィングを横目に鼻栓しながらバナナの皮を剥くと、バナナの果肉に手に持っていた塩の結晶をふりかける。

「『憐れですね。もう意識を保っているだけで精一杯でしょうに……。仕方がありません。私に戦いを挑んだ勇気を讃え、あなたに施しを与えましょう。汝、ティル・ヴィングよ。あなたはこの果実の名を知っていますか?』」

 ティル・ヴィングから返事はない。
 当然だ。ティル・ヴィングは尿路結石の痛みに悶絶中。そんな問答をしている余裕はない。立ち上がるだけで満身創痍。
 しかし、テールスは気にしない。
 慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、ティル・ヴィングが答えたテイで勝手に話を進めていく。

「『あなたがこの果実の名を知らぬのも無理はありません。なにせ、この果実はこの世界とは別の世界に生まれた奇跡の果実なのですから……』」

 ポカーンとした顔をする審判員。
 観客も審判員と同じ顔をしている。

「『この果実の名は、バナナ。この奇跡の果実バナナを食せば、今、あなたが抱えている体の不調はすべて消え去ります。お口の悩みも尿道にできた結石の悩みもすべて解決するのです……』」

 テールスは肩で息をするティル・ヴィングの前に立つと、バナナを持って十字を切る。

「『大地創造の神、テールス神の施しを受け取りなさい。ソルティバナナ排泄を促進する神の果実……』」

 そして、観客、審判員が見守る中、満身創痍のティル・ヴィングの口の中に塩バナナを喰らわせた。

「う、うぐうっ……⁉︎」

 尿路結石の痛みだけではなく、突然、口に粘性のある果実、バナナを1本まるまる入れたことで、ティル・ヴィングはパニックに陥る。

(こ、呼吸が……。呼吸ができない。まずい。このままでは意識が……)

 辛うじて持ち堪えていた意識が飛びそうになる。
 しかし、ティル・ヴィングの口に無理矢理詰められたのは紛うことなき神の生み出した果実。
 テールスの神気で創られたバナナには、バナナのスペックを超えた力が宿っている。

 バナナを喉に詰まらせたら窒息する。
 死にたくないという思いに駆られたティル・ヴィングは尿路結石に起因する体の痛みに耐えながら、口に詰められたバナナを咀嚼する。

 ――ごくん。(バナナを飲み込む音)

 そして、バナナを飲み込むと同時に意識を失った。

『――し、勝者、ヒナタ・クルルギィィィィ!』

 ――わああああっ‼︎(観客席から上がる歓声)

 実況が勝敗を告げると、会場内が歓声に湧く。

『――番狂わせが起きました! 闘儀は、武具の実演を兼ねた選手同士の戦い。にも拘わらず、ヒナタ選手はティル・ヴィング選手に一切武具を使わせない所か手に持っていたバナナに塩をふりかけ、ティル・ヴィング選手口に突っ込むだけで勝利してしまいましたぁぁぁぁ!』
『――ティル・ヴィング選手。流石に可哀想ですね。試合開始、2秒でダウンし、その後は痴態を晒しただけでしたから……』
『――おっと、ティル・ヴィング選手。担架に運ばれていきます。波乱の第1回戦、これにて終了です!』

 歓声を一身に受けながら闘技場を後にすると、テールスに貸していた体が戻ってくる。

「――ふう……」

(――バナナの房と一握りの塩で闘儀に挑むことになった時はどうしようと思ったけど、なんとかなったようだ。本当に良かった……)

 そんなことを考えていると、ティル・ヴィングの体内に尿路結石を創造し、塩バナナを喰らわせ完封勝利したテールスが話しかけてくる。

 ――いかがでしたか? 食料創造のスキルはあのように使うことで、攻撃にも転用できます。今回は、ティル・ヴィングという人間の尿道に塩の結晶を創造することで、人工的に疾患を引き起こしましたが、生き物が生きる上で必要な臓器の内部にバナナを創造する……。なんてことも可能です――

(――思った以上にとんでもないスキルを貰っていたようだ。食料創造……。どうやらこのスキルは単に食べ物を創り出すだけのスキルではないらしい……)

 控室に戻ると、ヒナタを騙して闘儀に参加させた評儀祭実行委員。バレンシアとネーブルが顔を真っ青にさせて振り返る。

「お、お帰りなさいませ……」
「す、素晴らしい試合を見させて頂きました……」

 本心ではないことが丸わかりだ。

「――まったく、俺のことを闘儀に参加させるなんて! もし万が一、ケガするようなことがあれば、どうするつもりだったんですか!」

 そう抗議すると、バレンシアとネーブルはシュンとした表情を浮かべる。
 案外、打たれ弱かったようだ。

「――申し訳ございません。手違いがありまして……」
「――ただ、大変申し訳ないのですが、一度、闘儀に参加した以上、ここで棄権されますと、品評会そのものの参加ができなくなってしまうのです。申し訳ございません」

 例えそれが、評儀祭実行委員のミスだったとしても、品評と闘儀のどちらかに参加してしまったが最後、今年の品評会は一番初めに選択した種目に出なければならないらしい。

「で、でも、それはそっちが勝手に間違え――」
「――まあまあ、そういう決まりですから……」
「大変申し訳ございません。このような不祥事が続かぬよう評儀祭実行委員の一員として再発防止策を練りますので……どうぞこれでお許しください」
「うん? これは――」

 評儀祭実行委員であるバレンシアから受け取った箱を開けると、そこには人間の薬指が1本入っていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...