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第1章 城塞都市マカロン
第15話 挑発
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「――これこれ、サボテンダーよ。試合開始前に品のない行為は止めなさい。申し訳ない。そのサボテンダーは、この私が数年前に栽培したサボテンがモンスターに変質したものでしてな……。むむっ! その手に持つ物は、まさかバナナでは?」
テールスの手に持つバナナに視線を向けると、サボテリーナが物欲しそうな表情を浮かべる。
「『――はい。そうですが、それがなにか?』」
「――やはりっ! 実は、私、それに目がなくてですね。もし、よろしければ、1本譲って頂けませんか?」
「『えっ? これを……。ですか?』」
このバナナは闘儀に使用する物。
テールスはバナナの房に視線を向けるとため息を吐く。
「『――まあ、いいでしょう……』」
1本位であれば、無くなった所で影響はない。
そう判断したテールスは、バナナを房から捥ぐと、慈愛の心をもってサボテリーナに手渡した。
「――おお、ありがとうございます!」
サボテリーナは、大喜びでバナナを受け取ると、流れるような動作でそれを足元に置く。そして、膝を上げると思い切りバナナを踏み潰した。
――ブチュ!(バナナの潰れる音)
黄色い皮は弾け、白い果肉が宙を舞う。
あまりに堂々と行われた不遜な行動を前に、バナナを手渡したテールスは思わず呆然とした表情を浮かべる。
「――おっと、これは失礼……。私の不注意で手が滑り、頂いたバナナを足で踏ん付けてしまいました。いや、困った困った……」
そんなテールスの姿を見て、サボテリーナはトボけた表情を浮かべる。
「――おや? どうしました? もしや、キレましたかな? いやはや、最近の若者は短気でいけませんなぁ……」
挑発するように言いながら地面に落ちたバナナを執拗に踏みにじるサボテリーナ。
そんなサボテリーナを見て、テールスは軽く目を閉じ、天を仰ぎ見た。
「『――キレてないですよ。この私をキレさせたら大したものですよ。そんなことより、1つお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?』」
テールスの質問にサボテリーナは余裕の表情を浮かべ返事する。
「ええ、もちろんいいですよ」
「『――ありがとうございます。それでは、1つだけ……。この試合には、あなたも参加されるのですか?』」
テールスの質問に、サボテリーナは残念そうな表情で呟く。
「できることなら参加させて頂きたいものですなぁ……。しかし、その場合、相手方の許可を得なければならないのです」
闘儀の試合は、基本的に1対1で行われる。
例外的に、2人以上での試合も認められているが、それは相手が許可した場合に限られる。
サボテリーナの話を聞き、テールスは微笑を浮かべる。
「『――そうですか。なら、問題ないですね。私は別にどちらでも構いませんよ? 無様な姿を観客に晒すのが怖くないというのであれば、どうぞあなたも試合に参加して下さい……』」
テールスの言葉を聞き、サボテリーナは一瞬、眉間に皺を寄せる。
「――ほぅ。それはそれは……。しかし、私が試合に参加すれば、あなたの勝機はゼロになる。本当によろしいのですかな?」
サボテリーナによる挑発。
テールスは笑顔を浮かべて承諾する。
「『――ええ、もちろんです。あなたが試合に参加した所で私が勝つことに変わりありませんから』」
双方共に満面の笑顔。
すると、会場から割れんばかりの歓声が巻き起こる。
『――おーっと、ヒナタ選手! 余裕の笑みを浮かべ、サボテリーナ選手の試合参加を快諾しましたぁぁぁぁ! 双方共に試合の準備は万端! 果たして、どんな勝負を見せてくれるのでしょうか! お待たせしました。それでは、第二試合、開始ですっ!』
――カーンッ!(ゴングが鳴る音)
すると、闘技場内に試合開始のゴングが鳴り響く。
「いやはや、まさかこんな簡単に許諾して頂けるとは……。頂いたバナナを踏み躙り、挑発した甲斐があったものだ……」
サボテリーナの言葉を聞き、テールスは軽く指を弾く。
「『――おや? あれは挑発のつもりでしたか……。てっきり、神に対する冒涜かと……』」
テールスがそう呟くと、サボテンダーに異変が起きる。
『おーっと、サボテンダー選手! 突然、苦しみだしましたぁぁぁぁ! 一体何があったというのでしょうかぁぁぁぁ!』
「――なにっ⁉︎」
実況を受けサボテリーナが横に視線を向けると、もがき苦しむサボテンダーの姿が目に映る。
『――ッ⁉ サ、サボボボボボボボッ⁇』
「サ、サボテンダー? どうしたというのだ! 一体、何が……⁇」
サボテンダーが突然苦しみ始めたかと思うと、体に亀裂が走り、内側から液体が噴き出す。
――ブシャアアアアッ!(サボテンダーから液体が噴き出る音)
「――なっ!? なにぃぃぃぃ!」
サボテンダーの体から突然、液体が流れ出し、体の中心部から白く干涸びていくのを見て、サボテリーナは警戒心を露わにする。
突然の事態に実況も驚いているようだ。
『――ど、どーした、サボテンダァァァァ!? 試合開始早々、サボテンダー選手の体に亀裂が走り、体から液体が流れ出てきました! その姿は真っ白に燃え尽きた灰の様! 一体、なにがあったというのでしょうかっ!?』
一体、なにが起こったのか理解できず呆然としているサボテリーナに、テールスは指を立てて話しかける。
「『――サボテンダーの体内にオリーブオイルを創造しました。オリーブオイルは、植物にとって非常に有益。害虫を防ぎながら植物に追加の栄養素を供給する効果があります。しかし、適切に使用しないと植物に害を及ぼします。例えば、今、破裂したサボテンダーのようにね……?』」
実際、植物にオリーブオイルを与えた所で破裂することはない。
単に許容量を超えたオリーブオイルを体内の彼方此方に創造されたため、体が破裂したに過ぎない。
しかし、その事を知らないサボテリーナは顔を引き攣らせる。
「くっ……。なんと面妖な……!」
品評会に参加している弟の応援で第1回戦を見ていないサボテリーナは、ヒナタ(テールス)の攻撃方法を知らない。そのため、ヒナタが2回戦に上がって来れたのはマグレであると、そう結論付けていた。
当然だ。そうでなくては、マカロンが誇る剣匠、ティル・ヴィングが血尿で水たまりを作り、脱糞してぶっ倒れるなど、ありえない。
口頭でそう聞いた時でさえ、信じられなかったほどだ。
「――だが、まだまだっ! サボテンダァァァァ! お前の本当の力を見せてやれぇぇぇぇ!」
その瞬間、まだ緑が残るサボテンダーの手足が落ち、落ちた手足が新たなサボテンダーとして再生する。
『――おーっと、サボテンダー選手! 真っ白に燃え尽きた胴体を切り捨て大復活を遂げましたぁぁぁぁ! しかも、4体に増えている! これは、闘儀のルール的に大丈夫なのでしょうかぁぁぁぁ⁉』
そう疑問を呈すると、すぐさま検討が行われ、それが実況に伝えられる。
『――なんと、オッケーだそうです! 試合中に選手が分裂したことがないので難しい判断を強いられましたが、領主様たっての希望で試合継続となりましたぁぁぁぁ! 分裂オッケーのこの試合、果たして、ヒナタ選手に勝ち目があるのでしょうかぁぁぁぁ!』
実況の発言にテールスはため息を吐く。
「『――ふうっ……。私も侮られたものですね。もしや、数が増えれば勝てるとでも思われているのでしょうか? コールドバナナ』」
そう言って指を弾くと、分裂したサボテンダーの体から冷凍バナナが突き出てきた。
「なあっ⁉︎ サ、サボテンダァァァァ⁇」
『おーっと、これは大変だぁぁぁぁ! サボテンダー選手の体からバナナが生えてきました‼︎ これは、中々、ショッキングな光景だぁぁぁぁ!! サボテンダー選手は大丈夫なのでしょうかぁぁぁぁ⁉』
体中からバナナが生えたサボテンダーは、少しの間、バタつくとそのまま動かなくなる。
バナナには、回復薬と同等の効果がある。
今、サボテンダーの置かれた状況は、ナイフ串刺しのまま、傷が塞がった様なもの。バナナはサボテンダーの動きを阻害する形で体から生えている。
「『――安心して下さい。サボテンダーは無事ですよ。少なくとも、その命だけは……。さて、後はあなただけですね……』」
指先を向けながら、そう言うと、サボテリーナは苦い表情を浮かべる。
「ぐっ……⁉ ま、まだだ……まだ、終わらぬよ。ここは、マカロン。ゴブリン戦線の最前線だ。商人ですら多少の武は求められる。故に、まだ私には奥の手が残されているっ! サボテンダァァァァ!!」
そう声を上げると、サボテリーナは内ポケットから赤黒い液体を取り出した。
『――おーっと、サボテリーナ選手っ! 内ポケットから赤黒い液体を取り出しました! 奥の手とは一体、なんなのでしょうかぁぁぁぁ!!』
実況すら知らないサボテリーナの奥の手。
テールスは、サボテリーナが手にする赤黒い液体に視線を向け、警戒心を露わにする。
「『――それは……。あなたは、その液体が何なのか、本当に理解しているのですか?』」
テールスの問いに対して、サボテリーナは吐き捨てるように言う。
「当然だっ! これは、私が育てたサボテンがモンスター化するきっかけとなった物。ある御方から頂いた私の奥の手だ。決勝戦で使う予定だったが仕方がない! 見せてやろう。この私の奥の手を……。巨大化したサボテンダーの恐ろしさをっ!!」
サボテリーナは、体中にバナナが生え動けなくなったサボテンダー4体の口に赤黒い液体を振りかける。
すると、空洞のようなサボテンダーの目に怪しい光が宿る。
そして、サボテンダーの体に生えた棘が地面に向かうと、地中の栄養を吸い取り巨大化していく。
「ふ、ふはははははははっ! これが私のサボテンダー本来の姿だぁぁぁ!」
――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ
水分と栄養を吸い取られ砂漠化する地面。
巨大化したサボテンダー。
突然の出来事に実況はマイクを握りしめる。
『おーっと、これは驚きです! サボテンダーが巨大化してしまいましたぁぁぁぁ!』
実況の解説と共に巨大化していくサボテンダー。そんなサボテンダーの姿を見上げるとテールスはため息を吐く。
「『――なにかと思えば、ただデカくなっただけ……。知っていますか? 最後の手段に巨大化した悪者は絶対に勝てないらしいですよ?』」
「ふん、戯言を! なにが悪者だっ! サボテンダァァァァ! あのクソ生意気な小僧を握り潰してしまえぇぇぇぇ!」
サボテリーナの命令を聞いたサボテンダーがテールスに手を伸ばす。
テールスは、サボテリーナの命令を聞き、手を伸ばすサボテンダーに指先を向けると、静かにパチンと指を弾いた。
テールスの手に持つバナナに視線を向けると、サボテリーナが物欲しそうな表情を浮かべる。
「『――はい。そうですが、それがなにか?』」
「――やはりっ! 実は、私、それに目がなくてですね。もし、よろしければ、1本譲って頂けませんか?」
「『えっ? これを……。ですか?』」
このバナナは闘儀に使用する物。
テールスはバナナの房に視線を向けるとため息を吐く。
「『――まあ、いいでしょう……』」
1本位であれば、無くなった所で影響はない。
そう判断したテールスは、バナナを房から捥ぐと、慈愛の心をもってサボテリーナに手渡した。
「――おお、ありがとうございます!」
サボテリーナは、大喜びでバナナを受け取ると、流れるような動作でそれを足元に置く。そして、膝を上げると思い切りバナナを踏み潰した。
――ブチュ!(バナナの潰れる音)
黄色い皮は弾け、白い果肉が宙を舞う。
あまりに堂々と行われた不遜な行動を前に、バナナを手渡したテールスは思わず呆然とした表情を浮かべる。
「――おっと、これは失礼……。私の不注意で手が滑り、頂いたバナナを足で踏ん付けてしまいました。いや、困った困った……」
そんなテールスの姿を見て、サボテリーナはトボけた表情を浮かべる。
「――おや? どうしました? もしや、キレましたかな? いやはや、最近の若者は短気でいけませんなぁ……」
挑発するように言いながら地面に落ちたバナナを執拗に踏みにじるサボテリーナ。
そんなサボテリーナを見て、テールスは軽く目を閉じ、天を仰ぎ見た。
「『――キレてないですよ。この私をキレさせたら大したものですよ。そんなことより、1つお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?』」
テールスの質問にサボテリーナは余裕の表情を浮かべ返事する。
「ええ、もちろんいいですよ」
「『――ありがとうございます。それでは、1つだけ……。この試合には、あなたも参加されるのですか?』」
テールスの質問に、サボテリーナは残念そうな表情で呟く。
「できることなら参加させて頂きたいものですなぁ……。しかし、その場合、相手方の許可を得なければならないのです」
闘儀の試合は、基本的に1対1で行われる。
例外的に、2人以上での試合も認められているが、それは相手が許可した場合に限られる。
サボテリーナの話を聞き、テールスは微笑を浮かべる。
「『――そうですか。なら、問題ないですね。私は別にどちらでも構いませんよ? 無様な姿を観客に晒すのが怖くないというのであれば、どうぞあなたも試合に参加して下さい……』」
テールスの言葉を聞き、サボテリーナは一瞬、眉間に皺を寄せる。
「――ほぅ。それはそれは……。しかし、私が試合に参加すれば、あなたの勝機はゼロになる。本当によろしいのですかな?」
サボテリーナによる挑発。
テールスは笑顔を浮かべて承諾する。
「『――ええ、もちろんです。あなたが試合に参加した所で私が勝つことに変わりありませんから』」
双方共に満面の笑顔。
すると、会場から割れんばかりの歓声が巻き起こる。
『――おーっと、ヒナタ選手! 余裕の笑みを浮かべ、サボテリーナ選手の試合参加を快諾しましたぁぁぁぁ! 双方共に試合の準備は万端! 果たして、どんな勝負を見せてくれるのでしょうか! お待たせしました。それでは、第二試合、開始ですっ!』
――カーンッ!(ゴングが鳴る音)
すると、闘技場内に試合開始のゴングが鳴り響く。
「いやはや、まさかこんな簡単に許諾して頂けるとは……。頂いたバナナを踏み躙り、挑発した甲斐があったものだ……」
サボテリーナの言葉を聞き、テールスは軽く指を弾く。
「『――おや? あれは挑発のつもりでしたか……。てっきり、神に対する冒涜かと……』」
テールスがそう呟くと、サボテンダーに異変が起きる。
『おーっと、サボテンダー選手! 突然、苦しみだしましたぁぁぁぁ! 一体何があったというのでしょうかぁぁぁぁ!』
「――なにっ⁉︎」
実況を受けサボテリーナが横に視線を向けると、もがき苦しむサボテンダーの姿が目に映る。
『――ッ⁉ サ、サボボボボボボボッ⁇』
「サ、サボテンダー? どうしたというのだ! 一体、何が……⁇」
サボテンダーが突然苦しみ始めたかと思うと、体に亀裂が走り、内側から液体が噴き出す。
――ブシャアアアアッ!(サボテンダーから液体が噴き出る音)
「――なっ!? なにぃぃぃぃ!」
サボテンダーの体から突然、液体が流れ出し、体の中心部から白く干涸びていくのを見て、サボテリーナは警戒心を露わにする。
突然の事態に実況も驚いているようだ。
『――ど、どーした、サボテンダァァァァ!? 試合開始早々、サボテンダー選手の体に亀裂が走り、体から液体が流れ出てきました! その姿は真っ白に燃え尽きた灰の様! 一体、なにがあったというのでしょうかっ!?』
一体、なにが起こったのか理解できず呆然としているサボテリーナに、テールスは指を立てて話しかける。
「『――サボテンダーの体内にオリーブオイルを創造しました。オリーブオイルは、植物にとって非常に有益。害虫を防ぎながら植物に追加の栄養素を供給する効果があります。しかし、適切に使用しないと植物に害を及ぼします。例えば、今、破裂したサボテンダーのようにね……?』」
実際、植物にオリーブオイルを与えた所で破裂することはない。
単に許容量を超えたオリーブオイルを体内の彼方此方に創造されたため、体が破裂したに過ぎない。
しかし、その事を知らないサボテリーナは顔を引き攣らせる。
「くっ……。なんと面妖な……!」
品評会に参加している弟の応援で第1回戦を見ていないサボテリーナは、ヒナタ(テールス)の攻撃方法を知らない。そのため、ヒナタが2回戦に上がって来れたのはマグレであると、そう結論付けていた。
当然だ。そうでなくては、マカロンが誇る剣匠、ティル・ヴィングが血尿で水たまりを作り、脱糞してぶっ倒れるなど、ありえない。
口頭でそう聞いた時でさえ、信じられなかったほどだ。
「――だが、まだまだっ! サボテンダァァァァ! お前の本当の力を見せてやれぇぇぇぇ!」
その瞬間、まだ緑が残るサボテンダーの手足が落ち、落ちた手足が新たなサボテンダーとして再生する。
『――おーっと、サボテンダー選手! 真っ白に燃え尽きた胴体を切り捨て大復活を遂げましたぁぁぁぁ! しかも、4体に増えている! これは、闘儀のルール的に大丈夫なのでしょうかぁぁぁぁ⁉』
そう疑問を呈すると、すぐさま検討が行われ、それが実況に伝えられる。
『――なんと、オッケーだそうです! 試合中に選手が分裂したことがないので難しい判断を強いられましたが、領主様たっての希望で試合継続となりましたぁぁぁぁ! 分裂オッケーのこの試合、果たして、ヒナタ選手に勝ち目があるのでしょうかぁぁぁぁ!』
実況の発言にテールスはため息を吐く。
「『――ふうっ……。私も侮られたものですね。もしや、数が増えれば勝てるとでも思われているのでしょうか? コールドバナナ』」
そう言って指を弾くと、分裂したサボテンダーの体から冷凍バナナが突き出てきた。
「なあっ⁉︎ サ、サボテンダァァァァ⁇」
『おーっと、これは大変だぁぁぁぁ! サボテンダー選手の体からバナナが生えてきました‼︎ これは、中々、ショッキングな光景だぁぁぁぁ!! サボテンダー選手は大丈夫なのでしょうかぁぁぁぁ⁉』
体中からバナナが生えたサボテンダーは、少しの間、バタつくとそのまま動かなくなる。
バナナには、回復薬と同等の効果がある。
今、サボテンダーの置かれた状況は、ナイフ串刺しのまま、傷が塞がった様なもの。バナナはサボテンダーの動きを阻害する形で体から生えている。
「『――安心して下さい。サボテンダーは無事ですよ。少なくとも、その命だけは……。さて、後はあなただけですね……』」
指先を向けながら、そう言うと、サボテリーナは苦い表情を浮かべる。
「ぐっ……⁉ ま、まだだ……まだ、終わらぬよ。ここは、マカロン。ゴブリン戦線の最前線だ。商人ですら多少の武は求められる。故に、まだ私には奥の手が残されているっ! サボテンダァァァァ!!」
そう声を上げると、サボテリーナは内ポケットから赤黒い液体を取り出した。
『――おーっと、サボテリーナ選手っ! 内ポケットから赤黒い液体を取り出しました! 奥の手とは一体、なんなのでしょうかぁぁぁぁ!!』
実況すら知らないサボテリーナの奥の手。
テールスは、サボテリーナが手にする赤黒い液体に視線を向け、警戒心を露わにする。
「『――それは……。あなたは、その液体が何なのか、本当に理解しているのですか?』」
テールスの問いに対して、サボテリーナは吐き捨てるように言う。
「当然だっ! これは、私が育てたサボテンがモンスター化するきっかけとなった物。ある御方から頂いた私の奥の手だ。決勝戦で使う予定だったが仕方がない! 見せてやろう。この私の奥の手を……。巨大化したサボテンダーの恐ろしさをっ!!」
サボテリーナは、体中にバナナが生え動けなくなったサボテンダー4体の口に赤黒い液体を振りかける。
すると、空洞のようなサボテンダーの目に怪しい光が宿る。
そして、サボテンダーの体に生えた棘が地面に向かうと、地中の栄養を吸い取り巨大化していく。
「ふ、ふはははははははっ! これが私のサボテンダー本来の姿だぁぁぁ!」
――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ
水分と栄養を吸い取られ砂漠化する地面。
巨大化したサボテンダー。
突然の出来事に実況はマイクを握りしめる。
『おーっと、これは驚きです! サボテンダーが巨大化してしまいましたぁぁぁぁ!』
実況の解説と共に巨大化していくサボテンダー。そんなサボテンダーの姿を見上げるとテールスはため息を吐く。
「『――なにかと思えば、ただデカくなっただけ……。知っていますか? 最後の手段に巨大化した悪者は絶対に勝てないらしいですよ?』」
「ふん、戯言を! なにが悪者だっ! サボテンダァァァァ! あのクソ生意気な小僧を握り潰してしまえぇぇぇぇ!」
サボテリーナの命令を聞いたサボテンダーがテールスに手を伸ばす。
テールスは、サボテリーナの命令を聞き、手を伸ばすサボテンダーに指先を向けると、静かにパチンと指を弾いた。
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