転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

文字の大きさ
75 / 486
第六章 商業ギルド対立編

第139話 ミクロの情報収集

しおりを挟む
「まずは、ユートピア商会の設立おめでとうございます。ギルド員であれば、お祝いの花を贈らせて頂いたところですが、申し訳ございません。」

 どうやら、ユートピア商会の設立を祝うことができなくて申し訳なく思っている様だ。
 別にその位いいのに、律儀な人である。

「いえいえ、謝られることはありません。無事、商会をオープンさせることができましたし、オープン初日からたくさんの方にご来店頂きました。そのおかげで、初日から白金貨760枚もの売上を上げることができました。お客様には感謝の念に堪えません。」

「白金貨760枚ですかっ……。」

 ミクロさんの頬がひくついている。
 商業ギルドが上げている売上や利益から考えたら微々たるものだろうに。

「先ほど、スラム出身者を雇っているとお聞きいたしましたが、なぜ採用者の中にフェロー王国の市民がいないのでしょうか?」

「フェロー王国の方ですか? 採用試験をしたらスラム出身の方と、他国の方しか残らなかったんですよ。不思議なこともあるものです。ああ、でもフェロー王国の王国民の方も募集していますよ!」

 従業員にフェロー王国出身者がいないことがそんなにおかしいだろうか?
 いや、おかしいか。フェロー王国の王都で従業員を探しているのに、従業員として採用されたのが、フェロー王国以外の出身者だなんて、不思議なこともあるものだ。

 まあ、そのおかげで、スラム出身という優秀な人材を獲得することができたわけだけど、スラム出身というだけで、区別するなんて勿体ないな。文句も言わない。肉体労働も進んでやってくれる。研修でも進んで学びに行っている。こんなに優秀で使い勝手のいい人材が揃っているのになんでスラム出身者を採用しないんだろう? それこそ不思議である。

「そうですか……。ああ、ジュリアが売買契約書を持ってきたようですね。」

 ミクロがそう言うと、パタパタという音を立てて、ジュリアさんが売買契約書を持ってきてくれた。

「悠斗様、こちらが売買契約書となります。この項目にサインをお願いします。」

 悠斗はペンに魔力を込めながらサインをする。

 これは契約を結ぶ際に使われるペンで、魔力を込め使用することで魔力紋を契約書に刻むことができる優れものだ。

 契約書にサインをすると、収納指輪から白金貨を取り出し机に積んでいく。

「それでは契約書と白金貨の枚数を確認させて頂きます。」

 白金貨900枚ともなると、数えるのが大変そうだ。

「……はい。確認させて頂きました。それではこちらが契約書の控えとなります。」

「ありがとうございます。」

 ミクロさんから契約書の控えを受け取ると、そのまま収納指輪に収納していく。

「これでこの土地は悠斗様のものです。他に何か質問はございますか?」

「いえ、こちらからは特にありません。ご対応頂きありがとうございます。」

 これで隣の空き地が手に入った。
 邸宅に戻ったら、早速、迷宮核に魔力を流して、空き地まで迷宮化してしまおう。

 迷宮化さえしてしまえば、数分と掛らず建物を建てることができる。
 今なら大通りを歩いている人も少ないだろうし、帰り次第すぐにやってしまおう。

 そういうと、悠斗は迷宮核に魔力を流すため商業ギルドを後にする。


 悠斗が出ていった後の商業ギルドでは、ギルドマスター室でミクロが頭を抱え悩んでいた。
 悩みの原因は、当然、先ほど来店した元Aランク商人、佐藤悠斗についてである。

 結局、なんでギルドの工作員が採用されなかったのかは分からないままだった。
 探りを入れようと思っていたことをポンポン吐いてくれたのはありがたい。
 しかし、悠斗から吐き出された情報は、ミクロにとってあまりいい情報ではなかった。

 初め、ジュリアから悠斗が訪問しているという一報を聞いたときは、胸が高鳴ったものだ。
 きっと、オープン初日から人が商会を訪れず、泣きを入れに来たのだろうと……。

 それがどうだ? 月給白金貨3枚以上の高給で従業員を集め、1日にして白金貨760枚を稼ぎだすなんて想定外の結果を悠斗の口から聞くことになってしまった。
 揚句の果てには、悠斗邸隣にある空き地を売ってほしいと言ってきた。しかも、新たに50名もの追加募集をかけるらしい。

 商会オープン当日にも関わらずだ。
 さらに福利厚生といったギルドでも採用していないシステムを採用しているらしい。

 羨ましい……いや、なんでもない。

 それに、土地を売る際、『本来、商業ギルド会員であれば、白金貨750枚(約7,500万円)でお売りすることができるのですが……。』と皮肉を言ってみたが、見事にスルーされてしまった。

 しかも、即断である。値引き交渉すらしようとしない。
 これでは、取り付く島もない。

 これは、とんでもない相手を敵に回してしまったかもしれない。
 もちろん、先ほどの話が本当の話しであればという前提ではあるが、おそらく本当のことだろう。

 それに、先の会議で決めた対策が全く働いていない。

 悠斗様の商会の近くの大通りには、複数の武器防具屋や生鮮食品、肉や日用品を扱う商会が多く出店している。
 もちろん支援金のことは、商業ギルドを通じて、すべての商会に通達されたはずだが、一体どうなっているのだろうか?

 まだユートピア商会オープン初日。一週間ほど様子を見ることにしよう。

 ミクロはそう結論付けると、外に見える月に祈りを捧げる。
 これ以上、悠斗様が成功せず商業ギルドに戻ってくれますようにと……。


 ところ変わって悠斗邸では、ウッチーとトッチー監修の元、隣の土地の迷宮化作業を行っている。

 隣を隔てていた塀を、ウッチーとトッチーの【迷宮操作チェンジ】で取り崩し、新たに購入した土地の端から端まで塀を建てていく。
 後は、ウッチーが悠斗の頭に触れて【迷宮操作チェンジ】を発動させれば、あら不思議。

 従業員が50人入居可能なマンションと、倉庫の完成である。

「ウッチーにトッチー! ありがとう! これからまた従業員が50名ほど増えるけど、研修よろしくね! ああ、俺に出来ることがあったら言ってね!」

「「迷宮が発展することこそ、私たちの望みです。これからも、どうかこの迷宮の発展に尽力させて頂ければと思います。」」

 逆にお願いされてしまった。
 ちょっと奉仕精神が過剰じゃないだろうか。

「まあ、ウッチーとトッチー! 頼りにしてるよ。これからもよろしくね!」

 ウッチーとトッチーに自分の思いのたけを打ち明けた悠斗は自室に戻ってゆっくり睡眠をとるのであった。
しおりを挟む
感想 3,253

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。