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第六章 商業ギルド対立編
(閑話) 愚者たちの今(カマ・セイヌーの場合)
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マデイラ王国で新しく見つかった迷宮。
今俺たちは、ギルドマスターの命令によりこの迷宮の調査に来ている。
それに調査といっても、第20階層までの出現モンスターやボスモンスター、罠の有無などを調べるだけ……。
Cランク冒険者兼、ギルドマスター筆頭借金奴隷のカマ・セイヌー様にとって朝飯前の仕事だ。
なにせ同じく借金奴隷となった19名の精鋭冒険者たちと一緒に迷宮の調査に挑んでいるのだから。
そして今、俺たちは第20階層へ続く階段の前で一時の休憩を取っている。
「筆頭借金奴隷のカマ・セイヌー様よ~! 早くメシの準備をしろよ、いつまで俺たちを待たせるんだよ。」
「筆頭借金奴隷様よ~。ボス戦は明日にしてもう休もうぜ。」
「そうだな~、メシの準備が終わったらテントの設営を頼むぜ。筆頭借金奴隷様よ~。」
カマ・セイヌーは奥歯を噛みしめながら精一杯の笑顔を19名の借金奴隷となった冒険者たちに向ける。
「おう! この筆頭借金奴隷様に任せておけッ!」
(チッ!)
カマ・セイヌーは奴らに聞こえないよう舌打ちすると、メシの準備とテントの設営の両方を同時進行で進めていく。
なぜカマ・セイヌーが筆頭借金奴隷と卑下され、同じ借金奴隷にも拘らず雑用をしているのか、それはこの中で一番ギルドランクが低く、ギルドマスターに対する借金を一番抱えているからに他ならない。
何より、監視役であるギルドマスターがここいないからこそ、ここぞとばかりに19人の借金奴隷どもはカマ・セイヌーでこれまでの鬱憤を晴らしていた。
元はといえば、借金奴隷となったのもカマ・セイヌーが佐藤悠斗とかいう餓鬼に喧嘩を売ったのが原因だ。面白がって煽った挙句、借金奴隷にされてしまった彼らの自業自得でもあるのだが……。
カマ・セイヌーがテントを設営し、ギルドから預かった食事を配ると、ワザとらしく食事をぶちまける輩が何人も現れた。
「お~っと、手が滑っちまったぜ。」
「俺もだ。悪いね~筆頭借金奴隷様。」
「優しい優しいカマ・セイヌー様はメシを落とした可哀想な俺たちにちゃ~んと、メシを恵んでくれるんだろ? おまえの分を充ててでもよぉ。なあ、おい。」
クッ、クッ……クソガァァァァァァ!!!
いい加減にしろよ手前等ァ!
これまで耐えに耐えていたカマ・セイヌーも我慢の限界を迎え、ビキビキと額に青筋を立てていく。
しかし、明日はボス戦、ここでキレてしまえばすべてが終わってしまう。
流石に、俺一人でボスを倒すのは難しい。ボスモンスターの脅威度によっては、囮にされてしまうかもしれない。
カマ・セイヌーは青筋を立てながらも、食事を分け与えるためトングとお玉に手を伸ばす。
すると、カマ・セイヌーの腕をつかみそれを止める者が現れる。
カマ・セイヌーが顔を上げると、そこには俺たちの主人、マデイラ王国の冒険者ギルド、ギルドマスターのジョンストンがそこにいた。
「よう、お前ら。ボス戦攻略前に、なにやらご機嫌だな~。」
ジョンストンはカマ・セイヌーの腕を放すと、料理をぶちまけた借金奴隷の元に青筋を立てながら歩いていく。
「お~お~、料理をぶちまけちまって可哀想な奴らだ。」
ジョンストンが借金奴隷たちに冷たい視線を送ると、奴隷たちは言い訳を始めた。
「――ッ。そ、そうなんですよジョンストンさん!」
「俺たちは、手が滑っちまっただけで……。」
「そ、そうなんだよ。なあ、カマ・セ――」
「――食え。」
言葉を遮られた借金奴隷たちは一瞬ポカンとした表情を浮かべる。
「聞こえなかったのか? 食えよ。明日のボス戦に響くだろ? お前らがぶちまけたそのメシ……俺がお前らのことを想い丹精込めて作った食事なんだよ。勿論、食べてくれるよなぁ? ――ァアッ、オイッ!?」
「「「――は、はいィィ!!」」」
彼らの飼主であるマデイラ王国冒険者ギルドのギルドマスター、ジョンストンがそう言うと、料理をぶちまけた借金奴隷たちは、ぶちまけたメシに視線を向け、地面に落ちたメシを口に入れていく。
「いい食いっぷりじゃァねえか! ――んんんッ?」
ジョンストンは、自分が丹精込めて作った食事をぶちまけた箇所に視点を当て、青筋を立てる。
「おいおいおいおいッ! お前らがぶちまけたそのスープ、俺が6時間もかけて作ったスープなんだぜ! まさか飲まねぇなんて言わねぇだろうなぁ!?」
食事をぶちまけた借金奴隷たちは地面に染みたスープの水溜まりに視線を向ける。
「――もちろん、飲んでくれるよなぁ?」
ジョンストンの笑顔が怖い。
ジョンストンのあまりの怖さに食事をぶちまけた借金奴隷たちは、スプーンを地面に突き立て土ごとスープを啜っていく。
「おーおー、そんなにうまいか! いや~お前たちのために食事を作った甲斐があったもんだぜ。これは独り言だが……二度とそんなくだらねぇことをするんじゃねぇぞッ!! カマ・セイヌー! テメェもだッ! なにこいつらの言いなりになっていやがるッ! テメェらは誰も等しく俺の借金奴隷だッ! 自業自得で抱えた借金を返すまでいい気になるんじゃねぇぞッ! テメェらが自分の自尊心を満たすために俺のテメェらに嫌がらせをするならテメェらはもういらねぇ。処刑されるなり、犯罪奴隷になるなり好きにしやがれッ! 分かったなッ!!」
「――あ、兄貴ッ!」
カマ・セイヌーはジョンストンの優しさに触れ、涙を流す。
もう冒険者ギルドに来た奴をいびるのは止めよう……。
カマ・セイヌーを含む借金奴隷たちはこの日を境に、心を入れ替え、借金を返し人権を取り返した後もジョンストンのために忠誠を誓うのであった。
今俺たちは、ギルドマスターの命令によりこの迷宮の調査に来ている。
それに調査といっても、第20階層までの出現モンスターやボスモンスター、罠の有無などを調べるだけ……。
Cランク冒険者兼、ギルドマスター筆頭借金奴隷のカマ・セイヌー様にとって朝飯前の仕事だ。
なにせ同じく借金奴隷となった19名の精鋭冒険者たちと一緒に迷宮の調査に挑んでいるのだから。
そして今、俺たちは第20階層へ続く階段の前で一時の休憩を取っている。
「筆頭借金奴隷のカマ・セイヌー様よ~! 早くメシの準備をしろよ、いつまで俺たちを待たせるんだよ。」
「筆頭借金奴隷様よ~。ボス戦は明日にしてもう休もうぜ。」
「そうだな~、メシの準備が終わったらテントの設営を頼むぜ。筆頭借金奴隷様よ~。」
カマ・セイヌーは奥歯を噛みしめながら精一杯の笑顔を19名の借金奴隷となった冒険者たちに向ける。
「おう! この筆頭借金奴隷様に任せておけッ!」
(チッ!)
カマ・セイヌーは奴らに聞こえないよう舌打ちすると、メシの準備とテントの設営の両方を同時進行で進めていく。
なぜカマ・セイヌーが筆頭借金奴隷と卑下され、同じ借金奴隷にも拘らず雑用をしているのか、それはこの中で一番ギルドランクが低く、ギルドマスターに対する借金を一番抱えているからに他ならない。
何より、監視役であるギルドマスターがここいないからこそ、ここぞとばかりに19人の借金奴隷どもはカマ・セイヌーでこれまでの鬱憤を晴らしていた。
元はといえば、借金奴隷となったのもカマ・セイヌーが佐藤悠斗とかいう餓鬼に喧嘩を売ったのが原因だ。面白がって煽った挙句、借金奴隷にされてしまった彼らの自業自得でもあるのだが……。
カマ・セイヌーがテントを設営し、ギルドから預かった食事を配ると、ワザとらしく食事をぶちまける輩が何人も現れた。
「お~っと、手が滑っちまったぜ。」
「俺もだ。悪いね~筆頭借金奴隷様。」
「優しい優しいカマ・セイヌー様はメシを落とした可哀想な俺たちにちゃ~んと、メシを恵んでくれるんだろ? おまえの分を充ててでもよぉ。なあ、おい。」
クッ、クッ……クソガァァァァァァ!!!
いい加減にしろよ手前等ァ!
これまで耐えに耐えていたカマ・セイヌーも我慢の限界を迎え、ビキビキと額に青筋を立てていく。
しかし、明日はボス戦、ここでキレてしまえばすべてが終わってしまう。
流石に、俺一人でボスを倒すのは難しい。ボスモンスターの脅威度によっては、囮にされてしまうかもしれない。
カマ・セイヌーは青筋を立てながらも、食事を分け与えるためトングとお玉に手を伸ばす。
すると、カマ・セイヌーの腕をつかみそれを止める者が現れる。
カマ・セイヌーが顔を上げると、そこには俺たちの主人、マデイラ王国の冒険者ギルド、ギルドマスターのジョンストンがそこにいた。
「よう、お前ら。ボス戦攻略前に、なにやらご機嫌だな~。」
ジョンストンはカマ・セイヌーの腕を放すと、料理をぶちまけた借金奴隷の元に青筋を立てながら歩いていく。
「お~お~、料理をぶちまけちまって可哀想な奴らだ。」
ジョンストンが借金奴隷たちに冷たい視線を送ると、奴隷たちは言い訳を始めた。
「――ッ。そ、そうなんですよジョンストンさん!」
「俺たちは、手が滑っちまっただけで……。」
「そ、そうなんだよ。なあ、カマ・セ――」
「――食え。」
言葉を遮られた借金奴隷たちは一瞬ポカンとした表情を浮かべる。
「聞こえなかったのか? 食えよ。明日のボス戦に響くだろ? お前らがぶちまけたそのメシ……俺がお前らのことを想い丹精込めて作った食事なんだよ。勿論、食べてくれるよなぁ? ――ァアッ、オイッ!?」
「「「――は、はいィィ!!」」」
彼らの飼主であるマデイラ王国冒険者ギルドのギルドマスター、ジョンストンがそう言うと、料理をぶちまけた借金奴隷たちは、ぶちまけたメシに視線を向け、地面に落ちたメシを口に入れていく。
「いい食いっぷりじゃァねえか! ――んんんッ?」
ジョンストンは、自分が丹精込めて作った食事をぶちまけた箇所に視点を当て、青筋を立てる。
「おいおいおいおいッ! お前らがぶちまけたそのスープ、俺が6時間もかけて作ったスープなんだぜ! まさか飲まねぇなんて言わねぇだろうなぁ!?」
食事をぶちまけた借金奴隷たちは地面に染みたスープの水溜まりに視線を向ける。
「――もちろん、飲んでくれるよなぁ?」
ジョンストンの笑顔が怖い。
ジョンストンのあまりの怖さに食事をぶちまけた借金奴隷たちは、スプーンを地面に突き立て土ごとスープを啜っていく。
「おーおー、そんなにうまいか! いや~お前たちのために食事を作った甲斐があったもんだぜ。これは独り言だが……二度とそんなくだらねぇことをするんじゃねぇぞッ!! カマ・セイヌー! テメェもだッ! なにこいつらの言いなりになっていやがるッ! テメェらは誰も等しく俺の借金奴隷だッ! 自業自得で抱えた借金を返すまでいい気になるんじゃねぇぞッ! テメェらが自分の自尊心を満たすために俺のテメェらに嫌がらせをするならテメェらはもういらねぇ。処刑されるなり、犯罪奴隷になるなり好きにしやがれッ! 分かったなッ!!」
「――あ、兄貴ッ!」
カマ・セイヌーはジョンストンの優しさに触れ、涙を流す。
もう冒険者ギルドに来た奴をいびるのは止めよう……。
カマ・セイヌーを含む借金奴隷たちはこの日を境に、心を入れ替え、借金を返し人権を取り返した後もジョンストンのために忠誠を誓うのであった。
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