107 / 486
第七章 教会編
第167話 司祭マリオの商会訪問
しおりを挟む
大司教ソテルの質問に何も答えられずにいると、今度は身体の至る所が泡立ってきた。
「だ、大司教様! 大司教ソテル様お止めください! どうか、どうか……ッ!」
私が慌ててそう叫ぶと、身体中の泡立ちが止まる。
そして、私に向けていた手のひらを降ろし、大司教ソテルは再び問いかける。
「それでマリオ司祭。あなたはこの状況を作り出した商会に何をしますか?」
私は頭をフル回転させて考え込む。
どうすればいい、本当にどうすればいい!?
聖属性魔法が付与された魔道具があるなら買い取ればいい。
しかし、数十点もの魔道具を購入するためには、教区教会の持つ資金では到底足りない。
早く回答をしなければ、大司教様の力によって、また身体中を泡立たされてしまう。
その危機感から私は、ふと頭に浮かんだことを口にする。
「ま、まずはその商会に聖属性魔法の付与された魔道具を聖モンテ教会に喜捨するよう勧め、万能薬のレシピについては廃棄するよう求めるのはいかがでしょうか。」
その回答を聞いたソテル大司教は私に冷めた視線を向ける。
「それで、その商会が聖属性魔法の付与された魔道具を喜捨せず、万能薬のレシピの廃棄を拒んだ場合、どのように行動しますか?」
「その時はその商会主を異端審問にかけようと思います。」
そうだ、それがいい。なんで思いつかなかったんだ。
ソテル大司教のプレッシャーに圧され、思ったことをそのまま口にしてしまったが妙案のように思えてくる。
「そう。異端審問ですか。それはいい方法です。聖属性魔法の付与された魔道具を販売し、あまつさえ万能薬のレシピまで流出させるなどその商会主はまさしく異端。私の教区から異端者が出ることは嘆かわしい限りではありますが仕方がありません。異端は根絶せねばならない世界に湧いた膿。膿は取り除かなくてはなりません。ああ、素晴らしい。とても素晴らしい回答でした。」
その言葉に私はホッとした表情を浮かべると、ソテル大司教は私に手を翳し回復の呪文を唱える。
「完全治癒」
するとボコボコに泡立っていた私の身体に光が宿り、泡立ちを癒していく。
「それではマリオ司祭。貴方にすべてを任せます。異端者に神の鉄槌を下すのです。それではお行きなさい。貴方に神からの祝福があらんことを。」
私は十字を切り立ち上がると、「失礼します。」と呟き教会を後にした。
失敗は許されない。
私は、早速、聖属性魔法が付与された魔道具と万能薬のレシピを売るユートピア商会に赴くと、商会主を呼ぶよう従業員に声をかける。
「すいません。とても大切な話がありますので、商会主の方を呼んで頂いてもよろしいでしょうか?」
従業員は私の姿を見て、一瞬、苦々しい表情を浮かべると「わかりました。中でお待ちください。」と呟き、ユートピア商会内に入るよう案内される。
しかし、従業員に言われるままにユートピア商会の扉を潜ろうとするも、まるで、見えない壁でもあるかのように商会内に一歩たりとも入ることができなかった。
「すいません。何故か入ることが出来ないのですが?」
私がそう呟くと、商会内に入ることが出来ないことを確認した従業員は、すぐさま顔色を変え、毅然とした態度で「お客様ではないようですね。どうぞ気を付けてお帰り下さい。」と呟き、去ろうとする。
私は慌てて従業員に向かって言葉を投げかける。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 私は聖モンテ教会の司祭マリオと申します。本日は、商会主様に大切な話をする為、こちらに足を運びました。このお話しは商会主様の今後の人生がかかった大切な話となっております。私はこちらでお待ちしておりますので、商会主様にお話がしたい旨を伝えて頂けますでしょうか。」
すると私の熱意が伝わったのか、少し困った顔をした後「わかりました。少々お待ちください。」と呟き、商会内に入っていく。
暫くすると、商会内から先ほどの従業員とは違う子供が出てくると、私に向かって声をかけてきた。
「失礼ですが、聖モンテ教会の司祭マリオ様でしょうか。」
「はい。私は聖モンテ教会の司祭マリオと申します。」
「どうもご丁寧にありがとうございます。私は悠斗と申します。会頭よりお言葉を預かってまいりました。大変申し訳ございませんが、会頭は忙しく話をする時間は取れないないそうです。」
まさかの回答に私は驚きの声を上げる。
「なっ! 商会主の今後の人生がかかった大切な話をしようと言うのに忙しいですと!?」
こんなにも軽んじられたのは初めてだ。
ここの商会主は、今後の人生と、仕事のどちらが大切かまるで分っていない。
「はい。その通りです。ただ、商会内で話し合いをする場合、その限りではないと申しております。今後の人生がかかった大切な話とのことですが、そのお話はどうぞそちらの扉を潜り直接会頭へとお話し下さい。商会内に入り従業員に尋ねることですぐに話し合いができるよう手配しておきます故、それでは失礼いたします。」
それだけ話すと、その子供はペコリと頭を下げると、そのまま商会内に入っていた。
「だ、大司教様! 大司教ソテル様お止めください! どうか、どうか……ッ!」
私が慌ててそう叫ぶと、身体中の泡立ちが止まる。
そして、私に向けていた手のひらを降ろし、大司教ソテルは再び問いかける。
「それでマリオ司祭。あなたはこの状況を作り出した商会に何をしますか?」
私は頭をフル回転させて考え込む。
どうすればいい、本当にどうすればいい!?
聖属性魔法が付与された魔道具があるなら買い取ればいい。
しかし、数十点もの魔道具を購入するためには、教区教会の持つ資金では到底足りない。
早く回答をしなければ、大司教様の力によって、また身体中を泡立たされてしまう。
その危機感から私は、ふと頭に浮かんだことを口にする。
「ま、まずはその商会に聖属性魔法の付与された魔道具を聖モンテ教会に喜捨するよう勧め、万能薬のレシピについては廃棄するよう求めるのはいかがでしょうか。」
その回答を聞いたソテル大司教は私に冷めた視線を向ける。
「それで、その商会が聖属性魔法の付与された魔道具を喜捨せず、万能薬のレシピの廃棄を拒んだ場合、どのように行動しますか?」
「その時はその商会主を異端審問にかけようと思います。」
そうだ、それがいい。なんで思いつかなかったんだ。
ソテル大司教のプレッシャーに圧され、思ったことをそのまま口にしてしまったが妙案のように思えてくる。
「そう。異端審問ですか。それはいい方法です。聖属性魔法の付与された魔道具を販売し、あまつさえ万能薬のレシピまで流出させるなどその商会主はまさしく異端。私の教区から異端者が出ることは嘆かわしい限りではありますが仕方がありません。異端は根絶せねばならない世界に湧いた膿。膿は取り除かなくてはなりません。ああ、素晴らしい。とても素晴らしい回答でした。」
その言葉に私はホッとした表情を浮かべると、ソテル大司教は私に手を翳し回復の呪文を唱える。
「完全治癒」
するとボコボコに泡立っていた私の身体に光が宿り、泡立ちを癒していく。
「それではマリオ司祭。貴方にすべてを任せます。異端者に神の鉄槌を下すのです。それではお行きなさい。貴方に神からの祝福があらんことを。」
私は十字を切り立ち上がると、「失礼します。」と呟き教会を後にした。
失敗は許されない。
私は、早速、聖属性魔法が付与された魔道具と万能薬のレシピを売るユートピア商会に赴くと、商会主を呼ぶよう従業員に声をかける。
「すいません。とても大切な話がありますので、商会主の方を呼んで頂いてもよろしいでしょうか?」
従業員は私の姿を見て、一瞬、苦々しい表情を浮かべると「わかりました。中でお待ちください。」と呟き、ユートピア商会内に入るよう案内される。
しかし、従業員に言われるままにユートピア商会の扉を潜ろうとするも、まるで、見えない壁でもあるかのように商会内に一歩たりとも入ることができなかった。
「すいません。何故か入ることが出来ないのですが?」
私がそう呟くと、商会内に入ることが出来ないことを確認した従業員は、すぐさま顔色を変え、毅然とした態度で「お客様ではないようですね。どうぞ気を付けてお帰り下さい。」と呟き、去ろうとする。
私は慌てて従業員に向かって言葉を投げかける。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 私は聖モンテ教会の司祭マリオと申します。本日は、商会主様に大切な話をする為、こちらに足を運びました。このお話しは商会主様の今後の人生がかかった大切な話となっております。私はこちらでお待ちしておりますので、商会主様にお話がしたい旨を伝えて頂けますでしょうか。」
すると私の熱意が伝わったのか、少し困った顔をした後「わかりました。少々お待ちください。」と呟き、商会内に入っていく。
暫くすると、商会内から先ほどの従業員とは違う子供が出てくると、私に向かって声をかけてきた。
「失礼ですが、聖モンテ教会の司祭マリオ様でしょうか。」
「はい。私は聖モンテ教会の司祭マリオと申します。」
「どうもご丁寧にありがとうございます。私は悠斗と申します。会頭よりお言葉を預かってまいりました。大変申し訳ございませんが、会頭は忙しく話をする時間は取れないないそうです。」
まさかの回答に私は驚きの声を上げる。
「なっ! 商会主の今後の人生がかかった大切な話をしようと言うのに忙しいですと!?」
こんなにも軽んじられたのは初めてだ。
ここの商会主は、今後の人生と、仕事のどちらが大切かまるで分っていない。
「はい。その通りです。ただ、商会内で話し合いをする場合、その限りではないと申しております。今後の人生がかかった大切な話とのことですが、そのお話はどうぞそちらの扉を潜り直接会頭へとお話し下さい。商会内に入り従業員に尋ねることですぐに話し合いができるよう手配しておきます故、それでは失礼いたします。」
それだけ話すと、その子供はペコリと頭を下げると、そのまま商会内に入っていた。
19
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる
グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。
『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。
2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。
主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。