転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

文字の大きさ
112 / 486
第七章 教会編

第172話 きつ過ぎるノルマ

しおりを挟む
「そう言えば、うちの商会は聖モンテ教会から喜捨の強要や神符押売にあったことがないけど、どうしてだろ?」

 ユートピア商会のバックヤードで指輪に聖属性魔法を付与していると、ふと雑念が湧いてきた。

 定期テストを直前に控え、勉強に専念しなければならないと思っているのに、なぜか掃除や整理整頓がしたくなる。これを心理学では『先延ばし行動』と呼ばれているらしい。

 今の俺の心理はそれに似ているのかもしれない。

 目の前には、私の商会に納める予定の聖属性魔法が付与された魔道具と、一日のノルマが張り出されていた。

 私の商会納品用の魔道具:一日当たり100個(レシピ付き)
 ユートピア商会販売用の魔道具:一日当たり20個(レシピ付き)
 ユートピア商会販売用の家具、その他:一種類当たり5個

 半ば思い付きで販売することになった聖属性魔法が付与された魔道具と万能薬のレシピ。
 それが思いがけないほどの大反響を呼んでいる。なにせ、今まで教会だけが握っていた万能薬のレシピが、万能薬を作るのに必要となる聖属性魔法ごと販売されているのだ。

 定価は白金貨50枚(約500万円)と高めの設定になっているにも拘らず、私の商会からは一日当たり100個もの魔道具を注文される。
 この魔道具の販売だけで、一日当たり白金貨5,000枚(約5億円)ものお金が動いている計算だ。
 実際、マスカットさんには、お友達価格……いや、知り合い価格で定価の50%ほどで販売しているが、それでも月換算で白金貨75,000枚(約75億円)をこの魔道具だけで稼ぎだしている。
 しかも、付与する指輪も土属性魔法で作ったものなので無料。
 実質、ほぼ100%に近い利益を得ている。

 しかし、それとこれとは話が別だ。
 ユートピア商会で販売している家具や商品の作成に加え、私の商会納品用の魔道具を毎日100個も作成するのは骨が折れる。

 ただでさえ商品を作るのに魔力を使いヘロヘロなのに、そこに加えて100個も指輪に聖属性魔法を付与しなければならない。
 自分でマスカットさんに勧めておいてなんだけど、今すぐにでもすべてを放り投げたい気分だ。

 というより、教会に目を付けられたくないからポーションの販売は停止にしようとか言って、実際、取扱いを中止したくせに、聖属性魔法が付与された魔道具と万能薬のレシピをばら撒いていたらそれこそ本末転倒な気がしてきた。

 ……まあ提案したのは俺なんだけど。

 それにもう聖モンテ教会からは目を付けられている。
 私の商会の元にも、聖モンテ教会の司祭マリオが現れたそうだ。
 まあ新しい大司教が就任して以降、喜捨の強要や神符押売が横行しているためか、聖モンテ教会の評判は悪く。冒険者や民衆から石を投げられ逃げ帰っていったそうだけど……。

 俺が石を投げられ私の商会から逃げ去っていくマリオの姿を想像していると、初めに呟いた言葉に対する回答が返ってくる。

「それは先日来たあの司祭様のように、ユートピア商会に入ることが出来なかったためですよ。」

 気付けば俺の後ろに、カイロくんの母親トリアさんの姿があった。
 どうやら気分転換にと飲み物を持ってきてくれたようだ。

 俺はトリアさんからコップを受け取ると、飲み物に口をつける。
 トリアさんが持ってきてくれたのはハーブティーのようだ。
 なんとなく目がシャキッとしてきた。

「実はユートピア商会開店当時から聖モンテ教会の門徒の方々から悠斗様と面会を希望する声が多数よせられておりました。」

 初耳である。そういうことは早く教えてほしい。

「ただ大司教様が変わられてから、喜捨を強要するようになったと聞いておりましたので、従業員の総意として悠斗様に会わせないようにしていたのですが、まさか司祭様が直接こちらに来られるとは思ってもみなかったものでして……。」

 今まで喜捨を求めに来ていた人たちは聖モンテ教会の修道士だったようだ。
 その方々全員がユートピア商会の扉を潜れないとは……そんなんで大丈夫だろうか?

「ああ、私たちの信じる神はだけです。聖モンテ教会の神様に祈るなんてことは致しませんのでご安心ください。」

 急に話の方向が変わった!?
 信教の話しなんてしていたっけ?
 まあ信教の自由は日本国憲法第20条で定められている。
 まあこの世界ウェークには関係ないけど、信教は自由なんだから好きにしてほしい。

「え~っと、なんのことだか分からないけど……うん。信教は自由なんだから好きにすればいいと思うよ? それとこれありがとう。」

 俺はハーブティーを口に含むとゆっくり飲み込んでいく。
 心なしか気分が落ち着いてきたような気がする。

「でも、今後は何かあったらちゃんと報告すること。トリアさんやカイロくんたちに何かあってからじゃ遅いからね。」

 俺にも当然できることと、できないことがある。
 あの時はどうにかなったけど、天使に攫われてしまったフェイの時はひやりと肝を冷やされた。
 あの時のことを教訓に、子供たち3人にスキルブックを渡し、ユニークスキルを身に着けさせたけどそれでもまだまだ心配は尽きない。今は影精霊を一人につき10体付けるようにしている。
 ユートピア商会の従業員たちも同様だ。

 なにかが起こってからでは遅いのである。

「承知いたしました。」

 トリアさんはそう呟くと、何故か嬉しそうに笑みを浮かべバックヤードから去って行った。
しおりを挟む
感想 3,253

あなたにおすすめの小説

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。