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第七章 教会編
第174話 異端審問官に対する対処②
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「異端審問官はどの位力があるのでしょうか?」
「うん? 異端審問官の力か、そうだな……。異端審問官は、異端に陥った民衆の魂の犯罪を断罪し、その者を正統信仰へと復帰させる者たちのことをいう。そして異端審問は、異端審問官立会いの元行われるとされている。つまり、異端者と異端審問官さえ揃っていれば、その場で異端審問が行われる可能性が高い。異端者を断罪せねばならぬのだ。当然、高い戦闘訓練も受けているだろう。」
う~ん。曖昧過ぎて異端審問官の力の度合いが分からない。
高い戦闘訓練か……とりあえず、影精霊を10体位付けておけば大丈夫かな?
いや、でもフェイが攫われた時は、影精霊を3体付けていたにも拘らず、たった1体の天使にやられてしまった。それに複数の異端審問官がマスカットさんたちを襲う可能性もある。ここは万全に備えて、マスカットさんに50体、私の商会の従業員さんたちに20体ずつ影精霊を付けておこう。
これなら、一度に十数人に囲まれない限り問題ないはずだ。
考えがまとまった俺は、マスカットさんに声をかける。
「わかりました。それではマスカットさんに50体、従業員の皆さんには20体の影精霊を護衛に付けます。影精霊は強いですから、それだけ付けていれば護衛には十分でしょう。天使クラスの敵でない限り、問題ないはずです。」
あのおっさん天使は、少なからず影精霊3体を屠り、フェイを攫う位の力を持っていた。
用心するに越したことはない。
「影精霊? 天使クラス? 悠斗、お主は何を言っているのだ? そういえば、マデイラとアゾレスの戦争に天使が舞い降りたと聞いたがあれは何かの比喩表現ではなかったのか……?」
そう言えば、マスカットさんには影精霊を見せたことがなかった。
それにマデイラ王国とアゾレス王国との戦争で顕れた天使のことを詳しくは知らないようだ。
だとしたら天使クラスという言葉を出したのは拙かったかもしれない。
「まあ、その話は置いておきましょう。大事なのは、異端審問官からどうやって身を守るかについてです。」
俺は収納指輪から数十個の魔石を取り出すと、魔石それぞれに影精霊を20体ずつ付与していく。
「私の商会の従業員の皆さんには、こちらの魔石を肌身離さず携帯するようお伝えください。この魔石には影精霊が付与されています。持ってさえいれば、影精霊が危険から守ってくれますので……そしてマスカットさんには影精霊を直接付与します。」
俺はマスカットさんに触れると、50体の影精霊を付与していく。
「これでよし……これで異端審問官がマスカットさんに危害を加えようとしても大丈夫なはずです。異端審問官がどの位の力を持っているかイメージできなかったので、とりあえず50体の影精霊を付与しました。普通に冒険者を護衛につけるよりかはマシなはずです。攻撃をされたら自動で防御と敵のせん滅をしてくれると思います。」
「自動で防御と敵のせん滅……!? う、うむ。感謝する。」
あれっ? なんだかマスカットさんが若干引いているような……。
まあそんなはずないか、きっと俺の気のせいだろう。
「そろそろ着くようだぞ。」
そうこうしている内に、冒険者ギルドに近付いてきた。
馬車が冒険者ギルドから少し離れたところに止まると、御者さんが馬車の扉を開ける。
「よし、悠斗よ。それでは行くぞ。」
「は、はい。」
俺とマスカットは馬車を降りると、冒険者ギルドに入っていく。
ギルドの中に入ると、王都の冒険者ギルドは多くの人で賑わっていた。
マスカットは、受付に並ぶこともなくツカツカ歩き、ギルドマスター室のある二階の階段を上がっていく。
「えっ、マスカットさん。受付を通さずギルドマスター室に直接行っても大丈夫なんですか!?」
「冒険者ギルドのギルドマスター、バルトからは直接来るよう言われている。問題ない。」
マスカットはギルドマスター室の扉をノックし、返事が返ってくるのを待ち入室する。
「おお、マスカット会頭。お待ちしておりました。私はフェロー王国王都支部のギルドマスター、バルトと申します。馬車に揺られお疲れでしょう。そちらのソファーへお座り下さい。」
お言葉に甘え俺とマスカットがソファーに腰を下ろすと、バルトが呟く。
「さて、早速ですがなにやら重要な報告があるとか……一体何があったのですかな?」
「うむ、このAランク冒険者である悠斗が、スヴロイ領近くに新しい迷宮を発見した。迷宮内に入っていないので明確なことは言えないが、50階層から成る迷宮だ。スヴロイ領を出て近くの森の最奥にその迷宮がある。」
「なっ!? 新しい迷宮ですと!?」
「はい。その通りです。一ヶ月ほど前に迷宮を発見しました。ああ、その際、森にいたモンスターは殲滅しておりますので、ご安心ください。」
「一ヶ月前だと!? なぜそれを冒険者ギルドに報告しなかった。」
会話を重ねる度、バルトの敬語が剥がれていく。
それにとてもじゃないが、その内、その迷宮を攻略しようと思っていたとは言えない。偶々、マスカットさんが困っているようだったので情報を流したが、普段なら絶対にしない行為である。
「俺にも、するべき事がございまして、余りの目まぐるしさに失念しておりました。申し訳ございません。」
その言葉にマスカットがジロリと視線を向けてくる。
本当は一ヶ月までどころか数ヶ月前の出来事だったりするんだけど、発見した日以外嘘は言っていない。子供たちの入学や商業ギルドとの対立など、やることが沢山あり過ぎて後回しにしていただけだ。
「まあ、本人も反省している。許してやってほしい。それに悠斗のおかげで新しい迷宮が見つかったのだ。良かったではないか。」
「そうだ……ですね。わかりました。」
バルトはそう呟くと、テーブルに地図を広げる。
「悠斗と言ったな……この場所にスヴロイ領がある。発見した迷宮はどの辺りか指をさしてくれ。」
俺は、スヴロイ領から少し離れた森の最深部を指すと、バルトは「こんな所にあったのか……。」と呟いた。
「バルトよ。冒険者ギルドのギルドマスターとして、するべき事はわかるな?」
「もちろんです。実際に迷宮を確認してからにはなりますが、冒険者ギルドと致しましては、そちらのAランク冒険者、悠斗様をSランクに昇級させて頂きたいと考えております。今は私の独断ではありますが、他領のギルドマスターにも掛け合い、必ずやSランクに昇級させて見せます。」
その言葉に、マスカットが満足そうな表情を浮かべると、俺に視線を向けて呟いた。
「これで商業ギルド、冒険者ギルド共にSランクになる訳だ。史上初の快挙を目に納めることが出来て嬉しく思う。これからもよろしく頼むぞ。」
俺は暫定ではあるが商業ギルド、冒険者ギルドの二つのギルドでSランク称号を貰う偉業を達成することになった。
「うん? 異端審問官の力か、そうだな……。異端審問官は、異端に陥った民衆の魂の犯罪を断罪し、その者を正統信仰へと復帰させる者たちのことをいう。そして異端審問は、異端審問官立会いの元行われるとされている。つまり、異端者と異端審問官さえ揃っていれば、その場で異端審問が行われる可能性が高い。異端者を断罪せねばならぬのだ。当然、高い戦闘訓練も受けているだろう。」
う~ん。曖昧過ぎて異端審問官の力の度合いが分からない。
高い戦闘訓練か……とりあえず、影精霊を10体位付けておけば大丈夫かな?
いや、でもフェイが攫われた時は、影精霊を3体付けていたにも拘らず、たった1体の天使にやられてしまった。それに複数の異端審問官がマスカットさんたちを襲う可能性もある。ここは万全に備えて、マスカットさんに50体、私の商会の従業員さんたちに20体ずつ影精霊を付けておこう。
これなら、一度に十数人に囲まれない限り問題ないはずだ。
考えがまとまった俺は、マスカットさんに声をかける。
「わかりました。それではマスカットさんに50体、従業員の皆さんには20体の影精霊を護衛に付けます。影精霊は強いですから、それだけ付けていれば護衛には十分でしょう。天使クラスの敵でない限り、問題ないはずです。」
あのおっさん天使は、少なからず影精霊3体を屠り、フェイを攫う位の力を持っていた。
用心するに越したことはない。
「影精霊? 天使クラス? 悠斗、お主は何を言っているのだ? そういえば、マデイラとアゾレスの戦争に天使が舞い降りたと聞いたがあれは何かの比喩表現ではなかったのか……?」
そう言えば、マスカットさんには影精霊を見せたことがなかった。
それにマデイラ王国とアゾレス王国との戦争で顕れた天使のことを詳しくは知らないようだ。
だとしたら天使クラスという言葉を出したのは拙かったかもしれない。
「まあ、その話は置いておきましょう。大事なのは、異端審問官からどうやって身を守るかについてです。」
俺は収納指輪から数十個の魔石を取り出すと、魔石それぞれに影精霊を20体ずつ付与していく。
「私の商会の従業員の皆さんには、こちらの魔石を肌身離さず携帯するようお伝えください。この魔石には影精霊が付与されています。持ってさえいれば、影精霊が危険から守ってくれますので……そしてマスカットさんには影精霊を直接付与します。」
俺はマスカットさんに触れると、50体の影精霊を付与していく。
「これでよし……これで異端審問官がマスカットさんに危害を加えようとしても大丈夫なはずです。異端審問官がどの位の力を持っているかイメージできなかったので、とりあえず50体の影精霊を付与しました。普通に冒険者を護衛につけるよりかはマシなはずです。攻撃をされたら自動で防御と敵のせん滅をしてくれると思います。」
「自動で防御と敵のせん滅……!? う、うむ。感謝する。」
あれっ? なんだかマスカットさんが若干引いているような……。
まあそんなはずないか、きっと俺の気のせいだろう。
「そろそろ着くようだぞ。」
そうこうしている内に、冒険者ギルドに近付いてきた。
馬車が冒険者ギルドから少し離れたところに止まると、御者さんが馬車の扉を開ける。
「よし、悠斗よ。それでは行くぞ。」
「は、はい。」
俺とマスカットは馬車を降りると、冒険者ギルドに入っていく。
ギルドの中に入ると、王都の冒険者ギルドは多くの人で賑わっていた。
マスカットは、受付に並ぶこともなくツカツカ歩き、ギルドマスター室のある二階の階段を上がっていく。
「えっ、マスカットさん。受付を通さずギルドマスター室に直接行っても大丈夫なんですか!?」
「冒険者ギルドのギルドマスター、バルトからは直接来るよう言われている。問題ない。」
マスカットはギルドマスター室の扉をノックし、返事が返ってくるのを待ち入室する。
「おお、マスカット会頭。お待ちしておりました。私はフェロー王国王都支部のギルドマスター、バルトと申します。馬車に揺られお疲れでしょう。そちらのソファーへお座り下さい。」
お言葉に甘え俺とマスカットがソファーに腰を下ろすと、バルトが呟く。
「さて、早速ですがなにやら重要な報告があるとか……一体何があったのですかな?」
「うむ、このAランク冒険者である悠斗が、スヴロイ領近くに新しい迷宮を発見した。迷宮内に入っていないので明確なことは言えないが、50階層から成る迷宮だ。スヴロイ領を出て近くの森の最奥にその迷宮がある。」
「なっ!? 新しい迷宮ですと!?」
「はい。その通りです。一ヶ月ほど前に迷宮を発見しました。ああ、その際、森にいたモンスターは殲滅しておりますので、ご安心ください。」
「一ヶ月前だと!? なぜそれを冒険者ギルドに報告しなかった。」
会話を重ねる度、バルトの敬語が剥がれていく。
それにとてもじゃないが、その内、その迷宮を攻略しようと思っていたとは言えない。偶々、マスカットさんが困っているようだったので情報を流したが、普段なら絶対にしない行為である。
「俺にも、するべき事がございまして、余りの目まぐるしさに失念しておりました。申し訳ございません。」
その言葉にマスカットがジロリと視線を向けてくる。
本当は一ヶ月までどころか数ヶ月前の出来事だったりするんだけど、発見した日以外嘘は言っていない。子供たちの入学や商業ギルドとの対立など、やることが沢山あり過ぎて後回しにしていただけだ。
「まあ、本人も反省している。許してやってほしい。それに悠斗のおかげで新しい迷宮が見つかったのだ。良かったではないか。」
「そうだ……ですね。わかりました。」
バルトはそう呟くと、テーブルに地図を広げる。
「悠斗と言ったな……この場所にスヴロイ領がある。発見した迷宮はどの辺りか指をさしてくれ。」
俺は、スヴロイ領から少し離れた森の最深部を指すと、バルトは「こんな所にあったのか……。」と呟いた。
「バルトよ。冒険者ギルドのギルドマスターとして、するべき事はわかるな?」
「もちろんです。実際に迷宮を確認してからにはなりますが、冒険者ギルドと致しましては、そちらのAランク冒険者、悠斗様をSランクに昇級させて頂きたいと考えております。今は私の独断ではありますが、他領のギルドマスターにも掛け合い、必ずやSランクに昇級させて見せます。」
その言葉に、マスカットが満足そうな表情を浮かべると、俺に視線を向けて呟いた。
「これで商業ギルド、冒険者ギルド共にSランクになる訳だ。史上初の快挙を目に納めることが出来て嬉しく思う。これからもよろしく頼むぞ。」
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