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第八章 フェロー王国動乱編
第215話 ケァルソイ迷宮①
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王都ストレイモイが混乱している頃、従業員達と共にエストゥロイ領に慰安旅行に来ている悠斗達一行は観光がてらケァルソイ迷宮にアタックしていた。
「ここがエストゥロイ領の誇る畜産迷宮、ケァルソイ迷宮か」
ケァルソイ迷宮の第1階層。
そこには一面の牧草地が広がっていた。
ミノタウルスとは違う種類の牛型モンスターが牧草を食べながら欠伸をしている。
迷宮の中とは思えない程の長閑さだ。
それもその筈、エストゥロイ領のケァルソイ迷宮では、比較的安全な第1階層から第5階層にテイマーというモンスター専門職を置き管理している。
その為、有事を除き、冒険者がモンスターを倒して良いのは第6階層からとなる。
俺は従業員達と共に第6階層に続く階段まで走破すると、ゆっくりとした足取りで階段を降りて行く。
そして第6階層に辿り着くと、俺はつい感嘆の声を上げた。
ケァルソイ迷宮の第6階層。
そこには見渡す限りの果樹が広がっており、樹々を見渡すと、あちこちに果物や堅果が生っているのが分かる。
俺は近くになっていたドラゴンフルーツの様な果物を手に取ると、〔影刃〕で真っ二つに割り何の躊躇いもなく口に運んだ。
すると元の世界で食べたようなサクサクとした食感とサッパリとした甘さが口いっぱいに広がる。
「ゆ、悠斗様……。だ、大丈夫ですか?」
「うん? 全然大丈夫だけど……。ラオスさんも食べる?」
「い、いえ。俺は遠慮します」
何故だろう?
こんなにも美味しいのに……。
俺は不思議に思いながら、ドラゴンフルーツモドキを食べ終えると、手を生活魔法の〔洗浄〕で洗う。
「悠斗様は凄いですね。あれほど毒々しい外見のモノを口にするなんて……」
なるほど、確かにドラゴンフルーツモドキは強烈な外見をしている。
初見でこれを食べようと思う人はいないかもしれない。
「ま、まあ。これと似た様な外見の果物を依然食べた事があったからね」
「しかし、お気を付け下さい。ここは迷宮です。あの様に警告色を放つ物を食べてはなりません」
「わ、わかったよ。心配かけてごめんね。それじゃあ、先に進もうか」
俺が念の為〔影探知〕を発動すると果樹の中にモンスターの反応を捉える。
動きがない事から恐らく果物や木に擬態をしたモンスターなのだろう。
「この先モンスターが要るみたいだからみんな気を付けて! モンスターは果物や木に擬態しているみたい!」
「大丈夫、大丈夫! わかっていますよ」
ラオスさんがそう言うと、果物や木に擬態したモンスターに刃を立てながら進んでいく。
随分と手馴れている様だ。
そういえば、何人かの従業員達はエストゥロイ領に来た初日から迷宮に遊びに行っていた。
ラオスさんもその内の一人なのだろう。
しかし……。従業員達も強くなったものだ。
的確にモンスターの急所を突いては、次の攻撃に移る動作の途中で倒したモンスターを収納指輪に収納していく。
あんな洗練された動き、少なくとも今の俺にはできない。俺に出来る事といえば、〔影探知〕でモンスターを捉えて〔影収納〕に収納する位のものだ。
洗練された動きとはだいぶ程遠い。
俺はラオスさん達の洗練された動きに拍手を送る。
すると〔影探知〕に大きめのモンスターが引っかかる。
「みんな! 前からでかいモンスターが来るよッ!」
俺の声を聞いたラオスさん達が、正面を向くと四足歩行のミノタウルスが現れる。
「ぐおぉぉぉ!」
なんというか……。出て来たそいつは元の世界に居そうな茶色の毛並みの牛だった。
そして、その牛は俺に視線を向けると、ラオスさん達を無視して一心不乱に向かってくる。
「悠斗様ッ!」
「大丈夫! 〔影収納〕っと」
俺は、俺とミノタウルスとの間に影を広げると、突進してくるミノタウロスを〔影収納〕に収納していく。
本当はラオスさん達の様にスマートにモンスターを倒したい所だけど、ナイフや剣を持ち慣れていない俺には難しい。咄嗟の判断を迫られると、つい〔影収納〕を使ってしまう。
「いや~。本当はラオスさん達みたいにモンスターをスマートに倒したかったけど、やっぱり難しいね。今度皆に教えて貰おうかな?」
俺のその呟きに何故かラオスさん達がざわつく。
「い、いえ、ミノタウロスをそんな簡単に倒してしまう悠斗様に教える事は何もありません」
「全くです。悠斗様に何かを教える等恐れ多い」
俺の囲う従業員達から何とも言えない寂しい回答が返ってきた。
「そ、そう?」
「「そうです!」」
そ、そうですか……。
俺は少し寂しい思いをしながら次の階層へと向かう事にした。
ケァルソイ迷宮第7階層も第6階層と同じく、見渡す限り果樹が広がっている。
ただ、この階層は他の階層と比べて一味違うようだ。
「ゆ、悠斗様! そちらは崖です!」
「そ、そちらは危険です! 悠斗様! お戻りをッ!」
俺は皆と一緒に迷宮攻略をしているというのに、まるで俺がどこかに行ってしまったかの様な対応をしてくる。
「皆さん、俺はここに居ますよ?」
俺が声を上げると皆、ギョッとした表情を浮かべた。
どうやら俺がここに居る事を認識していなかったらしい。
俺は収納指輪から万能薬を取り出すと、従業員全員に配布した。
「ここがエストゥロイ領の誇る畜産迷宮、ケァルソイ迷宮か」
ケァルソイ迷宮の第1階層。
そこには一面の牧草地が広がっていた。
ミノタウルスとは違う種類の牛型モンスターが牧草を食べながら欠伸をしている。
迷宮の中とは思えない程の長閑さだ。
それもその筈、エストゥロイ領のケァルソイ迷宮では、比較的安全な第1階層から第5階層にテイマーというモンスター専門職を置き管理している。
その為、有事を除き、冒険者がモンスターを倒して良いのは第6階層からとなる。
俺は従業員達と共に第6階層に続く階段まで走破すると、ゆっくりとした足取りで階段を降りて行く。
そして第6階層に辿り着くと、俺はつい感嘆の声を上げた。
ケァルソイ迷宮の第6階層。
そこには見渡す限りの果樹が広がっており、樹々を見渡すと、あちこちに果物や堅果が生っているのが分かる。
俺は近くになっていたドラゴンフルーツの様な果物を手に取ると、〔影刃〕で真っ二つに割り何の躊躇いもなく口に運んだ。
すると元の世界で食べたようなサクサクとした食感とサッパリとした甘さが口いっぱいに広がる。
「ゆ、悠斗様……。だ、大丈夫ですか?」
「うん? 全然大丈夫だけど……。ラオスさんも食べる?」
「い、いえ。俺は遠慮します」
何故だろう?
こんなにも美味しいのに……。
俺は不思議に思いながら、ドラゴンフルーツモドキを食べ終えると、手を生活魔法の〔洗浄〕で洗う。
「悠斗様は凄いですね。あれほど毒々しい外見のモノを口にするなんて……」
なるほど、確かにドラゴンフルーツモドキは強烈な外見をしている。
初見でこれを食べようと思う人はいないかもしれない。
「ま、まあ。これと似た様な外見の果物を依然食べた事があったからね」
「しかし、お気を付け下さい。ここは迷宮です。あの様に警告色を放つ物を食べてはなりません」
「わ、わかったよ。心配かけてごめんね。それじゃあ、先に進もうか」
俺が念の為〔影探知〕を発動すると果樹の中にモンスターの反応を捉える。
動きがない事から恐らく果物や木に擬態をしたモンスターなのだろう。
「この先モンスターが要るみたいだからみんな気を付けて! モンスターは果物や木に擬態しているみたい!」
「大丈夫、大丈夫! わかっていますよ」
ラオスさんがそう言うと、果物や木に擬態したモンスターに刃を立てながら進んでいく。
随分と手馴れている様だ。
そういえば、何人かの従業員達はエストゥロイ領に来た初日から迷宮に遊びに行っていた。
ラオスさんもその内の一人なのだろう。
しかし……。従業員達も強くなったものだ。
的確にモンスターの急所を突いては、次の攻撃に移る動作の途中で倒したモンスターを収納指輪に収納していく。
あんな洗練された動き、少なくとも今の俺にはできない。俺に出来る事といえば、〔影探知〕でモンスターを捉えて〔影収納〕に収納する位のものだ。
洗練された動きとはだいぶ程遠い。
俺はラオスさん達の洗練された動きに拍手を送る。
すると〔影探知〕に大きめのモンスターが引っかかる。
「みんな! 前からでかいモンスターが来るよッ!」
俺の声を聞いたラオスさん達が、正面を向くと四足歩行のミノタウルスが現れる。
「ぐおぉぉぉ!」
なんというか……。出て来たそいつは元の世界に居そうな茶色の毛並みの牛だった。
そして、その牛は俺に視線を向けると、ラオスさん達を無視して一心不乱に向かってくる。
「悠斗様ッ!」
「大丈夫! 〔影収納〕っと」
俺は、俺とミノタウルスとの間に影を広げると、突進してくるミノタウロスを〔影収納〕に収納していく。
本当はラオスさん達の様にスマートにモンスターを倒したい所だけど、ナイフや剣を持ち慣れていない俺には難しい。咄嗟の判断を迫られると、つい〔影収納〕を使ってしまう。
「いや~。本当はラオスさん達みたいにモンスターをスマートに倒したかったけど、やっぱり難しいね。今度皆に教えて貰おうかな?」
俺のその呟きに何故かラオスさん達がざわつく。
「い、いえ、ミノタウロスをそんな簡単に倒してしまう悠斗様に教える事は何もありません」
「全くです。悠斗様に何かを教える等恐れ多い」
俺の囲う従業員達から何とも言えない寂しい回答が返ってきた。
「そ、そう?」
「「そうです!」」
そ、そうですか……。
俺は少し寂しい思いをしながら次の階層へと向かう事にした。
ケァルソイ迷宮第7階層も第6階層と同じく、見渡す限り果樹が広がっている。
ただ、この階層は他の階層と比べて一味違うようだ。
「ゆ、悠斗様! そちらは崖です!」
「そ、そちらは危険です! 悠斗様! お戻りをッ!」
俺は皆と一緒に迷宮攻略をしているというのに、まるで俺がどこかに行ってしまったかの様な対応をしてくる。
「皆さん、俺はここに居ますよ?」
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