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第八章 フェロー王国動乱編
第238話 ヨルズルの依頼⑤
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現在の時刻は午後5時。辺りを見渡すと少し薄暗くなってきた。
悠斗達一行はエストゥロイ領の冒険者ギルドのギルドマスター、ヨルズルの案内で目的の廃坑近くに建てられたヨルズルの別荘へと足を運ぶ。
「辺りが暗くなってきましたね。気分転換に軽く一杯ハーブティーをご馳走いたします。これを飲んでから、廃坑の調査を致しましょう。大丈夫ですよ。日が落ちてきましたが、廃校の中はとても明るくなっています。今日は様子を見るに留めて、明日から本格的な調査に移りましょう」
正直、午後3時から受ける依頼ではなかったと少し後悔していた所だ。ヨルズルさんの提案はありがたい。
俺達はヨルズルさんの別荘に入り、軽くハーブティーを口にするとホッと一息をつく。
「このハーブティーには、気持ちをリラックスさせる効果があるんですよ。味はいかがですか?」
「はい! とっても美味しいです」
ヨルズルさんに勧められるままハーブティーを口にすると、爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。
時よりピリッとした味が舌に伝わってくるが、慣れてくるとこれはこれでいいものだ。
仮面を付けたままのAランク冒険者、レイさんとマークさんは不思議なものを見る様な感じで、仮面越しに視線を向けてくる。
レイさんとマークさんはこのハーブティーを飲まないのだろうか? 美味しいのに勿体ない。
俺が5杯目のお代わりをした所で、何故か慌てた様子のヨルズルさんが声をかけてくる。
「ゆ、悠斗君……。た、体調に問題はないかい? 実はこのハーブティー飲み過ぎると副作用があるんですよ。まさかそんなに気に入ってくれるとは思いもしなくてね。だいぶ気も紛れた様だし、早速、廃坑の様子見をしに行きましょうか?」
そうだった。俺は何もヨルズルさんの別荘にハーブティーを飲みに来たわけではない。
あくまで気持ちを落ち着かせる為に来たのだ。
本題を忘れてはいけない。
「そうですね。ヨルズルさん。ハーブティーありがとうございました。だいぶ気が紛れた気がします」
「そうですか……。それは良かった。それでは早速、廃坑の下見に行きましょう」
ヨルズルさんは何故か引き攣った笑みを浮かべると立ち上がりハーブティーを片付ける。
もしかして貴重なハーブだったんだろうか?
もしそうなら悪い事をしてしまったかも知れない。
ヨルズルさんが俺が最高のパフォーマンスを発揮できる様に提供してくれたハーブティーだ。飲み過ぎてしまった分、働く事でお返ししよう。
俺は〔影纏〕を全身に纏うと、廃坑へと先導してくれているヨルズルさん達に着いて行く。
ここから先何が起こるかわからない。
Sランク冒険者が廃坑調査から戻って来ない位だ。用心に越した事はないだろう。
すると、〔影纏〕が相当珍しかったのか、ヨルズルさんが声をかけてきた。
「ゆ、悠斗君。それはなんだい?」
「これですか? これは俺の持つユニークスキルによるものです。あまり詳しく説明する事が出来ないのが申し訳ないんですが……」
「そうですか……。確かに冒険者の奥の手を聞くのはマナー違反ですしね。気を取り直して廃坑へと向かいましょう」
俺の返答にヨルズルさんは一瞬ガッカリした様な表情を浮かべるも、廃坑に向かって歩き出す。
調査対象となる廃坑は、ヨルズルさんの別荘のほぼ真上にある様だ。入り口の様相は洞窟に近い大きさをしている。
廃坑の中はこれより広い空間が広がっているというし、これだけ広い入り口ならモンスターが入り込んでしまったというのも頷ける話だ。
というより、こんな空洞の真上に別荘を建てて大丈夫なんだろうか?
廃坑内で万が一の事があり、ヨルズルさんの別荘ごと崩落してしまった場合、責任が取れない。一応、ヨルズルさんに確認を取っておこう。
「ヨルズルさん、ちょっといいですか?」
「ん? 何かな悠斗君」
何故か少しヨルズルさんが警戒心を滲ませている。
「いえ、大した事ではないんですけど、ヨルズルさんの別荘、廃坑の真上にあるじゃないですか?」
「ふむ。確かにそうですね」
「もし万が一ですよ? もし万が一廃坑の調査中、廃坑が崩落してヨルズルさんの別荘がそれに巻き込まれてしまった場合どうなるのかなと思いまして……」
「ああ、悠斗君は廃坑が崩落した場合の責任の所在について心配しているんですね? 安心してください。廃坑の崩落なんてよくある事です。依頼書にも書かれていますが、悠斗君が崩落による責任は負う事はありません。それに……」
ん? なんだろう。ヨルズルさんが言い淀んでいる。
「それに……。なんですか?」
「いえ、それにあの辺りの地盤は崩落に備えて補強済ですから、悠斗君が気にする事はありませんよ」
よかった。廃坑調査で万が一、崩落してしまっても俺の責任にはならないらしい。
「それにしても、不気味な所ですね」
この廃坑が冥府の扉と呼ばれる気もわかる気がする。
それに……。
「中から音がしますね……」
「ええ、もしかしたら廃坑の調査依頼から戻って来ていないSランク冒険者が、中にいるモンスターと戦っているのかもしれませんね。早速、廃坑内に入ってみましょう」
悠斗達一行はエストゥロイ領の冒険者ギルドのギルドマスター、ヨルズルの案内で目的の廃坑近くに建てられたヨルズルの別荘へと足を運ぶ。
「辺りが暗くなってきましたね。気分転換に軽く一杯ハーブティーをご馳走いたします。これを飲んでから、廃坑の調査を致しましょう。大丈夫ですよ。日が落ちてきましたが、廃校の中はとても明るくなっています。今日は様子を見るに留めて、明日から本格的な調査に移りましょう」
正直、午後3時から受ける依頼ではなかったと少し後悔していた所だ。ヨルズルさんの提案はありがたい。
俺達はヨルズルさんの別荘に入り、軽くハーブティーを口にするとホッと一息をつく。
「このハーブティーには、気持ちをリラックスさせる効果があるんですよ。味はいかがですか?」
「はい! とっても美味しいです」
ヨルズルさんに勧められるままハーブティーを口にすると、爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。
時よりピリッとした味が舌に伝わってくるが、慣れてくるとこれはこれでいいものだ。
仮面を付けたままのAランク冒険者、レイさんとマークさんは不思議なものを見る様な感じで、仮面越しに視線を向けてくる。
レイさんとマークさんはこのハーブティーを飲まないのだろうか? 美味しいのに勿体ない。
俺が5杯目のお代わりをした所で、何故か慌てた様子のヨルズルさんが声をかけてくる。
「ゆ、悠斗君……。た、体調に問題はないかい? 実はこのハーブティー飲み過ぎると副作用があるんですよ。まさかそんなに気に入ってくれるとは思いもしなくてね。だいぶ気も紛れた様だし、早速、廃坑の様子見をしに行きましょうか?」
そうだった。俺は何もヨルズルさんの別荘にハーブティーを飲みに来たわけではない。
あくまで気持ちを落ち着かせる為に来たのだ。
本題を忘れてはいけない。
「そうですね。ヨルズルさん。ハーブティーありがとうございました。だいぶ気が紛れた気がします」
「そうですか……。それは良かった。それでは早速、廃坑の下見に行きましょう」
ヨルズルさんは何故か引き攣った笑みを浮かべると立ち上がりハーブティーを片付ける。
もしかして貴重なハーブだったんだろうか?
もしそうなら悪い事をしてしまったかも知れない。
ヨルズルさんが俺が最高のパフォーマンスを発揮できる様に提供してくれたハーブティーだ。飲み過ぎてしまった分、働く事でお返ししよう。
俺は〔影纏〕を全身に纏うと、廃坑へと先導してくれているヨルズルさん達に着いて行く。
ここから先何が起こるかわからない。
Sランク冒険者が廃坑調査から戻って来ない位だ。用心に越した事はないだろう。
すると、〔影纏〕が相当珍しかったのか、ヨルズルさんが声をかけてきた。
「ゆ、悠斗君。それはなんだい?」
「これですか? これは俺の持つユニークスキルによるものです。あまり詳しく説明する事が出来ないのが申し訳ないんですが……」
「そうですか……。確かに冒険者の奥の手を聞くのはマナー違反ですしね。気を取り直して廃坑へと向かいましょう」
俺の返答にヨルズルさんは一瞬ガッカリした様な表情を浮かべるも、廃坑に向かって歩き出す。
調査対象となる廃坑は、ヨルズルさんの別荘のほぼ真上にある様だ。入り口の様相は洞窟に近い大きさをしている。
廃坑の中はこれより広い空間が広がっているというし、これだけ広い入り口ならモンスターが入り込んでしまったというのも頷ける話だ。
というより、こんな空洞の真上に別荘を建てて大丈夫なんだろうか?
廃坑内で万が一の事があり、ヨルズルさんの別荘ごと崩落してしまった場合、責任が取れない。一応、ヨルズルさんに確認を取っておこう。
「ヨルズルさん、ちょっといいですか?」
「ん? 何かな悠斗君」
何故か少しヨルズルさんが警戒心を滲ませている。
「いえ、大した事ではないんですけど、ヨルズルさんの別荘、廃坑の真上にあるじゃないですか?」
「ふむ。確かにそうですね」
「もし万が一ですよ? もし万が一廃坑の調査中、廃坑が崩落してヨルズルさんの別荘がそれに巻き込まれてしまった場合どうなるのかなと思いまして……」
「ああ、悠斗君は廃坑が崩落した場合の責任の所在について心配しているんですね? 安心してください。廃坑の崩落なんてよくある事です。依頼書にも書かれていますが、悠斗君が崩落による責任は負う事はありません。それに……」
ん? なんだろう。ヨルズルさんが言い淀んでいる。
「それに……。なんですか?」
「いえ、それにあの辺りの地盤は崩落に備えて補強済ですから、悠斗君が気にする事はありませんよ」
よかった。廃坑調査で万が一、崩落してしまっても俺の責任にはならないらしい。
「それにしても、不気味な所ですね」
この廃坑が冥府の扉と呼ばれる気もわかる気がする。
それに……。
「中から音がしますね……」
「ええ、もしかしたら廃坑の調査依頼から戻って来ていないSランク冒険者が、中にいるモンスターと戦っているのかもしれませんね。早速、廃坑内に入ってみましょう」
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