転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

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第八章 フェロー王国動乱編

第259話 悠斗と第二王子の話し合い②

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「よ、よろしいのですかシェトランド様!? ヴォーアル迷宮は王都ストレイモイの大切な資源。迷宮核を取らないと約束頂いたとはいえ、万が一があっては……」

 宰相は心配そうな表情をしながら第二王子に訴えかける。

「サクソン……。私達はお願いをする立場です。悠斗様は迷宮核を取らないと確約して下さいました。心配するのは分かりますが、これ以上は失礼に当たります。立場を弁えなさい。どの道、ユートピア商会の誘致に失敗しては王都に未来はありません。それ程までに土地接収という判断を下した事は明らかな失策なのです。商人達の信頼を再び取り戻す為には、悠斗様との関係改善は必須。何を犠牲にしてでも成し遂げねばならないのです」

「で、ですが……」

「サクソンには感謝しています。王都の事を真に考え、マスカット様と顔を繋ぎ、悠斗様との面会の機会を作って頂きました。私だけではこうはいかなかったでしょう。サクソン……。私は千載一遇のこの機会を逃したくないのです。私の事を信じて下さい」

 第二王子に真っ直ぐな視線を向けられた宰相は溜息をつく。

「そうですか……。わかりました。シェトランド様の御心のままに」

 そして宰相は俺に顔を向けると「悠斗様。申し訳ございませんでした」と呟いた。

 し、知らなかった。
 今王都ではそんな事になっていたのか……。
 ユートピア商会の土地を接収した事で、明日は我が身と商人が寄り付かなくなり、王都が傾く程のダメージを負っていたとは……。

 正直言って自業自得としか言いようがない。

 とはいえ、この第二王子……。思った以上に話が分かる人の様だ。こちらの言い分も聞いてくれるし、聞く時の姿勢も低い。高圧的にこられるより、よっぽど好感が持てる。

 正直言って、ヴォーアル迷宮攻略は少し吹っかけ過ぎたかなと口に出してしまった後になって思った。
 しかし、第二王子のお陰で迷宮の攻略許可を貰う事ができた。何事も言ってみるものだ。

 俺は宰相に向かって「気にしていませんよ」と呟くと、第二王子に視線を向ける。

「それではシェトランド様。ヴォーアル迷宮攻略の許可を書面で頂きたいのですがよろしいでしょうか?」

 第二王子は少しだけ物事を考える素振りを見せる。

「わかりました。必ず用意致します。受け渡しについては私が新国王になる迄、お待ち下さい。接収した土地についてもその時お返し致します。時間は取らせません」

「わかりました。その書面を受け取り次第、王都でユートピア商会の営業を再開します」

 すると第二王子がキョトンとした表情を浮かべる。

「えっ? 接収した土地は更地になっていると聞いておりますが、すぐに営業を再開できるのですか? こちらと致しましては、悠斗様と和解し、接収した土地は全て返還、その後、建物を建てようと考えていたのですが……」

 そういえばそうだった。
 ユートピア商会の即日再開は王都を迷宮の支配下に置いているから出来る事であって、普通、一夜にして建物を建てるなんて事はできない。

 そんな常識すっかり忘れていた。
 どうやら俺もこの異世界生活に染まってきたらしい。

 とはいえ、一度口にしてしまったからには仕方がない。強引にでも押し通そう。

「ユートピア商会の従業員達は皆優秀ですから、通常、数ヶ月かかる建物の建設も彼らにかかれば一日足らずで建設が終わらせる事ができます。つまり、その日から営業する事も可能という事です」

「な、なるほど……。ユートピア商会の従業員という事は、元スラムの住民という事ですね。ユートピア商会の従業員の方々が優秀なのはかねてから聞き及んでおります。何でも全員が冒険者ギルドに加入しておりランクはB以上。Aランク冒険者も数多く働いているとか……。得心いきました」

 この第二王子、滅茶苦茶ユートピア商会の事に詳しいな……。俺が感心していると、第二王子が宰相に向かって小さく呟いた。

『やはりユートピア商会の従業員が元スラム街の住民である事に間違いはない様ですね。調べた所によると、ユートピア商会の従業員達の殆どが鑑定スキルを保持している様です。もしかしたら、スラムの住民達は人財の宝庫かも知れません。王都に戻り次第、スカウトに向かわせなさい』

『し、しかし、王都にスラム街はもうありません。あの土地はユートピア商会が買い取り、今では生産拠点の一つとして生まれ変わっていると報告を受けています』

『そうですか……。それは残念ですね。私が国王になるからには、徹底的に国の膿を出し切りたいと考えています。その為に優秀な人財は何人いても足りない位なのですが……。何とかなりませんか?』

『そうですね……。オーランド王国に今多数の難民が押し寄せていると報告を受けています。あの国もそれには頭を悩ませている様ですし、恩を売り人財を確保する良い機会かもしれません。王都に戻り次第、オーランド王国と交渉をしようと思います』

『頼みましたよ』

 長い呟きだった。漸く話が終わった様だ。
 この人達、俺が目の前にいる事を忘れているんじゃないだろうか?
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