転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

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第八章 フェロー王国動乱編

第269話 その頃王都では③

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 しかし、内務大臣のスカーリとしても領主会議を長引かせる為だけに、食糧の輸入がストップしてしまうのを見過ごす事はできない。勿論、他の思惑もある。

「し、しかし、それでは王都に住まう民が飢えてしまいます。へ、陛下はそれでもよろしいのですか⁉︎」

 スカーリの言葉にノルマンは激怒する。

「代案も示さない癖によく言うわ! その発言を通したいのであれば代案を示せ! 民の事を思うなら頭を働かせろ! 今どんな状況に置かれているのかお前はわかっているのか⁉︎ 私が罷免されればお前達も終わりだ! 何故それがわからない!」

「た、確かにそうですが……」

 全く代案が浮かばない。しかし、このままではフェリーの運航を止められてしまいそうな勢いだ。

 私の親戚が運営しているフェリー事業が……。

 一見、最もらしい事を言ってはいるが、その実、スカーリは自分の事しか頭にない。

 懸命に頭を働かせていると、激怒していたノルマンが急に優しい顔を浮かべる。

「とはいえ、スカーリの言う事も尤もだ。一週間……。いや、フェリーの運航を止めるのは二週間だけにしておこう。食糧難と言ってもまだまだ備蓄はある。その位であれば問題ないだろう? フェリーの運航を停止する事は民に多大な負担をかける事はわかっている。しかし、王都を……。この国をより良い方向に導いていく為には、私やお前達の力が必要だ。それに国民だけに貧じい思いをさせるつもりはない。我々も民と同じ苦悩を分かち合おうではないか。この国の事を本当に思う国民には私達の気持ちがわかる筈だ。スカーリ、今一度、私に力を貸して欲しい」

「へ、陛下……」

 散々、大臣達に向かって馬鹿だ、無能だと言っていたノルマンは掌を返しそう言うと、スカーリはガックリと項垂れた。

「皆、よく聞いてほしい。この二週間が勝負時だ。フェリーの運航は停止させる。その間に領主の過半数を私達の陣営へ取り組め! それが出来なければ私達はお終いだ」

 ノルマンは大臣達に向かってそう言うと、各大臣は領主説得に動き出した。
 我先にと王の間から出ていき、各領主の元に向かっていく。

「頼んだぞ。お前達……」

 ノルマンはそう呟くと、もし万が一、領主達の説得が失敗に終わった時、どう領主会議を乗り切るか頭を働かせるのであった。

 その頃、エストゥロイ領の廃坑付近に向かって走る一体の人形がいた。
 その人形は目と口にメイクをした特徴的な人形。通称ドレーク人形である。

 鎮守神によって人形化されたドレーク人形に自我はない。ただ命じられた事を忠実にこなすだけの存在である。
 とはいえ、ドレーク人形は普通の人形とは一線を画す人形。何せ、Sランク冒険者を素体に鎮守神によって人形化された特別な人形だ。
 それに人形になる前の記憶や自我は無くしてしまったものの、考えるだけの頭脳は持ち合わせている。

 人形なので頭部を割っても何も入っていないが……

 ドレーク人形の今日の任務は、崩落した廃坑内から金庫をサルベージする事。
 漠然とした命令であったが、ドレーク人形に拒否権はない。
 その為、ドレーク人形は必要な情報を自分で集め、廃坑内にある金庫回収の為、廃坑に向かいひた走っていた。

 ひとえに廃坑といっても、エストゥロイ領には複数の廃坑が存在する。
 ドレーク人形は収納魔法で地図を取り出すと、崩落した廃坑の場所を確認する。
 最近崩落のあった廃坑は全部で二つ。この内、一つの廃坑内に金庫がある筈だ。

 ドレーク人形は足を止めると、ドレーク人形の持つ〔悪魔召喚〕スキルで、貪欲の悪魔マモンを複数召喚していく。そして、召喚した悪魔にこれから向かう予定の二つの廃坑内調査を命じると、マモンは身体を宙に浮かせ廃坑調査に向かった。

『これでよし』とドレーク人形は頷くと、人間の悲鳴が聞こえてきた。
 ドレーク人形がビクリと身体を震わせると、悲鳴のした方向に顔を向ける。
 するとそこには、ジタバタと暴れる子供を抱えた人相の悪い人間が立っていた。

「やめてっ! 私を誘拐してどうするつもりなの! ま、まさか……」

「くくくっ、ここは廃坑近くの森の中。いくら叫んでも助けはこねぇぜ! 待ってろ。今は亡きドレーク団長に代わって、お前の事を……。ん? なんだ? 人形? 目と口にメイクをしているなんて気持ちが悪い人形だな……。まるでドレーク団長みたいだ」

 視線を向けられ、急に罵倒されたドレーク人形は首を傾げる。

 これは助けた方がいいのだろうか?
 目の前にいる男はどう考えても盗賊にしか見えない。

 しかし、不思議と胸が高鳴る様な気分を感じる。
 この人間どこかで会った事があるような……。気のせいか?
 ドレーク人形が不思議な感覚に首を傾げていると、人相の悪い人間がこっちに向かってきた。

「近くで見て見ると、本当にドレーク団長に似ているな……。散々、こき使われた恨みだ。どれっ……」

 人相の悪い人間はそう言うと、ドレーク人形を蹴ろうと、足を上げる。
 危険を察知したドレーク人形は、一歩後ろに下がった。

 すると人相の悪い人間がポカーンとした表情を浮かべる。
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