転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

文字の大きさ
222 / 486
第八章 フェロー王国動乱編

第275話 領主様との話し合い①

しおりを挟む
「もう手に入れてきたの⁉ 随分と早かったね!」
「はい。ただ人形が金庫を二基、別々の廃坑から拾ってきた様でして……。いかが致しましょうか?」
「金庫が二基?」
「はい。一度中を検めさせて頂くという手段もございますが……」

 ゴタさんはそんな事言っていただろうか?
 てっきり、一基だけだと思っていた。

 まあ金庫の中にはヨルズルさんが盗賊から受け取った金品や様々な重要書類が納められているとか言っていたし、多分、金庫を分けて管理していたのだろう。
 それに下手に金庫に手を出して、領主様の不興を買いたくはない。

「いや、中を検めるのは止めておこう。万が一、金庫の中を勝手に見たのがバレたら面倒臭い事になりそうだし……」

 正直、それを表情に出さない自信がない。

「承知致しました。それでは、こちらに来て頂けますか?」

 俺は鎮守神についていくと、そこには大きな金庫が二基置かれていた。

「こ、これは凄いね」

 そこには、俺が想像していた金庫とは違う。まるでワンルーム全てを金庫にしたかの様な金庫が二基置かれていた。

「それではこれを収納指輪に収めて頂けますか?」
「う、うん。わかった!」

 金庫を収納指輪に収めると、鎮守神に視線を向ける。

「それじゃあ、鎮守神。今から冒険者ギルドに行ってくるね!」
「はい。行ってらっしゃいませ」

 俺はゴタさんとの約束通り冒険者ギルドに向かう事にした。
 ◇◇◇

 私の名前は、ロイ・エストゥロイ。
 エストゥロイ領を治めるフェロー王国の領主だ。

 今、私は少しばかり大変な事に巻き込まれている。

「ロ、ロイ様! お嬢様の件、いかが致しましょう⁉」
「まあ待てゴタ……。まずは落ち着け」
「し、しかし、犯人と思しき盗賊から手紙が届いているんですよ! お嬢様が盗賊に攫われたなんて知られればどうなる事か……。ロイ様は心配ではないのですか?」

 心配じゃないかだと?
 当然、心配に決まっているだろうがっ!
 ラフィは、蝶よ花よとこの上なく大切に育ててきた私の娘だぞ⁉
 私の気も知らないで勝手な事ばかり言いおって……。

 私は犯人と思わしき盗賊から届いた手紙をグシャリと握り潰す。

 問題が発生したのは昨日未明、友達と外に遊びに行くと邸宅を出て行ったのを最後に我が愛娘ラフィ(十歳)が帰って来なかった事から始まる。

 勿論、心配性な私は護衛をつけようとした。
 当然だ。ラフィはエストゥロイ領を治める領主の娘。
 護衛をつけるのは当たり前の事である。

 ただ、最近は護衛を就けると、護衛のその顔の怖さからかラフィのお友達が泣き出したり、揚句の果てには、ラフィに「お父様なんて嫌い」と言われてしまう様になった為、ラフィに就ける護衛の数を少数に絞り、秘密裏に護衛にあたらせていたが、今回はそれが仇となってしまった。

 なんと護衛が一瞬、ラフィから目を放した隙に攫われてしまったらしい。
 護衛曰く、攫われる瞬間を見てはいないらしいが、その場には手紙が置かれていた。

 そう。今私が握り潰した手紙がそうだ。
 中を検めて見ると、ドレーク盗賊団という元Sランク冒険者ドレークが率いる盗賊団によって攫われてしまったらしい事が書かれている。

 だとしたら、迂闊に動く事はできない。
 何せ、ラフィを攫った相手……。勿論、この手紙が本当に元Sランク冒険者のドレークが率いる盗賊団だと仮定しても相手が悪すぎる。

 私兵団の中には、現Aランク冒険者も数人いるが流石に元Sランク冒険者を倒せるほどの実力はない。
 冒険者ギルドに依頼をかけるにしても、この件が相手に知られれば、過激な行動に出ないとも限らない。

 ハッキリ言って八方塞がりだ。

 私が頭を悩ませていると、ドタドタと誰かが廊下を走る音が聞こえてくる。
 そして、突然、扉が開くとそこには盗賊に攫われた筈のラフィの姿があった。

「お父様っ!」
「ラ、ラフィ?」

 盗賊に攫われた筈のラフィが何故ここに?
 私は茫然とした表情を浮かべると、椅子から立ち上がりラフィの元に駆け寄った。

「ラフィ……。ケガはないか? さ、攫われたと聞いたが……。いや、そんな事はもういい。とにかく、ラフィが無事でよかった……」

 混乱していて、何て言葉をかけたらいいかわからない。
 取り敢えず、無事帰ってきた事に安心していると、ラフィが興奮気味に声を上げた。

「お父様! 私、人形さんが欲しいわ!」
「に、人形さん?」

 と、突然、何を言っているんだ?
 一体何の話をしている……。に、人形さん⁇

「そう人形さんよ! 人形さんが私を助けてくれたの!」
「に、人形さんがラフィを助けてくれた⁇」

 益々よく分からない。
 いや、きっと怖い思いをしてラフィも気が動転しているのだろう。

「はははっ、ラフィは面白い事を言うなぁ。人形さんは動かないよ。それよりラフィどうやってここに……」
「助けてくれたもん! 人形さんは動くもん! お父様は私が嘘をついていると言うの? ひどいっ……」

 ラフィの目尻に涙が滲む。
 ラフィが泣きそうな雰囲気を悟った私は慌てた表情を浮かべた。

「ラ、ラフィ? 父様はラフィの事を信じているよ。ラフィはお人形さんが欲しかったんだよね? どんなお人形さんが良いのかな? 今度、父様とお買い物に行こうか?」

 私はラフィを抱き寄せると、頭を撫でながらそう言った。
しおりを挟む
感想 3,253

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。