225 / 486
第八章 フェロー王国動乱編
第278話 領主様との話し合い④
しおりを挟む
娘さんを助けたの、どう考えてもドレーク人形だよね?
ドレーク人形は廃坑に金庫の回収に向かっていた筈……。
恐らくその時、ドレーク人形は娘さんを攫った盗賊と鉢合ったのだろう。
うーん。どうしたものか……。
正直、その位の人形であれば作れる。
というより、既にユートピア商会で売っている。
ただ、ロイ様の娘さんが欲しいという人形のレベル感が分からない。
もしドレーク人形と出会い、助けて貰ったとしたら娘さんはそのクオリティの人形を求める筈……。
よし。ここは諦めて貰おう。
俺はロイ様に視線を向けると、毅然とした態度でお断りの言葉を告げ様とする。
「申し訳ございません。当商会で扱っているのは普通の人形だけでして……」
すると、ロイ様は目を血走らせ、テーブルに両手と額を付けた。
「悠斗君……。この通りだ。私だってこんな奇怪な人形は欲しくない。私はただ愛娘の喜ぶ顔が見たいだけなんだよ……」
娘さんの為にこんな奇特な人形を求めるとは……。どうかしている。
とはいえ、エストゥロイ領の領主であるロイ様に頭を下げられては仕方がない。
考え様によっては良い機会だ。
「ロイ様。頭を上げて下さい。分かりました。人形の作成、お引き受け致します……」
俺がそう言うと、ロイ様はガバリと顔を上げた。
「ほ、本当か! ありがとう。ありがとう!」
「ただし、商会にある人形にドレークメイクを施すだけです。それ以上は望まない様にして下さい」
「ああ、勿論だ! 娘にもそう言っておこう」
「それでしたら、人形ができ次第、こちらにお持ちします」
そう言うと、ロイ様が笑顔を浮かべる。
「ありがとう悠斗君! 無茶なお願いばかりしてすまないね。さて、ここからは真面目な話をしよう」
ロイ様は表情を落ち着かせると、ティーカップを片手にハーブティーを一口飲む。そして、ティーカップを置くと立ち上がり、俺に向かって頭を下げた。
「まずは、フェロー王国を治める領主の一人として、陛下がユートピア商会に行った土地接収の件を謝りたい。申し訳なかった」
俺はポリポリと頬をかくと、頭を下げているロイ様に呟いた。
「ロイ様、頭を上げて下さい。今回の土地接収の件、確かに思う所はありますが、もう別に何とも思っておりません。
陛下が退位し、王弟殿下が国王になれば接収された土地は戻ってきますし、土地接収の直接的な原因もフェロー王国ではなくオーランド王国の女王様が万能薬の供給元を潰す為に行った事の様です。
それに、土地接収の件は従業員達の羽を伸ばす良い機会になりました。陛下が退位し、王弟殿下が国王になる事がほぼ確定している以上、俺から何かをする事もありません」
ロイ様は頭を上げると、ホッとした表情を浮かべる。
「そ、そうか……。君の口からその言葉を聞く事ができて安心したよ」
えっ? 今話した中に何か安心する要素があっただろうか?
それにオーランド王国の女王様が裏から手を回していた事については何とも思わないのだろうか?
「いやなに、部下から散々脅かされていてね。君にちょっかいを出したものは悉く破滅に向かうと聞いたものだからね……」
ああ、ゴタさんもそんな事を言っていた様な気がする。
全く、誰がそんな根も葉もない噂を流したのだろうか?
「ロイ様はそんな事を気にされていたのですか? 俺にちょっかいを出した人が悉く破滅に向かうなんて、そんな事、ある筈がないじゃないですか……」
俺はそこまで言って口を閉ざした。
よく考えてみたら、俺にちょっかいを出したマデイラ王国とアゾレス王国は破滅に向かって一直線だった様な気がする。
いや、しかしあれは俺というよりも、ロキとカマエルによって大変な事になった訳で、俺にちょっかいを出したから破滅に向かった訳では……ま、まあいいか。
いや、きっと俺の考え過ぎだろう。
すると、ロイ様はがクスリと笑う。
「ふふっ、確かに。どうやら私の考え過ぎだった様だね。いや、すまない。変な事を言ったな」
ロイ様はそう言ってソファーに座ると、ハーブティーを口にした。
そしてティーカップをテーブルに置くと、こちらに視線を向けてくる。
「とはいえ、土地接収の件を謝りたかったのは本心だよ。それほどの事を陛下はしてしまったのだからね。まさかその裏にオーランド王国の女王が絡んでいるとは思いもしなかったが……」
「いえ、本当に気にしないで下さい。王弟殿下が国王になれば、接収された土地は返ってきますし、ヴォーアル迷宮の攻略許可も貰えます。エストゥロイ領に支店を出店する事もできましたし、働き詰めだった王都の従業員達にいい休日を与える事もできました。今となっては感謝している位ですよ」
俺がそう言うと、ロイ様は苦笑いを浮かべた。
「そ、そうかい? (ま、まあその結果、王都は壊滅的な被害を被り、陛下は側近共々その地位を追われる訳なんだけど……。まあ、自業自得か……)それは良かったよ」
「それで本日はその話をする為に呼んだんですか?」
「い、いや、そう言う訳じゃない……」
ロイ様がそこまで口にすると、ギルドマスター室の扉が開かれゴタさんが入ってきた。
ドレーク人形は廃坑に金庫の回収に向かっていた筈……。
恐らくその時、ドレーク人形は娘さんを攫った盗賊と鉢合ったのだろう。
うーん。どうしたものか……。
正直、その位の人形であれば作れる。
というより、既にユートピア商会で売っている。
ただ、ロイ様の娘さんが欲しいという人形のレベル感が分からない。
もしドレーク人形と出会い、助けて貰ったとしたら娘さんはそのクオリティの人形を求める筈……。
よし。ここは諦めて貰おう。
俺はロイ様に視線を向けると、毅然とした態度でお断りの言葉を告げ様とする。
「申し訳ございません。当商会で扱っているのは普通の人形だけでして……」
すると、ロイ様は目を血走らせ、テーブルに両手と額を付けた。
「悠斗君……。この通りだ。私だってこんな奇怪な人形は欲しくない。私はただ愛娘の喜ぶ顔が見たいだけなんだよ……」
娘さんの為にこんな奇特な人形を求めるとは……。どうかしている。
とはいえ、エストゥロイ領の領主であるロイ様に頭を下げられては仕方がない。
考え様によっては良い機会だ。
「ロイ様。頭を上げて下さい。分かりました。人形の作成、お引き受け致します……」
俺がそう言うと、ロイ様はガバリと顔を上げた。
「ほ、本当か! ありがとう。ありがとう!」
「ただし、商会にある人形にドレークメイクを施すだけです。それ以上は望まない様にして下さい」
「ああ、勿論だ! 娘にもそう言っておこう」
「それでしたら、人形ができ次第、こちらにお持ちします」
そう言うと、ロイ様が笑顔を浮かべる。
「ありがとう悠斗君! 無茶なお願いばかりしてすまないね。さて、ここからは真面目な話をしよう」
ロイ様は表情を落ち着かせると、ティーカップを片手にハーブティーを一口飲む。そして、ティーカップを置くと立ち上がり、俺に向かって頭を下げた。
「まずは、フェロー王国を治める領主の一人として、陛下がユートピア商会に行った土地接収の件を謝りたい。申し訳なかった」
俺はポリポリと頬をかくと、頭を下げているロイ様に呟いた。
「ロイ様、頭を上げて下さい。今回の土地接収の件、確かに思う所はありますが、もう別に何とも思っておりません。
陛下が退位し、王弟殿下が国王になれば接収された土地は戻ってきますし、土地接収の直接的な原因もフェロー王国ではなくオーランド王国の女王様が万能薬の供給元を潰す為に行った事の様です。
それに、土地接収の件は従業員達の羽を伸ばす良い機会になりました。陛下が退位し、王弟殿下が国王になる事がほぼ確定している以上、俺から何かをする事もありません」
ロイ様は頭を上げると、ホッとした表情を浮かべる。
「そ、そうか……。君の口からその言葉を聞く事ができて安心したよ」
えっ? 今話した中に何か安心する要素があっただろうか?
それにオーランド王国の女王様が裏から手を回していた事については何とも思わないのだろうか?
「いやなに、部下から散々脅かされていてね。君にちょっかいを出したものは悉く破滅に向かうと聞いたものだからね……」
ああ、ゴタさんもそんな事を言っていた様な気がする。
全く、誰がそんな根も葉もない噂を流したのだろうか?
「ロイ様はそんな事を気にされていたのですか? 俺にちょっかいを出した人が悉く破滅に向かうなんて、そんな事、ある筈がないじゃないですか……」
俺はそこまで言って口を閉ざした。
よく考えてみたら、俺にちょっかいを出したマデイラ王国とアゾレス王国は破滅に向かって一直線だった様な気がする。
いや、しかしあれは俺というよりも、ロキとカマエルによって大変な事になった訳で、俺にちょっかいを出したから破滅に向かった訳では……ま、まあいいか。
いや、きっと俺の考え過ぎだろう。
すると、ロイ様はがクスリと笑う。
「ふふっ、確かに。どうやら私の考え過ぎだった様だね。いや、すまない。変な事を言ったな」
ロイ様はそう言ってソファーに座ると、ハーブティーを口にした。
そしてティーカップをテーブルに置くと、こちらに視線を向けてくる。
「とはいえ、土地接収の件を謝りたかったのは本心だよ。それほどの事を陛下はしてしまったのだからね。まさかその裏にオーランド王国の女王が絡んでいるとは思いもしなかったが……」
「いえ、本当に気にしないで下さい。王弟殿下が国王になれば、接収された土地は返ってきますし、ヴォーアル迷宮の攻略許可も貰えます。エストゥロイ領に支店を出店する事もできましたし、働き詰めだった王都の従業員達にいい休日を与える事もできました。今となっては感謝している位ですよ」
俺がそう言うと、ロイ様は苦笑いを浮かべた。
「そ、そうかい? (ま、まあその結果、王都は壊滅的な被害を被り、陛下は側近共々その地位を追われる訳なんだけど……。まあ、自業自得か……)それは良かったよ」
「それで本日はその話をする為に呼んだんですか?」
「い、いや、そう言う訳じゃない……」
ロイ様がそこまで口にすると、ギルドマスター室の扉が開かれゴタさんが入ってきた。
18
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる
グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。
『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。
2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。
主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。