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第十章 冒険者ギルド編
第442話 グランドマスターとの話し合い④
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屋敷神はそう言うと、茶菓子切で切った切腹饅頭一切れを口に運んでいく。
「おや、如何致しました?」
「い、いえ、モルトバの処分についてですが、現在検討中でして……」
グランは屋敷神からの問いにハンカチで汗を拭きながら答えた。
「……そうですか。それでは、モルトバ様の処分結果が決まり次第、こちらにも一報を頂けますかな?」
「わ、わかりました。モルトバの処分が決まり次第、連絡させて頂きます」
そういうと、屋敷神は笑顔を浮かべながら、ティーカップを手に取った。
「それはよかった。ああ、そちらのハーブティーもお飲み下さい。そちらは紫色の花を咲かせる芍薬の葉と茎を使ったものなんですよ? そういえば、紫色の芍薬の花言葉をご存知ですか?」
「芍薬の花言葉ですか? いえ……」
「そうですか。紫色の芍薬の花言葉は『怒り』『憤怒』といった意味があるのです。ああ、この場にお出しするべきハーブディーではありませんでしたね」
「そ、そうなんですか……」
「ええ、申し訳ございません。しかし、今回の一件についてはこちらもかなり腹に据えかねております。私共も納得できる様な……、そんな処分が下る事を期待しております。例えば、犯罪奴隷とかね……」
「え、ええ……貴重な意見ありがとうございます」
グランがそう呟くと、隣に座って俯いていたモルトバが目を剥いた。
その表情は、まるで話が違うと言わんばかりである。
「おや、モルトバ様。如何されましたか?」
「……い、いえ、なんでもありません」
なんでもないという割には、小刻みに足をゆすっている。
というより貧乏ゆすりが止まらない。
ついでにグランの目も泳いでいる。
全然、モルトバに視線を向けようとはしない。
本当にどうしたのだろうか?
俺はお通夜みたいになってしまった空気を換える為、適当な話題を振った。
「そ、そういえば、グランさん。二週間もお待たせしてしまい申し訳ございません」
「いえいえ、時間を頂いたお蔭で、白金貨二千百万枚を支払う決心がつきました。むしろ感謝している位ですよ」
「そうですか、それは良かったです」
「そういえば、この二週間どちらへ行かれていたのですか?」
「ああ、実はフェロー王国の各領を回っていたんですよ」
俺の話にグランドマスターはピクリと反応する。
「そ、そうなんですか、フェロー王国の各領に……ち、ちなみにどの様な用件で各領を回られたのですか?」
「実はユートピア商会と商業ギルドの討伐部門で働いてくれる人材を探す為に各領を回っていたんですよ」
「し、商業ギルドの討伐部門ですか……」
なんだか、グランドマスターの歯切れが悪い。
一体、どうしたというのだろうか?
いや、まあいいか……。
「はい。そこで働いてくれる方の事を仮に『収穫人』と呼んでいるのですが、中々、優秀な人材を確保する事ができました。しかも、皆、スラム出身の人が多いんですよ? 働き者が多いですし、各領にユートピア商会の支部を作る事もできて万々歳ですよ」
「そ、そうですか……も、もしかして、その際、トースハウン領やボルウォイ領のギルドマスターと揉め事とか起こしたりとか……?」
んんっ?
トースハウン領とボルウォイ領?
ボルウォイ領はロキさんが向かった場所だから詳しくは知らないけど……。
「そうですね……冒険者がスラムの住民達に暴力を振っていたようでしたので、冒険者を撃退した事はありますが、揉め事を起こした認識はないですね? 間違った事をしたとも思っていませんし……ああ、でもトースハウン領に限らず、どの領の冒険者達も皆そんな感じでしたよ?? 皆、撃退しましたが……」
「そ、そうですか……げ、撃退しましたか……」
なんだかよく分からないが、グランドマスターの目が滅茶苦茶泳いでいる。
あ、そういえば……。
「そういえば、トースハウン領の冒険者ギルドのギルドマスターが無茶苦茶な事を言っていた様な……。ああ、思い出しました。あのギルドマスター、俺の従業員達が頑張って倒したクラーケンを横取りしようとしたんですよ? しかも、クラーケンを渡さないと言ったらなんていったと思います? 商業ギルドに迷宮の素材は卸さないと言ったんですよ?? しかも、冒険者達の活動を一時停止するとか訳の分からない脅しまでかけてきて……まあ丁度、商業ギルドに討伐部門を設置した所だったので、全然問題ありませんでしたが、自分の思い通りにならないからって癇癪を起すのはギルドマスターとしてどうなんだろうと思うのですが、グランさんはどう思いますか?」
俺がそういうと、グランドマスターは疲れ切った表情を浮かべた。
「ま、まったくもって、その通りです……じ、実はその件でお話があるのですが……」
「話ですか? 一体なんでしょう?」
「じ、実はですね。商業ギルドで討伐部門が設置されてからというものの、フェロー王国内の冒険者ギルドで少しばかり困った事が起きておりまして……」
「困った事?」
冒険者ギルドで一体何が起こっているのだろうか?
「はい。実は冒険者が大量脱退した影響によりフェロー王国内の冒険者ギルドでの依頼が対処できずに困っているのです」
まあ、そうなるよね?
元々、冒険者ギルドに対抗するつもりで商業ギルド内に討伐部門を設置したんだ。
正直、それは仕方のない事だと思う。
「おや、如何致しました?」
「い、いえ、モルトバの処分についてですが、現在検討中でして……」
グランは屋敷神からの問いにハンカチで汗を拭きながら答えた。
「……そうですか。それでは、モルトバ様の処分結果が決まり次第、こちらにも一報を頂けますかな?」
「わ、わかりました。モルトバの処分が決まり次第、連絡させて頂きます」
そういうと、屋敷神は笑顔を浮かべながら、ティーカップを手に取った。
「それはよかった。ああ、そちらのハーブティーもお飲み下さい。そちらは紫色の花を咲かせる芍薬の葉と茎を使ったものなんですよ? そういえば、紫色の芍薬の花言葉をご存知ですか?」
「芍薬の花言葉ですか? いえ……」
「そうですか。紫色の芍薬の花言葉は『怒り』『憤怒』といった意味があるのです。ああ、この場にお出しするべきハーブディーではありませんでしたね」
「そ、そうなんですか……」
「ええ、申し訳ございません。しかし、今回の一件についてはこちらもかなり腹に据えかねております。私共も納得できる様な……、そんな処分が下る事を期待しております。例えば、犯罪奴隷とかね……」
「え、ええ……貴重な意見ありがとうございます」
グランがそう呟くと、隣に座って俯いていたモルトバが目を剥いた。
その表情は、まるで話が違うと言わんばかりである。
「おや、モルトバ様。如何されましたか?」
「……い、いえ、なんでもありません」
なんでもないという割には、小刻みに足をゆすっている。
というより貧乏ゆすりが止まらない。
ついでにグランの目も泳いでいる。
全然、モルトバに視線を向けようとはしない。
本当にどうしたのだろうか?
俺はお通夜みたいになってしまった空気を換える為、適当な話題を振った。
「そ、そういえば、グランさん。二週間もお待たせしてしまい申し訳ございません」
「いえいえ、時間を頂いたお蔭で、白金貨二千百万枚を支払う決心がつきました。むしろ感謝している位ですよ」
「そうですか、それは良かったです」
「そういえば、この二週間どちらへ行かれていたのですか?」
「ああ、実はフェロー王国の各領を回っていたんですよ」
俺の話にグランドマスターはピクリと反応する。
「そ、そうなんですか、フェロー王国の各領に……ち、ちなみにどの様な用件で各領を回られたのですか?」
「実はユートピア商会と商業ギルドの討伐部門で働いてくれる人材を探す為に各領を回っていたんですよ」
「し、商業ギルドの討伐部門ですか……」
なんだか、グランドマスターの歯切れが悪い。
一体、どうしたというのだろうか?
いや、まあいいか……。
「はい。そこで働いてくれる方の事を仮に『収穫人』と呼んでいるのですが、中々、優秀な人材を確保する事ができました。しかも、皆、スラム出身の人が多いんですよ? 働き者が多いですし、各領にユートピア商会の支部を作る事もできて万々歳ですよ」
「そ、そうですか……も、もしかして、その際、トースハウン領やボルウォイ領のギルドマスターと揉め事とか起こしたりとか……?」
んんっ?
トースハウン領とボルウォイ領?
ボルウォイ領はロキさんが向かった場所だから詳しくは知らないけど……。
「そうですね……冒険者がスラムの住民達に暴力を振っていたようでしたので、冒険者を撃退した事はありますが、揉め事を起こした認識はないですね? 間違った事をしたとも思っていませんし……ああ、でもトースハウン領に限らず、どの領の冒険者達も皆そんな感じでしたよ?? 皆、撃退しましたが……」
「そ、そうですか……げ、撃退しましたか……」
なんだかよく分からないが、グランドマスターの目が滅茶苦茶泳いでいる。
あ、そういえば……。
「そういえば、トースハウン領の冒険者ギルドのギルドマスターが無茶苦茶な事を言っていた様な……。ああ、思い出しました。あのギルドマスター、俺の従業員達が頑張って倒したクラーケンを横取りしようとしたんですよ? しかも、クラーケンを渡さないと言ったらなんていったと思います? 商業ギルドに迷宮の素材は卸さないと言ったんですよ?? しかも、冒険者達の活動を一時停止するとか訳の分からない脅しまでかけてきて……まあ丁度、商業ギルドに討伐部門を設置した所だったので、全然問題ありませんでしたが、自分の思い通りにならないからって癇癪を起すのはギルドマスターとしてどうなんだろうと思うのですが、グランさんはどう思いますか?」
俺がそういうと、グランドマスターは疲れ切った表情を浮かべた。
「ま、まったくもって、その通りです……じ、実はその件でお話があるのですが……」
「話ですか? 一体なんでしょう?」
「じ、実はですね。商業ギルドで討伐部門が設置されてからというものの、フェロー王国内の冒険者ギルドで少しばかり困った事が起きておりまして……」
「困った事?」
冒険者ギルドで一体何が起こっているのだろうか?
「はい。実は冒険者が大量脱退した影響によりフェロー王国内の冒険者ギルドでの依頼が対処できずに困っているのです」
まあ、そうなるよね?
元々、冒険者ギルドに対抗するつもりで商業ギルド内に討伐部門を設置したんだ。
正直、それは仕方のない事だと思う。
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