転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

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番外編 神となった悠斗。現代日本に現れる

動き始める悪意

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 悠斗が元の世界、日本に降り立ち、神興会の勧誘を始めてから二週間が過ぎた頃、他の宗教団体では新興宗教『神興会』に改宗していく信者達に頭を悩ませていた。

「い、一体、何が起きているのだ……」

 毎月、一人、二人の改宗者であれば問題はない。
 しかし、たった二週間で数万を超える信者達が改宗したという今の現状は拙い。

 平成から令和にかけて世界の宗教地図は大きく変わろうとしている。
 平成元年には二億人近くいた宗教信者数は令和元年において一億三千万人まで減少。
 たった三十年の間に大凡、三割もの信者が減少しているのだ。

 それに加えてこの現状……。
 しかも、信者達の改宗先が新興宗教『神興会』とかいうポッと出の宗教団体である事も問題だ。子供がお遊びの一環で作った創作物の様な新興宗教に多くの信者を持っていかれ、解散の危機に追いやられるなんて……。

 現在、日本に置いて新興宗教の教団数は約四百教団程あるが、『神興会』の急激な台頭により弱小宗教の教団は解散の危機にあった。

「き、教祖様。如何致しましょう。このままでは拙いですよ。神興会の教祖は本当に邪気や病気を祓う力を持っているようですし、テレビでも大々的に取り上げられています!」
「ああ、わかっている……」

 信者達の入信理由は様々あるが、大体の入信理由は病気の悩み、貧困の動機、家庭内の不和の三つに分類される。
 つまり、現実世界での苦難を抱え込み、にっちもさっちも行かなくなったので神仏を頼る気持ちになったと、そういう事だ。
 そして、そうした動機で入信した信者は、当然の事ながら現世での御利益。それも、出来るだけ早く救いや解決策を得たいと考えている人が多い。

 神興会はその点を巧みに突いてきた。
 信者達の願いを先に叶える事で神興会に入信させ、入信させた信者達自ら進んで神興会を薦めさせる。
 新興宗教のくせに、あんなにデカい建物に拠点を移す位だ。
 お布施も相当な額貰っているに違いない。

 しかし、一体どうすれば……。

 幹部達の不安をかき立てぬよう、目を閉じて瞑想していると、外から慌しい音が聞こえてくる。

「なんだ……?」

 すると、扉を開けて信者の一人が入ってきた。

「た、大変です! 『顕蓮会』の教祖様がっ!?」
「うん? 『顕蓮会』の教祖がどうした?」

『顕蓮会』とは、日本において十万を超える信者数を誇り、構成員の中に暴力団員を抱える宗教団体だ。
 そこの教祖が一体何だというのだろうか?

 信者の息が整うまで待っていると、背後の扉がゆっくり開いていく。

「久しぶりですね……」
「お、お前は『顕蓮会』の教祖……。何故、ここに……」

 通常、教祖が他の宗教法人を訪れる事はまずない。
 唖然とした表情を浮かべていると、『顕蓮会』の教祖がニヤリと笑みを浮かべる。

「『生命の樹』の教祖。突然の事でさぞ混乱しているとは思いますが、私達と共に組みませんか?」
「それはどういう……」
「うん? そんな事、決まっているでしょう? 神興会ですよ。神興会……。あの新興宗教、この私の顕蓮会から数万人もの信者を引き抜いていきやがった。あなたの所も被害を受けたのでしょう?」
「……ああ、確かにそうだが」
「だったら! 迷う必要なんてないですよねぇ? 広域暴力団をバックに持つ私と、多くの信者を抱えるあなた! 私達が組めば怖いものなんてありません! 互いに協力し合い、あの新興宗教を潰しましょう? やられっぱなしでは面子が立たない。そうでしょう?」
「うむむ……」

 確かに、やられっぱなしでは面子が立たない。
 しかし、神興会は今、多くのメディアに注目されている。
 それだけに、下手に動く事ができないのも確かだ。

「迷っているようですねぇ……。それでは、こうしましょう。神興会への実行部隊は私達が送り込みます。あなた方には、資金面でのサポートをして頂きたい。如何です? 信者が減り心許ないとは思いますが、ここで神興会を潰しておかないと、これまで以上に信者を失う事になりますよ? それに宗教法人が解散に陥れば、困るのはあなたではありませんか?」

 確かに、折角立上げ軌道に乗ってきたばかりの新興宗教がなくなれば、私の生活は立ち行かなくなってしまう。

「た、確かにそうだが……」
「なら問題ありませんね。実は言うと既に二十を超える新興宗教の教団と手を組んでいるのです。神興会に困らされているのは、あなた方だけではないのですよ」
「……そうなのですか?」
「ええ、互いに手を取り合い、あの神興会を潰しましょう。そうすればきっと、離れていった信者達も戻ってきてくれます」
「……そうだといいのですがね。まあいいでしょう。確かに、神興会の台頭によりこちらも多大な被害を被っている。一緒になって戦ってくれる教団が大勢いるのはありがたい」

 私達は互いに手を取り合い握手すると、深い笑みを浮かべた。
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