最強呪符使い転生―故郷を追い出され、奴隷として売られました。国が大変な事になったからお前を買い戻したい?すいませんが他を当たって下さい―

びーぜろ

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第一章 最強呪符使い故郷を追われる

ポメちゃんとの遭遇

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「はあっ……。失敗しちゃったなぁ」

 絶壁から崖の下を眺めると、ドラゴン型に陥没した地面が見える。
 ドラゴンに荷台を引かせるの、カッコいいと思ったんだけど……。
 いまからでも崖を降りてドラゴンの所に向かおうか。
 呪符を頭に付けてキョンシーみたいにすれば動かせないこともないし……。
 崖の下を眺めながらそう考え込んでいると、背後からモンスターの鳴き声が聞こえてくる。

「ウー! ワンッワンッ!!」
「うん? あーっ、ポメちゃんだっ!」

 口を大きく開け涎を垂らしながらボクのことを威嚇しまくっているモンスターの名前は、ポメラニアン。この辺りに生息する犬型モンスターで、ドイツ原産の犬種に似ていたからボクがそう名付けた。

「そうだ! ポメちゃんに引かせよう!」

 元居た地球にも犬ぞりという乗り物があった。
 モンスターだけあって、地球産のポメラニアンよりも大きく頑丈。
 馬の代わりに丁度良い。

 早速、『隷属』の呪符を付すと、ポメラニアンは威嚇を止めてお腹を見せてくる。
 お腹を撫でてやるとポメラニアンは嬉しそうな声を上げた。

「さあ、おいでー、ポメちゃん。この監獄馬車を……。いや、ポメちゃんが引くから監獄ポメ車かな? まあ、なんでもいいや。監獄ポメ車を引いて近くの町まで向かっておくれ。そうしたら、格別に美味しいご飯を上げるからねー」
「キャンキャン?(えっ? この馬車を引くんですか?)」

「うんうん。ボクも君に出会えて嬉しいよ。大丈夫、ちゃんとご飯は上げるから。大船に乗ったつもりでいてっ!」
「キャンキャン?(ええっ? 話聞いてます?)」

「よし。それじゃあ、ポメちゃん。早速、町に向かおうか! 十二年間引き篭もっていたんだ。ボクには土地勘がまったくないからね。ポメちゃんの鼻と土地勘だけが頼りだよ!」

 ボクはポメちゃんを監獄ポメ車に繋ぐと、御者台に腰を落ち着かせる。

「さあ、夢の彼方へ。出発進行ぉ~!」
「キャンキャン!(ちゃんと話を聞いて~!)」

「ハッ、ハッ、ハッ」と荒い息を吐きながら、監獄ポメ車が悪路を進んでいく。

「ち、ちょっと、待ってっ! それ、私の監獄馬車ぁぁぁぁ!」

「うん? いま、なにか聞こえたような……。気のせいかな?」

 なんだか後ろから声が聞こえたような気がするけど、きっと気のせいだろう。こんな所に人がいる訳がない。
 あっ、兵士はいたかな?
 まあいいや。

「町はどんな所かなぁ~♪」

 とっても楽しみだ。

 ポメちゃんが引く監獄ポメ車の御者台に乗りながら、ボクは麓にある町に向かった。

 ◇◆◇

「ねえ、ポメちゃん? なんで、こんな所に連れてきたの?」
「クーンクーン(だって、近くの町って言ったから……)」

「まあ、確かに二足歩行してるけどさ……。ちょっと種族が違くない? ボク、一応、人族なんだけど? ポメちゃんの目にはボクの姿、どう映っているのかな?」

 ポメラニアンのポメちゃんが引く監獄ポメ車が向かった場所、それはゴブリンの集落だった。

 いや、おかしいとは思っていた。
 だって、ポメちゃんが道を外れて森の中を直進していくんだもの。
 だけど、この辺りに土地勘があるポメちゃんが進む道だ。
 きっと、間違いない。と、信じた末に着いた場所がゴブリンの集落。

 これには思わず、御者台の上で宙を仰いでしまった。

「ゴブ。ゴブ!(人間だ。人間だっ!)」
「ゴブゴブゴブゴ?(なんでこんな所に人間が?)」
「ゴブ。ゴブゴブゴ!(関係ない。遊び道具が来たぜ!)」

 どうやらゴブリンさん達。ボク達のことを歓迎してくれているらしい。
 集落からゴブリンがわらわらと……。

「うーん。ゴブリンって、臭いし、汚いし、金にならない(らしい)から、好んで倒したくないんだけど……。でも、もう目を付けられちゃってるみたいだし……。困ったなぁ」
「クーンクーン」

 ポメちゃんの顎の下を撫でながら考えごとをしていると、ゴブリンの声が辺りに響く。

「ゴブゴブ!(捕えろっ!)」
「ゴブ!!(おおっ!!)」

 号令を合図にゴブリンが津波のように襲い掛かってきた。

「う~ん。仕方がないなぁ……」

 ダンジョンにいるゴブリンと違い、野生のゴブリンは集落に人間を攫う習性がある。
 万が一、見落として人間まで処理してしまうのは、可哀想だ。
 念の為、『探知』の呪符を頭に翳し、集落に人間がいないか探っていく。

「集落にはゴブリンだけ……。それじゃあ、問題ないかな?」

 宙をなぞり亜空間から妖刀ムラマサを取り出すと、呪符を周囲に浮かべ、その中から『身体強化』の呪符を選択すると身体を強化し、刀を斜めに構える。

『起きろ。ムラマサ』

 そう開合を唱えると、妖刀ムラマサの刀身から黒い瘴気が湧いてきた。

「それじゃあ、ポメちゃんは後ろにいてね? これに取り込まれたら……死んじゃうよ?」

「ゴブゴブッ!(俺が一番乗りだ!)」
「ゴブ、ゴブゴブ!(待て、何かおかしい!)」

 何匹かのゴブリンは妖刀ムラマサの異様さに気付いたようだ。けど、もう遅い。

「さようなら。ごめんね?」

 妖刀ムラマサをゆっくり薙ぐと黒い奔流がゴブリンの集落を襲った。
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