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第一章 最強呪符使い故郷を追われる
サバイバル試験⑭(何事もなく討伐するリーメイ)
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どうやらオークロードでも厳しいらしい。
「仕方がないか……」
あんまりライバルは助けたくなかったんだけど……。
というより、冒険者ギルドはなにを考えているのだろうか?
ドラゴン一匹討伐することのできない試験官をサバイバル試験に投入しても足手まといになるだけなのに……。まあいいか。
ログハウスの外に出ると、少し離れた広場に移動する。
そして、宙をなぞり亜空間から妖刀ムラマサを取り出すと、呪符を周囲に浮かべ、なんの呪符を使うか少しだけ考える。
「うーんと、まあ、これでいっか?」
周囲に浮かべた呪符の中から『身体強化』の呪符を掴むと身体を強化し、刀を斜めに構え前に出る。そして『挑発』の呪符を自分に重ね掛けして、試験官と見習い冒険者達を追い掛けるドラゴン達の注目を引くと開合を唱えた。
『起きろ。ムラマサ』
開合を唱えると同時に、刀身から黒い瘴気が立ち昇る。
「「グギャアアアアッ!!」」
殺到してくるドラゴン達を前に刀身を構えたボクは妖刀ムラマサを横に凪いだ。
――瞬間、黒い雪崩のような瘴気がドラゴン達を襲う。
悲鳴もなく黒い瘴気に吸い込まれたドラゴン。
それを見ていた試験官と見習い冒険者達がボクに唖然とした視線を向けてくる。
「……ふうっ、これで良し。それじゃあ、少し休憩しようかなぁ」
ドラゴン達が黒い瘴気の中に飲み込まれたことを確認すると、亜空間に妖刀ムラマサを放り込む。
すると、それを見ていたオークロードが声をかけてきた。
「フゴッ、フゴッ(ご、ご苦労様です。ログハウスに紅茶を用意してありますのでゆっくりお休みください)」
「うん。ありがとー!」
流石は豚ちゃん。
『隷属』の呪符が働いているためか、もの凄く従順に働いてくれる。
やっぱり、一体だけでもいいからダンジョンの外に持って帰りたいなぁ……ダメかな?
唖然とした表情を浮かべたまま固まってしまった試験官と見習い冒険者達を尻目にログハウスに戻るとソファに腰掛けオークロードが煎れてくれた紅茶を口に含んだ。
「美味しい。流石はボクの豚ちゃんだね!」
「フゴッ、フゴッ(ありがとうございます)」
気が利いて料理の腕も上々。
ボク専属の使用人として欲しいくらいだ。
ダンジョン内に建てたログハウス。
一仕事を終えたボクは、警備をオークロードに任せ、ゆっくり休むことにした。
◇◆◇
「なあ、こりゃあ、どういうことだ……」
「お、俺が知るかよ……。そんなこと……」
モンスターに襲われないよう身を隠しながら見習い冒険者達を見守る試験官の一人。Cランク冒険者のジャスタウェイは困惑していた。
同期のCランク冒険者、ラストンも同様だ。
遠目で見習い冒険者達を監視をしていたら突然、地面が揺れ隆起し、辺り一帯のモンスターすべてが光り輝いたかと思えば上位種に変位したからだ。
なんの変哲もないゴブリンがゴブリンキングに、オークキングがオークロードに……。
普通のドラゴンが属性を持った上位種ドラゴンに進化していく姿を目の当たりにした俺達の顔から絶え間なく冷や汗が流れ出る。
こんなこと、普通のダンジョンでは起こり得ない。
あり得ない事態が発生していた……。
おいおいおいおい。ふざけんなよ!?
一体、ダンジョン内でなにが起こっている??
「これは俺達の手に余る事態だ。ダンジョンから出てギルドに報告を……」
「落ち着け、時間まで門は閉ざされているんだぞ? 明日の午前八時までダンジョンから出れる訳ないだろ……」
「そ、そういえば……」
そうだった。
ここは冒険者ギルドが管理するダンジョン。
ダンジョンから出るためには、ダンジョンの管理権限を持つ者が外からダンジョンの出入口を開かなければならない。
しかし、それでは……。
「だ、だが、周りを見てみろ……! ダークドラゴンにホワイトドラゴン、オークロードに、ゴブリンキングだ! Cランク冒険者である俺達にどうこうできるモンスターじゃない……」
「じゃあどうする。奴等の前に姿を現しブレスでも浴びてくるか? それこそ死んじまうよ。ここはあのモンスター達に気付かれぬよう。隠密に徹するべきだ……」
「……だが、見習い冒険者達はどうする」
「……仕方があるまい。俺達が助けに行っても被害が増えるだけだ。諦めざる負えんだろ」
「し、しかし……!」
「しかしもクソもねえ! こうなったらどうしようもないだろっ! 俺達にできることはあいつ等が死なない様に祈ることだけだ……」
ラストンの言葉に俺は下唇を強く噛む。
確かに、上位種のモンスターが相手では俺達が助けに行った所でどうしようもない。俺達にできることと言えば、助けを待つ他ないのだ。
木々に身を顰め、上位種のモンスターがいなくなるまでの間、その場でジッと身を潜める。すると、見習い冒険者の一人が上位種モンスターと遭遇しようとしているのを目に捕えた。
「っ!」
――そっちは駄目だっ!
その場から立ち上がり、見習い冒険者を助けに向かおうとすると、横からガッと手を掴まれた。
「あいつはもう無理だっ! 諦めろっ!」
「だ、だがっ!」
このままでは見習い冒険者が上位種のモンスター餌食に……!
すると、その見習い冒険者の進路に二人の試験官が姿を現した。
「仕方がないか……」
あんまりライバルは助けたくなかったんだけど……。
というより、冒険者ギルドはなにを考えているのだろうか?
ドラゴン一匹討伐することのできない試験官をサバイバル試験に投入しても足手まといになるだけなのに……。まあいいか。
ログハウスの外に出ると、少し離れた広場に移動する。
そして、宙をなぞり亜空間から妖刀ムラマサを取り出すと、呪符を周囲に浮かべ、なんの呪符を使うか少しだけ考える。
「うーんと、まあ、これでいっか?」
周囲に浮かべた呪符の中から『身体強化』の呪符を掴むと身体を強化し、刀を斜めに構え前に出る。そして『挑発』の呪符を自分に重ね掛けして、試験官と見習い冒険者達を追い掛けるドラゴン達の注目を引くと開合を唱えた。
『起きろ。ムラマサ』
開合を唱えると同時に、刀身から黒い瘴気が立ち昇る。
「「グギャアアアアッ!!」」
殺到してくるドラゴン達を前に刀身を構えたボクは妖刀ムラマサを横に凪いだ。
――瞬間、黒い雪崩のような瘴気がドラゴン達を襲う。
悲鳴もなく黒い瘴気に吸い込まれたドラゴン。
それを見ていた試験官と見習い冒険者達がボクに唖然とした視線を向けてくる。
「……ふうっ、これで良し。それじゃあ、少し休憩しようかなぁ」
ドラゴン達が黒い瘴気の中に飲み込まれたことを確認すると、亜空間に妖刀ムラマサを放り込む。
すると、それを見ていたオークロードが声をかけてきた。
「フゴッ、フゴッ(ご、ご苦労様です。ログハウスに紅茶を用意してありますのでゆっくりお休みください)」
「うん。ありがとー!」
流石は豚ちゃん。
『隷属』の呪符が働いているためか、もの凄く従順に働いてくれる。
やっぱり、一体だけでもいいからダンジョンの外に持って帰りたいなぁ……ダメかな?
唖然とした表情を浮かべたまま固まってしまった試験官と見習い冒険者達を尻目にログハウスに戻るとソファに腰掛けオークロードが煎れてくれた紅茶を口に含んだ。
「美味しい。流石はボクの豚ちゃんだね!」
「フゴッ、フゴッ(ありがとうございます)」
気が利いて料理の腕も上々。
ボク専属の使用人として欲しいくらいだ。
ダンジョン内に建てたログハウス。
一仕事を終えたボクは、警備をオークロードに任せ、ゆっくり休むことにした。
◇◆◇
「なあ、こりゃあ、どういうことだ……」
「お、俺が知るかよ……。そんなこと……」
モンスターに襲われないよう身を隠しながら見習い冒険者達を見守る試験官の一人。Cランク冒険者のジャスタウェイは困惑していた。
同期のCランク冒険者、ラストンも同様だ。
遠目で見習い冒険者達を監視をしていたら突然、地面が揺れ隆起し、辺り一帯のモンスターすべてが光り輝いたかと思えば上位種に変位したからだ。
なんの変哲もないゴブリンがゴブリンキングに、オークキングがオークロードに……。
普通のドラゴンが属性を持った上位種ドラゴンに進化していく姿を目の当たりにした俺達の顔から絶え間なく冷や汗が流れ出る。
こんなこと、普通のダンジョンでは起こり得ない。
あり得ない事態が発生していた……。
おいおいおいおい。ふざけんなよ!?
一体、ダンジョン内でなにが起こっている??
「これは俺達の手に余る事態だ。ダンジョンから出てギルドに報告を……」
「落ち着け、時間まで門は閉ざされているんだぞ? 明日の午前八時までダンジョンから出れる訳ないだろ……」
「そ、そういえば……」
そうだった。
ここは冒険者ギルドが管理するダンジョン。
ダンジョンから出るためには、ダンジョンの管理権限を持つ者が外からダンジョンの出入口を開かなければならない。
しかし、それでは……。
「だ、だが、周りを見てみろ……! ダークドラゴンにホワイトドラゴン、オークロードに、ゴブリンキングだ! Cランク冒険者である俺達にどうこうできるモンスターじゃない……」
「じゃあどうする。奴等の前に姿を現しブレスでも浴びてくるか? それこそ死んじまうよ。ここはあのモンスター達に気付かれぬよう。隠密に徹するべきだ……」
「……だが、見習い冒険者達はどうする」
「……仕方があるまい。俺達が助けに行っても被害が増えるだけだ。諦めざる負えんだろ」
「し、しかし……!」
「しかしもクソもねえ! こうなったらどうしようもないだろっ! 俺達にできることはあいつ等が死なない様に祈ることだけだ……」
ラストンの言葉に俺は下唇を強く噛む。
確かに、上位種のモンスターが相手では俺達が助けに行った所でどうしようもない。俺達にできることと言えば、助けを待つ他ないのだ。
木々に身を顰め、上位種のモンスターがいなくなるまでの間、その場でジッと身を潜める。すると、見習い冒険者の一人が上位種モンスターと遭遇しようとしているのを目に捕えた。
「っ!」
――そっちは駄目だっ!
その場から立ち上がり、見習い冒険者を助けに向かおうとすると、横からガッと手を掴まれた。
「あいつはもう無理だっ! 諦めろっ!」
「だ、だがっ!」
このままでは見習い冒険者が上位種のモンスター餌食に……!
すると、その見習い冒険者の進路に二人の試験官が姿を現した。
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