最強呪符使い転生―故郷を追い出され、奴隷として売られました。国が大変な事になったからお前を買い戻したい?すいませんが他を当たって下さい―

びーぜろ

文字の大きさ
61 / 73
第二章 新しい生活

その頃のアクバ帝国

しおりを挟む
 リーメイが隣国で悠々自適なスローライフを送っている頃、アクバ帝国では、深刻な事態に陥っていた。

「――なに? 呪力発電所が停まっただと? それはどういうことだ? なぜ、急に発電所が止まった?」
「わ、わかりません。呪力発電所で警告音が鳴ったかと思えば、いきなり緊急停止してしまいまして……」

 呪力発電所。それは、アクバ帝国に流通する電化製品を動かすために必要な電力を生み出す発電設備の総称である。
 電力は様々なエネルギーに変換できる優れた特性を持ち、アクバ帝国は、この世界で唯一、電力というエネルギーを使用している。
 しかし、電力というエネルギーには一つだけ『貯めることができない』という致命的な欠陥があり、この欠点を克服することのできなかった他の国は、電力という安価なエネルギー源を使うことなく魔石という魔物の体内で生成される石を動力源とし、魔道製品を動かしてきた。
 アクバ帝国も、昔は魔石を動力源としていたが、かの地に暮らす一族が、呪力発電所なる呪いを元に毎日必要な電力を生み出す装置を開発したことから、今は呪力発電所で作られる安価な電力を動力源としてきた経緯がある。
 その呪力発電所が停まったと聞いたアクバ帝国の皇帝アクバ六世は頭を抱えた。

「……電力は、電力はいつまで持つ?」
「ま、間もなく切れるかと……」
「な、なにっ!?」

 アクバ六世がそう声を荒げるのと同時に、電力により灯っていた明かりが光を失い部屋が闇に包まれた。

「なっ!? なにが起こっているっ!? 明かりだ。明かりを付けろ!」

 報告に来た宰相は、こうなることを予想し、あらかじめ蝋燭を用意していたため、慌てふためくアクバ六世を落ち着けるため、それに火を灯す。

「陛下。落ち着いて下さい」
「こ、これが落ち着いていられるかっ! 呪力発電所が停まったということは、我が国の産業すべてが止まってしまうことと同義なのだぞっ!? 早く原因を突き止め、呪力発電所を再開させろっ! 一体、何基だ! 何基停まった!?」

 そう。現在、アクバ帝国の産業は電力というエネルギーがなければ成り立たずにいた。安価な電力で多種多量の製品や農作物を作り、他国にそれを輸出することで国力を高めてきた。
 今更、電力変換効率の悪い魔石による発電に頼ることはできない。

「三十基中、二十基が止まっております。現在、稼働中の呪力発電所は占術士であるニセーメイ様が治める地にある呪力発電所のみです」

 その報告を受け、アクバ六世は絶句する。

「二、二十基だと……。半分以上の発電所が停まっているではないかっ!? なぜっ……なぜ、ニセーメイの治める地にある呪力発電所だけ稼働しているのだっ!?」
「おそらく、ニセーメイ様自身の呪力によるものかと……」

 ニセーメイは高名な占術士であると共に、呪力の扱いにも長けている。

「くっ、ニセーメイの占いにあった滅びの時とはこのことかっ! こんなことなら、もっと早くに呪物を集めておけば……今はとにかく、ニセーメイを呼べ!」

「し、しかし、今、ニセーメイ様をこの地に呼べば、ニセーメイ様が治めている地の呪力発電所も停まってしまいますっ!」
「くっ! なら、どうしたらいいのだっ!」

 呪力発電所は国の礎そのものだ。
 完全になくなれば国が傾く。かといって、電力変換効率の悪い魔石による発電などに頼っては、他国との競争力が……。

「そ、そうだっ! 呪力発電所を建てた者を呼べ!」

 こういう時は呪力発電所を建てた者に対処させるのが一番だ。
 そう思っての発言だったが……。

「残念ながら前皇帝にして陛下のお父君であらせられるアクバ五世の墓を建てる際、人身御供として一緒に埋葬しました」
「馬鹿かっ! 誰だ。そんな愚かな真似をした奴はっ! 生き残りはいないのかっ!?」
「前皇帝の意思です」
「ク、クソ親父のせいかぁぁぁぁ!」

 あの盆暗めっ!
 人身御供なんて時代遅れなことをしおってからにっ!
 晩年は痴呆を煩わせていたが、まさかここまでだったとは……。

「……原因がクソ親父にあることはよくわかった! それで、生き残りはいないのかっ!」
「そうですね。確か、かの地に一人だけ生き残りがいた様な……」
「かの地? どこだっ! すぐにその者を呼び呪力発電所の運転を再開させろっ!」
「……い、いえ、とても話し辛いことで申し訳ないのですが」
「なんだっ! さっさと話せっ!」

 意味のない問答をするなっ!
 こちらは時間がないのだっ!

 すると、宰相は眉間を抑えながら話始める。

「実は、陛下の勅命を受け接収した土地の者が呪力発電所を建てた一族最後の生き残りでして……」
「おお、それで? その生き残りは今、どこに?」

 ようやく見えてきた巧妙に声が上ずる。
 しかし、返ってきた答えはとんでもないものだった。

「……兵士長が奴隷商人に売りました」
「はっ? はあっ? 今、なんと?」
「へ、兵士長のアンハサウェイが金貨十枚で奴隷商人に売りました。ですので、どこにいるのかわかりません……」
「ふっ、ふざけるなぁぁぁぁ! 誰がそんなことをしろと命じたのだっ!」

 私が命じたのは、呪物の回収と土地の接収だけだ。
 そんなことは命じていない。

「い、一般的に土地をいきなり接収され生きていける者はおりません。で、ですので、アンハサウェイはせめて生きていけるようにと、奴隷商人に預けたと申しており……」
「だったら、その生き残りを買い戻せっ! 今すぐだっ!」
「は、はいっ!」

 アクバ六世は、勝手な行動をしたアンハサウェイに強い怒りを覚え、テーブルに思い切り拳を打ち付けた。

 ---------------------------------------------------------------

 2022年8月20日PM15時の更新となります。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

処理中です...