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第二章 アベコベの街
第50話 攫われてやってきたハーフエルフの少女③
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「……ああっ、五年の歳月を経てノース様に再びお会いすることができたのも運命です! 私、ノース様のためなら命を賭けることも厭いませんわ!」
「ま、まあ、命は大事にして欲しいかな?」
とりあえず、適当にそう相槌をいれると、ナビさんが視界に文字を浮かべてきた。
<(n´Д`)ハー とりあえず、とんでもなく面倒臭いハーフエルフということだけはわかりましたね。まさか三十分もこの話に付き合わされるとは思いもしませんでした>
僕もそう思う。
クロユリさんと話していると、酷く疲れる。
「そ、それで、クロユリさんはこれからどうしたいのかな? 森に戻りたいなら送り届けるけど……」
そういうと、クロユリさんは目を輝かせながら呟いた。
「えっ!? ということは、森に戻りたくないと言えば、ずっとノース様と一緒にいられるということですか!?」
「ええっ!?」
そ、その発想はなかった……。
僕が唖然とした表情を浮かべていると、またもやナビさんが視界に文字を浮かべてきた。
<ナビは嫌ですよ。こんな面倒臭いハーフエルフの相手をするのは……というより、このハーフエルフ、なんだか怖くないですか? ノース様を慕うあまりに精神がだいぶ歪んでません?>
た、確かに……慕ってくれているかどうかは分からないが、底知れぬ狂気を感じる。
しかし、両親を亡くしたハーフエルフをまた森に返すのもなんだか可哀想な気がする。まあ、とりあえずは話の方向性を変えよう。
「ち、ちなみに、クロユリさんは両親がお亡くなりになられてからどうやって生活をしていたの?」
僕がそう質問すると、クロユリさんは満面の笑顔でとんでもないことを話し出した。
「実は私、エルフであるお父様と人間であるお母様を親に持つ混血、つまりハーフエルフなのですが、両親は五年前のあの日、共に天寿を全うされました」
「そ、そうなんだ……」
天寿を全うするというからには、寿命だったのだろうか……悲しいことだ。
ご両親が亡くなってからの五年間、さぞかし大変だったことだろう。
なんで笑顔を浮かべてそんなことが言えるのか分からないけど……。
「はい。運命のあの日、お母様が突然、ナイフを片手に浮気性のお父様を刺し貫き、『私もすぐに貴方の下に向かいます』と呟くと、共に笑顔を浮かべ、天寿を全うされました」
「…………」
ク、クロユリさんは一体なにを言っているのだろうか?
<……ま、まあ、ある意味、天寿を全うしたんでしょうね? 浮気性のお父様が嫉妬深いお母様に刺され天寿を全うする。これも一つの愛の形なのでしょう……まあ、いいんじゃないでしょうか? 刺された張本人であるお父様とやらも、笑顔を浮かべて天寿を全うされたようですし……>
「って、いやいやいやいや、聞きたいのは、どうやってこの五年間生活してきたのかってことなんですけどっ!?」
なんでこんな重い話を聞かされているの!?
<いえいえ、これはこれで興味深い話ですよ。エルフにも痴情の絡れというものがあるんですね((φ( ̄Д ̄ )ホォホォ>
いや、そんな話は聞きたくなかった。
「そ、そうですよね。私の両親が全うした美しい最後をノース様と共有したくて、つい話が脱線してしまいました……」
<美しい最後? このハーフエルフの脳内には花でも咲いているのでしょうか?>
ナビさんはクロユリさんのことを名前で呼ぶのは止めたようだ。
さっきからハーフエルフという呼び方で統一している。
「そ、そうだね。ご両親の美しい最期についてはもういいから、その後、どのように生活を送ってきたのか教えてくれるかな?」
「はい。お父様とお母様が美しい最期を遂げられた後、私は両親を森に還し、森の精霊に育てられながら一人で育ちました」
クロユリさんがそう言うと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<森の精霊ですか……ようやく、まともな話が聞けそうですね>
僕もナビさんと同じ気持ちだ。
正直言って、ご両親の美しい最期とやらの話をされた時にはどうしようかと思った。
「両親が美しい最期を遂げてから三日。私は森の中で運命の出会いを果たします」
「う、うん。大丈夫? また脱線しかけてない?」
「はい! もちろんです。私の両親が美しい最期を遂げてから三日目。人恋しさから森の中を彷徨っていると、私はスライムと出会いました。スライムは私を見るなり、プルプル震えながら襲い掛かってきたのです。あの時は正直、もうダメかと思いました……しかし、その時私を助けて下さったのがノース様です」
「ね、ねえ、やっぱり脱線してない? 脱線してるよね!?」
「いいえ、しておりません。凶悪なスライムから助けて下さったのノース様は、自分の名を告げるとそのまま家のある方向に戻っていってしまいました。そこから、私の新しい生活が始まったのです!」
<なんだか、気になる展開になってきましたね>
う、うん。そうだね。
もう僕としては、お腹一杯なんだけど……。
「そう! ノース様と会ったあの日から毎日、欠かさずノース様の尊顔を拝見するため、森の奥底にある家からノース様の住む家の往復生活が始まりました」
「ま、まあ、命は大事にして欲しいかな?」
とりあえず、適当にそう相槌をいれると、ナビさんが視界に文字を浮かべてきた。
<(n´Д`)ハー とりあえず、とんでもなく面倒臭いハーフエルフということだけはわかりましたね。まさか三十分もこの話に付き合わされるとは思いもしませんでした>
僕もそう思う。
クロユリさんと話していると、酷く疲れる。
「そ、それで、クロユリさんはこれからどうしたいのかな? 森に戻りたいなら送り届けるけど……」
そういうと、クロユリさんは目を輝かせながら呟いた。
「えっ!? ということは、森に戻りたくないと言えば、ずっとノース様と一緒にいられるということですか!?」
「ええっ!?」
そ、その発想はなかった……。
僕が唖然とした表情を浮かべていると、またもやナビさんが視界に文字を浮かべてきた。
<ナビは嫌ですよ。こんな面倒臭いハーフエルフの相手をするのは……というより、このハーフエルフ、なんだか怖くないですか? ノース様を慕うあまりに精神がだいぶ歪んでません?>
た、確かに……慕ってくれているかどうかは分からないが、底知れぬ狂気を感じる。
しかし、両親を亡くしたハーフエルフをまた森に返すのもなんだか可哀想な気がする。まあ、とりあえずは話の方向性を変えよう。
「ち、ちなみに、クロユリさんは両親がお亡くなりになられてからどうやって生活をしていたの?」
僕がそう質問すると、クロユリさんは満面の笑顔でとんでもないことを話し出した。
「実は私、エルフであるお父様と人間であるお母様を親に持つ混血、つまりハーフエルフなのですが、両親は五年前のあの日、共に天寿を全うされました」
「そ、そうなんだ……」
天寿を全うするというからには、寿命だったのだろうか……悲しいことだ。
ご両親が亡くなってからの五年間、さぞかし大変だったことだろう。
なんで笑顔を浮かべてそんなことが言えるのか分からないけど……。
「はい。運命のあの日、お母様が突然、ナイフを片手に浮気性のお父様を刺し貫き、『私もすぐに貴方の下に向かいます』と呟くと、共に笑顔を浮かべ、天寿を全うされました」
「…………」
ク、クロユリさんは一体なにを言っているのだろうか?
<……ま、まあ、ある意味、天寿を全うしたんでしょうね? 浮気性のお父様が嫉妬深いお母様に刺され天寿を全うする。これも一つの愛の形なのでしょう……まあ、いいんじゃないでしょうか? 刺された張本人であるお父様とやらも、笑顔を浮かべて天寿を全うされたようですし……>
「って、いやいやいやいや、聞きたいのは、どうやってこの五年間生活してきたのかってことなんですけどっ!?」
なんでこんな重い話を聞かされているの!?
<いえいえ、これはこれで興味深い話ですよ。エルフにも痴情の絡れというものがあるんですね((φ( ̄Д ̄ )ホォホォ>
いや、そんな話は聞きたくなかった。
「そ、そうですよね。私の両親が全うした美しい最後をノース様と共有したくて、つい話が脱線してしまいました……」
<美しい最後? このハーフエルフの脳内には花でも咲いているのでしょうか?>
ナビさんはクロユリさんのことを名前で呼ぶのは止めたようだ。
さっきからハーフエルフという呼び方で統一している。
「そ、そうだね。ご両親の美しい最期についてはもういいから、その後、どのように生活を送ってきたのか教えてくれるかな?」
「はい。お父様とお母様が美しい最期を遂げられた後、私は両親を森に還し、森の精霊に育てられながら一人で育ちました」
クロユリさんがそう言うと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<森の精霊ですか……ようやく、まともな話が聞けそうですね>
僕もナビさんと同じ気持ちだ。
正直言って、ご両親の美しい最期とやらの話をされた時にはどうしようかと思った。
「両親が美しい最期を遂げてから三日。私は森の中で運命の出会いを果たします」
「う、うん。大丈夫? また脱線しかけてない?」
「はい! もちろんです。私の両親が美しい最期を遂げてから三日目。人恋しさから森の中を彷徨っていると、私はスライムと出会いました。スライムは私を見るなり、プルプル震えながら襲い掛かってきたのです。あの時は正直、もうダメかと思いました……しかし、その時私を助けて下さったのがノース様です」
「ね、ねえ、やっぱり脱線してない? 脱線してるよね!?」
「いいえ、しておりません。凶悪なスライムから助けて下さったのノース様は、自分の名を告げるとそのまま家のある方向に戻っていってしまいました。そこから、私の新しい生活が始まったのです!」
<なんだか、気になる展開になってきましたね>
う、うん。そうだね。
もう僕としては、お腹一杯なんだけど……。
「そう! ノース様と会ったあの日から毎日、欠かさずノース様の尊顔を拝見するため、森の奥底にある家からノース様の住む家の往復生活が始まりました」
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