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第1話 大魔王から世界を救いました。
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暗黒大陸、魔王城の最上階。
勇者マコトは、数々の冒険の末、魔王城へと辿り着き、仲間達と共に遂に世界を支配していた魔王ハセガワの討伐を成し遂げた。
「フハハハハッ! 流石だな、勇者マコトよ。しかし、不幸な事だ。なまじ強いばかりに、これから大いなる苦しみを味わう事になるだろう。嘆き悲しむがいい! お前が悲愴にくれる姿をあの世で見守らせて貰おう!」
魔王ハセガワは、死の間際、勇者マコトにそう言い残すと杖そしてサングラスを残し消えていく。
「魔王ハセガワ……強敵だった。よし、魔王ハセガワを討伐した証に、〔髑髏のついた趣味の悪いの杖〕と〔サングラス〕を回収し、城へ戻ろう。これで世界は魔王の恐怖から解き放たれたんだっ!」
「やりましたな。マコト殿!」
勇者マコトが魔王に最後の一撃を与える前に、目晦ましの呪文を唱えてくれた大賢者スラングが勇者マコトに声をかけてくる。
「ああ、スラングの目晦ましなくして魔王を倒す事はできなかった。本当にありがとう。」
「そう言って頂けると……。異世界からこの世界を救いに来て下さった勇者様のお力になれただけで光栄です。」
勇者マコトが、ヤレヤレといった表情を浮かべると、落ちている〔髑髏のついた趣味の悪いの杖〕を拾いスラングへと手渡した。
「世界中を恐怖の渦に叩き込んだ諸悪の根源、魔王は倒した。これから俺達の物語が始まるんだ! 魔王を倒した英雄としての物語がなっ。」
「マ、マコト殿……マコト殿について来て以降、何度となく、こいついつか殺してやろうか……とか、いつも雑用ばかり押し付けやがって……とか、カッコつけやがっていい気になるんじゃねーぞ……とか思っておりましたが、今まで事を起こさなくて正解でした。本当にありがとうございます!」
「えっ、お前そんな事思っていたの!?」
大賢者スラングの言葉に、勇者マコトが驚愕の表情を浮かべると、大賢者スラングの持つ〔髑髏のついた趣味の悪いの杖〕の髑髏部分が罅割れ、邪悪な瘴気が立ち上る。
「ゆ、勇者マコトッ! スラングから離れて下さい! 大賢者スラングッ! いますぐその醜悪な顔をマコト様から遠ざけ〔髑髏のついた趣味の悪いの杖〕を遠くへッ!」
大神官ダーマが大賢者スラングをディスりながら〔髑髏のついた趣味の悪いの杖〕を放る様に指示すると、髑髏部分が破裂し、大地が脈動を打つ。
そして、髑髏部分から黒い煙と共に笑い声が聞こえてきた。
「フハハハハッ! 勇者よ。よくぞワシを封印から解いてくれた……。ワシが王の中の王、大魔王コサカだ。ワシは待っておったのだ。そなたのような若者が現れる事を……。ワシを封印せし魔王ハセガワを倒した事、誠に見事。どうだ? ワシと共に世界を征服せぬか?」
大魔王コサカの付けている闇の宝玉が怪しく光る。
「大魔王コサカの戯言など聞いてはなりません!」
大神官ダーマがそう叫ぶと鳥肌が立つ程の悍ましさが、勇者パーティーを包み込んだ。
「こ、これはいけません! 勇者マコト! ここは一旦退却いたしましょう! 魔王との戦いの傷が癒えていない今、大魔王コサカと戦うべきではありません!」
ここまで支えてきてくれた心の友、大戦士センシ……いや、職業が大戦士なのだが彼の名前は紛れもなくセンシだ。大戦士センシがそう叫ぶ。
「フハハハハッ! ワシを封印から解きし賢き者よ。ワシを封印から解いた褒美に、主の望むものをくれてやろう。」
ここで心変わりした大戦士センシが、急に大魔王コサカに叫び出した。
「ギャルのパンティをおくれ!」
空気を読めッ! これだから童貞大戦士は困る。
だから冒険に出る前にソープで身も心も洗い流して貰えと言ったんだ!
「発情期の猫が、そんなもので良ければくれてやろう。」
大魔王コサカがそう呟くと、大戦士センシの頭上にピンク色のパンティが落ちてきた。
大戦士センシがそのパンティを掴むと、即刻、頭から被りだした。
見た目は完全に変態仮面である。
お前がそんな性癖の持ち主でなければ、この勇者パーティーに誘わなかった。
パンツにどれだけの大腸菌やカンジダ菌などのバクテリアが存在していると思っているんだ。この馬鹿者め!
「勇者マコト……今、幸せであります。」
いや、知るか! 大腸菌とカンジダ菌に塗れて死ねェェェ!
俺は大戦士センシを見限ると、仲間に退却を促す。
「俺はお前たちがこの場から去るまでの間、足止めをする!」
「ゆ、勇者マコト……それでは!」
大魔王コサカを目の前に後ろを振り返る訳にはいかない。
大神官ダーマの声に俺はこう返す事にした。
「異世界から来た部外者がこの世界の未来を作るんじゃない! お前たちが、この世界の未来を作るんだ。行け! 俺の命を無駄にするな! お前たちの未来は俺が守る!」
俺の言葉に感銘を受けた仲間たちは大魔王が完全復活する前に退却していく。
「ああ、それでいい。」
そして、完全復活した大魔王コサカとの死闘が始まった。
死闘が始まってから数日後……。
「ワシを封印した魔王を倒し、そして、ワシを半焼半死に負い込む等、普通の勇者にできる事ではない。ワシは今、改心したのだ。どうだ? ワシと一緒にこの世界を支配してみぬか?」
なんとか半焼半死に負い込んだ大魔王コサカが小賢しく俺に提案をしてきた。
「ふざけるなッ! 死に損ないが何を言う!」
俺は怒りに任せ、大魔王に呟く。
「決して、ワシが死にたくないからこんな事を言っている訳ではないぞ? 復活して間もなくして死ぬ等、冗談ではない! 等とも思っておらん。ワシの半身をウェルダンになる迄焼きおって、おかげで痛覚も感じぬわ……クソがぁ! 等とも思っておらん。ワシが封印されている間に、部下が人間界にいる家畜……いや、人間共に大変な事をしでかしたらしいな。ワシは生きて償いたいのだ。それにワシは邪心様の加護を受けておる。ワシを倒せばこの世界が壊れるぞ。だからこそ今代の魔王はワシを自身に封印したのだ。どうせ倒されるのであれば道連れにしてやってもいいのだぞ。」
「なんだと! なんて卑怯な奴! 大魔王として恥ずかしくないのか!」
「はっ! 恥など1万年と2千年前に捨て去ったわ、愚か者めっ! 勝てば官軍、生きているだけでぼろ儲けだわぁ!」
何を偉そうに吠えている。
こいつ分かっているのか、負け犬の遠吠えを大声で叫んでいる事実に……。
「わかった。わかっておるわ。ワシの事を信じられぬのであろう? ではお主に、この世界の半分を差し出そう。」
いや、何で世界の半分なんだよ。
お前降参してるなら全部だろ、全世界よこせよ。
「なぜ世界の半分なのかとか思っていそうだな。」
「ああ、よく分かっているじゃないか!」
「強欲な……。強欲は身を滅ぼすぞ。愚か者めが!」
「全世界を征服しようとしていたお前に言われたくねーよ!」
「煩いわ! 話が進まぬではないか! 元々、世界の半分は我らが支配していた。それを元の形に戻そうと提案しておるのだ! それに、すべての世界を手中に収めても手に余るであろう? だからこそ世界の半分を差し出すのだ。世界の半分であれば、魔王を倒し、ほぼ半神と同等の力を持ったお主でも管理可能であろう? 敗者としてワシは口を出さぬ。なんなら、今後起こる全ての事柄をワシが行った事だと吹聴しても良い。なんなら、世界を分割後、お主だけはこちらの世界に来れる様契約を結ぼう。どうだ?」
随分と気前がいいものだ。
しかし、今後起こる全ての事柄を大魔王が行ったせいだと吹聴できるのはでかい。
「それなら俺が街に入る度、アイテムをゲットする為に街にある壺という壺を打ち壊したり、民家に押し入りタンスを開けまくってそこに収めてあったヘソクリをチョロまかしたの大魔王のせいという事にできるかも知れない……。ここは大魔王の提案に乗るべきか、乗らぬべきか……。」
「お主、碌な勇者ではないな。ワシに倒された方がまだ世界の為になるのではないか? 考えが全て口に出ているぞ。」
「よし、わかった! その提案乗ってやろうじゃねーか。」
「王国もよくこんな奴を勇者に認定したものだ……いや、何も言うまい。交渉成立だな……。ほれ、邪心様の契約魔法だ。魂に刻むこの約定は、魔に連なる種族と人に連なる種族がいる限り永劫続き絶対に破る事はできぬ。その契約書に目を通し、後はそこにある世界地図に線を一本引くがいい。」
「なに? 俺の好きに線を引いていいとでも言うのか⁉︎」
「細かい事は言わぬ。どの様に世界を半分に分けるかはお主に任せる。敗者に口を出す資格はないからな。ほれ。ワシはその契約魔法に魂の半分を捧げた。後はお主が魂の半分を捧げ、世界地図に一本の線を引くだけだ。先に優先権を与えよう。線引きした世界のどちらかを選ぶが良い。あと魂はちゃんと半分ピッタリ捧げるのだぞ。そうでなければ契約魔法は発動しないのだからな。」
話がうますぎる……。
魂はちゃんと半分ピッタリというのが特に怪しい。
俺は半分よりかなり多めの魂を契約書に捧げると、大魔王の統治する世界が地球でいう所の南極大陸辺りになるよう軽く線を引いた。
「ほら、魂を半分注いで、線引きしたぞ。こっちの陸と海のバランスがいい所が俺の統治する世界。残りがお前の統治する世界だ。」
俺が大魔王に契約書と世界地図を投げ渡す。
それを受け取った大魔王は大きな声で笑い出した。
「ふふふふふ、ふあはははははっ! 線を引いたな! 魂の半分を捧げ線を引きおったわっ! 邪心様の契約魔法は、捧げた魂の多い方に優先権が発生する。お前はもう終わりだ! 欲をかいて世界の半分をそんな風に分けおって愚か者め! 当然ワシは、お前の言う陸とバランスよく海のある上の世界を貰お……な、なにぃ……お主、何をした! ま、まさかっ! 魂を半分以上捧げおったな!」
「当たり前だっ! 誰が契約書にも書いていない事を信じるか!」
すると、大地が脈動を打つかの様に変化が始まる。
「おい! 何だこれは、何が起こっている!」
終わった……とでも言わんばかりの表情を浮かべる大魔王は意気消沈した面持ちで呟く。
「世界の色が塗り変わる。」
大魔王がそう呟いた瞬間、魔王城に光が差し込み、南極大陸を除く闇で覆われていた世界は光を取り戻した。
勇者マコトは、数々の冒険の末、魔王城へと辿り着き、仲間達と共に遂に世界を支配していた魔王ハセガワの討伐を成し遂げた。
「フハハハハッ! 流石だな、勇者マコトよ。しかし、不幸な事だ。なまじ強いばかりに、これから大いなる苦しみを味わう事になるだろう。嘆き悲しむがいい! お前が悲愴にくれる姿をあの世で見守らせて貰おう!」
魔王ハセガワは、死の間際、勇者マコトにそう言い残すと杖そしてサングラスを残し消えていく。
「魔王ハセガワ……強敵だった。よし、魔王ハセガワを討伐した証に、〔髑髏のついた趣味の悪いの杖〕と〔サングラス〕を回収し、城へ戻ろう。これで世界は魔王の恐怖から解き放たれたんだっ!」
「やりましたな。マコト殿!」
勇者マコトが魔王に最後の一撃を与える前に、目晦ましの呪文を唱えてくれた大賢者スラングが勇者マコトに声をかけてくる。
「ああ、スラングの目晦ましなくして魔王を倒す事はできなかった。本当にありがとう。」
「そう言って頂けると……。異世界からこの世界を救いに来て下さった勇者様のお力になれただけで光栄です。」
勇者マコトが、ヤレヤレといった表情を浮かべると、落ちている〔髑髏のついた趣味の悪いの杖〕を拾いスラングへと手渡した。
「世界中を恐怖の渦に叩き込んだ諸悪の根源、魔王は倒した。これから俺達の物語が始まるんだ! 魔王を倒した英雄としての物語がなっ。」
「マ、マコト殿……マコト殿について来て以降、何度となく、こいついつか殺してやろうか……とか、いつも雑用ばかり押し付けやがって……とか、カッコつけやがっていい気になるんじゃねーぞ……とか思っておりましたが、今まで事を起こさなくて正解でした。本当にありがとうございます!」
「えっ、お前そんな事思っていたの!?」
大賢者スラングの言葉に、勇者マコトが驚愕の表情を浮かべると、大賢者スラングの持つ〔髑髏のついた趣味の悪いの杖〕の髑髏部分が罅割れ、邪悪な瘴気が立ち上る。
「ゆ、勇者マコトッ! スラングから離れて下さい! 大賢者スラングッ! いますぐその醜悪な顔をマコト様から遠ざけ〔髑髏のついた趣味の悪いの杖〕を遠くへッ!」
大神官ダーマが大賢者スラングをディスりながら〔髑髏のついた趣味の悪いの杖〕を放る様に指示すると、髑髏部分が破裂し、大地が脈動を打つ。
そして、髑髏部分から黒い煙と共に笑い声が聞こえてきた。
「フハハハハッ! 勇者よ。よくぞワシを封印から解いてくれた……。ワシが王の中の王、大魔王コサカだ。ワシは待っておったのだ。そなたのような若者が現れる事を……。ワシを封印せし魔王ハセガワを倒した事、誠に見事。どうだ? ワシと共に世界を征服せぬか?」
大魔王コサカの付けている闇の宝玉が怪しく光る。
「大魔王コサカの戯言など聞いてはなりません!」
大神官ダーマがそう叫ぶと鳥肌が立つ程の悍ましさが、勇者パーティーを包み込んだ。
「こ、これはいけません! 勇者マコト! ここは一旦退却いたしましょう! 魔王との戦いの傷が癒えていない今、大魔王コサカと戦うべきではありません!」
ここまで支えてきてくれた心の友、大戦士センシ……いや、職業が大戦士なのだが彼の名前は紛れもなくセンシだ。大戦士センシがそう叫ぶ。
「フハハハハッ! ワシを封印から解きし賢き者よ。ワシを封印から解いた褒美に、主の望むものをくれてやろう。」
ここで心変わりした大戦士センシが、急に大魔王コサカに叫び出した。
「ギャルのパンティをおくれ!」
空気を読めッ! これだから童貞大戦士は困る。
だから冒険に出る前にソープで身も心も洗い流して貰えと言ったんだ!
「発情期の猫が、そんなもので良ければくれてやろう。」
大魔王コサカがそう呟くと、大戦士センシの頭上にピンク色のパンティが落ちてきた。
大戦士センシがそのパンティを掴むと、即刻、頭から被りだした。
見た目は完全に変態仮面である。
お前がそんな性癖の持ち主でなければ、この勇者パーティーに誘わなかった。
パンツにどれだけの大腸菌やカンジダ菌などのバクテリアが存在していると思っているんだ。この馬鹿者め!
「勇者マコト……今、幸せであります。」
いや、知るか! 大腸菌とカンジダ菌に塗れて死ねェェェ!
俺は大戦士センシを見限ると、仲間に退却を促す。
「俺はお前たちがこの場から去るまでの間、足止めをする!」
「ゆ、勇者マコト……それでは!」
大魔王コサカを目の前に後ろを振り返る訳にはいかない。
大神官ダーマの声に俺はこう返す事にした。
「異世界から来た部外者がこの世界の未来を作るんじゃない! お前たちが、この世界の未来を作るんだ。行け! 俺の命を無駄にするな! お前たちの未来は俺が守る!」
俺の言葉に感銘を受けた仲間たちは大魔王が完全復活する前に退却していく。
「ああ、それでいい。」
そして、完全復活した大魔王コサカとの死闘が始まった。
死闘が始まってから数日後……。
「ワシを封印した魔王を倒し、そして、ワシを半焼半死に負い込む等、普通の勇者にできる事ではない。ワシは今、改心したのだ。どうだ? ワシと一緒にこの世界を支配してみぬか?」
なんとか半焼半死に負い込んだ大魔王コサカが小賢しく俺に提案をしてきた。
「ふざけるなッ! 死に損ないが何を言う!」
俺は怒りに任せ、大魔王に呟く。
「決して、ワシが死にたくないからこんな事を言っている訳ではないぞ? 復活して間もなくして死ぬ等、冗談ではない! 等とも思っておらん。ワシの半身をウェルダンになる迄焼きおって、おかげで痛覚も感じぬわ……クソがぁ! 等とも思っておらん。ワシが封印されている間に、部下が人間界にいる家畜……いや、人間共に大変な事をしでかしたらしいな。ワシは生きて償いたいのだ。それにワシは邪心様の加護を受けておる。ワシを倒せばこの世界が壊れるぞ。だからこそ今代の魔王はワシを自身に封印したのだ。どうせ倒されるのであれば道連れにしてやってもいいのだぞ。」
「なんだと! なんて卑怯な奴! 大魔王として恥ずかしくないのか!」
「はっ! 恥など1万年と2千年前に捨て去ったわ、愚か者めっ! 勝てば官軍、生きているだけでぼろ儲けだわぁ!」
何を偉そうに吠えている。
こいつ分かっているのか、負け犬の遠吠えを大声で叫んでいる事実に……。
「わかった。わかっておるわ。ワシの事を信じられぬのであろう? ではお主に、この世界の半分を差し出そう。」
いや、何で世界の半分なんだよ。
お前降参してるなら全部だろ、全世界よこせよ。
「なぜ世界の半分なのかとか思っていそうだな。」
「ああ、よく分かっているじゃないか!」
「強欲な……。強欲は身を滅ぼすぞ。愚か者めが!」
「全世界を征服しようとしていたお前に言われたくねーよ!」
「煩いわ! 話が進まぬではないか! 元々、世界の半分は我らが支配していた。それを元の形に戻そうと提案しておるのだ! それに、すべての世界を手中に収めても手に余るであろう? だからこそ世界の半分を差し出すのだ。世界の半分であれば、魔王を倒し、ほぼ半神と同等の力を持ったお主でも管理可能であろう? 敗者としてワシは口を出さぬ。なんなら、今後起こる全ての事柄をワシが行った事だと吹聴しても良い。なんなら、世界を分割後、お主だけはこちらの世界に来れる様契約を結ぼう。どうだ?」
随分と気前がいいものだ。
しかし、今後起こる全ての事柄を大魔王が行ったせいだと吹聴できるのはでかい。
「それなら俺が街に入る度、アイテムをゲットする為に街にある壺という壺を打ち壊したり、民家に押し入りタンスを開けまくってそこに収めてあったヘソクリをチョロまかしたの大魔王のせいという事にできるかも知れない……。ここは大魔王の提案に乗るべきか、乗らぬべきか……。」
「お主、碌な勇者ではないな。ワシに倒された方がまだ世界の為になるのではないか? 考えが全て口に出ているぞ。」
「よし、わかった! その提案乗ってやろうじゃねーか。」
「王国もよくこんな奴を勇者に認定したものだ……いや、何も言うまい。交渉成立だな……。ほれ、邪心様の契約魔法だ。魂に刻むこの約定は、魔に連なる種族と人に連なる種族がいる限り永劫続き絶対に破る事はできぬ。その契約書に目を通し、後はそこにある世界地図に線を一本引くがいい。」
「なに? 俺の好きに線を引いていいとでも言うのか⁉︎」
「細かい事は言わぬ。どの様に世界を半分に分けるかはお主に任せる。敗者に口を出す資格はないからな。ほれ。ワシはその契約魔法に魂の半分を捧げた。後はお主が魂の半分を捧げ、世界地図に一本の線を引くだけだ。先に優先権を与えよう。線引きした世界のどちらかを選ぶが良い。あと魂はちゃんと半分ピッタリ捧げるのだぞ。そうでなければ契約魔法は発動しないのだからな。」
話がうますぎる……。
魂はちゃんと半分ピッタリというのが特に怪しい。
俺は半分よりかなり多めの魂を契約書に捧げると、大魔王の統治する世界が地球でいう所の南極大陸辺りになるよう軽く線を引いた。
「ほら、魂を半分注いで、線引きしたぞ。こっちの陸と海のバランスがいい所が俺の統治する世界。残りがお前の統治する世界だ。」
俺が大魔王に契約書と世界地図を投げ渡す。
それを受け取った大魔王は大きな声で笑い出した。
「ふふふふふ、ふあはははははっ! 線を引いたな! 魂の半分を捧げ線を引きおったわっ! 邪心様の契約魔法は、捧げた魂の多い方に優先権が発生する。お前はもう終わりだ! 欲をかいて世界の半分をそんな風に分けおって愚か者め! 当然ワシは、お前の言う陸とバランスよく海のある上の世界を貰お……な、なにぃ……お主、何をした! ま、まさかっ! 魂を半分以上捧げおったな!」
「当たり前だっ! 誰が契約書にも書いていない事を信じるか!」
すると、大地が脈動を打つかの様に変化が始まる。
「おい! 何だこれは、何が起こっている!」
終わった……とでも言わんばかりの表情を浮かべる大魔王は意気消沈した面持ちで呟く。
「世界の色が塗り変わる。」
大魔王がそう呟いた瞬間、魔王城に光が差し込み、南極大陸を除く闇で覆われていた世界は光を取り戻した。
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