海のもずく

あかりんりん

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海のもずく

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佐藤「なんで俺が殺されなきゃいけないんだ!」

イスに座った状態で縄で縛られ、目隠しをされ、手はガムテープでグルグル巻にされている佐藤は怒鳴った。

殺し屋A「知らねぇよ。ただ大金を出してでもお前を殺して欲しいってやつがいるんだとよ」

佐藤「一体誰だよ!俺はその倍の金を払うから許してくれよ!」

殺し屋A「バカかお前は?そんなことをしたら客からの信用が無くなるだろ。考えてみりゃ分かるだろ。喋る前に少しは考えて喋れよ」

佐藤「バカはお前らだろ!?金で人を殺すなんて、お前らの家族や友達でも殺すのかよ!」

殺し屋A「親には捨てられて孤児院で育ったし、家族も友達もいねーよ。じゃあ良いか?簡単な事を教えてやるよ。バカなお前でも分かるだろ。生きていくには住む場所と食べ物がいるだろ?どこに住むにも食べ物を食うためにも金がいる。なんでも金がいるんだよ。んで、ウイルスうずのせいで金がねぇんだよ」

殺し屋B「ウイルスか、だね。渦って書くけど読み方はか、だね」

佐藤「そんな事はどうでも良い!良いから助けてくれよ!俺にはやりたいことがまだまだあるんだよ!俺を殺しても警察がお前らを逮捕するだろ?だったら金だけもらって逃げれば良いだろ!」

殺し屋A「うるせーなぁー。だからそれをしたら信用が無くなるっつってんだろ。これでも10人以上殺したっけな?でも未だにバレてねーんだよ。法的処置も無意味って訳よ」

殺し屋B「法的措置だね。処置ではないよ、措置だね」

佐藤「じゃあ俺を殺す依頼をした奴の名前だけ教えてくれ!俺の金を全部やるから!それだけ聞かないと死ねない!」

殺し屋A「ほー。そりゃ悪くない条件だな。良いだろう。まずは暗証番号を教えろ。んで、確か、おてあらいって名前だったな。会ったことはないから顔は知らんけども。まぁ殺したい人間の顔写真と住所と、俺が納得するだけの金があれば充分だ」

殺し屋B「みたらい、だね。おてあらいじゃなくて、みたらい、漢字だと御手洗」

佐藤「御手洗!なんであいつが?あんだけ助けてやったのに!絶対に許さない!お前らも地獄に落ちろ!」

殺し屋A「確かに暗証番号は合ってるようだな。ありがたくいただくぜ。んで、残念ながらお前はこのまま太平洋に沈んで海のもずくになるんだよ」

殺し屋B「海のもくず、だね。もずくは食べ物だね。感じだと藻屑って書くよ」

殺し屋A「こまけぇ事は良いんだよ!かんぱつ入れずにいちいちと!どうでも良いから早く手伝えよ!」

殺し屋B「かんはつ、だね。よく使う散髪は読み方がぱつ、だから間違いやすいよね」

殺し屋A「はぁー。全く呆れるぜ。これも日常ちゃ飯事だからなぁ」

殺し屋B「さすがにそれはわざとだよね。日常さ飯事だよね、茶って書くけど読み方は、さ」

佐藤「・・・なぁ、あんたはなんで殺し屋なんかやってんの?」

殺し屋B「僕?・・・不思議な事を聞くね。僕はただ人の人生が終わる最後の数分間に立ち会いたいだけだよ。」

佐藤「・・・それはなんで?」

殺し屋AB「なんでだろうね。ただ、興味がある、かな」

佐藤「興味・・・?」

殺し屋B「実は趣味で小説を書いていてね。人が死ぬ最後の瞬間、どうなるのかってデータを取っていてね。もちろん小説だから本当に殺しているとは思わないだろ?それを題材に書いてみようと思ったから始めてみたんだ。事実は小説より奇なりってやつだね」

佐藤「なんだそれ・・・狂ってるよ・・・」

殺し屋B「褒め言葉として受け取っておくよ。さーて、最後に何か言い残す事はあるかい?」

佐藤「・・・どっちが本当のお前なんだ?」

殺し屋B「え?どういうことだい?」

佐藤「さっきから一人で言葉遣いや声が荒くなったり、一人で丁寧に修正したりと、多重人格者なのか?」

殺し屋「正確には解離性同一性障害と言ってね。退屈はしないけど、これがまた不便なんだ。小さい頃から友達は出来ねぇし、クソ教師共にも気味悪がられる。教師なんだから一人ひとりに合った教育方法ぐらい勉強しろっての!世間に出てもどいつもこいつも俺をキチガイ扱いしやがって!仕方ないから小説書いたりネットで殺しの依頼を受けてるって訳なんだ。こんな人生イヤになるよ。普通に生きてきた君には分からないだろうけどね。じゃ、それがてめぇの最後の言葉で良いんだな!」

佐藤「俺は普通な人生を歩んで無いよ。じゃあ最後にもう1つだけ。これで終わるから。お前の名前を当ててやるよ」

殺し屋「そうですか、まぁ当てたところであなたが殺される事には変わらないですけどね」

佐藤「佐藤、俺と同じ、佐藤だろ」

殺し屋「まぁ合ってるが、なんだそりゃ!クソつまらん。日本で多い名前を言えば当たる確率もそこそこあるだろ!」

佐藤「俺はお前が作り出した3番目の人格で、ついさっき産まれたんだ。わざわざ自分をイスに縛り付けるよう誰かにお願いして、なんのためにこんな事をしてんだ!?このキチガイめ!!」

アパートの隣人「さーて、そろそろ限界か。縄を解きに行くかね。その前にメモメモ。今回は3人の登場人物が出てきたな。なかなか見どころがあったぜ。あんたはいくらでも新しいネタを提供してくれて、それで俺が小説を書く、その利益でまたあんたを生かせられる。すなわち共存だな」

以上です。
どうもありがとうございました。
ある日もずくを食べていて「海のもずくと藻屑」というフレーズを思いついて、殺し屋なのに間違えやすい読み方のギャグ小説として書いていましたが、納得のいく最後のオチが思い付かなかったため、路線を変更しました。
多重人格についてはネットで調べただけで、もし、不快に思われる方がいたら削除しますのでご連絡お願いします。
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