1 / 1
不幸ボタン
しおりを挟む
本当に死神かどうかは分からないが、一人暮らしの8畳の狭いアパートの一室に、見るからに死神の格好をした何者かが立っていた。
それは、顔や手はガイコツで、全身に黒い布をまとっていて、少し宙に浮いていて、大きなカマを持っている。
死神と聞いて、おそらく一番最初に想像する姿だろう。
僕があっけにとられていたら、死神が話を始めた。
「やぁ、俺は死神。お前は実にラッキーな人間だよ。なんだって、他人の人生を変えることが出来るアイテムをもらえるんだからな」
死神は低い声でそう言って、僕は真ん中にボタンが付いている四角い物を渡し、死神は続ける。
「これは不幸ボタン。お前がキライなやつの顔を思い浮かべて、この真ん中のボタンを押すんだ。するとどうだろう、そいつに不幸が訪れる。1度押せば1度の不幸。2度押せば2度の不幸だ。面白いだろう?キャッキャッキャッ!」
笑い声だけは甲高く、気味が悪かった。
「確かにキライなやつはいるけど・・・ちなみに教えてくれ、どのくらいの不幸が起こるんだ?」
僕は半信半疑で話を聞きつつも、気になる事を質問してみた。
「それは俺にも分からんが、怨みが強ければ強いほど不幸も大きくなるって他の人間は言っていたなぁ。まぁ俺はそのボタンを押したことをも無いし、怨むくらいなら殺すさ。死神だからなぁ。キャッキャッキャッ!」
また甲高い声で死神は笑う。
「不幸ボタンを押すか押さないかはお前次第だ。それはお前にやるんだからな。じゃあな。お前の人生が充実すると良いなぁ!キャッキャッキャッ!」
そう笑いながら去ろうとする死神を、僕は呼び止めた。
「ま、待ってくれ!これを押すといつか俺が死んだ後にお前に魂を食われるとか、そういうペナルティは無いのか?」
自分だけが幸福になるなど、そんな上手い話が無い事はこの世の常だ。
絶対にペナルティがあるはずだ。
と意気込んで質問してみたが、答えはあっけらかんとしたものだった。
「キャッキャッキャッ!それは映画や漫画の見すぎだよ!だいたい、魂なんか食えないし俺は死んでるんだからメシを食う必要もないんだよ。まったく、デタラメな情報が多すぎるんだよ。腹が立ってくるぜ・・・」
意外すぎる回答で、僕は何も言えずに黙ってしまった。
「じゃあな、俺は帰るぜ」
そう言って死神はパッと消えた。
「うーむ・・・さて、どうしたものか・・・」
僕はボタンの付いた四角い物を見ながら、考えていた。
社会人になって3年目、ムカつく上司もいるし、自分勝手なお局様もいるし、だが、これを押して何か大事になっても面倒くさい。
「そういえば・・・こんな話もテレビか何かで見た気がする・・・」
その内容はこうだ。
あるスイッチが一人一人に神様から配られる。
そのスイッチを押すと、自分も含み地球が爆発してしまうというのだ。
加えて、そのスイッチは翌日には消えてしまう。
物語の主人公は、迷いに迷ったあげく、このスイッチを押す。
すると、爆発が始まる。
ただし、押した1メートル範囲のみの爆発である。
実はこれは、政府が用意したスイッチで、過激な考えを持つ者を排除するために仕組まれていた、というオチだ。
僕はそんな話を思い出すと怖くなったが、しばらく黙って考えていた。
「確かにこんな都合の良いボタンなど話胡散臭いが、あの死神はおそらく本物で、言っていることを信じれば、何もペナルティは無い・・・それに、怨みもそれほど強くない人で試すのはどうだろうか・・・」
考えがそのようにまとまった時、目を閉じて、ある一人の人物を思い浮かべて、ボタンを押した。
何も起こらなかった。
少なくとも、僕の周りでは。
僕は部屋の窓からカーテンを開け、外を見た。
すると、先程の死神が、複数の天使に連れられて空に昇っていく。
「やめろぉぉぉ!俺はまだ現世にいたいんだぁぁぁ!」
死神はジタバタしてカマを振りかざすが天使は透き通って当たらない。
「あっお前!俺を思い浮かべてボタンを押しただろ!この野郎!助けてやったのに!俺に何の怨みがあるんだ!」
死神は僕を見て叫んだ。
「ゴメンなさーい!ちょっと試しに押してみたくて、死神のことは怨んでないから大丈夫かと思ってたけれど、もしかしたらボタンを押した瞬間死ぬかもしれないとかいろいろと悩んでたから、ちょっと死神に怨みが出てたみたい!ゴメンねー!」
「ゴメンじゃねぇぇぇぇ!!・・・」
そう叫びながら死神とボタンの付いた四角い物は消えていった。
「不幸ボタンは本当だったんだな、惜しい事をした・・・まぁ、これで元通りか。さーて、これも小説のネタにするかなー」
僕はいつもの机に向かってこれを書いている。
以上です。
どうもありがとうございました。
こんな死神なら一度は会ってみたいですね。
それは、顔や手はガイコツで、全身に黒い布をまとっていて、少し宙に浮いていて、大きなカマを持っている。
死神と聞いて、おそらく一番最初に想像する姿だろう。
僕があっけにとられていたら、死神が話を始めた。
「やぁ、俺は死神。お前は実にラッキーな人間だよ。なんだって、他人の人生を変えることが出来るアイテムをもらえるんだからな」
死神は低い声でそう言って、僕は真ん中にボタンが付いている四角い物を渡し、死神は続ける。
「これは不幸ボタン。お前がキライなやつの顔を思い浮かべて、この真ん中のボタンを押すんだ。するとどうだろう、そいつに不幸が訪れる。1度押せば1度の不幸。2度押せば2度の不幸だ。面白いだろう?キャッキャッキャッ!」
笑い声だけは甲高く、気味が悪かった。
「確かにキライなやつはいるけど・・・ちなみに教えてくれ、どのくらいの不幸が起こるんだ?」
僕は半信半疑で話を聞きつつも、気になる事を質問してみた。
「それは俺にも分からんが、怨みが強ければ強いほど不幸も大きくなるって他の人間は言っていたなぁ。まぁ俺はそのボタンを押したことをも無いし、怨むくらいなら殺すさ。死神だからなぁ。キャッキャッキャッ!」
また甲高い声で死神は笑う。
「不幸ボタンを押すか押さないかはお前次第だ。それはお前にやるんだからな。じゃあな。お前の人生が充実すると良いなぁ!キャッキャッキャッ!」
そう笑いながら去ろうとする死神を、僕は呼び止めた。
「ま、待ってくれ!これを押すといつか俺が死んだ後にお前に魂を食われるとか、そういうペナルティは無いのか?」
自分だけが幸福になるなど、そんな上手い話が無い事はこの世の常だ。
絶対にペナルティがあるはずだ。
と意気込んで質問してみたが、答えはあっけらかんとしたものだった。
「キャッキャッキャッ!それは映画や漫画の見すぎだよ!だいたい、魂なんか食えないし俺は死んでるんだからメシを食う必要もないんだよ。まったく、デタラメな情報が多すぎるんだよ。腹が立ってくるぜ・・・」
意外すぎる回答で、僕は何も言えずに黙ってしまった。
「じゃあな、俺は帰るぜ」
そう言って死神はパッと消えた。
「うーむ・・・さて、どうしたものか・・・」
僕はボタンの付いた四角い物を見ながら、考えていた。
社会人になって3年目、ムカつく上司もいるし、自分勝手なお局様もいるし、だが、これを押して何か大事になっても面倒くさい。
「そういえば・・・こんな話もテレビか何かで見た気がする・・・」
その内容はこうだ。
あるスイッチが一人一人に神様から配られる。
そのスイッチを押すと、自分も含み地球が爆発してしまうというのだ。
加えて、そのスイッチは翌日には消えてしまう。
物語の主人公は、迷いに迷ったあげく、このスイッチを押す。
すると、爆発が始まる。
ただし、押した1メートル範囲のみの爆発である。
実はこれは、政府が用意したスイッチで、過激な考えを持つ者を排除するために仕組まれていた、というオチだ。
僕はそんな話を思い出すと怖くなったが、しばらく黙って考えていた。
「確かにこんな都合の良いボタンなど話胡散臭いが、あの死神はおそらく本物で、言っていることを信じれば、何もペナルティは無い・・・それに、怨みもそれほど強くない人で試すのはどうだろうか・・・」
考えがそのようにまとまった時、目を閉じて、ある一人の人物を思い浮かべて、ボタンを押した。
何も起こらなかった。
少なくとも、僕の周りでは。
僕は部屋の窓からカーテンを開け、外を見た。
すると、先程の死神が、複数の天使に連れられて空に昇っていく。
「やめろぉぉぉ!俺はまだ現世にいたいんだぁぁぁ!」
死神はジタバタしてカマを振りかざすが天使は透き通って当たらない。
「あっお前!俺を思い浮かべてボタンを押しただろ!この野郎!助けてやったのに!俺に何の怨みがあるんだ!」
死神は僕を見て叫んだ。
「ゴメンなさーい!ちょっと試しに押してみたくて、死神のことは怨んでないから大丈夫かと思ってたけれど、もしかしたらボタンを押した瞬間死ぬかもしれないとかいろいろと悩んでたから、ちょっと死神に怨みが出てたみたい!ゴメンねー!」
「ゴメンじゃねぇぇぇぇ!!・・・」
そう叫びながら死神とボタンの付いた四角い物は消えていった。
「不幸ボタンは本当だったんだな、惜しい事をした・・・まぁ、これで元通りか。さーて、これも小説のネタにするかなー」
僕はいつもの机に向かってこれを書いている。
以上です。
どうもありがとうございました。
こんな死神なら一度は会ってみたいですね。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
予言姫は最後に微笑む
あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。
二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる