41 / 84
041:星沢警備会社
しおりを挟む
工場の事務室……の様な場所に通された。というか、ここにも監視カメラが数台。何を監視しているのかは判らないが、これくらい慎重の方が安心出来る気がする。森下社長の所のソファに比べると当然落ちるが、見かけよりも座りやすい応接セットに腰掛ける。女子事務員さんがお茶を持って来てくれた。普通だ。うん。異様に普通だ。
「で、今回の件……国外……いや、国内ですか」
「ええ。国内です。……「ゴリラ」でしたっけ? ……対象は三人なんですが」
「……我々に依頼する……案件……国内で?」
「ゴリラ」……ってなんだ? 三人が対象って事は護衛の隠語か?
「経緯を聞くに、道具も使われた様なので……」
「それは……対象は御身内で?」
「いえ、うちの社員なんですが、仕事とは関係ないところで巻き込まれたらしく」
「うらやましい。本気で社員を守る……なかなかできることじゃありませんよ」
「では……」
「はい、受けさせていただきますよ。実は某国のミッションが例の伝染病関係で難しくなりまして。手も空いております」
「それは良かった……ああ、村野君、勝手に話を進めてしまってすまない。この人は三沢さん……この……星沢警備会社の代表で……主にうちの社員を海外で守ってくださっているんだ」
「初めまして、村野です。社長、名刺を差し上げた方が?」
「ああ、交換しもらって構わないよ。私がね、君に守られて逃げ回ることしか出来なかったあの時の経験をね、他の社員にはして欲しくなくてね。イロイロとお願いを聞いてもらっている。信頼できる人だよ」
物腰が……スムーズだ。なんていうか、無駄がない。強そうだ。
「初めまして三沢です。堂東商事……さんですか」
「ご存じですか」
「ええ、お名前だけは。親の方の……堂王商事さんとは何度か」
「お世話になりました」
「いえいえ、それにしても……森下社長も変わった方ですから大変でしょう?」
「お世話になっているだけですよ」
「ああ、というか、そうか。貴方が、社長がよく言っていた、戦場で世話になったっていう」
「社長……だから、別に守れてませんから……自分も逃げ回ってただけですから」
森下社長はいろんな所で俺の事を言ってまわってるのか……トホホ。
「戦場での体験談がね。我々の共通項だからね、仕方ないんだよ。飲むとその手の話になってしまう。まあ、それくらいの仲ということです。そもそも社長は……最初のうちはポケットマネーで依頼してきたからね」
「三沢さんには……あんな二束三文で仕事をさせてしまって。後で海外の相場なんかを調べて驚愕したよ。桁が違ったからね」
そいつは……剛毅だ。というか、この手の警備会社……いや、こりゃ多分、民間軍事会社=PMCだな。なんでもござれな傭兵集団だ。元、じゃない。現役の。だ。
彼らに護衛を頼んだら、日本の警備会社に身辺警護を頼むのとは桁違いの金がかかる。そんな無茶な依頼をする社長も社長だが、受けるこの三沢さんもかなり無茶だということだ。
「森下社長。さすがです。というか、今回の件、PMC……特に三沢さんにお願いするのは最適だと思います」
「ほう……何も言わずにつれて来たのにな。だから村野君にはうちに来て欲しいんだが」
誰にでも判りますって。だって……ここ、普通の警備会社じゃないじゃないですか。社長。
「よく……うちの本質を見抜きましたね。というか……確かに……一見分からないですけど……ああ、そうですか。村野さんもなかなか……どころか、かなりおやりになる」
「いえいえ、自分の身を守るくらいは……と。独学で、ですから。自分もアレ以来考えることがありまして」
独学独学……うん。間違ってない。
「さて。詳細をお聞きしましょうか……」
昨日の顛末……俺がやったことは当然伏せて、三人娘が半グレの抗争に巻き込まれた可能性があることを伝えた。
「つまり……村野さんは、抗争真っ只中の現場から、そのお嬢さん方を奪回して逃げ延びたと」
「はい。そしてニュースを見て、事実が改竄されているの知って……ですかね」
ああーそりゃねー怪しいよねー。
「実は……彼女たちに余計な心配をかけないために伏せましたが……車の周りにいたヤツラと……仲間だと勘違いしてきたヤツラは……不意打ちで片付けました」
「村野君が?」
三沢さんが……得たりと頷く。いやいや、どう見ても達人級の貴方がそんな顔したら、俺までスゴイになっちゃうじゃないすか……。って! 森下社長が! やっぱり! って感じで! こっちを! こっちを見てる! もー!
「とにかく拉致られた三人を取り返さないとって夢中でやったら出来た……という感じでして。まあ、そんなワケで自分も巻き込まれるかもですが……彼女達を守れるだけの力はないので」
「自分は……平気なのかな?」
だから~そういう値踏みするような目でこちらを見ないで~怖い~。
「ええ、まあ」
「了解しました。直接護衛に一名ずつ。あと根幹調査に規定料金でどうでしょう?」
「ああ。構わない。こんなことで社員が傷付く様なコトがあれば、我が社は今度こそお終いだからね」
「昨今は……イメージが重要ですから……」
森下社長のところは……前社長、千堂の詐欺事件で散々な目にあっている。会社ぐるみでの行為ではないと証明されたからどうにかなったが、当然評判やイメージは一度地に落ちた。確かにさらにここで女子社員の拉致監禁暴行……なんて事件が発生したら……うん。
「で、今回の件……国外……いや、国内ですか」
「ええ。国内です。……「ゴリラ」でしたっけ? ……対象は三人なんですが」
「……我々に依頼する……案件……国内で?」
「ゴリラ」……ってなんだ? 三人が対象って事は護衛の隠語か?
「経緯を聞くに、道具も使われた様なので……」
「それは……対象は御身内で?」
「いえ、うちの社員なんですが、仕事とは関係ないところで巻き込まれたらしく」
「うらやましい。本気で社員を守る……なかなかできることじゃありませんよ」
「では……」
「はい、受けさせていただきますよ。実は某国のミッションが例の伝染病関係で難しくなりまして。手も空いております」
「それは良かった……ああ、村野君、勝手に話を進めてしまってすまない。この人は三沢さん……この……星沢警備会社の代表で……主にうちの社員を海外で守ってくださっているんだ」
「初めまして、村野です。社長、名刺を差し上げた方が?」
「ああ、交換しもらって構わないよ。私がね、君に守られて逃げ回ることしか出来なかったあの時の経験をね、他の社員にはして欲しくなくてね。イロイロとお願いを聞いてもらっている。信頼できる人だよ」
物腰が……スムーズだ。なんていうか、無駄がない。強そうだ。
「初めまして三沢です。堂東商事……さんですか」
「ご存じですか」
「ええ、お名前だけは。親の方の……堂王商事さんとは何度か」
「お世話になりました」
「いえいえ、それにしても……森下社長も変わった方ですから大変でしょう?」
「お世話になっているだけですよ」
「ああ、というか、そうか。貴方が、社長がよく言っていた、戦場で世話になったっていう」
「社長……だから、別に守れてませんから……自分も逃げ回ってただけですから」
森下社長はいろんな所で俺の事を言ってまわってるのか……トホホ。
「戦場での体験談がね。我々の共通項だからね、仕方ないんだよ。飲むとその手の話になってしまう。まあ、それくらいの仲ということです。そもそも社長は……最初のうちはポケットマネーで依頼してきたからね」
「三沢さんには……あんな二束三文で仕事をさせてしまって。後で海外の相場なんかを調べて驚愕したよ。桁が違ったからね」
そいつは……剛毅だ。というか、この手の警備会社……いや、こりゃ多分、民間軍事会社=PMCだな。なんでもござれな傭兵集団だ。元、じゃない。現役の。だ。
彼らに護衛を頼んだら、日本の警備会社に身辺警護を頼むのとは桁違いの金がかかる。そんな無茶な依頼をする社長も社長だが、受けるこの三沢さんもかなり無茶だということだ。
「森下社長。さすがです。というか、今回の件、PMC……特に三沢さんにお願いするのは最適だと思います」
「ほう……何も言わずにつれて来たのにな。だから村野君にはうちに来て欲しいんだが」
誰にでも判りますって。だって……ここ、普通の警備会社じゃないじゃないですか。社長。
「よく……うちの本質を見抜きましたね。というか……確かに……一見分からないですけど……ああ、そうですか。村野さんもなかなか……どころか、かなりおやりになる」
「いえいえ、自分の身を守るくらいは……と。独学で、ですから。自分もアレ以来考えることがありまして」
独学独学……うん。間違ってない。
「さて。詳細をお聞きしましょうか……」
昨日の顛末……俺がやったことは当然伏せて、三人娘が半グレの抗争に巻き込まれた可能性があることを伝えた。
「つまり……村野さんは、抗争真っ只中の現場から、そのお嬢さん方を奪回して逃げ延びたと」
「はい。そしてニュースを見て、事実が改竄されているの知って……ですかね」
ああーそりゃねー怪しいよねー。
「実は……彼女たちに余計な心配をかけないために伏せましたが……車の周りにいたヤツラと……仲間だと勘違いしてきたヤツラは……不意打ちで片付けました」
「村野君が?」
三沢さんが……得たりと頷く。いやいや、どう見ても達人級の貴方がそんな顔したら、俺までスゴイになっちゃうじゃないすか……。って! 森下社長が! やっぱり! って感じで! こっちを! こっちを見てる! もー!
「とにかく拉致られた三人を取り返さないとって夢中でやったら出来た……という感じでして。まあ、そんなワケで自分も巻き込まれるかもですが……彼女達を守れるだけの力はないので」
「自分は……平気なのかな?」
だから~そういう値踏みするような目でこちらを見ないで~怖い~。
「ええ、まあ」
「了解しました。直接護衛に一名ずつ。あと根幹調査に規定料金でどうでしょう?」
「ああ。構わない。こんなことで社員が傷付く様なコトがあれば、我が社は今度こそお終いだからね」
「昨今は……イメージが重要ですから……」
森下社長のところは……前社長、千堂の詐欺事件で散々な目にあっている。会社ぐるみでの行為ではないと証明されたからどうにかなったが、当然評判やイメージは一度地に落ちた。確かにさらにここで女子社員の拉致監禁暴行……なんて事件が発生したら……うん。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
189
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる