女性恐怖症の高校生

こじらせた処女

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「ごめん…仕事終わりなのに」
「ううん、それより近くに居てよかった。寒くない?俺の上着着る?」
「…だいじょうぶ」
新しいジーンズとパーカーを身につけ、「お土産」を空いた袋に入れて。
「泣いた?」と少し笑いながら俺の目元を拭った手の指は温かい。
「1人で帰れそう?」
そうか。秋葉さん、逆方面だ。わざわざ家とは逆方向の電車に乗ってきてくれたんだ。
「…帰れないって言ったら?」
何言ってんだ俺。そんなの無理にでも帰れって話。わざわざ困らせるようなこと言って、ただでさえ迷惑なのに。
「…ごめん、冗談だから、」
「待って、こっち向いて?」
無意識に下がっていた顔を挟まれ、目線を無理やり合わせられる。
「ほっぺ冷たっ、…本当に大丈夫?」
「…だいじょうぶ、心配しすぎ」
「だってさっきから一回も目合わない。…ちゃんと寝れてる?」
「…っ、ほんと、やめて…」
ダメだ俺、相当参ってる。これ以上優しくされたらほんとに崩れそう。
「宇津希今日ずっと顔が泣きそうなんだもん。俺まで泣いちゃいそう」
あ、ほんと。やばい。
「っ゛、ぅ、そういうの、今日は、ほんと、」
ここは外なのに。ジワリと目元が熱い。
「俺の家泊まる?」
「え、」
「あ、やっと目合った」
いつもの穏やかな表情。小さく頷くとまた、ふふ、と笑う。
「いいよ。ご飯たべれそう?」
いつも通りの会話。掴まれた腕があったかい。気を抜いたらまた、涙がこぼれそう。




「お腹痛い?」
「ぇ…」
「あ、いや、お腹摩ってたから。大丈夫?トイレ行く?」
無意識だった。移動中の電車の中で何となくまた、したいって思っていたけど。下腹部あたりを撫でていた自覚はない。太ももあたりを何度もなぞらえていたことにも気づき、一気に恥ずかしくなった。
「ぃや、だいじょうぶ…」
「そ?歩くのしんどかったらタクシー呼ぼっか?」
「いい、歩ける、」

 どうせ、また。さっき限界まで我慢したからか、すぐに行きたくなってしまう。トイレなんて目と鼻の先にあるんだから普段なら何も悩まないのに。ずしりとした感覚。夜の外気に触れて体も冷えている。さっきみたいに切羽詰まってはないけれど、お腹が落ち着かない。
(また…もらしたら…)
 もしもそんなことがあったらもう立ち直れない。流石に秋葉さんの家だし。我慢できなくなれば駆け込めば良い、それだけの話。でも、すっきりしないこの状況が続くのは意外にストレスだ。ずっと体に力が入ってて、何倍も疲れる。本当に自分の体はどうしてしまったのだろう。




「ごめん秋葉さん、トイレ借りる、」
家に上がって早々、余裕ないって思われただろうか。たったの20分なのにもうお腹はパンパンでジッとしているのが辛い。悟られないように、いつものスピードで歩いてドアも静かに閉める。
「っ、ぁっ、ん、」
震える手で前を開けて性器を便器に向けた。なのに、出ない。
(ほんとになんで、?力ぬいてんのに、腹いたいのにっ、)
どれだけ力んでも出口に力を込めても、一雫も出ない。さっきどうやってしたっけ。どうやって力を抜いて、いや、込めて?便器を認識した脳は一刻も早くすっきりしたいのだろう。足がブルブル震えて、それが全身に伝わって、鳥肌が立って。



「あ、宇津希、夜何がいい?てか食べれそう?」
「…ぁ、あ、なんて…っ?」
「えーっと…ご飯食べれそう?ってのを…」
「ぇ、と、おれ、は、」
おしっこしたい。口に出しかけて焦った。さっき行ったのに不自然だろ。でももう一回トイレ行きたい。駆け込みたい。そんで、お腹の中のもの、空っぽにしてすっきりしたい。
「っ、っぇ、っと、」
おしっこ、俺の頭はそれしか考えられない。それ以外を考えるキャパがない。

 あれ、秋葉さん、なんて言ったっけ。
「どーしたん?やっぱどこかしんどい?」
あ、秋葉さんの手。額に少し冷たい感触に、また。
「…ぁっ、それで、」
「ん?食べれるってことでいいの…?」
「、ぅん、っっ、ん、」
 あ、でる、でちゃう。この短い人生で培われた、反射的な動作。考えるよりも先だった。
「っぁ、」
前を握りしめて、足をぴっちりさせて。ひとしきり前を揉みしだききってから我に帰った。
「えーー…っと…」
「ぁっ、ぅ、といれ…いく、」
「あ、うん行ってらっしゃい」
 秋葉さんの戸惑った声に一気に顔が熱くなった。恥ずかしい、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。半ば小走りでドアを閉めて、さっきみたいに慌てて前を出すも結果は変わらない。きゅうきゅうとお腹が疼いて仕方がない。トイレから離れるのが怖い。でも便器を見るとお腹が余計辛くなるのも事実。居ても立っても居られなくて意味もなく足を踏んでしまう。
「っっ、~、ぅ、、…」
パツパツのお腹は息をするだけで刺激される。これでもかってぐらいに出口に信号を送るくせに。漏れそう漏れそうって主張してるくせに。


「宇津希?…大丈夫?」
なかなか出てこない俺に痺れを切らしたのか、控えめなノックが2回鳴った。
「お腹痛い?」
ドアを開けた俺が下腹部を押さえているものだから、勘違いしたのだろう。小さく首を横に振ると、だよねぇと戸惑う声が返ってくる。
「………からだ、へん、」
お腹をぎゅうって押さえて、足を何度もクロスして。明らかなポーズだけど、前だけはもう押さえたくない。
「おしっこ?」
「っ、っ゛~~、」
いたたまれない。ここから消えてしまいたい。ゆさゆさと止められない腰、ズボンをぐいぐいと引き上げる手、小さくトントンと踏む足。全部見られてるのに。
「とりあえず座ってみよっか」
手を引かれて逆戻りした個室。大の大人が2人も入っているから狭い。促されるまま下を脱いで腰掛ける。
「…みないで、」
「ん、タオルかけようね」
むき出しの下半身に白いバスタオルをかけてくれた秋葉さんは、おもむろに俺の手を握り始めた。
「なにっ、」
「手冷たっ、緊張してる?」
俺の右手を両手で挟み込むようにして、摩るようにして擦り合わせて。
「今日ずっと様子おかしかったからさ。どんなに小っちゃい音でもビクってさせてさ」
「そんなこと、」
「あるのよ。体ぜーんぶに力入っちゃってるの。緊張のスイッチ切ってあげないと」
片方ずつ、ゆっくりと、摩って、にぎにぎして。
「あたたまったかな?どう?少しは落ち着いた?」
「ん、…わかんない…」
「お腹触ってみても?」
「っっ、んっ、」
自分ではない指先が腹に当たる。自分より冷たい肌が触れて変な声を出してしまった。
「あ、ごめんね?冷たかったね?」
「、いえ、」
「お腹にも力入っちゃってるっぽい?」
「…わかんない、」
「今日しんどいことあった?」
「…わかんない、」
「そっかぁ…どうしちゃったんだろうねぇ。疲れちゃったのかなぁ…」
分かんない分かんないって。俺は子供かよ。それしか言えないのかよ。
笑いながら俺の腹を撫で続ける秋葉さんはもう、俺を小さな子供だと認識しているよう。高く柔らかくなった声が鼓膜を揺らす。
「しーしー、出来そう?」
「っぃ、ぁ、ぁあ、」
出そう。溜まっているものがずっとずっと先端で渦を巻いている感じ。
「しぃーって感じで。できる?」
耳元でそっと。しーしーなんて言われたら。背中はずっと震えっぱなしなのに。
したい。おもいっきりぷしゃああああって便器に叩きつけたい。なのに一向に出口は閉じたまま。頭がおかしくなりそう。

「っ、っはぁ、っっ、ん、も、ぃぃ…」
「え、でも…」
「…だって…どうせでない…」
言って、涙がこぼれた。
「どうせっ、漏らすまででないっ、…」
今日、失敗した。それも、外で。改めて思い出してしまってもう、耐えられなかった。息が引き攣ってしんどい。暴れ狂う膀胱も我慢筋もヒクヒクと引き攣って疲れた。なのに。ここはトイレなのに。おしっこ、いくら出しても大丈夫なところなのに。
「最後にしたのは?」
「…駅…ぇっと、…………がまん…できなくって、……ぇ、と…」
「失敗しちゃった?」
「っっ、゛、…~、…」
「そっか。いいのいいの。朝からずっと出てないとかだったらヤバいなって思っただけ。一旦いつもの格好でやってみよっか」
「やだぁ…だって、どうせっ、」
「やってみよ?ね?ずっとお腹苦しいのしんどいでしょ?」
「っ、やだ…やだぁ…」
しゃっくりが止まんない。自分の感情がコントロールできない。出す以外に方法なんて無いじゃん。真っ当な秋葉さんの意見の何が嫌なんだろう。自分でも突っ込みを入れたい。もう泣きたいだけなのかもしれないと錯覚してしまう。ただ泣きたくて、縋りたい。俺、何かおかしい。だって、こうやって駄々をこねるみたいにして泣きじゃくると、何故か心がスッとする。俺、ほんとにどうしちゃったんだろう。

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