57 / 100
2章 臨時冒険者登録試験
第57話 快諾
しおりを挟む
セリルさん。
彼女は退職後もギルドとのツテで主婦層の仕事を作り、ギルドもまた安定かつ、スムーズに品質の良い納品ができるようになるなどの活躍をしていた。
こちらに向ける笑顔には20年経っても色褪せない、人間的な美しさがある。
年の頃はそれこそ、仕立て屋の女主人と同じくらいだが、向こうが仕事柄着飾って化粧もバッチリなのに対して、彼女は川での仕事もあるため、汚れたエプロンにスッピンだ。
それでも明るい笑顔が何よりの化粧となって彼女の魅力を引き出していた。
「何も言わず、勝手に私が抜け、その間ウチのマイヤーが大変失礼をいたしました。
本人も心を入れ替えやり直したいと言っているので、どうかお許しください」
まずはこちら側の非礼を詫びる。
俺が頭を下げると、一緒になって頭を下げるマイヤー。本当に反省しているようだ。
これがブライアンなら信用してはいけないが、マイヤーはまだ30歳で肩書き不足での副ギルマスに就任したこともあり、かなり肩肘を張っていた。
その憑物も落ちたようだ。
彼はジョブレベルが伸び悩み、Cランク冒険者のときに連れて来られたが、それでは実績不足だとブライアンに半ば強引にBランクに上げられてから、副ギルドマスターになった経緯がある。
そのことが逆に冒険者達や受付嬢から悪い噂になり、孤立しがちになった頃から歪み、貴族関連のコネで現状を打破することしか見れなくなっていた。
まあ同情する気はないけどね。自身の都合で、周りに不当な不利益もたらす人間は害悪だ。
ただ、反省して前を向くというのであれば奮い立ち上がらせ、導くのも先達者の務め。
そう、これもまたダンディズム!
で、あるかどうかは知らないが。
「いいのよ、タナカ君。私のいた頃のメイスさんが特別紳士で優秀だっただけで、貴族出身の人はこれくらいが普通って聞くわ。
でも、これからもお互いいい関係でいたいなら、改めてよろしくね、マイヤーさん!」
っと子供を叱りつけるように、マイヤーに優しく、そして厳しく諭すセリルさん。いい母親だったんだろうな。
そうなんだよ、マイヤーの前の前。
俺が入った頃の副ギルドマスターのメイスさんは本当に紳士で、かつ優秀で尊敬できる人だった。
優秀過ぎて外から引っ張りダコで、全然ギルドにいなかったが、俺が状況を整理し、ある程度仕事をマニュアル化させた後は「書記」のスキルなしで俺の休みの日の仕事を代わってくれるなど凄い人だった。
ブライアンが自分と一緒で書類仕事が苦手だとか言ってたが、アンタと一緒にするなと言いたい。
今では別の街でのギルマスも辞め、王都で王侯貴族の子息子女相手の教育係をしており、そのために外での勉強と実績作りでギルドにいたエリートだ。
話を戻し、今後はマイヤーに任せていくことを伝えると、先にマイヤーには帰らせて二人きりになると本題に入る。
「セリルさん、ここからはただのお願いです。無理でしたら断っていただいて構いません。聞くだけお願いします。どうかギル―」
「いいわよ」
こちらが思いつめたように話すのが嫌だったのか、珍しく、人の話を遮ぎって話し出す。
ってえぇ! ユーリー並の察しの良さだ。
「色々とあったんでしょ。街で噂になってたわよ。まあ、それはいいとして、引き継ぎの話聞いていてもタナカくんが辞める流れなのはわかったわ。
それで、私に戻って来てほしいってことでしょ」
すべてを察せられ、付け足す言葉もないので言葉に詰まる。
「元々、あなたに全部押し付けて辞めたのは私だしね。子供ももう成人して働いているし、ここの仕切りだってそろそろ代わろうかってとこだったのよ。
もうおばちゃんだから受付には立てないけど裏方なら、お手伝いさせていただくわ」
とんでもない、セリルさんなら今復帰しても看板嬢だ。多くの冒険者が彼女の笑顔に見送られ『生きて帰ってこよう』と強く思っていた情景が思い浮かぶ。
ただ、今回はあくまで裏方不足のお手伝いだ。
負担は増やしたくないし、彼女にはジョブ「書記」があるしな。
色々と口説き文句(決して男女の意味じゃないよ!)を考えて来てはいたが、すべて無駄になってしまったな。
俺に残っているのは誠心誠意、頭を下げることだけだった。
彼女は退職後もギルドとのツテで主婦層の仕事を作り、ギルドもまた安定かつ、スムーズに品質の良い納品ができるようになるなどの活躍をしていた。
こちらに向ける笑顔には20年経っても色褪せない、人間的な美しさがある。
年の頃はそれこそ、仕立て屋の女主人と同じくらいだが、向こうが仕事柄着飾って化粧もバッチリなのに対して、彼女は川での仕事もあるため、汚れたエプロンにスッピンだ。
それでも明るい笑顔が何よりの化粧となって彼女の魅力を引き出していた。
「何も言わず、勝手に私が抜け、その間ウチのマイヤーが大変失礼をいたしました。
本人も心を入れ替えやり直したいと言っているので、どうかお許しください」
まずはこちら側の非礼を詫びる。
俺が頭を下げると、一緒になって頭を下げるマイヤー。本当に反省しているようだ。
これがブライアンなら信用してはいけないが、マイヤーはまだ30歳で肩書き不足での副ギルマスに就任したこともあり、かなり肩肘を張っていた。
その憑物も落ちたようだ。
彼はジョブレベルが伸び悩み、Cランク冒険者のときに連れて来られたが、それでは実績不足だとブライアンに半ば強引にBランクに上げられてから、副ギルドマスターになった経緯がある。
そのことが逆に冒険者達や受付嬢から悪い噂になり、孤立しがちになった頃から歪み、貴族関連のコネで現状を打破することしか見れなくなっていた。
まあ同情する気はないけどね。自身の都合で、周りに不当な不利益もたらす人間は害悪だ。
ただ、反省して前を向くというのであれば奮い立ち上がらせ、導くのも先達者の務め。
そう、これもまたダンディズム!
で、あるかどうかは知らないが。
「いいのよ、タナカ君。私のいた頃のメイスさんが特別紳士で優秀だっただけで、貴族出身の人はこれくらいが普通って聞くわ。
でも、これからもお互いいい関係でいたいなら、改めてよろしくね、マイヤーさん!」
っと子供を叱りつけるように、マイヤーに優しく、そして厳しく諭すセリルさん。いい母親だったんだろうな。
そうなんだよ、マイヤーの前の前。
俺が入った頃の副ギルドマスターのメイスさんは本当に紳士で、かつ優秀で尊敬できる人だった。
優秀過ぎて外から引っ張りダコで、全然ギルドにいなかったが、俺が状況を整理し、ある程度仕事をマニュアル化させた後は「書記」のスキルなしで俺の休みの日の仕事を代わってくれるなど凄い人だった。
ブライアンが自分と一緒で書類仕事が苦手だとか言ってたが、アンタと一緒にするなと言いたい。
今では別の街でのギルマスも辞め、王都で王侯貴族の子息子女相手の教育係をしており、そのために外での勉強と実績作りでギルドにいたエリートだ。
話を戻し、今後はマイヤーに任せていくことを伝えると、先にマイヤーには帰らせて二人きりになると本題に入る。
「セリルさん、ここからはただのお願いです。無理でしたら断っていただいて構いません。聞くだけお願いします。どうかギル―」
「いいわよ」
こちらが思いつめたように話すのが嫌だったのか、珍しく、人の話を遮ぎって話し出す。
ってえぇ! ユーリー並の察しの良さだ。
「色々とあったんでしょ。街で噂になってたわよ。まあ、それはいいとして、引き継ぎの話聞いていてもタナカくんが辞める流れなのはわかったわ。
それで、私に戻って来てほしいってことでしょ」
すべてを察せられ、付け足す言葉もないので言葉に詰まる。
「元々、あなたに全部押し付けて辞めたのは私だしね。子供ももう成人して働いているし、ここの仕切りだってそろそろ代わろうかってとこだったのよ。
もうおばちゃんだから受付には立てないけど裏方なら、お手伝いさせていただくわ」
とんでもない、セリルさんなら今復帰しても看板嬢だ。多くの冒険者が彼女の笑顔に見送られ『生きて帰ってこよう』と強く思っていた情景が思い浮かぶ。
ただ、今回はあくまで裏方不足のお手伝いだ。
負担は増やしたくないし、彼女にはジョブ「書記」があるしな。
色々と口説き文句(決して男女の意味じゃないよ!)を考えて来てはいたが、すべて無駄になってしまったな。
俺に残っているのは誠心誠意、頭を下げることだけだった。
54
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。
話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。
説明口調から対話形式を増加。
伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など)
別視点内容の追加。
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。
2021/06/27 無事に完結しました。
2021/09/10 後日談の追加を開始
2022/02/18 後日談完結しました。
2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる