58 / 100
2章 臨時冒険者登録試験
第58話 懸念
しおりを挟む
セリルさんからの快い返事をいただいてから、数日が経った。その間に多くの課題、引き継ぎがあったが、一つ一つこなしていった。
セリルさんについては何の問題もないレベルだった。受付嬢達の自覚が出てきたのか、後ろ任せな書類が少なくなり、負担も減っていった。
やっぱり、俺が舐められてただけなんだろうな、トホホ。
マイヤーも、取引先との関係の再構築を頑張っていた。元々は貴族の社交界の経験もある男なので一度頭を下げ直して、取り組めば何とかなるものだ。
一番の懸念だった武器屋のホッカさんの所だが、二人で頭を下げ、相手にされなくても食い下がるマイヤーを見て、ひとまずは様子を見てくれるようだ。
ただ、俺の方はというと約束通り試験のことを話したが、それ以来ろくに会話をしていない。
お弟子さんがいうには怒ってるとかではないらしいが、どう接するか決めあぐねてるのだろう。
手先以外は不器用な人だからな。
他にも俺の仕事の振り分けは残っている。
行商人の件は仕事としてではなく、別途対策を検討中。解体素材の在庫管理だが、これをセリルさんにやらせるわけにはいかない。
今の解体士は俺が入ってから二代目だが、先代の教えしか言うことを聞かず、上手く関係を築けていなかったが、時間ができたので俺から歩み寄ってみた。
解体を教えて貰い、そこから一日、二日と「解体」のスキルブックを使って腕で認めさせるという、かなりインチキくさい作戦に出てみた。
これが案外上手くいき、そこからこちらのお願いも聞いてもらえるようになった。解体倉庫と酒場の厨房の在庫を上手く連携すれば馬鹿にならない利益になる。
俺が入った当初は両方別々で管理して、それぞれで廃棄を大量に出して赤字に繋がっていたのを改革していったのだ。
酒場の方は領主の専属料理人のグレイルに俺が頭を下げて、発注業務も任せられる人員確保に乗り出した。
恩を感じていたグレイルは二つ返事で了承してくれ、下積み段階から実地訓練への移行の段階の人間の研修という名目で、領主に提案してくれた。
領主の方にはブライアンも赴き、結婚披露宴をギルドを上げて手伝ったのも功を奏して、上手く話をつけてくれた。
そういう意味ではマイヤーの手柄でもある。
これでだいたいは目処が立った。あらためてこれだけ人数かかる仕事を一人でやってたんだな、俺。
残る俺の懸念は、ホッカさんは個人的なので置いておくとして、やはりララのことだ。
今後どうなるかはわからないが、取り敢えずはギルドも落ち着いてきたし、休暇一ヶ月はいいとしても職場復帰をするのなら、俺の引き継ぎ期間に一度は会っておきたい。
それに、差し出がましいがブライアンにまだ彼女がギルドにいられるようにお願いしておこうと思う。
ブライアンが出勤してきた段階でギルド長室へ入ると、上役二人が難しい顔をしていた。
それでも話は通しておこうと
「ギルドマスター、ララさんの件なんですが休暇中申し訳ありませんが、引き継ぎをしたいこともあるので一日だけでも出勤させることはできますか?」
と聞いてみると、
「いや、うん。そのことなんだがね、本当は話してはいけないのだが、彼女から君の名前が出たのでね。どこまで聞いているのかわからないが」
っと、何とも歯切れの悪い言葉が出てきた。
嫌な予感がするので話を促すと
「彼女は実は伯爵家の人間でね。
すでに公爵家の男性との婚約が内々に決まっていて、それまで外にいたいということで私が預かっていたんだが、今朝方に彼女の家の人達がやってきてね」
なっ、そのまま連れてかれたって意味か、今の言葉はっ。
「急にどうして? 彼女はそのままついていったんですか!? 彼女がその話を嫌がってるのは知ってたんでしょ、だったらなんで!」
思わず、声を上げてしまった。
「落ち着いてくれたまえ、君たちがそういう関係とは知らなかったんだ。
急に見えるかもしれないが、以前から公爵家からは嫁ぎを急かされてたみたいでね。私が預かれなくなるかもしれないと伝えると『もう十分だろう』と。
それに公爵家が相手では、私やマイヤーでもどうすることもできない」
大袈裟に首を振るブライアン。ゲスな勘繰り入れやがって、そういう話じゃないだろうがっ!
ブライアンは続ける。
「彼女から言付けと預かりものだ。
『優しい夢《やくそく》、ありがとうございました』だそうだ」
言葉と共に、指輪を入れるような小さな宝石箱を渡される。
宝石箱の中には、渡していた記念の魔石が入っていた。
セリルさんについては何の問題もないレベルだった。受付嬢達の自覚が出てきたのか、後ろ任せな書類が少なくなり、負担も減っていった。
やっぱり、俺が舐められてただけなんだろうな、トホホ。
マイヤーも、取引先との関係の再構築を頑張っていた。元々は貴族の社交界の経験もある男なので一度頭を下げ直して、取り組めば何とかなるものだ。
一番の懸念だった武器屋のホッカさんの所だが、二人で頭を下げ、相手にされなくても食い下がるマイヤーを見て、ひとまずは様子を見てくれるようだ。
ただ、俺の方はというと約束通り試験のことを話したが、それ以来ろくに会話をしていない。
お弟子さんがいうには怒ってるとかではないらしいが、どう接するか決めあぐねてるのだろう。
手先以外は不器用な人だからな。
他にも俺の仕事の振り分けは残っている。
行商人の件は仕事としてではなく、別途対策を検討中。解体素材の在庫管理だが、これをセリルさんにやらせるわけにはいかない。
今の解体士は俺が入ってから二代目だが、先代の教えしか言うことを聞かず、上手く関係を築けていなかったが、時間ができたので俺から歩み寄ってみた。
解体を教えて貰い、そこから一日、二日と「解体」のスキルブックを使って腕で認めさせるという、かなりインチキくさい作戦に出てみた。
これが案外上手くいき、そこからこちらのお願いも聞いてもらえるようになった。解体倉庫と酒場の厨房の在庫を上手く連携すれば馬鹿にならない利益になる。
俺が入った当初は両方別々で管理して、それぞれで廃棄を大量に出して赤字に繋がっていたのを改革していったのだ。
酒場の方は領主の専属料理人のグレイルに俺が頭を下げて、発注業務も任せられる人員確保に乗り出した。
恩を感じていたグレイルは二つ返事で了承してくれ、下積み段階から実地訓練への移行の段階の人間の研修という名目で、領主に提案してくれた。
領主の方にはブライアンも赴き、結婚披露宴をギルドを上げて手伝ったのも功を奏して、上手く話をつけてくれた。
そういう意味ではマイヤーの手柄でもある。
これでだいたいは目処が立った。あらためてこれだけ人数かかる仕事を一人でやってたんだな、俺。
残る俺の懸念は、ホッカさんは個人的なので置いておくとして、やはりララのことだ。
今後どうなるかはわからないが、取り敢えずはギルドも落ち着いてきたし、休暇一ヶ月はいいとしても職場復帰をするのなら、俺の引き継ぎ期間に一度は会っておきたい。
それに、差し出がましいがブライアンにまだ彼女がギルドにいられるようにお願いしておこうと思う。
ブライアンが出勤してきた段階でギルド長室へ入ると、上役二人が難しい顔をしていた。
それでも話は通しておこうと
「ギルドマスター、ララさんの件なんですが休暇中申し訳ありませんが、引き継ぎをしたいこともあるので一日だけでも出勤させることはできますか?」
と聞いてみると、
「いや、うん。そのことなんだがね、本当は話してはいけないのだが、彼女から君の名前が出たのでね。どこまで聞いているのかわからないが」
っと、何とも歯切れの悪い言葉が出てきた。
嫌な予感がするので話を促すと
「彼女は実は伯爵家の人間でね。
すでに公爵家の男性との婚約が内々に決まっていて、それまで外にいたいということで私が預かっていたんだが、今朝方に彼女の家の人達がやってきてね」
なっ、そのまま連れてかれたって意味か、今の言葉はっ。
「急にどうして? 彼女はそのままついていったんですか!? 彼女がその話を嫌がってるのは知ってたんでしょ、だったらなんで!」
思わず、声を上げてしまった。
「落ち着いてくれたまえ、君たちがそういう関係とは知らなかったんだ。
急に見えるかもしれないが、以前から公爵家からは嫁ぎを急かされてたみたいでね。私が預かれなくなるかもしれないと伝えると『もう十分だろう』と。
それに公爵家が相手では、私やマイヤーでもどうすることもできない」
大袈裟に首を振るブライアン。ゲスな勘繰り入れやがって、そういう話じゃないだろうがっ!
ブライアンは続ける。
「彼女から言付けと預かりものだ。
『優しい夢《やくそく》、ありがとうございました』だそうだ」
言葉と共に、指輪を入れるような小さな宝石箱を渡される。
宝石箱の中には、渡していた記念の魔石が入っていた。
51
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる