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3章 王都救出絵巻
第89話 舞踊
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ララがお屋敷にいる間も、嫁いでからも救出するのが無理だというのなら、今この瞬間『空白の時間』である魔道具「貞淑の契り」を嵌めるその直前。
公爵家でのパーティーの最中にその身を攫われたとなれば、それはもう完全に公爵家の落ち度となる。
もちろん、これだけですべて解決とは全然いかないが、事後策も色々と考えてはいるからな。
この場への潜入の仕方はこうだ。まず、エレイシアに商人の「アイテムボックス」のスキルブックを渡して読ませ、実は昨夜からその中で待機していた。
そうして招待状なしで屋敷へ潜入したあと、このフロアのセキュリティはボディチェックと衣装に「貴族御用達」の仕立て屋のみに許された貴族の証である刺繍があれば野暮な身分証明などがない。
そういった理由でキャサリンさんに無理をいって、刺繍をつけてもらったというわけだ。
流石に驚かせすぎたが、何とか俺だとは伝わったようだ。作戦会議の際にエレイシアを通じてララにもこの作戦を伝えておこうと提案したが、ユキに大反対されてしまった。
『作戦行動に何か知らせないと不都合があるっていうならわかるけど、そうじゃないなら知らせないほうがいいわよ。
その日のパーティーの前に先方とも会うみたいだし、勘付かれないためにもね。何より、サプライズのほうがロマンチックじゃない』
いや、あなた先日までその道のプロでしたよね?
何だよロマンチックって。ただまあ、エレイシアも一度話して周りへの警戒心がおざなりになっても困るしな。
というわけで、こんなキザな再会となってしまった。まあ、ダンディズムがどうのこうの言い出したのはララだからな、後で許してもらおう。
驚きながらも意を決して俺の手を取るララ。そのまま音楽に合わせ、ダンスを踊る。
「タナカさん、なんですよね? 何から喋ればいいんだろ? そ、そのダンスお上手なんですね」
なんて場違いな、いや状況に合っていないだけで、場には適した褒め言葉を頂いた。
「ああ、こっそり練習していてさ、実は」
場に流され平気で嘘をついてしまった。勿論これは初めにスキルブックを作れた候補のうち、唯一作らなかった「舞踊」のスキルブックの影響だ。
こんなことに貴重な1日1個のスキルブックを? とも思ったが、これもユキの入れ知恵だ。
『いい? 変装による潜入で肝心なのは大胆さと掴みよ。挙動不審にならないように、優雅に踊って周りの視線を釘づけにしちゃいなさい。何より、ロマンチックじゃない』
いや、君そればっかり。何なの、ダンディズムの次はロマンチックなの?
純日本人社畜リーマンに何を求めてるの?
ともあれ、「舞踊」スキルで優雅にフロアを舞う俺とララ。
周りの人間も婚約についてはあくまで公然の秘密のため、このダンスを咎めることはできない。
暫しの間、二人だけの特別な時間が流れた。
「フフッ。私、ホントはこのお誘い断らなきゃいけないんですよ。責任、取ってくれるんですよね?」
とダンスの最中、耳元で囁かれてドキっとしてしまう。顔を上げると小悪魔的な笑顔を見せてくる。
これもまた状況的には間の抜けた感想なのだが、今日の彼女は今まで知っている受付嬢のララではなく、露出の高い美しいドレスを身に纏い、トビキリ綺麗だった。
ドレス姿だとハッキリとわかるけど、この娘スタイルは本当に凄いのよな、目のやり場に困る。
まあ勘違いしていても仕方ない。
「ああ、君をこの家にやらないためにきたんだからね、僕達を信じて任せてくれないか?」
ん? アレっ、何か俺のほうが勘違いさせるようなこと言ってないか?
まあ、それはどうでもいいか。この言葉だけではほとんど何も伝わらないが、それでも
「あッ、エレイシアッッ」
と、感極まりながらララが呟く。どうやらエレイシアがこちらの協力者であることは伝わったようだ。この二人の絆の前にはおっさんの出る幕はないな。
それでも、俺にしかできないこともある。注意深くフロア内の人間の位置を確認する。
屋敷に入る前の厳重なチェックとフロアの前の軽い二重チェックがあるので、無粋な警備兵はおらず、すぐに駆けつけれるように隣の部屋で待機しているようだ。メイスや噂のラディッツオの姿も見えないな。
ダンスを踊りながらスキルを使い、不自然にならないように足運びをしてテラスへと近づく。ここは屋敷の三階で、テラスは裏庭の方へと通じている。
ここの裏庭は広大で侵入者対策で何人もの警備兵が散在していることは調査済みだ。
さて、曲が終わりに差し掛かってきた。曲が終われば流石に公爵家に連ねる人間が何かと理由をつけて、俺を引き離しにくるだろう。
―この曲が終わればお次は舞台の始まりだ。
さて、大脱走劇と洒落込みますか。
公爵家でのパーティーの最中にその身を攫われたとなれば、それはもう完全に公爵家の落ち度となる。
もちろん、これだけですべて解決とは全然いかないが、事後策も色々と考えてはいるからな。
この場への潜入の仕方はこうだ。まず、エレイシアに商人の「アイテムボックス」のスキルブックを渡して読ませ、実は昨夜からその中で待機していた。
そうして招待状なしで屋敷へ潜入したあと、このフロアのセキュリティはボディチェックと衣装に「貴族御用達」の仕立て屋のみに許された貴族の証である刺繍があれば野暮な身分証明などがない。
そういった理由でキャサリンさんに無理をいって、刺繍をつけてもらったというわけだ。
流石に驚かせすぎたが、何とか俺だとは伝わったようだ。作戦会議の際にエレイシアを通じてララにもこの作戦を伝えておこうと提案したが、ユキに大反対されてしまった。
『作戦行動に何か知らせないと不都合があるっていうならわかるけど、そうじゃないなら知らせないほうがいいわよ。
その日のパーティーの前に先方とも会うみたいだし、勘付かれないためにもね。何より、サプライズのほうがロマンチックじゃない』
いや、あなた先日までその道のプロでしたよね?
何だよロマンチックって。ただまあ、エレイシアも一度話して周りへの警戒心がおざなりになっても困るしな。
というわけで、こんなキザな再会となってしまった。まあ、ダンディズムがどうのこうの言い出したのはララだからな、後で許してもらおう。
驚きながらも意を決して俺の手を取るララ。そのまま音楽に合わせ、ダンスを踊る。
「タナカさん、なんですよね? 何から喋ればいいんだろ? そ、そのダンスお上手なんですね」
なんて場違いな、いや状況に合っていないだけで、場には適した褒め言葉を頂いた。
「ああ、こっそり練習していてさ、実は」
場に流され平気で嘘をついてしまった。勿論これは初めにスキルブックを作れた候補のうち、唯一作らなかった「舞踊」のスキルブックの影響だ。
こんなことに貴重な1日1個のスキルブックを? とも思ったが、これもユキの入れ知恵だ。
『いい? 変装による潜入で肝心なのは大胆さと掴みよ。挙動不審にならないように、優雅に踊って周りの視線を釘づけにしちゃいなさい。何より、ロマンチックじゃない』
いや、君そればっかり。何なの、ダンディズムの次はロマンチックなの?
純日本人社畜リーマンに何を求めてるの?
ともあれ、「舞踊」スキルで優雅にフロアを舞う俺とララ。
周りの人間も婚約についてはあくまで公然の秘密のため、このダンスを咎めることはできない。
暫しの間、二人だけの特別な時間が流れた。
「フフッ。私、ホントはこのお誘い断らなきゃいけないんですよ。責任、取ってくれるんですよね?」
とダンスの最中、耳元で囁かれてドキっとしてしまう。顔を上げると小悪魔的な笑顔を見せてくる。
これもまた状況的には間の抜けた感想なのだが、今日の彼女は今まで知っている受付嬢のララではなく、露出の高い美しいドレスを身に纏い、トビキリ綺麗だった。
ドレス姿だとハッキリとわかるけど、この娘スタイルは本当に凄いのよな、目のやり場に困る。
まあ勘違いしていても仕方ない。
「ああ、君をこの家にやらないためにきたんだからね、僕達を信じて任せてくれないか?」
ん? アレっ、何か俺のほうが勘違いさせるようなこと言ってないか?
まあ、それはどうでもいいか。この言葉だけではほとんど何も伝わらないが、それでも
「あッ、エレイシアッッ」
と、感極まりながらララが呟く。どうやらエレイシアがこちらの協力者であることは伝わったようだ。この二人の絆の前にはおっさんの出る幕はないな。
それでも、俺にしかできないこともある。注意深くフロア内の人間の位置を確認する。
屋敷に入る前の厳重なチェックとフロアの前の軽い二重チェックがあるので、無粋な警備兵はおらず、すぐに駆けつけれるように隣の部屋で待機しているようだ。メイスや噂のラディッツオの姿も見えないな。
ダンスを踊りながらスキルを使い、不自然にならないように足運びをしてテラスへと近づく。ここは屋敷の三階で、テラスは裏庭の方へと通じている。
ここの裏庭は広大で侵入者対策で何人もの警備兵が散在していることは調査済みだ。
さて、曲が終わりに差し掛かってきた。曲が終われば流石に公爵家に連ねる人間が何かと理由をつけて、俺を引き離しにくるだろう。
―この曲が終わればお次は舞台の始まりだ。
さて、大脱走劇と洒落込みますか。
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