転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu

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3章 王都救出絵巻

第90話 幕開け

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 曲が止まり、ララとのダンスの時間も終わりを告げる。自然とこちらに皆の視線が集まっている。

 今後の仕込みのためにも注目を浴びるのは織り込み済み、それでも連れ出すチャンスのあるこのダンスの時間を狙ったんだから。
 小声でララに語りかける。

「君はあくまで攫われる身だから、始まったらちゃんと悲鳴を上げてね」

「はいっ」

 笑顔で返事をされる。
 ホントにわかってんのかな? ダンスに誘ったときから違和感あったけど、妙にこの状況に酔ってるようなって……酔ってる?

 そういやこの娘、お酒に弱かったな。ダンスの前にも軽く飲んでただろ、これ。
 それで踊って酒がまわってるみたいだ。
 無理もないか。このあとに晒し者のようなイベントが待っていたんだ、一杯くらい飲まないとやってられないよな。

 まあ、お酒の勢いでこの作戦に乗ってくれるというのなら、それもいいだろう。
 テラスへと繋がるフロアの前で止まり、一礼をするララを後ろから羽交い締めにした。
その手には瞬時に拳銃を握りしめている。

 散々ポーターのアイテムボックスが商人のアイテムボックスの劣化版のように言ってきたが、実際はそうではない。
「ポーター」はジョブレベルが上がると、新しいスキルは最初に手に入るアイテムボックスのグレードが上がっていくという、変わった特徴がある。
 今使ったのは「装備脱着」というスキルで、アイテムボックス内の装備品を取り出さずに瞬時に装備できるという、使い方次第ではかなり有能なスキルだ。

 注目を集める中、まずはこの脱走劇の幕開けの鐘を鳴らす。天井へ一発銃弾を放ち、フロアに銃声が鳴り響いた。
 
「キャァッッー!!」

 耳元でララの悲鳴が聞こえる。
 この悲鳴は演技というより急な銃声に驚いただけかな、まあビックリさせただろうが仕方ない。
 拳銃では脅しの道具として伝わらない可能性があるので、瞬時にナイフへと交換する。

「ハッハッハッァ、天下のヴァイアージ家の警備も大したことはないな。この女が俺に脅されてダンスに付き合っていたことも気づかないとは!
 調べはついているんだぜ。組織を潰された恨みだ、この婚約者はもらっていくぞっ!!」

 と、ちょっと大根役者だが取り敢えずはユキのいた組織の残党に見せかけて犯行声明を残す。これで逃げ切れば責任はすべてヴァイアージ家となるだろう。

 犯行声明は済んだのでもうここに用はない。
 ララを抱えたままテラスを突っ切り、裏庭へと飛び降りる。

 残りの期間を使って通常レベルもさらに上げている、この程度はどうってことはない。

「キャアッッー!!」

 二度目のララの悲鳴が今度は夜空へと消えていく。何だかちょっと楽しげに聞こえるのは気のせいだろう。

 飛び降りながら武器もまた拳銃に戻し、周りを見渡す。ここからは時間との勝負だ。

 そのままの勢いで木々が生い茂る広い庭へと入っていった。

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