転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu

文字の大きさ
99 / 100
3章 王都救出絵巻

第99話 脱出

しおりを挟む
「ん? 何だそれじゃあ、あの嬢ちゃんを攫ったのはヴァイアージ家への恨みとか、俺らをパーティーに入れるためとかじゃなくて、単に知り合いで助けたかったからってことか。
 ふ~ん、それはどうでもいいが、それならこっちの俺に一撃いれたアンタは、嬢ちゃんの後ろにいた女剣士かっ! 気づけば何となくわかるな、確かに」

 いや、どうでもよくないが。
 
 メイスが俺の正体に気づき、状況が飲み込めないラディッツオにサインの片手間大雑把ながら成り行きを説明した所、こんな感想が出てきた。

 何が『意味わかっていってやがんのか?』だよ、わかってないのはあなたですよっ。
 つか、俺らを只の賊だと思ったままパーティー入り承諾したのか。何だか扱いやすすぎて、逆に扱いづらい猛獣を手に入れてしまったようだ。

 ちなみにサインの時にメイスに

『冒険者パーティーを組むのなら敬語や敬称は不要だ。メイスでいい、よろしく頼むタナカ』

 と言われたので結局またメイス呼びに戻すことになってしまった。冒険者というのはそういうものらしい、社畜にはよくわからん話だ。

 結局、負け惜しみだからか知らないが、メイスが何処で俺に気づいたかは面白がって教えてはくれなかった。
 普段の余暇がない分、こういう意外な所でお茶目なんだよなこの人。ブライアンと一緒のときはひたすらツッコミ要員になるんだけど。

 勝手に推測すれば、lvこそ違えど合気道は昔、ギルドで俺が使っていたのは数度目撃されていたこと。
 交渉に入ってからの口調、そして強制証文の筆跡が止めか。
 広場で二度目にあったときにも何か違和感を与えていた可能性もありそうか。

 口振りからすると俺の異様に高かった「書記」のジョブレベルと今の証文の魔力なども加味して、新しいスキルによって急激な戦闘力を手にしたことも推測されていそうだ。
 ユーリーといい、俺より頭のいい人の相手をするのは怖いもんだわ。
 
 さて、ここで色々考えている場合でもないな、何せ敵地のど真ん中だし。

 まずはサインが済んだラディッツオを解放したらそのままエレイシアにはひとまず屋敷へと戻ってもらう。
 このままいなくなれば犯人側にエレイシアが協力していたと疑われて、ララの家の立場も悪くなるからな。実際、協力してるんだけど。

 シナリオとしては主が攫われ、控室から出て主の救出に向かったが追いつけず、屋敷へと戻りヴァイアージ家に説明を求めてクレームを入れるという演技だが、果たして大丈夫だろうか。
 
 演技とか苦手そうだからなー、作戦会議のときにいっそ俺がエレイシアに変装してその役やろうか? 
 と提案したら、

「バっ、馬鹿にするなっ、貴族達への対応なら慣れている。何より、私のことは私がやれば一番ボロが出ないだろうがっ!」

 と怒られてしまった。まあ騒ぎで混乱しているし、落ち度が公爵家にある以上、エレイシアに嫌疑など下手にかけられないだろう。
 あれだけ派手にやったのも手引き云々ではなく、完全に公爵家の落ち度と、他の招待客に印象づける狙いもあったのだ。

「後で合流しよう、エレイシア。ララが待ってるからな、しくじるなよっ」
 
「変なプレッシャーをかけるなっ、前々から言いたかったが、タナカさんは私のことをポンコツ扱いしすぎだっ、合流したときは覚えていろよ」

 と捨て台詞を吐いて屋敷へと向かうエレイシア。
 出会ってまだ1ヶ月ちょいだが打ち解けてきたなと、好意的に受け取っておこう。

 残った俺らはというと、まずはアイテムボックスから作り置きしていた商人の「アイテムボックス」のスキルブックを取り出して、メイスに渡す。
 どうやってこの場から脱出するか、それはもうメイスに運んでもらうのが一番安全だ。
 飛行魔法もあるしね。

 スキルブックを渡すと、流石に驚きつつも

「どうやらスキルブックを用意できるというのは本当のようだね。
 私に委ねるのは些か信頼しすぎな気もするが、それも先程の証文のスキルということか。いやはや、努力というものはどのように開花するかわからないものなんだな、また一つ勉強になったよ」

 あの社畜生活を努力と称されるのは、また凄い複雑な気持ちになるな。ただ、この力で誰かを救えるっていうのは悪い気分でもない自分もいる。

 準備も終わり、少し嫌がりつつも大人しくアイテムボックス内に入っていくラディッツオ。俺も合流地点を伝えると後は任せましたよっと入っていく。

 ここ二ヶ月、何だかんだで忙しかったからな、ようやく人任せにできる。…… 本当に二ヶ月か?

 その前の試験も半月でフィールド一つとニつのダンジョンを攻略して、残り半月で俺がいなくても回るよう引き継ぎに追われていた。
 さらにその前など説明不要の社畜生活だ。

 実際問題、この後も課題は残ってるんだよなー。
 ララ達にずっと街の外で生活させるつもりなんてないし、メイスの本懐を手伝えるのは正直嬉しくもあるけど、大仕事なのは間違いない。


 うん、休めるときに休んでおこう、
 俺は久方ぶりに思考を放棄することにした。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...