控えめカワイイ後輩クンにイケメンの俺が本気になる話

ずー子

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実家から帰ってきたら先輩の様子がおかしくなっていた話

 実家から帰ってくるなり僕は下宿先ではなく海翔先輩のマンションに直行した。そしてそのまま、ずっと抱かれている。
「んっ……♡」
 海翔先輩の長くて綺麗な指が僕の胸を撫でて、僕は思わず声を漏らす。先輩は楽しそうに笑うと、乳首を摘んだり捏ねたりしてくるから堪らなくなる。恥ずかしくて気持ち良くて頭がおかしくなりそうだった。
(こんなはずじゃなかったのに……)
 僕の身体はどんどん熱を帯びていく。海翔先輩に触れられているだけでどこもかしこも気持ちがいい。気持ちが良すぎて怖くなる。
「せーちゃん」
 いつもと同じトーンだけど、どこか熱っぽい声で海翔先輩は僕を呼んで、また唇を重ねて来た。ちゅく、ちゅっと音を立てて舌を絡ます度に、僕の身体も熱くなる。
「は、ぅ……んっ」
 海翔先輩の舌が僕の歯列をなぞって、上顎を撫でられる度にぞくりと背筋が震える。同時に乳首を指先で転がされて、僕は思わず声を上げてしまう。
「可愛い、せーちゃん……」
 そんな熱っぽい声で囁かれると、僕はもうダメだった。
「かいとせんぱい……」
 海翔先輩の声だけでイッてしまいそうだ。いつも優しくて紳士的な海翔先輩なのに、すごく切羽詰まった顔で名前を呼ばれるといつもよりドキドキしてしまう。1週間離れてただけでこんなになっちゃうの、嬉しいし、少しだけ怖い。こんなにこの人に思われてることも、それがいつか終わってしまうかもしれないことも。
 黒髪の海翔先輩、めちゃめちゃかっこよくて、バスから降りた時、一瞬言葉に詰まってしまった。バイトだって聞いてたから来てくれるとは思ってなかったし、来てくれたらあんなにかっこよくて、荷物もさり気なく持ってくれて、全部全部かっこよかった。優しいのに少しだけイライラしてるみたいで、それが怖くてドキドキして、僕は買ってきたお土産の話とかしてみたけど、先輩は「あー…うん」みたいなリアクションだけで「ごめん、余裕ないから」って途中で遮ってきた。それもまた、勝手でわがままでかっこよくてドキドキした。
 好き勝手先輩の部屋のベッドで触られて、僕は段々眠くなってきた。先輩の匂いに包まれて、先輩の鼓動を聞いてたらすごく安心してしまって。
(あ、寝ちゃう……)
「せーちゃん寝ちゃう?いいよ、疲れたよな」
 先輩はそう言って優しく頭を撫でてくれる。それが嬉しくて甘えたくて僕は先輩の身体に抱きつくと、そのまま眠ってしまった。

「ん……」
 目が覚めた僕は、ぼやけた視界を何度か瞬きしてクリアにする。何度目かの先輩の家でのお泊りの朝。
「かいとせんぱい……?」
 隣に先輩の姿は無かった。僕は身体を起こしてキョロキョロするけれど、やっぱりいないようだ。
「どこいっちゃっ…んんっ!」
 ベッドから降りようとした瞬間、腰に痛みが走った。少し蹲る。いつもはすごく優しいし丁寧なのに、昨日はやっぱりちょっと激しかった。でもそれが嬉しかったのも確かで、僕は思わず顔を赤くする。
(あんな余裕のない先輩、初めて見たかも…)
 いつも優しいし大人だしちょっと意地悪だなって思うくらい長く焦らすのに、昨日の先輩は、なんかちょっと、いつもと違っていた。思い出すだけでドキドキして、お腹の奥がキュンと疼く。
(って!何考えてるんだ僕は……)
 ぶんぶん頭を振って煩悩を振り払うと立ち上がる。とりあえず服着ないと、と思って気づいた。服がない。
「えっ!?えっ!?」
 慌ててメガネを探して起き上がると「お!せーちゃんおはよー」と言う先輩の声がした。僕はタオルで頭をガシガシ拭きながら出てきた先輩に恐る恐る尋ねる。
「あの、服が……」
 先輩は僕の顔を見るとにっこり笑って近づいてくる。そして僕の腰に手を当てるとそのまま撫でた。くすぐったさに思わず声を上げそうになるけど、堪えて「先輩」と言う。
「なーに?」
「……その、服を」
「あー洗っちゃった」
「え!」
 荷物の分もと先輩は悪びれる様子もなく、寧ろ楽しそうに言う。
「いーじゃんどうせ、外行く訳じゃないし。俺の着ればいいだろ?」
「そ、それは……」
 先輩は僕を抱き寄せると、ちゅ、ちゅ、と首裏、うなじ、耳へとキスを落としていく。甘い痺れが身体に広がるような感覚に僕は思わず甘い声を漏らした。
「んっ……」
 先輩はそれに気を良くしたのか、耳元で囁くように言う。
「今日は1日中こうしてよーぜ。な?せーちゃん」
「っ、んぅ……♡♡」
 耳の中を舌でなぞられるとゾクゾクする。僕は思わず身を捩った。僕が弱いの知っててやってるんだ、ずるい! そんな僕の様子を先輩は楽しそうに眺めている。
「朝からせーちゃんえっちな声出すなぁ」
「ちが、も、やめっ……」
 先輩は僕の制止を無視して続ける。段々と力が抜けていくのが分かった。やばい、このままだとまた昨日みたいに流される!
「んん…!だめ、だめです、先輩っ!」
「えー?」
 先輩は不満そうだけど僕はちゃんと断った。だってこのままだと今日もずっと、その、セックス…することになっちゃいそうだったし、だし…
「ぼ、僕もシャワー浴びてきます!」
「あ、そう?じゃあ俺も一緒に入ろっかな」
「!!」
 さっき浴びてましたよね!?って言いたくなったけど、僕はぷるぷると首を横に振る。
「だ、ダメです!先輩、もう浴びましたよね?」
 では!なんて、僕は逃げるように浴室に駆け込むとドアを閉めた。そしてしゃがみ込んでしまう。
(せ、先輩と一緒にお風呂入ったら……何されるかわかんないしっ……!)
 そんな僕の思考を見透かすように、笑い声がドア越しに聞こえてくると、僕は耳まで真っ赤になるのだった。

「んで、どうするの?」
「………」
 シャワーをお借りしてタオルもお借りして、僕はニヤニヤする海翔先輩を真正面から見据える。
「1日中裸で過ごす?」
「…んっ」
 先輩は僕の方に近づいてくると、顎を持ち上げて上向かせてきた。そして僕の唇を奪うと軽いキスを繰り返す。口に、首筋に、何度も。僕は先輩の身体を押し返すけど、ビクともしなかった。
(なんでこんな力が強いんだこの人……)
 海翔先輩は水泳やってたこともあって、華奢に見えて脱ぐとすごい。引き締まった筋肉は羨ましくもあるし、僕も鍛えたいとは思うけど、海翔先輩みたいに綺麗でしなやかな身体を作るのはなかなか難しい。
「何着るの?俺の着るしかないよね?」
「…そう、ですね」
(やたら嬉しそうなんだけど…!)
 ただでさえシャンプーとか同じ匂いでドキドキしてるのに、服まで先輩のとか…
(なんか、包まれてるみたいな気持ちになるというか…)
 そんなことを考えていたら、海翔先輩はタオルで頭を包んできた。
「下着も洗っちまったから俺のやるよ?使ってないやつな」
「……はい」
 何故かご満悦な様子の先輩は、目を細めて笑う。嫌な予感しかしない僕は、渋々頷くのだった。

「せーちゃん可愛いな?俺のだとブカブカじゃん」
「……っ!」
(この人絶対楽しんでるよね!?)
 僕は自分の格好を見ながら溜息をつく。上はTシャツ、下はパンツだけという格好でベッドの上に座り込んでいる状態なのだ。恥ずかしくて顔を上げられない。
「なんつーか、彼シャツ興味なかったけど、正直クるな…うん」
「……意味分かりません!」
 半袖シャツの裾で股間を隠して、下着は見えないようにしてるけど、やっぱり恥ずかしい。ボトムス貸してって言ったのに「サイズ違うからゆるゆるだろ?」って言われてしまった。
(それならシャツだってそうじゃん…!)
 僕は内心そう叫ぶ。
「せーちゃん」
 海翔先輩は僕の腰を抱き寄せると耳元で囁くように言う。吐息がかかって擽ったいような気持ちになるけど、同時にドキドキもするから困る。
「な、何ですか?」
「……したい」
 何を?って分からないふりして聞きたかった。でも多分、僕の想像通りの意味だろうなって分かったから、僕は思わず身構える。
「ダメ?」
「……っ」
 この人は本当にずるい。僕がその声と顔に弱いことを知っている。でも無理矢理することはしない。僕に言わせたいらしいし、だからわざわざこうやって尋ねてくるし、それに抗えないことも分かってるくせに聞いてくるんだからタチが悪いと思う。
「すげぇクる。めちゃめちゃかわいい。俺の服着てるせーちゃん、かわいすぎる」
「っ、あの……」
 僕は思わず視線を彷徨わせる。どうしよう、こういう時どうしたらいいんだろう?分からないけれど、海翔先輩の熱い視線に溶かされていくような感じがする。
「……いい?」
(……ずるい)
 そんな言い方されたら断れるわけないじゃん!心の中で叫ぶが口には出せない。出せっこない。なんなら黒髪でちょっと髪が伸びた海翔先輩めちゃめちゃかっこいい。アニメとか漫画に出てきそうなくらいかっこいい。こんな人に求められて断られる人なんて、いない。
「し、仕方ないですね……」
 僕がそう言うと、海翔先輩はぱっと明るい笑顔になって僕を押し倒した。そして覆い被さってくるとキスしてくる。僕はそれに必死に応えながら、先輩の首に腕を回すのだった。

 僕のバカ、バカ!バカ!! 全部僕のせいなんだけど。でもだって先輩があんなこと言うからつい…
(いやほんと僕何やってんだろ)
 数時間後。僕はベッドの上で膝を抱えて丸くなりながら自己嫌悪に苛まれていた。
「せーちゃん飯何食べる?そーいや朝飯もまだだったし、なんか作る?」
 海翔先輩はそんな僕を見兼ねてか、キッチンで料理をしていた。僕はと言うとシーツにくるまってミノムシ状態だ。
(うー……)
 僕は唸り声を上げて膝を抱える腕に力を込めると、ぽすっと音を立てて頭を埋める。なんか情けなくて泣きそうだった。
「せーちゃん?どした?」
 ちょっと経って先輩が様子を見に来てくれたので、頭だけ出す。
「先輩……ご、ごめんなさい……」
 ちょっと涙声になってしまった。先輩はびっくりしたように目を見開く。
「なんで?せーちゃん何も悪いことしてねぇよ?」
「でもっ、僕のせいで…先輩の貴重な時間が……」
 海翔先輩はそれを聞くと声を出して笑う。
「え、なんで笑ってるんですか?」
「いや、だってさ……ぷはっ!」
(笑うとこあった!?)
 僕はムッとした表情を浮かべて先輩を睨む。先輩は目元を拭う仕草をした。笑いすぎて涙が出たらしい。失礼な!と思ったけれど、海翔先輩のその表情はどこか嬉しそうだった。
「あー笑った。本当にお人好しだよな?でも逆に心配になる。悪い人に騙されたりしないでくれよ?」
「…僕、お人好しじゃないです」
「お人好しだよ。あとチョロいな」
(…ひどい)
 そんなやりとりをしていると、ぐう、と僕のお腹が鳴る。そういえば朝食も食べずに事に及んでしまったんだった。思い出すだけで顔が熱くなるのを感じた。
「飯出来てるから食おうぜ」
「あ、はい……でもその前にパンツとズボン貸して下さい……」
「……なんで?」
「だって!このままじゃ立てないですよ!」
(いやもうほんと恥ずかしい。全部先輩のせいなんだけど)
 そんな僕を見て先輩はまた笑う。
「ふーん?腰立たないなら抱っこしてやろうか?」
「結構で…ひゃあ!」
「よっと」なんてミノムシのままの僕を、先輩は簡単に持ち上げると、そのままリビングのソファへ連れて行ってしまうのだった。

 先輩は僕が食べている所をニコニコしながら見ていた。なんだか恥ずかしいし、ちょっと居心地が悪い。
「先輩も食べて下さいよ」
「えー?なんで?恥ずかしい?せーちゃん」
「う…ま、まあ…」
 僕が言葉を濁していると海翔先輩は目を細めて嬉しそうに僕を見つめる。
「俺、せーちゃんが食ってるとこ見てるの好き。俺が作ったもの、食べてるのすげー嬉しい」
「…あう」
 聞いてるこっちが照れてしまう。僕が口を噤んで俯いていると、海翔先輩はくすりと笑って僕の頭を撫でた。
「俺の作ったもの食べさせて俺の着せたい服着せて…すげー幸せ」
頭を撫でていた手が頬に触れる。輪郭をなぞるように触れられて、僕はびくりと肩を震わせた。
「せ、先輩……」
 食べられてしまいそうな視線に、僕はドキドキして仕方ない。先輩、どうしちゃったんだろう。少し離れてただけなのに、なんかすごくスキンシップが激しいというか…
(そんなわけないのに…)
 たくさんの人からモテる先輩が、僕一人と1週間離れていただけで、そんなに寂しがるわけない。でも、少しだけ期待してしまっている。
「海翔先輩」
「ん?」
「僕が居なくて、寂しかったですか?」
 僕は先輩の目を見てそう尋ねた。すると海翔先輩は目をぱちぱちさせた後、ふっと目を細めて笑う。
「ったりめーだろ?寂しかったよ、すげー」
「っ!」
(その顔ずるい……)
 僕は顔が赤くなるのを感じて思わず顔を逸らす。ずるい、ずるすぎる。でも多分、熱病みたいになってるのは先輩の方だ。始めるのも冷めるのもあの人次第。わかっているけどこんなに大事にされてしまうと、僕は勘違いしたくなる。わがままになってしまう。
「インターンとバイトがあったから乗り切れたよーなもんだし。せーちゃん不足で死ぬかと思った」
「あ、あはは…」
 冗談めかしてそう言われて、さっきまでの不穏な考えは一気に吹き飛んだ。
「インターン大変そうでしたからね」
 電話で聞いた時はすごく疲れた声をしていた。今は元気そうで良かったなと思う。
「まあ、でももう大丈夫だよ」
 先輩は僕の頰に手を伸ばすと優しく撫でる。まるで壊れ物を扱うように優しく触れられて、ドキドキした。
「せーちゃんいるし」
「そ、んな…」
「マジマジ。めちゃ癒やされんのよ、せーちゃん見てると」
 そう言って先輩は目を細める。僕はドキドキしながら先輩を見つめていた。さっきまで不安になっていたはずなのに、先輩にこうやって甘やかされたらあっという間にどうでも良くなってしまう。そんなことより、この人と一緒の時間を大事にしたい。わがままが増えていく。
「…ありがとうございます」
 うまく笑えてたかわからないけど、僕は先輩に笑いかけた。そんな僕に、先輩も笑顔を向けて言う。
「せーちゃんマジ天使」
「……へ?」
 たまによくわからないことを言うけど、やっぱり先輩かっこいいなと思ったのだった。

 離れてた分一緒にいたいって思ってくれてるのかな。バックハグしたり、一緒にお風呂に入ったり、先輩が満足するまで付き合ってくれたり。今日の先輩、僕にすごく甘い気がする。
(おかしいよぉ……)
 なんでこんなにドキドキするんだろう?先輩と見つめ合えば見つめるほど、身体が熱くなってくるし、もっと触って欲しいって思ってしまう。昨日の激しいセックスもすごかったけど、今日のはとにかく甘やかしてくる感じ。
「ん!んぁ、んぁああ♡」
 僕の弱い所を先輩のでゴリゴリされると、ひどい声が出てしまう。先輩の背中引っ掻いちゃいそうで、怖くてしがみつけない。
「はっ、あっ♡あぁん♡♡」
(だめぇ……気持ちよすぎるよぉ♡♡)
 激しくされるのも気持ちいいけど、ゆっくりされると頭がおかしくなりそうだ。先輩のがすごく熱い。僕のナカでドクンドクンと脈打ってるのが分かるくらいに大きい。
「せーちゃん、手ぇ回せ」
「あっ…でも、でもぉ♡」
 あの人の綺麗な背中に傷つけちゃうかもと迷っていると、先輩は僕の手を自分の首に回すように誘導した。
「いいから」そう言われると断れなくて、僕はおずおずと先輩の首に手を回す。すると先輩が耳元で笑う気配がした。
「いい子」
(あ……)
 優しい口調になんだか嬉しくなってしまう。同時に先輩のが僕の中でさらに大きくなった。堪らず締め付ける。全身で、この人のことが好きだって、愛してるって言ってるみたいな感覚。
(せんぱい♡せんぱいっ♡)
「あっ♡♡あぁあんっ♡♡♡」
 ぐちゅん!と音を立てて奥を突かれる。あまりの快感に腰が浮いて、足がガクガク震えた。幸せで頭がおかしくなりそうだ。
「あぅう……♡イク、イクゥ、またイッちゃうよぉお♡」
「ん、俺も……そろそろ限界……」
 先輩も気持ちいいみたいで嬉しい。激しくなる律動に、僕はもう何が何だか分からないまま絶頂を迎えた。そしてお腹の中に温かいものが注ぎ込まれる感覚に身体を震わせる。同時に耳元から先輩の荒い吐息が聞こえた。
「は、はうぅ、出てるぅ…♡」
「はは、すげー出た……」
 先輩はそう言うと、僕のお腹をさすってきた。
「空っぽなりそー」なんて言われて恥ずかしくなる。確かに昨日からずっとえっちしてて、もう出なくなるかも、って気がしてる。僕はまたうとうとしている。気持ちよくて心地よくて幸せだなって思う。
「…せーちゃん、俺の家住めばいいのに。そうしたら、ずっと一緒に…」
 うとうとする世界の中で海翔先輩が何か言ってる。夢かもしれない。でもいいや。幸せだもの。
 先輩は僕の頭を撫でると、優しくキスをしてくれた。それが嬉しくて、僕も返したいのに眠気が段々増して行って気がついたら眠ってしまっていた。

 その日は1日中、先輩と2人で動画見たりご飯食べたりセックスしたりして、ずっと一緒に過ごした。僕が家に帰れたのは次の日の夕方だった。服は乾いたし、荷物置きたいし。先輩はちょっと寂しそうな顔してたけど、無理矢理引き止めとかはしなかった。
「あ、はい、先輩これ」
 帰り際、僕はようやくお土産のぬいぐるみを渡した。大人気のちいさくてかわいい子達のぬいぐるみ。しかもご当地。密かに集めている僕の熱量は先輩に全て届く訳では無いので「せーちゃんが送ってくれるスタンプ?」と、わかってない返事だった。いいけど。
「かわいいですよね?これ、僕の地元ご当地ぬいなんです」
「ふーん」
 白いそれをマジマジと見つめて、あ、と気づいたように顔を向けた。
「これ、俺のバッグにつけていい?」
「え!?」
 ニヤリと悪い笑顔。あれ、なんか嫌な予感がするんだけど?
「は、はい、良いですけど…」
「おっけー」
 ニヤニヤした海翔先輩が何を考えていたのか、その時の僕は想像すら出来なかった。

後日。
「おー、海翔、カワイイのつけてんじゃん」
「ほんとだー!かいとこのキャラ好きなのー?」
「………」
 先輩がキラキラした先輩達に囲まれながら僕のあげたマスコットぬいの話をしている。遠くに座っている僕は、気が気でない思いでその様子を眺めていた。
「ん?あー…」
 もったいぶった様子で海翔先輩が口を開く。
「俺の好きな子が好きだから、かな?」
「え!?彼女!?」
(か、彼女ではありませんけど!)
 僕は心の中で叫びながら、先輩の言葉の意味を考えて、考えて考えて、顔が熱くなった。
「お前いつの間に?」
「ちょ!誰?誰なの?」
「内緒」
「えー!」
 先輩達が海翔先輩に問い詰めている。僕はその様子をドキドキしながら見ていたが、やがて先輩がこちらを見た。
(あ…)
 先輩は僕の方を見て微笑むと、自分のバッグにつけたぬいぐるみを指でつついて見せた。僕にだけ分かるように、軽くウィンクしながら。
「ッ……!」
(い、いちいちかっこいい……)
 僕は熱くなった頰を押さえながら、背を向ける。顔なんて見れない。絶対真っ赤だし、恥ずかしいし、なんかもう……
(ずるいよ!)
「青、大丈夫かー?」
「……うん」
 バレないようにしなきゃいけないのに、嬉しいやら恥ずかしいやらで、僕は突っ伏したままだった。
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