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あの祭りの場でミウからの積極的な見せつけを行った結果、最早交際は公になってしまった。と言うか、ミウにしてやられた感じだ。
それに、ミウの服装も服装だ。外に出る時はフリルの多いスカートやショートパンツでべったりと俺にくっついて回るから、バカップルとしか見えない気がする。
「エラン、あーん♡」
「ああ……」
俺は差し出されたスプーンを口に含む。ミウは嬉しそうに微笑むと、今度は自分の食事を食べ始めた。もぐもぐと口を動かしてから飲み込むと、俺の膝の上に乗ってくる。
「なあ……ミウ?」
「なに?エラン?」
ミウは小首を傾げながら見上げてくる。可愛すぎてつい許してしまうが、少しは自重して欲しいところだ。だが、そんなことを言えるはずもなく……
「いや、何でも無い」
「ふふ、変なの」
ミウはクスクス笑うと、また俺に食事を食べさせようとしてくる。
「はい、エラン♡あーん」
「……自分で食べるよ」
俺はスプーンを掴むと自分で食事を摂る。ミウは不満そうに頬を膨らませたが、俺が無視して食べ始めると大人しくなった。
(このまま流されてたらダメだ)
俺は頭を振ると気合いを入れ直す。するとミウが背後から抱きついてきた。尻尾を腕に巻きつけてくるのでくすぐったい。
(ああぁ…可愛すぎだろ!)
俺は思わず顔がニヤけそうになる。それを必死に抑えてミウに話しかけた。ちゃんと言わなきゃいけないことだからだ。
「その、俺、お前のお陰でまた冒険に出ようかなって…」
「えっ!?本当に!またエランと旅に出れるの!?」
耳と尻尾がぴょこんと飛び出る。
「うんうん、やっぱりまだ隠居は早いよ!一緒に行こう!」
ミウは目をキラキラさせながら俺の顔を覗き込んできた。
(うっ……可愛いな……)
「…それと。今の制度だと旅に出る場合、ちゃんと家族登録とかしていかないといけないらしくて…」
「?うん」
ミウはよくわかっていないらしいが、俺は意を決して続ける。
「その、俺と家族になって欲しい。ミウ」
真顔のまま、じっとミウの目を見つめて言う。ミウはきょとんとした顔で目を瞬かせていたが、やがて言葉の意味を理解したらしく顔を真っ赤にした。
「えっ!?それってつまり……」
「ああ、結婚して欲しいってこと」
ミウはますます真っ赤になっていく。そしてぽろぽろと涙を流し始めた。
「嬉しい……すごく嬉しいよ!」
そのまま抱きついてくるので慌てて受け止める。俺はほっと息を吐くと、ミウの頭を撫でた。
「エランが俺を伴侶に選んでくれた……ありがとう……エラン……」
「こちらこそ、ありがとな」
俺が言うと、ミウは幸せそうに微笑んだ。
(ああ、幸せだな……)
俺は心の底からそう思った。ミウも同じ気持ちのようで、満面の笑みを浮かべている。
「どうしよう、嬉しすぎて涙って出ちゃうんだね…?知らなかったよ……」
ミウはポロポロと涙を零している。俺はそんなミウを抱きしめた。
「泣かないでくれ、ミウ……俺まで泣けてくるだろ……?」
俺が言うと、ミウは泣きながら微笑んでくれた。
「エランも泣いてくれてるの?」
「ああ」
俺が頷くと、今度は嬉しそうに笑う。その笑顔が愛しくて、つい口づけしてしまった。するとミウはますます顔を赤くする。
「エ、エランだってキス魔じゃん…恥ずかしいよ……」
「うっ……それは否定できない」
「ふふ、でももう家族だもんね♡」
「後で届け出しようと思う。式は、俺たちが出会った始まりの村で挙げたい」
「うん、俺もそうしたい」
ミウはこくこくと頷く。
「じゃあ決まりだな」
俺はミウの手を取って立たせると、指を絡める。そして二人で食堂を後にした。これからはずっと一緒なのだと思うと、自然と笑みがこぼれてくる。
(幸せすぎて罰があたりそうだ)
俺たちは戦いでたくさんの仲間を喪った。正直俺の人生も、あの戦いの後ぽっかり穴が空いたような状態が続いている。
だが、ミウが居てくれるから、もう大丈夫だ。
「ありがとう、ミウ。全てのことに」
俺はミウに言うと、ミウはにっこりと笑った。
「こちらこそだよ、ご主人様」
俺たちはそのまま手を繋いだまま、街へと繰り出していった。
☆★☆★☆
おしまい
それに、ミウの服装も服装だ。外に出る時はフリルの多いスカートやショートパンツでべったりと俺にくっついて回るから、バカップルとしか見えない気がする。
「エラン、あーん♡」
「ああ……」
俺は差し出されたスプーンを口に含む。ミウは嬉しそうに微笑むと、今度は自分の食事を食べ始めた。もぐもぐと口を動かしてから飲み込むと、俺の膝の上に乗ってくる。
「なあ……ミウ?」
「なに?エラン?」
ミウは小首を傾げながら見上げてくる。可愛すぎてつい許してしまうが、少しは自重して欲しいところだ。だが、そんなことを言えるはずもなく……
「いや、何でも無い」
「ふふ、変なの」
ミウはクスクス笑うと、また俺に食事を食べさせようとしてくる。
「はい、エラン♡あーん」
「……自分で食べるよ」
俺はスプーンを掴むと自分で食事を摂る。ミウは不満そうに頬を膨らませたが、俺が無視して食べ始めると大人しくなった。
(このまま流されてたらダメだ)
俺は頭を振ると気合いを入れ直す。するとミウが背後から抱きついてきた。尻尾を腕に巻きつけてくるのでくすぐったい。
(ああぁ…可愛すぎだろ!)
俺は思わず顔がニヤけそうになる。それを必死に抑えてミウに話しかけた。ちゃんと言わなきゃいけないことだからだ。
「その、俺、お前のお陰でまた冒険に出ようかなって…」
「えっ!?本当に!またエランと旅に出れるの!?」
耳と尻尾がぴょこんと飛び出る。
「うんうん、やっぱりまだ隠居は早いよ!一緒に行こう!」
ミウは目をキラキラさせながら俺の顔を覗き込んできた。
(うっ……可愛いな……)
「…それと。今の制度だと旅に出る場合、ちゃんと家族登録とかしていかないといけないらしくて…」
「?うん」
ミウはよくわかっていないらしいが、俺は意を決して続ける。
「その、俺と家族になって欲しい。ミウ」
真顔のまま、じっとミウの目を見つめて言う。ミウはきょとんとした顔で目を瞬かせていたが、やがて言葉の意味を理解したらしく顔を真っ赤にした。
「えっ!?それってつまり……」
「ああ、結婚して欲しいってこと」
ミウはますます真っ赤になっていく。そしてぽろぽろと涙を流し始めた。
「嬉しい……すごく嬉しいよ!」
そのまま抱きついてくるので慌てて受け止める。俺はほっと息を吐くと、ミウの頭を撫でた。
「エランが俺を伴侶に選んでくれた……ありがとう……エラン……」
「こちらこそ、ありがとな」
俺が言うと、ミウは幸せそうに微笑んだ。
(ああ、幸せだな……)
俺は心の底からそう思った。ミウも同じ気持ちのようで、満面の笑みを浮かべている。
「どうしよう、嬉しすぎて涙って出ちゃうんだね…?知らなかったよ……」
ミウはポロポロと涙を零している。俺はそんなミウを抱きしめた。
「泣かないでくれ、ミウ……俺まで泣けてくるだろ……?」
俺が言うと、ミウは泣きながら微笑んでくれた。
「エランも泣いてくれてるの?」
「ああ」
俺が頷くと、今度は嬉しそうに笑う。その笑顔が愛しくて、つい口づけしてしまった。するとミウはますます顔を赤くする。
「エ、エランだってキス魔じゃん…恥ずかしいよ……」
「うっ……それは否定できない」
「ふふ、でももう家族だもんね♡」
「後で届け出しようと思う。式は、俺たちが出会った始まりの村で挙げたい」
「うん、俺もそうしたい」
ミウはこくこくと頷く。
「じゃあ決まりだな」
俺はミウの手を取って立たせると、指を絡める。そして二人で食堂を後にした。これからはずっと一緒なのだと思うと、自然と笑みがこぼれてくる。
(幸せすぎて罰があたりそうだ)
俺たちは戦いでたくさんの仲間を喪った。正直俺の人生も、あの戦いの後ぽっかり穴が空いたような状態が続いている。
だが、ミウが居てくれるから、もう大丈夫だ。
「ありがとう、ミウ。全てのことに」
俺はミウに言うと、ミウはにっこりと笑った。
「こちらこそだよ、ご主人様」
俺たちはそのまま手を繋いだまま、街へと繰り出していった。
☆★☆★☆
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