18 / 45
17
しおりを挟む
「もう帰るの?レイ」
「はい!荷物を届けに来ただけですから!」
雪がしんしんと降り積もるなか、白い息を吐きながらレイナードはにっこり微笑んだ。だが、先ほどまでこれ以上なく嬉しそうだったヴィルヘルムは対象的な表情を浮かべている。
「でも、まだ、もう少し居ても良いじゃないか」
「だめです!それに、クリス様も心配しますから…」
そう言って微笑むレイナードを見て、ヴィルヘルムは悲しそうな顔をした。だがすぐに笑顔に戻る。
「そうだね。分かったよ」
名残惜しいと駅まで送ろうとする義兄の申し出を断って、レイナードは駅に向かおうとした時だった。
「あら?どちらに?列車は運休ですよ?」
「え?」
「え!」
エントランス近くを通りかかった教員らしき女性に呼び止められた。
「「運休?」」
レイナードとヴィルヘルムの声が重なる。
「ええ。この雪で線路が塞がれてしまって……復旧の見通しも立っていません」
「そんな……」
レイナードは呆然とした様子で呟いた。そして、隣にいる義兄を見上げる。
「レイ、父さんには伝えておくから、今夜は僕と一緒に過ごそう。ね?先生にも事情を伝えればきっと許してくれるよ」
「でも……」
「それに、こんな雪の中でお前一人残しておくほうが危険だよ。僕にはそんなこと出来ない。だからお願いだよ、レイ。一緒に過ごそう」
ヴィルヘルムは懇願するように見つめてくる。その瞳には心配の色が強く表れている。それを見たら断れなくなってしまい、小さく首を縦に振った。
(こういう時は…)
「ありがとうございます、兄さん」
レイナードが微笑み返すと、ヴィルヘルムも嬉しそうに笑う。そしてそのまま手を繋いで校舎の中へとレイナードを向かい入れるのだった。
***
「いらっしゃい、レイ」
ヴィルヘルムの部屋へと招かれたレイナードは、部屋の中を見回した。そこはシンプルながらも上品な印象を受ける部屋だった。
(さすが貴族の子息達が通う名門校…机も、ベッドも、どれも高そうです…)
「どうかした?」
ヴィルヘルムは不思議そうに首を傾げる。レイナードは慌てて首を横に振った。
「……いえ!なんでもないですよ」
「そう?なら良いんだけど……」
ヴィルヘルムはそう言うと、レイナードの手を取ってベッドに座らせた。そして自分も隣に腰掛けると、そっと抱き寄せてきた。
「あ……ヴィル兄さん……?」
突然のことに動揺するレイナードだったが、すぐに抵抗はしなかった。むしろ自分からも身を寄せる。
「嬉しい。こうしてレイが来てくれて。一緒にいられたら、どんなに楽しいだろうって、いつも考えてたんだ」
「ヴィル兄さん……」
うるうると義兄の愛に心打たれていると、ヴィルヘルムはレイナードの頬をそっと撫でてくる。
「ねえ……キスしても良い?」
「え!?」
唐突なお願いに思わず聞き返すと、ヴィルヘルムは少し恥ずかしそうな表情を浮かべた。そしてそのまま続ける。
「だめかな?どうしてもしたいんだ」
「……っ」
普段は大人びているヴィルヘルムだが、時折見せる子供っぽい一面が可愛いと思う。それに何より、自分だって義兄と触れ合いたいのだ。断る理由などなかった。
「いいですよ……」
レイナードは目を瞑る。旅立ちの日に、駅舎で見送った時から、実はずっと考えていた。
(なんだか、ドキドキする…)
「ん……」
唇が触れ合う。ちゅ♡と言う音がして、思わずレイナードは目を開けてしまった。すると、目の前にヴィルヘルムの顔がある。
「あ……」
(ち、ちかいです!)
恥ずかしくなり、ぎゅっと目を瞑る。そんなレイナードの様子を見てヴィルヘルムはくすりと笑った。
「もう一度してもいい?」
「だ、ダメ!もう終わりです!」
「えー」
不満そうな声を上げるヴィルヘルムだったが、レイナードはそれどころではなかった。顔が熱くて仕方がない。心臓の鼓動が激しくて爆発しそうだと思った。
「じゃあ、また今度、続きをしよう。ね?」
「う……」
レイナードが言葉に詰まっていると、再びヴィルヘルムの顔が近づいてきたので慌てて手で押さえた。すると今度は掌にキスをされる。
「……っ」
(ど、どうしよう……)
そんなことを考えていた時だった。
「おおーい!ヴィルヘルム!夕飯出来たぞ!」
部屋の外から、ヴィルヘルムを呼ぶ声がした。レイナードはハッとして扉の方を振り返るが、時すでに遅しだったようで、部屋の扉が開かれていた。
「お!いたいた」
「あ……」
(この人がヴィル兄さんの友達の……)
ヴィルヘルムはうんざりしたようなため息を吐き出す。
「全く、タイミングが悪いんだよ、ライ」
「ははっ!悪い!」
ヴィルヘルムはやれやれと肩をすくめている。そんな様子に構わず、声の主は部屋の中に入ってくる。そしてレイナードを見つけると人好きのする笑顔を浮かべた。
「おいおい!本当に弟連れてきたのかよ?」
「ライサンダー!」
「ははっ!ヴィルが慌てるなんて珍しいな」
ヴィルヘルムにライサンダーと呼ばれた青年は楽しそうに笑う。
「よ!久しぶり!俺のこと覚えてる?まあ一度しか会ってないし覚えてないかな。俺の名前はライサンダー」
「あ、えっと……レイナードです。駅で、お会いしましたよね」
慌てて挨拶をすると、彼はにっこり微笑んだ。
「そうそう!ヴィルが弟を連れてくるって言ってたから気になってさ!それにしてもよく似てるな~可愛い!」
そう言うとライサンダーはレイナードの頭をわしゃわしゃと撫でる。突然のことに驚いたものの抵抗はしなかった。するとヴィルヘルムが不機嫌そうな声で割り込んでくる。
「やめろよ、ライ」
「なんでだよ!あのクールな学園の王子ヴィルが毎晩抱っこして寝てた弟だぞ?気になるに決まってるだろ」
「…は?」
「あ……」
レイナードは思わず声を上げた。ジト目で義兄を見上げると、彼は視線を逸らす。
「に、兄さん!そういうことは言わないでって言ってたのに……!」
「ああ……うん、まあ……」
レイナードが問い詰めると、ヴィルヘルムは観念したように白状した。「ごめん」と一言だけ呟くとそのまま黙り込む。ライサンダーの口ぶりから、これもみんなに知られてるのだろう。
「…帰ってきてももう一緒に寝ませんからね」
頬をぷくーっと膨らませながらレイナードがそう言うと、ヴィルヘルムは慌てて弁解する。
「それは困る!ごめんってば!」
そんな二人のやり取りを見ていたライサンダーは腹を抱えて笑い出したのだった。
「はい!荷物を届けに来ただけですから!」
雪がしんしんと降り積もるなか、白い息を吐きながらレイナードはにっこり微笑んだ。だが、先ほどまでこれ以上なく嬉しそうだったヴィルヘルムは対象的な表情を浮かべている。
「でも、まだ、もう少し居ても良いじゃないか」
「だめです!それに、クリス様も心配しますから…」
そう言って微笑むレイナードを見て、ヴィルヘルムは悲しそうな顔をした。だがすぐに笑顔に戻る。
「そうだね。分かったよ」
名残惜しいと駅まで送ろうとする義兄の申し出を断って、レイナードは駅に向かおうとした時だった。
「あら?どちらに?列車は運休ですよ?」
「え?」
「え!」
エントランス近くを通りかかった教員らしき女性に呼び止められた。
「「運休?」」
レイナードとヴィルヘルムの声が重なる。
「ええ。この雪で線路が塞がれてしまって……復旧の見通しも立っていません」
「そんな……」
レイナードは呆然とした様子で呟いた。そして、隣にいる義兄を見上げる。
「レイ、父さんには伝えておくから、今夜は僕と一緒に過ごそう。ね?先生にも事情を伝えればきっと許してくれるよ」
「でも……」
「それに、こんな雪の中でお前一人残しておくほうが危険だよ。僕にはそんなこと出来ない。だからお願いだよ、レイ。一緒に過ごそう」
ヴィルヘルムは懇願するように見つめてくる。その瞳には心配の色が強く表れている。それを見たら断れなくなってしまい、小さく首を縦に振った。
(こういう時は…)
「ありがとうございます、兄さん」
レイナードが微笑み返すと、ヴィルヘルムも嬉しそうに笑う。そしてそのまま手を繋いで校舎の中へとレイナードを向かい入れるのだった。
***
「いらっしゃい、レイ」
ヴィルヘルムの部屋へと招かれたレイナードは、部屋の中を見回した。そこはシンプルながらも上品な印象を受ける部屋だった。
(さすが貴族の子息達が通う名門校…机も、ベッドも、どれも高そうです…)
「どうかした?」
ヴィルヘルムは不思議そうに首を傾げる。レイナードは慌てて首を横に振った。
「……いえ!なんでもないですよ」
「そう?なら良いんだけど……」
ヴィルヘルムはそう言うと、レイナードの手を取ってベッドに座らせた。そして自分も隣に腰掛けると、そっと抱き寄せてきた。
「あ……ヴィル兄さん……?」
突然のことに動揺するレイナードだったが、すぐに抵抗はしなかった。むしろ自分からも身を寄せる。
「嬉しい。こうしてレイが来てくれて。一緒にいられたら、どんなに楽しいだろうって、いつも考えてたんだ」
「ヴィル兄さん……」
うるうると義兄の愛に心打たれていると、ヴィルヘルムはレイナードの頬をそっと撫でてくる。
「ねえ……キスしても良い?」
「え!?」
唐突なお願いに思わず聞き返すと、ヴィルヘルムは少し恥ずかしそうな表情を浮かべた。そしてそのまま続ける。
「だめかな?どうしてもしたいんだ」
「……っ」
普段は大人びているヴィルヘルムだが、時折見せる子供っぽい一面が可愛いと思う。それに何より、自分だって義兄と触れ合いたいのだ。断る理由などなかった。
「いいですよ……」
レイナードは目を瞑る。旅立ちの日に、駅舎で見送った時から、実はずっと考えていた。
(なんだか、ドキドキする…)
「ん……」
唇が触れ合う。ちゅ♡と言う音がして、思わずレイナードは目を開けてしまった。すると、目の前にヴィルヘルムの顔がある。
「あ……」
(ち、ちかいです!)
恥ずかしくなり、ぎゅっと目を瞑る。そんなレイナードの様子を見てヴィルヘルムはくすりと笑った。
「もう一度してもいい?」
「だ、ダメ!もう終わりです!」
「えー」
不満そうな声を上げるヴィルヘルムだったが、レイナードはそれどころではなかった。顔が熱くて仕方がない。心臓の鼓動が激しくて爆発しそうだと思った。
「じゃあ、また今度、続きをしよう。ね?」
「う……」
レイナードが言葉に詰まっていると、再びヴィルヘルムの顔が近づいてきたので慌てて手で押さえた。すると今度は掌にキスをされる。
「……っ」
(ど、どうしよう……)
そんなことを考えていた時だった。
「おおーい!ヴィルヘルム!夕飯出来たぞ!」
部屋の外から、ヴィルヘルムを呼ぶ声がした。レイナードはハッとして扉の方を振り返るが、時すでに遅しだったようで、部屋の扉が開かれていた。
「お!いたいた」
「あ……」
(この人がヴィル兄さんの友達の……)
ヴィルヘルムはうんざりしたようなため息を吐き出す。
「全く、タイミングが悪いんだよ、ライ」
「ははっ!悪い!」
ヴィルヘルムはやれやれと肩をすくめている。そんな様子に構わず、声の主は部屋の中に入ってくる。そしてレイナードを見つけると人好きのする笑顔を浮かべた。
「おいおい!本当に弟連れてきたのかよ?」
「ライサンダー!」
「ははっ!ヴィルが慌てるなんて珍しいな」
ヴィルヘルムにライサンダーと呼ばれた青年は楽しそうに笑う。
「よ!久しぶり!俺のこと覚えてる?まあ一度しか会ってないし覚えてないかな。俺の名前はライサンダー」
「あ、えっと……レイナードです。駅で、お会いしましたよね」
慌てて挨拶をすると、彼はにっこり微笑んだ。
「そうそう!ヴィルが弟を連れてくるって言ってたから気になってさ!それにしてもよく似てるな~可愛い!」
そう言うとライサンダーはレイナードの頭をわしゃわしゃと撫でる。突然のことに驚いたものの抵抗はしなかった。するとヴィルヘルムが不機嫌そうな声で割り込んでくる。
「やめろよ、ライ」
「なんでだよ!あのクールな学園の王子ヴィルが毎晩抱っこして寝てた弟だぞ?気になるに決まってるだろ」
「…は?」
「あ……」
レイナードは思わず声を上げた。ジト目で義兄を見上げると、彼は視線を逸らす。
「に、兄さん!そういうことは言わないでって言ってたのに……!」
「ああ……うん、まあ……」
レイナードが問い詰めると、ヴィルヘルムは観念したように白状した。「ごめん」と一言だけ呟くとそのまま黙り込む。ライサンダーの口ぶりから、これもみんなに知られてるのだろう。
「…帰ってきてももう一緒に寝ませんからね」
頬をぷくーっと膨らませながらレイナードがそう言うと、ヴィルヘルムは慌てて弁解する。
「それは困る!ごめんってば!」
そんな二人のやり取りを見ていたライサンダーは腹を抱えて笑い出したのだった。
375
あなたにおすすめの小説
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい
発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』
そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。
そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。
あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。
「あ、こいつが主人公だ」
超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー
僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!
迷路を跳ぶ狐
BL
*あらすじを改稿し、タグを編集する予定です m(_ _)m後からの改稿、追加で申し訳ございません (>_<)
社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。
だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。
それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。
けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。
一体なんの話だよ!!
否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。
ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。
寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……
全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。
食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていたのだが……
*残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる