異世界召喚するはずが異世界に来てしまいました。

ヒデト

文字の大きさ
4 / 8

四話

しおりを挟む

二人のいる路地は少し静寂した。


「大丈夫か」


俺は少女の方へ振り向き声をかけると、少女は俺の声にビクッとする。少女は俺に背を向け、こっそりその場を去ろうとしていた。


「何だ、助けてやったのに礼もなしか」


固まる少女、少し貯めてくるりと振り返る。


「助けてくださってありがとうございました」


いい笑顔をしている。だが、それが上っ面だというのはさっき逃げようとしていたのを見ているからわかる。
それでも、この少女はこの世界に来て初めてまともにコンタクトできた人だ。これを逃したくはない。


「お礼はいいよ、それよりあなたに頼みたい事がある」

「何でしょう。私にできる事なら」

愛想のいい事を言ってはいるが、内心はそんな事全く思っていない。


めんどくさいなぁ。しかも、ナンパから助けたくらいで、何か請求してくるし。まぁ、助かったといえば助かったけど。変なコスプレイヤーにからまれちゃったな。


そんな事思っていた。


「今日、泊めてもらえないか」

「………はい?」


いきなりのとんでもない頼みに耳を疑う。


「あの、もう一度お願いします」

「今日、泊めてくれないか」


やばい、聞き間違いじゃない。この人いきなり何言ってるの?


ガゼルも少し図々しい頼みとはわかっている。だが、ガゼルにとっては本当に少し図々しいくらいにしか思っておらず、許容範囲だと本気で思っていた。


「すいません、さすがに泊めるのはちょっと…」

見ず知らずのコスプレイヤーを止めるわけないでしょ。


「そこを何とか、頼む」


ガゼルは軽く頭を下げる。


「本当にそれは無理です」


クソ無理か。だが、俺も引けんのだ。


当初の目的である情報収集だけなら少し聞きたいことがあるから話をさせてくれ、という頼みで恐らく聞いてもらえるのだろう。だが、今の俺には今日泊まる宿がない。もし、泊めてもらえれば今日の宿も確保出来るし、恐らく話す機会も出来、この世界の情報を聞く事ができると考えている。野宿でも構わないが、何があるかわからない異世界でいきなり野宿するのはリスクが大きすぎる。


「どうすれば泊めてくれる?」

「いや、何をしても無理です」


この人しつこいなぁ。常識的に考えてオッケーが出るわけないのに。


「じゃあ聞きたい事がある。」

「はい。何でしょう」

「この世界って魔法ありますか?」

「えっ?何、魔法?何言ってるんですか?」


少女は不思議な顔をする。


「実は俺は異世界人何だ」

「……」


やばい、この人相当重症だ。


驚くのは当たり前だ。俺でも「異世界人です」と言われれば疑ってしまう。そして少女の反応から恐らく、魔法は実在しない。単語を知っているあたり、言葉としては存在のだろう。


「その様子だと魔法は無いみたいだな」

「はい、そりゃ無いですけど」

「俺が魔法を使えるって言ったらどうする?」

「どうするって…凄いですね、としか」


待って。この人痛すぎるんですけど。


どんどん付いていけなかなる少女。もう、わけがわからない。


「それじゃ俺が魔法使える事を証明出来たら泊めてくれないか」

「いい加減にして!そんな馬鹿げた話誰が信じるのよ!」


ガゼルの事を痛い中二病くらいに思っている少女はあまりに馬鹿げた話を平然とするガゼルに痺れを切らし、敬語を使うのをやめる。


「何が魔法よ!何が異世界よ!そんなのは頭の中だけにしてよ!!そんな話、信じる人何かいるわけないでしょ!!」

「信じられないのはわかっている。だから証明すると言っている。それで証明出来たら泊めてくれと言っているんだ」

「いいわよ!やって見なさいよ!もしそんな事できた1日とは言わず、ずっと泊めてあげるわよ!」


よし!俺の勝ちだ!


少し怒鳴り気味に言う少女。ガゼルは宿を勝ちを心で宣言する。


「じゃあ、まずは」


ガゼルは手を広げると手の平から炎を出す。


「……嘘」


少女は驚愕する。ガゼルは畳み掛けるように水を出し、風を起こし、雷を起こす。
少女はポカンと口を開け固まる。驚愕のあまり言葉を失う。


「これで証明になったかな」

「……うん」


これが俺、ガゼル・インバルグと少女、佐倉奏音の運命の出会いだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移したので旅してみました

松石 愛弓
ファンタジー
ある日、目覚めたらそこは異世界で。勇者になってと頼まれたり、いろんな森や町を旅してみることにしました。 ゆる~い感じののんびりほんわかなんでやねん路線の地味系主人公です。 気楽に読めるものを目指しています。よろしくお願いします。毎週土曜日更新予定です。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

クラフト生活をしながら同級生にコスプレさせて異世界をスローライフします

春風
ファンタジー
クラスごとの異世界転移をした黒瀬海斗と白石彩音は、スキル測定で戦闘向けではないハズレスキル【クラフト】と【コスプレ】だと判明する。2人は勇者候補として相応しくないと小さな村へ追放されてしまう。 2人はハズレスキルを使って平和で楽しくスローライフ生活を目指すことにしたのである。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...