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四話
しおりを挟む二人のいる路地は少し静寂した。
「大丈夫か」
俺は少女の方へ振り向き声をかけると、少女は俺の声にビクッとする。少女は俺に背を向け、こっそりその場を去ろうとしていた。
「何だ、助けてやったのに礼もなしか」
固まる少女、少し貯めてくるりと振り返る。
「助けてくださってありがとうございました」
いい笑顔をしている。だが、それが上っ面だというのはさっき逃げようとしていたのを見ているからわかる。
それでも、この少女はこの世界に来て初めてまともにコンタクトできた人だ。これを逃したくはない。
「お礼はいいよ、それよりあなたに頼みたい事がある」
「何でしょう。私にできる事なら」
愛想のいい事を言ってはいるが、内心はそんな事全く思っていない。
めんどくさいなぁ。しかも、ナンパから助けたくらいで、何か請求してくるし。まぁ、助かったといえば助かったけど。変なコスプレイヤーにからまれちゃったな。
そんな事思っていた。
「今日、泊めてもらえないか」
「………はい?」
いきなりのとんでもない頼みに耳を疑う。
「あの、もう一度お願いします」
「今日、泊めてくれないか」
やばい、聞き間違いじゃない。この人いきなり何言ってるの?
ガゼルも少し図々しい頼みとはわかっている。だが、ガゼルにとっては本当に少し図々しいくらいにしか思っておらず、許容範囲だと本気で思っていた。
「すいません、さすがに泊めるのはちょっと…」
見ず知らずのコスプレイヤーを止めるわけないでしょ。
「そこを何とか、頼む」
ガゼルは軽く頭を下げる。
「本当にそれは無理です」
クソ無理か。だが、俺も引けんのだ。
当初の目的である情報収集だけなら少し聞きたいことがあるから話をさせてくれ、という頼みで恐らく聞いてもらえるのだろう。だが、今の俺には今日泊まる宿がない。もし、泊めてもらえれば今日の宿も確保出来るし、恐らく話す機会も出来、この世界の情報を聞く事ができると考えている。野宿でも構わないが、何があるかわからない異世界でいきなり野宿するのはリスクが大きすぎる。
「どうすれば泊めてくれる?」
「いや、何をしても無理です」
この人しつこいなぁ。常識的に考えてオッケーが出るわけないのに。
「じゃあ聞きたい事がある。」
「はい。何でしょう」
「この世界って魔法ありますか?」
「えっ?何、魔法?何言ってるんですか?」
少女は不思議な顔をする。
「実は俺は異世界人何だ」
「……」
やばい、この人相当重症だ。
驚くのは当たり前だ。俺でも「異世界人です」と言われれば疑ってしまう。そして少女の反応から恐らく、魔法は実在しない。単語を知っているあたり、言葉としては存在のだろう。
「その様子だと魔法は無いみたいだな」
「はい、そりゃ無いですけど」
「俺が魔法を使えるって言ったらどうする?」
「どうするって…凄いですね、としか」
待って。この人痛すぎるんですけど。
どんどん付いていけなかなる少女。もう、わけがわからない。
「それじゃ俺が魔法使える事を証明出来たら泊めてくれないか」
「いい加減にして!そんな馬鹿げた話誰が信じるのよ!」
ガゼルの事を痛い中二病くらいに思っている少女はあまりに馬鹿げた話を平然とするガゼルに痺れを切らし、敬語を使うのをやめる。
「何が魔法よ!何が異世界よ!そんなのは頭の中だけにしてよ!!そんな話、信じる人何かいるわけないでしょ!!」
「信じられないのはわかっている。だから証明すると言っている。それで証明出来たら泊めてくれと言っているんだ」
「いいわよ!やって見なさいよ!もしそんな事できた1日とは言わず、ずっと泊めてあげるわよ!」
よし!俺の勝ちだ!
少し怒鳴り気味に言う少女。ガゼルは宿を勝ちを心で宣言する。
「じゃあ、まずは」
ガゼルは手を広げると手の平から炎を出す。
「……嘘」
少女は驚愕する。ガゼルは畳み掛けるように水を出し、風を起こし、雷を起こす。
少女はポカンと口を開け固まる。驚愕のあまり言葉を失う。
「これで証明になったかな」
「……うん」
これが俺、ガゼル・インバルグと少女、佐倉奏音の運命の出会いだった。
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