彼は世界最強の側近です。

ヒデト

文字の大きさ
4 / 19
大槍武祭編

3話

しおりを挟む


大会日和と言わんばかりの快晴。家の外は大賑わい。
会場へ向かう道は大和国民で溢れていた。


「はぁ、人混みは嫌いなんだよなぁ」


影丸は人混みを掻き分け会場へ向かう。

通り過ぎざまに影丸の事に気付いた人たちが「頑張れよ!」と声をかけてくる。


今回、行われる会場は大和一大きい大和闘技場。
大槍武祭のランキング戦はいつもここで行われる。
ランキング戦と言ってもこれは決勝トーナメントなのだ。
ランキング戦は三日間で行われる。だが上杉流の道場に通っている武人全員でトーナメントなどいくら時間があっても足りるものではない。
だからこの決勝トーナメントまでに非公開で予選を行なっている。
その予選を勝ち抜いた十六人が決勝トーナメントに出場することが出来るのだ。


会場に着いた影丸は出場者達が待機している控室へ向かった。

扉を開けると控室の中は緊迫感に包まれていた。
出場者達は扉を開ける音に全員が反応し、目を向けた。影丸が入ってくると目つきが変わる。他の出場者に向けているものとは違う。何か殺気に近いものを鋭い視線と共に送っているようだった。


またか…。


これは大槍武祭の時は何時もある事だ。
別に影丸がいじめられているという訳ではないが、単純に浮いているのだろう。

これは影丸の立場の問題だ。

影丸は真田家の長男でありながら真田流ではなく、上杉流を学んでいる。
家元が剣術を使う流派の者に負けるわけにはいかない。
そう思っている彼等は開始前からプレッシャーをかけているのだ。

「おう!来たか!」

影丸を見つけた冬瓜が声をかけた。目の前に立ち、ジッと影丸の身体や顔色を見る。

「準備は出来ているようだな。」

「出来てなきゃこねぇよ。」

「いや、出来てなくても来いよ!」

やり取りをしながら影丸も冬瓜を見た。

冬瓜も準備万端という感じだ。だが、少し気負い過ぎ、気合いが入り過ぎているようだった。


「出場者の皆様。そろそろ開会式が始まりますので準備してください。」

「よし!行くか!」


出場者達は控室を出て、入場門の手前で待機する。
闘技場からは今回の司会であろう人の声が聞こえてくる。
影丸と冬瓜が以外の者は全員がそわそわし出す。無理もない。二人以外はこれが初出場だ。
この大会は両国のお偉いさん方も大勢見に来る。初出場で緊張すんなと言うのが無理な話だ。


「では、今回の主役の登場です。」


その声を合図に影丸達は歩き出す。

闘技場に入って来る出場者、そして司会が出場者達の名前を読み上げる。


上杉流槍術免許皆伝、上杉冬瓜。

上杉流槍術免許皆伝、真田影丸。

上杉流槍術九段、宝思念

上杉流槍術九段、矢田辰馬

上杉流槍術九段、四方銀時

上杉流槍術九段、伊吹隼人

上杉流槍術九段、二式空

上杉流槍術九段、林道基

上杉流槍術九段、速水相馬

上杉流槍術九段、帯刀陸

上杉流槍術九段、半田清

上杉流槍術九段、生駒宗徳

上杉流槍術八段、錦戸楽

上杉流槍術八段、桜庭守

上杉流槍術八段、飛鳥日向

上杉流槍術八段、桂緋色


影丸の名前が呼ばれた時、観客の声に混じりシャルロットの声が聞こえる。
声のする方に目を向けるとお偉いさん方の所から手を振っているシャルロットの姿があった。
戦争中だからだろう、前回よりも重臣達の人数はかなり少なかった。


「これより、大槍武祭の開催を宣下する。」


舞台に上がった上杉流師範、上杉家当主、上杉龍馬の開会宣言。
それを合図に観客達の一際大きな歓声と拍手。

全ての人に見えるように大きなトーナメント表が掲げられた。名前の欄には一から十六の番号が書かれている。

これからトーナメントの組み合わせを決める抽選が行われるのだ。

司会者が二つの箱を持って来る。一つの箱の中には一から十六の番号が書かれた札が入っている。出場者達はその中から札を一枚取り、引いた札の番号の所に出場者の名前が入る。

簡単な決め方だ。

もう一つの箱には出場者の名前の書かれた札が入っている。司会者が札を引き、引いた札に書かれた名前の者が番号札が入った箱を引く。これは番号札を引く順番を待つ決めるためのものだ。

出来るだけ平等に組み合わせてを決めるためにこの方法を採用している。



出場者達はいつ名前を呼ばれるのかとそわそわしていた。そんな中、抽選は淡々とそしてスムーズに進んで行く。
そして、遂に影丸の札が引かれ名前を呼ばれる。
呼ばれたのは五番目、ゆっくり前に出る。
他の出場者達も影丸がどの位置に着くのか気になるようでまじまじとこっちを見ている。
影丸は箱の中に手を入れる。影丸は「一番」と書かれた札を引いた。
トーナメント表の一番左端に影丸の名前が貼られる。

その後も淡々と進んでいき、ようやくトーナメント表が出来上がった。

何も仕組まれてはいない。だか何の因果か、影丸が一番左端。冬瓜が一番右端と言う観客全員が望む優勝候補が決勝で当たるトーナメント表になった。

「よし!お前とは決勝戦だな。待ってるぜ!」

「ああ。」

てか、俺の方が先に決まるだろ。

開会式は終わり会場は一回戦の準備に入る。準備には少し時間がかかる。魔法による呼び出しの放送が入るまでは自由時間だ。
影丸は街をぶらぶらして待つことにした。

「うわぁ、人多」

街の物凄人混みをかき分けて歩く。

ドンッ!

「すいません。」

誰かとぶつかった影丸はとっさに謝る。
だが、その返事はなかった。


「うん?」


その代わりに見知った金色の髪をした少女が腕に抱きついていた。


「へへぇ!」

「何してんだよ、お前。」

「時間潰しに街回るんでしょ。私も一緒に行く。」

「それは構わないが、お前席どりしてないと…て、お前自分の席あるからしなくていいのか。」

「そうですよ。特等席、私偉いんだから。」

「そうでしたね。お偉い姫様には敬語を使わないといけませんね。」

「むぅぅ…。」


シャルロットは俯向き少し怒った様子で頬を膨らませる。


「冗談だ。そんな顔するな。」


影丸は笑いながら頭を撫でる。


「それじゃあ、どこ行こうか。」

「はい!私、焼き鳥食べたい!」

「じゃあ、焼き鳥食べに行くか。」

「うん。」


影丸とシャルロットは焼き鳥屋を探しに街を回る。先々進む影丸に必死について来る。
影丸はそんなシャルロットを見て手を握り引く。
シャルロットは少しドキッとし赤面する。


「あった。」

シャルロットはすぐに焼き鳥屋を見つけ、影丸の手を引き店に駆け寄る。

「へいらっしゃい!おっ!影丸君じゃないか。」

「どうも」

その焼き鳥屋は影丸のよく知るオヤジの店だった。

「へっへー、彼女連れとはイイね!」

「彼女じゃないよ。ただの警護対象。」


影丸の言葉にシャルロットはまだ頬を膨らませる。


「警護対象?って姫様か!これは失礼しました。」

「構いませんよ。」

シャルロットは礼儀正しく大人びた対応をする。外面は出来上がっている様だった。

「そうですよ。こんな餓鬼に気使う必要ないですよ。」


影丸はシャルロットのデコを指で弾く。


「餓鬼じゃないわよ。」


赤面しながらデコを抑え小声で呟く。


「ハハハ、仲が良いことで。それで何にする。」

ズラッと並べられた焼き鳥。シャルロットはギリギリまで近づきじっくりと見回す。

「シャル、近づきすぎ。」

「いいでしょ。うーん、どれにしようかなぁ。……それじゃあ、これとこれ。」


シャルロットは並んでいる焼き鳥から両手で二つ選び取る。
目を輝かせながら焼き鳥を少し見つめた後、勢い良くかぶり付く。
そして当たり前の様に影丸がお会計をする。

「うーん!美味しーー!」

顔にタレを付けて無邪気に焼き鳥を頬張る姿が小動物の様で影丸は笑みをこぼす。


「ほら、顔にタレ付いてるぞ。」


影丸は懐から手拭いを取り出し、シャルロットの顔に付いたタレを拭き取る。

シャルロットは身体をビクッとさせまだ赤面する。

「不意打ちばっかりしないで…。」

頬を赤らめたまま恥ずかしそうに言う。

「不意打ちって何だよ」

「もう…。はい、一口あげる。」

シャルロットは手に持つ焼き鳥を影丸の顔の前に差し出す。

「いや、俺はいいよ試合あるし。」

「えぇ、そんな事言わないで。ほら、一口だけ美味しいよ。」

一瞬、哀しそうな顔したシャルロットに「仕方ないな」とつい思ってしまった。

「わかったよ…ほら。」

影丸は口を突き出す。

「はッ!はい、あーん!」

シャルロットは嬉しそうに影丸の口に焼き鳥を持っていく。

確かにうまい。
ついやってしまったがこれって恋人同士がやる様な事だよな。これからはこう言う事はしないよう気をつけよう。

「どう?美味しいでしょ?」

「ああ。」

「よかった。」

シャルロットは嬉しそうに笑う。


『一回戦に出場する方は闘技場へ来て下さい。』


魔法による放送が入る。


「もうか、案外早かったな。」

「えぇ、もう終わり。」

「そうみたいだな。さて、闘技場に行くか。」

「もう…。」

「また、明日回ってやるから。」

「……うん。」

影丸は急いで闘技場へ戻る。シャルロットは影丸の服の袖を掴んで控室まで付いて来た。

「あの…もう控室なんですけど。」

「うん。」

「いや、うんじゃなくて自分の席に戻れよ。」

「……影、負けないでね。」

「ああ、わかってるよ。」

「負けたら影を側近から解任するから。」

「わかった。」

「負けたら影に勝った人を側近にするから。」

「わかったから、早く行け。」

「…うん。」

シャルロットはしょんぼりしながらトボトボ歩いて行く。

「はぁ…。」

影丸は控室に入ると対戦相手である桂緋色が睨みつけて来た。

「試合前にデートとは余裕だな。」

「別にデートじゃねぇよ。」

「余裕かましてると痛い目見るぞ。」

「かもな」

口論ではないが、真剣な表情のやり取りは控室の空気を重くする。

『選手の人は準備に入って下さい』

魔法の放送が入る。
二人は立ち上がり、影丸は西の入場門、桂緋色は東の入場門へ向かう。
入場門前に着くとお互い、木槍を持ち身体を解す。影丸は木槍を手になじませる様に木槍を振る。


『さぁ、選手の入場です!』


司会者の入場の合図。

「さてと。」

影丸はゆっくり闘技場へ入る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

追放された最強令嬢は、新たな人生を自由に生きる

灯乃
ファンタジー
旧題:魔眼の守護者 ~用なし令嬢は踊らない~ 幼い頃から、スウィングラー辺境伯家の後継者として厳しい教育を受けてきたアレクシア。だがある日、両親の離縁と再婚により、後継者の地位を腹違いの兄に奪われる。彼女は、たったひとりの従者とともに、追い出されるように家を出た。 「……っ、自由だーーーーーーっっ!!」 「そうですね、アレクシアさま。とりあえずあなたは、世間の一般常識を身につけるところからはじめましょうか」 最高の淑女教育と最強の兵士教育を施されたアレクシアと、そんな彼女の従者兼護衛として育てられたウィルフレッド。ふたりにとって、『学校』というのは思いもよらない刺激に満ちた場所のようで……?

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...