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王国崩落編
11話
しおりを挟む大槍武祭を終えてから少しして、戦争は激化していった。
容易に見られた今回の戦争だが、相手は捨て身とも思える大体な作戦を取り始め、想定以上に兵を失っていた。
大和、フォルニア両国では兵の増員や食料の運搬、様々な事で忙しくなっていた。
「なんだか忙しそうだね」
「そうだな」
「ちょっと心配。影は何も言われてないの?」
「ああ。話は少し聞くが、俺が何どうのと言う話はないなぁ」
「……負けたりしないよね?」
「負けるわけねぇだろ。…まぁ、もし負けたらドンマイだな」
「ちょっと!縁起でもないこと言わないでよ!」
予想だにしていない戦況、普段と違う慌ただしい王宮内。不安になるのもわかる。もし、敗戦したなら影丸は首を刎ねられるだろう。シャルロットに関しては殺されれば良いところ。恐らく、愛玩動物にされ、玩具にされ、生き地獄を見る事になる。
不安にならない方がおかしい。
影丸は自分を含め、武人の力は十分理解している。負ける心配はしていない。だが、万が一と言うのはどんな事にも言える事だ。
自分に出来る事は普段通りに振る舞い。シャルロットを不安にさせない事。そして、もし何かあったとしても命を賭してシャルロットを守る事。
それだけだ。
「オネーサマーーーー!!!」
心配そうな顔をするシャルロットに幼いシャルロットと同じ髪色の少年少女が飛びついて来る。
「ロニエ!サーシャ!」
ロニエとサーシャ。この二人はシャルロットの弟と妹で双子の王子、王女だ。
「おねー様遊びましょ!」
「ええ。いいわよ」
シャルロットニコリと笑い、二人は手を引き連れて行く。影丸はその姿を見つめる。
「すまないね。騒がしくて」
ロニエとサーシャの後ろをついて来たカーナ王が声を掛ける。
「カーナ王」
カーナ王と一緒に王妃と現在、双子の護衛をしているフレア・サブリナがいた。
フレア・サブリナ。彼女はこのフォルニア王国の七騎士の一人だ。フォルニア王国は癒しの国として知られるが、治癒や盾を張る魔法に特化しているが故に戦闘向きの戦士が少ない。現在の戦争でも殆ど大和の武人が前線でたたかっており、フォルニアの兵は後方支援をしている。
そんなフォルニアが唯一、自信を持って戦闘向きと言える戦士がこの七騎士だ。基本的には王宮を守護している。
フォルニアの兵で大和の武人とまともに戦えるのはこの七騎士くらいのものだろう。
この七騎士は全て女性と言う。フォルニアでは男より女の人口の方が多く、強いものが多いのだ。
「やぁ、影丸君。言うのが遅れたが大槍武祭、優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
いつ見ても優しい表情をしている。
カーナ王のその表情を見るといつも安心する。
「影丸君も大変だろう。シャルロットは少しヤンチャだからなぁ」
「そんな事ないですよ」
もちろん、おおありである。
「別に気にせず本音を言うといい。私も妻も、君にはとても感謝している。ちょっとやそっと不満を言ったって構わんよ」
影丸は一瞬考えると
「実際。めちゃくちゃ手を焼いてます。言う事は聞かないし、自分勝手だし、すぐ拗ねるし、王宮からは勝手に抜け出すし、ホント、困った王女様だ」
影丸は少し笑みをこぼす。
「………まぁでも、不満と思った事はないですよ」
「……そうか」
影丸の愚痴を笑顔で聞き、嬉しそうに微笑みながら答える。
「これからもシャルロットの事をよろしく頼むぞ」
「はい!お任せください」
そして、カーナ王と王妃、フレアは去っていった。
去り際、フレアは影丸を睨みつけた。今までもフレアとは王宮内で何度も目が合ったりもしたが、その都度影丸を睨みつけた。
「なんで俺、アイツに嫌われてるんだ?」
そして、去ったカーナ王達は
「フレアよ。そんなに影丸君のことが嫌いか?」
「はい。嫌いです」
即答。
「彼は信頼出来る男だと思うがねぇ」
「私は信用できないです。いくら言われたからって主人にタメ口だったり、悪口を言ったりするなんて合ってはならないことです」
「まぁ、そう言う意見もあるか。だが、私は彼のそういうところが好きだがねぇ。王の前で王女の不満を言える。これを私は信頼出来るポイントとおもうよ。顔色を伺ってペコペコしている重臣達より余程信頼出来る。だからと言って重臣達を信頼していないわけではないが。そなたはどう思うシェーラ」
シェーラ・ブリュンヒルデ。この国の王妃だ。
「そうですね。私も彼の事は信頼していますよ。シャルロットも私達以上に心を開いているように思います。何より彼といる時が一番楽しそうに見えます。シャルロットの成長面でも安全面でも信用しています」
「……」
影丸に好印象を持つ二人にフレアは言葉を失う。
日が経つごとに、戦争は更に激しさを増した。
フォルニアには想定以上に兵を失ったという話が来ていたが、実際そこまで兵を失ってはいなかった。負傷兵は少し出ているが、それもたいした傷ではない。こちらの死人は殆ど、フォルニアの前線に出ていた兵だけだった。
戦場では戦士達の雄叫び、死体の山が広がる。それの殆どが、敵軍のものだ。
「クソっ!奴らめ、死ぬのが怖くないのか?勝ち目などない事は分かっているだろ」
大和、フォルニア軍を指揮するのは将軍の上杉、毛利、浅井の当主達にフォルニアの貴族のラジル家にザース家、バンジル家の当主たち。
敵軍ははっきり言って正気ではない。死を恐れず、敵へどんどん突っ込んでくる。敵を倒すどころか、味方の兵が目の前で次々と殺されていくのを目にして尚、恐怖せず攻めてくる。敵軍の行動や表情を見ても狂乱状態にあるのは明らかだ。
相手国は大和、フォルニアに比べれば大きい国だが、決して大国と言がいうわけではない。
相手国にはそれ程兵は残っていないはずだ。なのに惜しみなく兵を動員してくる。
「奴らの指揮官は何を考えている?正気ではないぞ!」
「ああ、このままではドゥトリュウ王国の兵は全滅するまで戦うぞ。」
「いいではないか、滅ぼしてしまえば」
フォルニアの指揮官達はその言葉を聞き、驚きを隠せなかった。そして、その言葉を言い放ったのは、大和の毛利家当主、毛利源内だ。
「毛利殿!何を申されるのですか?」
「そうです!これは自国を守る戦いであって、滅ぼす戦いではありません」
「あなた方は何を勘違いされているのだ。我々がしているのは戦争だ」
「それは…そうですが……」
「それに、仕掛けてきたのは相手国だ。滅んでも自業自得。何ならこれを機に、我が国の力を再び他国に再確認させるのはどうですか?」
「それもいいかもしれないな」
「なっ?!」
毛利の意見に同意するのは浅井家当主の浅井重治。
「浅井殿まで何を申される!確かに仕掛けてきたのはドゥトリュウ王国だが、滅ぼす必要はない!落とし所を見つけて交渉の座に着かせると言う方法もあるはずだ!それに滅ぼしたとして、ドゥトリュウの民達はどうするのだ!」
「向こう側が敗北を認め、嘆願してくるなら考えてやらんでもないが、こちらからは提示しない。滅んだ後の民をどうするという事だが、そんな事は知らん。国と運命を共にしてもらいって構わんのではないか?」
「そんな無責任な!何人の人がいると思っているのですか!上杉殿も何か言ってください!」
「……」
だが、上杉当主、上杉龍馬は何も口にしなかった。
この時にも、戦場では戦闘が行われていた。
上杉家が指揮する上杉流の武人達。上杉家が指揮する武人達は槍をメインに統率された動きで、効率よく敵を倒す。
毛利家と浅井家の流派はよく似ている。どの武器を使うというのは決まっていない。弓、片手斧に両手斧、片手剣に両手剣、槍、鞭、鎌、ハンマー、何でも使う。毛利と浅井は少し変わった流派なのだ。
この二つを流派たらしめているのは動きだ。二つの流派は少し変わった立ち回りをする。毛利流は型にはまらない動きをする事で知られている。予想出来ない動き。
浅井家はタイミングをずらす動きをする流派で知られている。型があるようでない。型にはまった動きをしているかと思いきや、突然テンポが変わる。型のある上杉流が戦うと戦いづらさを感じるらしい。
そしてこの毛利と浅井の両家の武人達は気性が荒いと言うとで有名だ。
戦場の最前線。この二家の武人達が乱心していた。
「ヒャヤアッッハーーーーーーッ!!!」
振りかざすハンマー。敵兵めがけて振り下ろす。砂煙を巻き上げ、それに混じり血しぶきが上がる。地面を叩きつける音と人間の潰れる音が鳴り響く。
「オラオラッ!!次はドイツだッ!!!」
狂ったような笑みを浮かべ、武器を振るう。轟音と共に人間が宙を舞う。舞った人間はそのまま地面にグシャリと落ちる。
「はぁ…ヨッワ。弱すぎてつまんねぇ。ちょっと振ったらアイツらボールみたいに飛んでいきやがる」
「こんなつまんねぇ戦いいつまでやるつもりだぁ?上は何を考えてんだよ。ちゃっちゃと攻め滅ぼせばいいのによー」
「バカな事言ってんじゃねぇよ。滅ぼした後の民はどうするんだ」
毛利と浅井の武人のやりとり。当主達と同様の考えをする二人に反対するのは上杉の武人だ。
「そんなのしらねぇよ。勝手に何とかするだろ」
「何なら民諸共皆殺しにするか」
毛利と浅井の武人は笑いながら言う。
「お前ら、冗談にしても笑えんぞ!」
「あーはいはい!相変わらず、上杉はお堅いなぁ」
こう言うことを言う毛利と浅井の武人は少なくない。その度に上杉の武人が反対をする。
だが、このままでは滅びるのは時間の問題。今すぐにでも白旗を上げさせなければならない。
指揮官達の話し合いにより、ドゥトリュウ王国へ使者を送る事になった。
内容はもちろん、敗北を促すものだ。
だか、ドゥトリュウ王国からの返答は期待していたものではなかった
「例え、この国が滅ぼうとも我々は最後の一兵になっても戦う、降伏はしない」
交渉は決裂し、再び激しい戦いが始まる。
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