この世界の幼女は最強ですか?~いいえ、それはあなたの娘だけです~

怪ジーン

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第二章 最強娘の学園生活

リディルという女性

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 ゆっくりと目を閉じると、彼女の姿がハッキリと浮かぶ。出会った頃は、まだ何処か幼さが抜けきっていない可愛さと、切れ長の目で見せる流し目は氷像のような美しさを感じさせる不思議な二面性を持つ女性であった。

 以前、住んでいた山の森でさ迷い歩き続けた俺は、力尽き倒れた所を発見、介抱してくれたのがリディルだった。

「大丈夫ですか?」

 倒れた俺の頭を持ち上げながら、口元に水の入った竹筒をそっと傾けて心配そうに見つめる彼女。
その後、親父さんが来るまで彼女は俺を膝枕しながら、俺が意識を保てるように語りかけてくれていた。

 親父さんが現れ、俺をあの住んでいた丸太小屋に連れていくと、その後も完全に回復するまで彼女は献身的に介護し続けてくれた。

 名前くらいしか記憶が残っていない俺の為に、色々教えてくれて、俺が『迷い子』や『転生者』という存在ではないかと教えてくれたのも彼女だ。

 少しずつ体力が戻ってくると共に、俺の記憶も回復していくが、それでも突発的にのみだったので未だに全快とは言い切れない。

 やがて親父さんや彼女は俺を受け入れてくれて働きながら一緒に暮らす事になる。
彼女は決して華美な服装をせず、体や服を汚しても笑って懸命に働く姿と、毎度旨い料理を振る舞う家庭的な一面に、俺が彼女に惹かれていくのに時間はさほどかからなかった。

 そして、俺の何処に惹かれたのか彼女との距離は縮まり、親父さん公認の恋仲になり、暫くして結婚をした。

 間もなくしてリディルの妊娠が発覚し、俺と親父さんは大いに喜んだのを覚えている。この妊娠を切っ掛けに何処と無く彼女の態度に変化が見られるようになる。

 親父さんの前でも平然と俺に抱きついたりして甘えてきたリディルが、素っ気なくなっていく。
最初は、妊娠による変化とばかり思っており、少し淋しさを感じつつも俺が我慢すれば済む話だと。

 一度だけ大きな喧嘩をした。

 妊娠八ヶ月を過ぎた身重な体で俺を求めて来た事があった。俺には妊娠に関しての深い知識もなく、ただ流産の危険性という理由だけで拒んだ。
彼女には健康な赤ちゃんを産んで欲しい、それだけのつもりで言ったのだが、彼女には伝わらなかったようで「私と子供とどっちが大事なのよ!?」とまで叫び、ぎゃーぎゃーと一通り喚いた後、そっぽを向いて眠りについた。

 彼女にしたら売り言葉に買い言葉で応戦したのだろうが、俺の心はもやっとしたものが残ったのを覚えている。

 翌朝、機嫌を伺おうと声をかけると彼女は意外にケロッとしており、普段通りだった。

 そして、サーシャ村から産婆を迎え出産に挑む。四時間もの激闘の末、標準の大きさの元気な女の子が産まれた。

 それがアリステリアである。

 大きさ産声を上げ、小さな手足を愛おしく感じながら俺が人差し指を手にあてがうと、きゅっと握り、ピキッと音がして俺の人差し指が折れたのは、今となっては良い思い出である。

「ほら、お母さんですよー」

 俺はリディルにアリステリアを渡そうとすると「出産で疲れた」と言い、拒否をする。
手伝ってくれた経験豊富な産婆が、そういう人もいると言うのでその日は納得をした。

 しかし、リディルのおかしな態度はその後も続く。一応、お乳をあげている時は抱っこするものの、すぐに俺に渡して来たり、俺が居ない時はベッドに放置をしていたりするようになる。

 そして、遂に彼女は荷物をまとめて行方を眩ました。

 その日は、腰が痛むと言う親父さんと仕事をしていた。その為、少しばかり帰宅が遅くなってしまい、日が暮れ始め、家に戻った。
その時の光景は今も鮮明に思い出せるくらいに衝撃だった。 

 部屋に入ると、リディルの姿はなく、窓から差し込む西日のオレンジ色に染まるベッドの上にポツンと置かれ泣きじゃくるアリステリア。

 一体、何時からこのままだったのかと、俺の血の気がサーっと引くのがわかり、同時にアリステリアに不甲斐ない父親だと申し訳なさで一杯になる。

 俺は親父さんに事情を伝えたあと、すぐにミルクを与えた。

 親父さんも青天の霹靂で、置き手紙すらもなく消えた事に困惑していた位だった。

「済まないね、タツロウくん……」

 それが親父さんがハッキリとした言葉を発した最後の台詞だった。

 その後、親父さんは原因不明の高熱により、すぐに亡くなってしまった。





 まだ他人の空似の可能性は拭えないが、今さら現れたリディルが青の魔王だなんて、笑い話にもならん。

 大体自分の娘を捨てておいて、子供に関して一切言及せずに、俺を最果ての大陸で待つだぁ?
ふざけるのも大概にして欲しい。

 俺はアリステリアにリディルの事を伝えるべきか悩んでいた。
アラキの前にいきなり現れたのなら、いつ俺やアリステリアの前に現れるかわからん。

ーーそういや、なんでアラキなんだ?

 俺に執着するのなら、俺の前に現れないか、普通。

「ダメだ、あの女の考えていることなんか、わからん」

 もう俺には理解出来ない。リディルの事も女性の心理も。明日、少し色々な人に相談してみるかと、吹っ切り、俺は庭で遊んでいたアリステリアに声をかけた。

「アリス! 今日は焼き肉食いに行くぞ! 熊五郎もだ!」
「やったー、お肉ですー!!」
「がるるっ♪」

 今日はもうやけ食いすることに決めた。

  
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