48 / 48
第三章 最強娘を魔王が無視する理由(ワケ)
元魔王の最期
しおりを挟む
俺とサラが辿り着いた部屋は、元々は目の前に座るカラカラに干からびた男、ヒューイの研究所であった。
自分を元・黄の魔王だと言うヒューイの話では、突然研究所にオットーは姿を現し、弟子を志願してきたのだという。
役割に関する研究に限界を感じていた所に、オットーの弟子入りという新しい風が入る事でに打破する可能性を期待して、快くヒューイは受けた。
オットー自身も既に役割に関してある程度研究していたようで、役割は変化する事も独自に調べて知っていた事には、ヒューイも驚いたらしい。
俺も役割の変化の話は一つ聞いて知っている。
“賢者の卵”イシューの父アイザックだ。彼は漁師から賢者の父へと役割が変化した。
ヒューイは、オットーから時折並々ならぬ役割への執着のようなものを感じていたらしい。
それは俺もサラも同感で、黄の魔王としてあったオットーからも微かにそれは感じ取れた。
「恐らくそれは汝等に対する怒りだろう。役割を果たしていない事に対するな」
「果たしていない?」
俺の持つ“最強娘の父”は兎も角、アラキの“勇者”やルナの“魔法使い”は、十分に果たしていると思う。二人は。
チラリとサラの下着姿を一瞥したあと俺は、思わずフッと息を漏らしてしまいサラから睨まれてしまった。
その後、役割を変化させるのではなく、役割そのものを奪えないかとオットーはヒューイにも隠れてコッソリと研究していたみたいだ。
結論から言うと奪うというよりかは、入れ替える事に成功したらしい。
その方法が、実に魔王らしいというか、オットーの性格をよく表していた。
入れ替えたい役割を持つ者の心臓を取り出したあと、その血液を摂取するという方法だと聞かされた俺達は、気分が悪くなる。
「ちょっと待って! それだとおかしいわ。だったら何故貴方は生きているの!?」
干からびた姿であるとはいえヒューイは今も此処に生きている。
“黄の魔王”という役割を入れ替えられたなら心臓は抜き取られたという事だ。
「ワシはもうすぐ死ぬだろうよ。今は生かされているだけだ」
ヒューイは、今にも倒れそうなほど弱りきった体で、ゆっくり背中を向けると、そこには鼓動する植物のような枝の塊が。
「これは?」
「神樹の実という。ワシがむかーし、会った神の役割を持つ者から渡されたものだ。今はこれが心臓の代わりをしてくれているが、それももう尽きようとしているのだ」
「待って。神と魔王って対立しているんじゃないの?」
サラの言うイメージが確かにある。
神は善、魔王は悪。それは記憶を失くした俺でも残っていた。
「違うのだ。神という役割は、世界を守る者だ。放っておけば世界が『0の世界』により戻されてしまう為にな」
「その事も聞きたい『0の世界』とはなんだ?」
俺がヒューイに問いかけると弱々しい声ながら発する。
「『0の世界』。今は、その力は半分に過ぎない。何故なら大昔の三人の魔王と神とで、半分は封じ込める事に成功したのでな。黒の魔王。彼だけは『0の世界』が生み出した尖兵のようなものだ……」
虚ろな目をしながらヒューイは遠くを見る。
「『0の世界』については、ワシより詳しい者がいる。……青の魔王に会え。彼女は、唯一、魔王としての記憶を何代にも引き継いでいるのだから」
椅子の手すりからヒューイの細く皺だらけの腕が落ちる。
「最後に……」
ヒューイは全ての生命力を振り絞るように震えながら無理矢理腕を伸ばし俺を指差す。
「お主……は、いずれ……選択することにな……る。世界の為に死ぬか……世界と……共に……」
操り人形の糸が切れたようにヒューイの腕がだらりと下がり、頭も大きく項垂れた。
「ねぇ、この部屋揺れてない?」
ヒューイの最期の言葉に気を取られていた俺はサラの言葉で地面だけでなく部屋全体が揺れている事に気づく。
「不味いな! 急いで、戻ろう!!」
詳しく部屋の中を調べる時間はなく、俺はサラを先に見送った後、本棚の本を適当に見繕い、密閉性の高そうな空きの箱に詰め込むだけ詰め込み施錠をしっかりして、一緒に水中へと潜った。
水中でも背後で部屋が崩れる音が聞こえて来て、俺は急いで、行きに通したロープを懸命に手繰り寄せながら、脱出するのであった。
戻って来た俺達は、その場にいる全員にヒューイの話を伝えた。結局、オットーの足取りは掴めなかったが、一つ分かるのは、黄の魔王の役割のせいか、オットーの性格からかはわからないものの、どうやら俺達が役割を果たしていない事が気に入らないようで、いずれ向こうから来る可能性は高い。
それならば、居場所の分かっている青の魔王を先にした方がいいかもしれない。
「パパ、この箱なんです?」
小さな鍵付きの箱をアリステリアは俺がうんともすんとも言う前に既に力づくで、こじ開けており、中に入っている本を見て、ガッカリしていた。
自分を元・黄の魔王だと言うヒューイの話では、突然研究所にオットーは姿を現し、弟子を志願してきたのだという。
役割に関する研究に限界を感じていた所に、オットーの弟子入りという新しい風が入る事でに打破する可能性を期待して、快くヒューイは受けた。
オットー自身も既に役割に関してある程度研究していたようで、役割は変化する事も独自に調べて知っていた事には、ヒューイも驚いたらしい。
俺も役割の変化の話は一つ聞いて知っている。
“賢者の卵”イシューの父アイザックだ。彼は漁師から賢者の父へと役割が変化した。
ヒューイは、オットーから時折並々ならぬ役割への執着のようなものを感じていたらしい。
それは俺もサラも同感で、黄の魔王としてあったオットーからも微かにそれは感じ取れた。
「恐らくそれは汝等に対する怒りだろう。役割を果たしていない事に対するな」
「果たしていない?」
俺の持つ“最強娘の父”は兎も角、アラキの“勇者”やルナの“魔法使い”は、十分に果たしていると思う。二人は。
チラリとサラの下着姿を一瞥したあと俺は、思わずフッと息を漏らしてしまいサラから睨まれてしまった。
その後、役割を変化させるのではなく、役割そのものを奪えないかとオットーはヒューイにも隠れてコッソリと研究していたみたいだ。
結論から言うと奪うというよりかは、入れ替える事に成功したらしい。
その方法が、実に魔王らしいというか、オットーの性格をよく表していた。
入れ替えたい役割を持つ者の心臓を取り出したあと、その血液を摂取するという方法だと聞かされた俺達は、気分が悪くなる。
「ちょっと待って! それだとおかしいわ。だったら何故貴方は生きているの!?」
干からびた姿であるとはいえヒューイは今も此処に生きている。
“黄の魔王”という役割を入れ替えられたなら心臓は抜き取られたという事だ。
「ワシはもうすぐ死ぬだろうよ。今は生かされているだけだ」
ヒューイは、今にも倒れそうなほど弱りきった体で、ゆっくり背中を向けると、そこには鼓動する植物のような枝の塊が。
「これは?」
「神樹の実という。ワシがむかーし、会った神の役割を持つ者から渡されたものだ。今はこれが心臓の代わりをしてくれているが、それももう尽きようとしているのだ」
「待って。神と魔王って対立しているんじゃないの?」
サラの言うイメージが確かにある。
神は善、魔王は悪。それは記憶を失くした俺でも残っていた。
「違うのだ。神という役割は、世界を守る者だ。放っておけば世界が『0の世界』により戻されてしまう為にな」
「その事も聞きたい『0の世界』とはなんだ?」
俺がヒューイに問いかけると弱々しい声ながら発する。
「『0の世界』。今は、その力は半分に過ぎない。何故なら大昔の三人の魔王と神とで、半分は封じ込める事に成功したのでな。黒の魔王。彼だけは『0の世界』が生み出した尖兵のようなものだ……」
虚ろな目をしながらヒューイは遠くを見る。
「『0の世界』については、ワシより詳しい者がいる。……青の魔王に会え。彼女は、唯一、魔王としての記憶を何代にも引き継いでいるのだから」
椅子の手すりからヒューイの細く皺だらけの腕が落ちる。
「最後に……」
ヒューイは全ての生命力を振り絞るように震えながら無理矢理腕を伸ばし俺を指差す。
「お主……は、いずれ……選択することにな……る。世界の為に死ぬか……世界と……共に……」
操り人形の糸が切れたようにヒューイの腕がだらりと下がり、頭も大きく項垂れた。
「ねぇ、この部屋揺れてない?」
ヒューイの最期の言葉に気を取られていた俺はサラの言葉で地面だけでなく部屋全体が揺れている事に気づく。
「不味いな! 急いで、戻ろう!!」
詳しく部屋の中を調べる時間はなく、俺はサラを先に見送った後、本棚の本を適当に見繕い、密閉性の高そうな空きの箱に詰め込むだけ詰め込み施錠をしっかりして、一緒に水中へと潜った。
水中でも背後で部屋が崩れる音が聞こえて来て、俺は急いで、行きに通したロープを懸命に手繰り寄せながら、脱出するのであった。
戻って来た俺達は、その場にいる全員にヒューイの話を伝えた。結局、オットーの足取りは掴めなかったが、一つ分かるのは、黄の魔王の役割のせいか、オットーの性格からかはわからないものの、どうやら俺達が役割を果たしていない事が気に入らないようで、いずれ向こうから来る可能性は高い。
それならば、居場所の分かっている青の魔王を先にした方がいいかもしれない。
「パパ、この箱なんです?」
小さな鍵付きの箱をアリステリアは俺がうんともすんとも言う前に既に力づくで、こじ開けており、中に入っている本を見て、ガッカリしていた。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(26件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。
さら
恋愛
私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。
そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。
王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。
私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。
――でも、それは間違いだった。
辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。
やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。
王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。
無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。
裏切りから始まる癒しの恋。
厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。
没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~
namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。
かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。
海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。
そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。
それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。
そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。
対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。
「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」
アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。
ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。
やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。
揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。
【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました
あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。
そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。
平民出身のヒロインの「善意」、
王太子の「優しさ」、
そしてそれらが生み出す無数の歪み。
感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。
やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。
それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。
なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。
これは、
「断罪される側」が最後まで正しかった物語。
そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
箱の中に隠された本といえば……うん。アリスちゃんは見ちゃいけません(;´Д`)
レーティングは15の可能性はあるけど(笑)
ど、どんな事件じゃろ……
まぁ、人を爆弾にするやつですから
アリスちゃん、毟っちゃダメ(笑)
追加で毟り入りまーす。二度とカルヴァンに彩り豊かな羽毛は戻って来なかったとさ。