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第一章 リンドウの街 編
十四話 幼女と青年、新しい家で生活をする
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アカツキは、異世界ローレライに来るまで、学校、幼い妹の世話、家事と三足の草鞋を履いてとても忙しい日々だった。
根は真面目で学業を疎かにせず、家事や妹の世話にも手など抜かない。
しかし、圧倒的に時間が足りない。
故に彼は、いかに効率良く、手際良くやるかをずっと考えていた。
結果、家事を手際良く終わらす術を身に付けていく。
彼のモットーは、“掃除、洗濯、料理、勉強は各三十分で終わらす! あとは、妹と遊ぶ”だった。
◇◇◇
寝室に入り、布を口元に巻いたアカツキは、薄汚れたベッドのシーツを外し、マットを部屋の外に出す。
廊下への扉は閉め、窓を開けると天井の煤から箒で手早く掃いていく。
舞った埃が床に落ちるまでの間、廊下に出てマットとシーツを裏庭に干しに行く。
まだ、時間は余っているので一階のリビングの天井の埃を掃いていく。
そのまま、二階へと上がり寝室に入ると、床の埃を立てないように入口から掃いていった後、水拭きしていく。
寝室が終わり一階に降りると、同じ様に階段の場所から床を掃いていき、水拭きする。ここまで、実に二十分ほどだ。
その後、台所、トイレ、風呂と掃除し、最後に二階の廊下、階段を掃除していった。かかった時間は一時間程度。流石に家一軒丸々掃除は初めてで、三十分で終わらせられず不満そうだった。
現在アカツキは台所で薪をくべ火を起こし、一つの鍋には白い液体が、もう一つの鍋はお湯を沸かしていた。
「アカツキ~、終わったのじゃぁ~」
勝手口から入ってきたのは、頭から爪先まで、びしょびしょに濡れたルスカ。
水を扱う以上服は濡れると思ってはいたが、体全体濡れるとは、アカツキも予想はしていなかった。
「あ~、あ~、ルスカ。びしょびしょじゃないですか。服を脱いでそのまま二階のお風呂に行ってください」
「はーい、なのじゃ」
服を脱ぎ靴も脱いだルスカは、熊ちゃん印のパンツ一丁で二階へと駆け上がる。
その後ろをお湯の入った鍋を持ってアカツキはついていった。
「さ、お風呂沸かしているので入ってください」
「アカツキも一緒に入るのじゃ」
「今ご飯作ってますから。さ、入ってください」
「ご飯! わかったのじゃ」
手に持っていたお湯を入れ、寝室から着替えを持ってきて渡し、再び台所へと戻っていった。
◇◇◇
「うん、いい感じですね」
鍋の中の白い液体を味見し、満足気な表情のアカツキ。
「アカツキ~、アカツキ~」
風呂から出たのかと階段の方を見るが、ルスカの姿は無い。
「アカツキ~」
再び呼ぶ声がして、二階へと上がって行くと、浴室から半分体を出しているルスカが。
「アカツキー、体を拭くものが無いのじゃ」
「あっ!」
不覚であった。バスタオルは前の世界では浴室に置いてあったのだ。
すぐに寝室から布を持ってきてルスカに渡すがルスカは受け取らず、万歳をする。
「拭いて欲しいのじゃ」
「何を言っているんですか。はい、これで拭いてください」
渋々ルスカは受けとると頭をガシガシと拭きだす。
「あーっ! ルスカ、駄目でしょ。そんなに強く拭いたら、髪が傷むでしょう! 貸してください」
ルスカから奪い取るように布を受け取ると、椅子に座らせ、腰まである藍白の髪を掬うように手に取り、布で丁寧に水分を取っていく。
「ルスカの髪は、とても綺麗なのですから丁寧に扱わないと」
アカツキは丁寧に丁寧に水分を拭き取っていく。
昔妹にしてやった時の事を思い出しながら。
◇◇◇
体を拭き終え無地の白いワンピースを着た後、一階に降りていくルスカの目にテーブルに並べられた料理に目がいく。
何より注目したのは、テーブル真ん中にある鍋の中の白い液体。
ちょうどアカツキが取り分けているところだ。
「アカツキ、これは何のスープじゃ? この匂い……もしかしてミルク煮か?」
椅子に登り、顔を鍋に近づける。
かき混ぜる度に湯気がたつ液体から、仄かに匂うミルクの匂い。
「今日はシチューです。ミルク煮は以前帝国にいた頃食べましたが、あれはいけません。ミルクの臭み全開でしたね」
「しちゅーと言うのか……そう言えばミルク煮と違って臭くないのじゃ」
お互いの皿に取り分けが終わり、それぞれ席に着く。
「いただきますなのじゃ」
「はい、どうぞ。熱いから気をつけてくださいね。あと、パンに浸してもいいですよ」
スプーンで掬い息を吹きかけ冷ますと、一気に口の中へ放り込む。
「ん……んん! 旨いのじゃ! 臭みは無いし、何より仄かに甘くすら感じる。それに何だか濃いのぉ。それにこの白い物体はなんじゃ?」
「はふ……はふっ、それはカリフラワーです。彩りのいいブロッコリーにしようかと思ったのですが」
「アカツキ。まず、ぶっころりがわからんのじゃが」
二人の間に沈黙が流れる。気不味い空気の中、二人は黙々とシチューを食べていくが、我慢出来なくなったのはルスカ。
「と、取り敢えず旨いのじゃ。ホクホクしてるし、噛んだら崩れる食感も面白いのじゃ」
シチューを気にいった様子のルスカは、口の周りをベトベトにしながら、空いた皿をアカツキに渡しおかわりを要求してきた。
「ごちそうさまじゃ」
「はい。夜になったらクエストに出発しますので、それまで寝てていいですよ」
ルスカは口の周りだけでなく、ワンピースにまでシチューが付いている。
口の周りを拭いてやり、出会った頃に着ていた黒いワンピースに着替えさせている間に、片付けを済ます。
夜に出発するのは片道半日かかる為、森の中の湖に明るい内に着きたいからである。
アカツキは洗い物をしながら茜色の窓を見ていた。
「ルスカの新しい服、出発前に買いに行きますか、ルスカはどうしますか? 一緒に来ますか?」
声をかけても返事がなく、振り返るとルスカの頭はぐらぐらと揺れ、今にも床へ崩れ落ちそうだ。
アカツキはルスカの側に行き、腰を落としてルスカの目線に合わせる。
「ルスカ、寝るならベッドで寝ましょうね」
そう声をかけるが返事の代わりに、アカツキの首に手を回して抱きつく。
連れていけという事だろうと、アカツキはそのままルスカを抱っこして寝室へと連れていった。
「さて、服を買いに行きますか」
ベッドに寝かしつけ洗い物も終えたアカツキは、施錠をし服屋へと向かった。
周りの建前の壁が茜色に染まり、日が落ちる前にと足早に急いだ。
向かった服屋は、昨日危うく警備兵を呼ばれそうになった服屋。というより女性服はここしかなかったのだ。
入る前に一つ大きく深呼吸をして胸を張り堂々と入っていく。
入った瞬間に昨日の女性店員と目がバッチリ合う。
背中に冷や汗をかきながらも冷静を装い、昨日ルスカが選んでいた棚へと向かう。
猛烈な視線を背中から感じながら選ぼうとするが、居たたまれないのか適当に手に取っていると「あの……」と背後から声をかけられる。
「昨日のお嬢さんの服ですよね。それだとサイズが小さいと思いますけど」
「え? そ、そうなのですか?」
焦りからかサイズを確認しておらず、女性店員に声をかけられるキッカケを作ってしまい、背中に冷や汗をかきながらも冷静を装う。
「こちらのサイズがピッタリだと思いますよ」
「ありがとうございます」
案内された商品棚を見ていくアカツキ。
ふと一着のフリルのついたワンピースを手に取ると動きが止まる。
そういえばルスカは地味な無地のワンピースばかりだ。
「ふふ……ルスカちゃんに似合うと思いますよ」
「はぁ……え!?」
突然ルスカの名前が出て驚き振り返ると、女性店員は柔らかな笑みを浮かべていた。
「どうしてルスカの名前を?」
「ええ、実は……」
アカツキとルスカの事を、買い物に来たセリーから、お嬢様と従者だと聞き昨日来た客の事だとピンときたと言う。
「ですから安心してください。警備兵は呼びませんから」
「あはは、顔に出ていましたか」
「はい」
女性店員はニッコリと微笑んだ。
それからのアカツキは、ゆっくり吟味して、先ほどのフリルのついた淡い青色のワンピースと、短パンにスカート、パーカーやシャツを数点選び、計銅貨八枚を払い帰っていった。
道すがらアカツキは、銅貨五枚程度の予定が思わぬ出費となってしまい、女性店員に上手く担がれた気がしていた。
根は真面目で学業を疎かにせず、家事や妹の世話にも手など抜かない。
しかし、圧倒的に時間が足りない。
故に彼は、いかに効率良く、手際良くやるかをずっと考えていた。
結果、家事を手際良く終わらす術を身に付けていく。
彼のモットーは、“掃除、洗濯、料理、勉強は各三十分で終わらす! あとは、妹と遊ぶ”だった。
◇◇◇
寝室に入り、布を口元に巻いたアカツキは、薄汚れたベッドのシーツを外し、マットを部屋の外に出す。
廊下への扉は閉め、窓を開けると天井の煤から箒で手早く掃いていく。
舞った埃が床に落ちるまでの間、廊下に出てマットとシーツを裏庭に干しに行く。
まだ、時間は余っているので一階のリビングの天井の埃を掃いていく。
そのまま、二階へと上がり寝室に入ると、床の埃を立てないように入口から掃いていった後、水拭きしていく。
寝室が終わり一階に降りると、同じ様に階段の場所から床を掃いていき、水拭きする。ここまで、実に二十分ほどだ。
その後、台所、トイレ、風呂と掃除し、最後に二階の廊下、階段を掃除していった。かかった時間は一時間程度。流石に家一軒丸々掃除は初めてで、三十分で終わらせられず不満そうだった。
現在アカツキは台所で薪をくべ火を起こし、一つの鍋には白い液体が、もう一つの鍋はお湯を沸かしていた。
「アカツキ~、終わったのじゃぁ~」
勝手口から入ってきたのは、頭から爪先まで、びしょびしょに濡れたルスカ。
水を扱う以上服は濡れると思ってはいたが、体全体濡れるとは、アカツキも予想はしていなかった。
「あ~、あ~、ルスカ。びしょびしょじゃないですか。服を脱いでそのまま二階のお風呂に行ってください」
「はーい、なのじゃ」
服を脱ぎ靴も脱いだルスカは、熊ちゃん印のパンツ一丁で二階へと駆け上がる。
その後ろをお湯の入った鍋を持ってアカツキはついていった。
「さ、お風呂沸かしているので入ってください」
「アカツキも一緒に入るのじゃ」
「今ご飯作ってますから。さ、入ってください」
「ご飯! わかったのじゃ」
手に持っていたお湯を入れ、寝室から着替えを持ってきて渡し、再び台所へと戻っていった。
◇◇◇
「うん、いい感じですね」
鍋の中の白い液体を味見し、満足気な表情のアカツキ。
「アカツキ~、アカツキ~」
風呂から出たのかと階段の方を見るが、ルスカの姿は無い。
「アカツキ~」
再び呼ぶ声がして、二階へと上がって行くと、浴室から半分体を出しているルスカが。
「アカツキー、体を拭くものが無いのじゃ」
「あっ!」
不覚であった。バスタオルは前の世界では浴室に置いてあったのだ。
すぐに寝室から布を持ってきてルスカに渡すがルスカは受け取らず、万歳をする。
「拭いて欲しいのじゃ」
「何を言っているんですか。はい、これで拭いてください」
渋々ルスカは受けとると頭をガシガシと拭きだす。
「あーっ! ルスカ、駄目でしょ。そんなに強く拭いたら、髪が傷むでしょう! 貸してください」
ルスカから奪い取るように布を受け取ると、椅子に座らせ、腰まである藍白の髪を掬うように手に取り、布で丁寧に水分を取っていく。
「ルスカの髪は、とても綺麗なのですから丁寧に扱わないと」
アカツキは丁寧に丁寧に水分を拭き取っていく。
昔妹にしてやった時の事を思い出しながら。
◇◇◇
体を拭き終え無地の白いワンピースを着た後、一階に降りていくルスカの目にテーブルに並べられた料理に目がいく。
何より注目したのは、テーブル真ん中にある鍋の中の白い液体。
ちょうどアカツキが取り分けているところだ。
「アカツキ、これは何のスープじゃ? この匂い……もしかしてミルク煮か?」
椅子に登り、顔を鍋に近づける。
かき混ぜる度に湯気がたつ液体から、仄かに匂うミルクの匂い。
「今日はシチューです。ミルク煮は以前帝国にいた頃食べましたが、あれはいけません。ミルクの臭み全開でしたね」
「しちゅーと言うのか……そう言えばミルク煮と違って臭くないのじゃ」
お互いの皿に取り分けが終わり、それぞれ席に着く。
「いただきますなのじゃ」
「はい、どうぞ。熱いから気をつけてくださいね。あと、パンに浸してもいいですよ」
スプーンで掬い息を吹きかけ冷ますと、一気に口の中へ放り込む。
「ん……んん! 旨いのじゃ! 臭みは無いし、何より仄かに甘くすら感じる。それに何だか濃いのぉ。それにこの白い物体はなんじゃ?」
「はふ……はふっ、それはカリフラワーです。彩りのいいブロッコリーにしようかと思ったのですが」
「アカツキ。まず、ぶっころりがわからんのじゃが」
二人の間に沈黙が流れる。気不味い空気の中、二人は黙々とシチューを食べていくが、我慢出来なくなったのはルスカ。
「と、取り敢えず旨いのじゃ。ホクホクしてるし、噛んだら崩れる食感も面白いのじゃ」
シチューを気にいった様子のルスカは、口の周りをベトベトにしながら、空いた皿をアカツキに渡しおかわりを要求してきた。
「ごちそうさまじゃ」
「はい。夜になったらクエストに出発しますので、それまで寝てていいですよ」
ルスカは口の周りだけでなく、ワンピースにまでシチューが付いている。
口の周りを拭いてやり、出会った頃に着ていた黒いワンピースに着替えさせている間に、片付けを済ます。
夜に出発するのは片道半日かかる為、森の中の湖に明るい内に着きたいからである。
アカツキは洗い物をしながら茜色の窓を見ていた。
「ルスカの新しい服、出発前に買いに行きますか、ルスカはどうしますか? 一緒に来ますか?」
声をかけても返事がなく、振り返るとルスカの頭はぐらぐらと揺れ、今にも床へ崩れ落ちそうだ。
アカツキはルスカの側に行き、腰を落としてルスカの目線に合わせる。
「ルスカ、寝るならベッドで寝ましょうね」
そう声をかけるが返事の代わりに、アカツキの首に手を回して抱きつく。
連れていけという事だろうと、アカツキはそのままルスカを抱っこして寝室へと連れていった。
「さて、服を買いに行きますか」
ベッドに寝かしつけ洗い物も終えたアカツキは、施錠をし服屋へと向かった。
周りの建前の壁が茜色に染まり、日が落ちる前にと足早に急いだ。
向かった服屋は、昨日危うく警備兵を呼ばれそうになった服屋。というより女性服はここしかなかったのだ。
入る前に一つ大きく深呼吸をして胸を張り堂々と入っていく。
入った瞬間に昨日の女性店員と目がバッチリ合う。
背中に冷や汗をかきながらも冷静を装い、昨日ルスカが選んでいた棚へと向かう。
猛烈な視線を背中から感じながら選ぼうとするが、居たたまれないのか適当に手に取っていると「あの……」と背後から声をかけられる。
「昨日のお嬢さんの服ですよね。それだとサイズが小さいと思いますけど」
「え? そ、そうなのですか?」
焦りからかサイズを確認しておらず、女性店員に声をかけられるキッカケを作ってしまい、背中に冷や汗をかきながらも冷静を装う。
「こちらのサイズがピッタリだと思いますよ」
「ありがとうございます」
案内された商品棚を見ていくアカツキ。
ふと一着のフリルのついたワンピースを手に取ると動きが止まる。
そういえばルスカは地味な無地のワンピースばかりだ。
「ふふ……ルスカちゃんに似合うと思いますよ」
「はぁ……え!?」
突然ルスカの名前が出て驚き振り返ると、女性店員は柔らかな笑みを浮かべていた。
「どうしてルスカの名前を?」
「ええ、実は……」
アカツキとルスカの事を、買い物に来たセリーから、お嬢様と従者だと聞き昨日来た客の事だとピンときたと言う。
「ですから安心してください。警備兵は呼びませんから」
「あはは、顔に出ていましたか」
「はい」
女性店員はニッコリと微笑んだ。
それからのアカツキは、ゆっくり吟味して、先ほどのフリルのついた淡い青色のワンピースと、短パンにスカート、パーカーやシャツを数点選び、計銅貨八枚を払い帰っていった。
道すがらアカツキは、銅貨五枚程度の予定が思わぬ出費となってしまい、女性店員に上手く担がれた気がしていた。
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