追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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閑話

ルスカside 幼女、学校に行く その壱

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「ルースーカーちゃーん、学校行こー」

 学校にお試しで行く事が決まってから、一週間後の早朝。
アカツキ達の家の前に、いつもの白いリボンを後ろ髪になびかせながら、リュックを背負い右手には大きな手提げ鞄を持ったセリーが、ルスカを呼びに来た。

「ちょ、ちょっと待って欲しいのじゃー!」
「セリーさん、中に入っていてください」

 家の中からルスカとアカツキの声が。
セリーは玄関の扉を開き中に入ると、アカツキとルスカが揉めていた。

「アカツキ、これ、いらんのじゃ!」
「どうしてですか!? 良く似合ってますよ、ねぇ、セリーさん!」

 ルスカには珍しく真っ白なワンピースに身を包み、いつものローブの代わりに赤いケープを首元に着けていた。
ルスカは、つばの広い白い帽子をアカツキに返している。揉めている原因は、この帽子だった。

 所謂つば広帽子やキャペリンと呼ばれる形をしていて、ここリンドウの街の服屋で、よく売れていると学校で着る服を買いに行った時に併せて買ったものだ。

「いやじゃー!」
「そんな事言わずに!」
「もう、アカツキさん貸して下さいぃ!」

 セリーはアカツキから帽子を奪い取ると、ルスカに被せてあげる。

「うん、良く似合ってるよぉ! まるでお嬢様みたいぃ!」
「お、お嬢様!? ウー、変じゃないかのぉ?」

 ルスカは帽子の位置を気にしながらチラリとアカツキの方を見る。

「似合ってますよ」

 アカツキは先程から同じ事を言っているのに、やはり同性から言われた方が嬉しいのか、ルスカは照れながらアカツキ達の前で、くるりと一回転して見せた。

「あ、そろそろ行かないとぉ」
「ルスカ、忘れ物はないですね?」
「大丈夫なのじゃ」

 ルスカはお弁当の入ったリュックを背負い、着替えの入った手提げの鞄を両手で持ち上げる。

「あっ!」
「? 忘れ物ですか?」
「杖が持てないのじゃ」

 ルスカより背も高く、いつも手伝いなどで割りと力のあるセリーは、片手で手提げ鞄を持てるが、ルスカは両手で持つのがやっとのようだ。

「ルスカちゃ~ん、杖は要らないよぉ」
「そうですよ。ほら、遅れますよ」

 アカツキが玄関の扉を支えてやる。渋々杖を諦めたルスカは、玄関を出る。

「二人共、いってらっしゃい。ルスカ、おねしょしたら先生に言うのですよ」
「おねしょなんかしないのじゃ!」
「アカツキさん、いってきまーすぅ」

 セリーと並んで歩くルスカの背を見送り、見えなくなると家へと戻っていく。

「さぁて、洗濯でもしますか」

 アカツキは裏庭の井戸に水を汲みにいく。そこには、立てかけられたベッドのマットレスと、何やらシミの付いたシーツが置かれてあった。

「おねしょなんか……ねぇ」

 シーツとマットレスを見て、一つため息を吐くアカツキだった。


◇◇◇


「待ってぇ~」
「待って欲しいのじゃ~」

 相乗り馬車の元に走っていくルスカとセリー。

「セリーちゃん、おはよう。お、新しい子かい?」
「ルスカじゃ! 宜しくなのじゃ、おっさん」
「おっ……!」

 馬車の御者の中年の男性から声をかけられ、ルスカは元気よく挨拶する。
しかし、まだそんな年だと思っていなかった御者は、ショックを受けていた。

「おはようございます、フレークさん。ルスカちゃん、おっさんじゃないよぉ、フレークさんだよぉ」

 セリーにフォローされ、復活するフレークと呼ばれた御者。

「ちょっと老けて見えるけどぉ、おっさんじゃないよぉ」

 髪に白髪が少し混ざったフレークは、セリーから止めを頂くと、しょんぼりしながら荷台にルスカとセリーを乗せ、相乗り馬車の証である黄色い旗を馬車に刺す。

「おう。セリー、おはよう」
「「セリー、この子だーれぇ?」」

 少し小生意気な感じのする背の高い男の子はハリー、二卵性の男女なのに、そっくりなユーリとユーキ。
いずれもセリーの友人だ。

「ルスカちゃんだよぉ。ルスカちゃん、この背の高いのがハリーでぇ、よく似ている男の子がユーキ、女の子がユーリだよぉ」
「「よろしく~」」

 揃って挨拶をするユーリとユーキに対し、ハリーの方は何故か目を合わせないし挨拶もしない。

「ハリー、どうしたのぉ?」

 チラチラと自分を見てくるハリーに、煩わしさを覚えたルスカは、ハリーに手を差し出す。

「ルスカじゃ、よろしくなハリー」
「お、おぅ」

 手を取り、漸く挨拶を交わすが、今度は目を合わせなくなる。

 ハリーの顔は、かなり赤くなっていた。

「さぁ、これで全員か? 出発するぞ」

 フレークが馬に鞭を入れ馬車が動き出し、グルメールに向けて出発した。


◇◇◇


 リンドウの南門を抜けて、街道を道なりに南へと進んでいく。
時折、揺れはするものの整備されている街道を進む馬車の乗り心地は悪くない。

「おおお! 思ったより速いのじゃ!」

 ルスカは帽子が落ちないように押さえながら、馬車から身を乗り出す。

「おい、ルスカちゃんだっけ? 危ねーぞ!」

 フレークに怒られて馬車に戻ると、ユーリとユーキがルスカを挟んで隣に座る。

「ねぇねぇ、ルスカちゃんて、最近リンドウに来たんだよねぇ?」
「ねぇねぇ、ルスカちゃんて、今まで何処にすんでたの?」

 二人からの質問に挟まれ、少し不快な顔をするルスカを見て、ハリーが割り込んでくる。

「ユーキ、ユーリ。一つずつ質問してやれよ。ルスカが困ってるだろ?」
「えー、そんな事ないよー! ねールスカちゃん」
「えー、そんな訳ないよー! ねールスカちゃん」

 ワイワイと三人が揉め出したので、ルスカはセリーの隣に避難する。

「仲、良いって言ってたはずじゃが?」
「あはは、普段は仲良いよぉ。今日はルスカちゃんが、居るからだねぇ。特にハリーが」

 ワシのせい? と、首を捻るルスカ。何の事だか検討がついていないようだった。

「ハリー、ユーリ、ユーキ、五月蝿いぞ! あんまり五月蝿いと魔女に食べさすぞ!」

 フレークがいい加減怒り出す。ハリー達は、急に大人しくなった。
よっぽど魔女が怖いらしい。

「セリー、魔女って何なのじゃ?」
「えーっとねぇ、何だっけ?」
「何だー? 二人とも知らないのか? 仕方ないなぁ」

 セリーとルスカの会話を聞いていたフレークが、前を見ながら教えてくれた。

「魔女ってのはな、何百年も生きていて、この国が困った時は助けてくれるが、普段は子供達を食べているんだよ。特に悪い子はな」

 ルスカがそんな馬鹿なと言いたそうな顔をする。それもその筈で、それなら動乱の時に現れてもおかしくないだろうと。

 話には続きがあるらしく、フレークは魔女の話を続ける。

「その魔女ってのがさぁ、また人の揚げ足を取るのが上手くてな。だけど、その容姿は可愛らしい幼女なんだと。お前らも今回学校で貰えるんじゃないかな? ルスカ・シャウザードって魔女の絵本」
「な、な、なんじゃ~! それは~!?」

 絵本と聞いて思い浮かぶ人物は、ただ一人。

「ワズ大公め! 誰が魔女なのじゃー!!」

 馬車から立ち上がり怒りを露にする。その時、馬車が大きく揺れ、ルスカはバランスを崩し倒れそうになる。

「危ねぇ!!」

 ハリーが咄嗟に倒れかけたルスカを受け止めた。

「おい! 気をつけろよ!」

 ハリーはルスカを叱るが、耳に入っていないのかルスカは、馬車の上で地団駄を踏み出す。

「くそぉ! ワズ大公の奴、一度ならず二度までも! 絶対ぶっ飛ばすのじゃ!!」
「おい! 暴れるなって!」

 ハリーがルスカの両肩を掴んで押さえる。セリーも後ろからルスカの体に抱きつき押さえ込んだ。

「お前ら、五月蝿いっていってるだろ! 暴れるな! ルスカ様に食べて貰うぞ!!」
「五月蝿い!! ワシは人など食わないのじゃ!!」

 叱ったつもりのフレークは、まさか自分が叱られると思っておらず、前を向いたまま目を丸くする。

 セリー達も、何故ここまでルスカが怒るのか分からず戸惑っていた。

 たかだか、名前が同じ位で……と。
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