追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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閑話

ルスカside 幼女、学校にいく その弐

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「さぁ、この辺りで、お昼にしようか」

 フレークが馬車を止めたのは、丁度グルメールへ右折する街道沿い。
そばの森の奥には、初クエストで行ったピーンという果実の群生地のある場所。
馬車から全員降りて円になり子供達は、嬉しそうにリュックから各々お弁当箱を取り出す。

「ルスカちゃんのお弁当って、アカツキさんが作ってるんだよねぇ?」
「そうなのじゃ! アカツキのご飯美味しいのじゃ」

 リュックの中からルスカが取り出したのは、小さなお弁当箱。と言っても専用のお弁当箱ではなく、蓋の付いたただの箱。
購入したのは、いつもの金物屋で、ルスカに好きな大きさを選ばせるべく連れて行ったのだが、入口で入りたくないと押し問答する羽目になった。

「カレー、カレー」

 楽しそうに蓋を開けるが、留め具が付いていないお弁当箱にカレーが入っている訳がない。
入っていたのは、卵焼きと唐揚げ、そしてタコの形をしたウインナーとド定番のお弁当のおかず、そして俵型のおにぎり。

 しかし、ルスカはカレーが無いと言って不貞腐れる事なく、お弁当の匂いを嗅いで満足気な顔をする。
お弁当内から匂うカレーの香りに。

 カレーと駄々を捏ねるルスカに、アカツキがやむなく取った手段が、カレー風味の唐揚げ。

 ルーを砕いてカレー粉代わりにして、昨晩試しに作りルスカに食べさせたところ、大変気にいってくれた。

 ギルドパーティー名がイチゴカレー風味唐揚げに変わる日も、そう遠くはないだろう。

 ルスカのお弁当には、ハリー達やフレークも興味津々で中を覗き込む。

「これは卵焼きだね……これはなんだい?」
「たこさんじゃ!」

 アカツキが聞いていたら思わず吹き出すだろう。ルスカのイントネーションが「コさん」でなく、人の名前で言えば「多さん」なのだ。

 そんな事など露知らず、フレークを始めセリー達には「多さん」で広まる。
また、蛸を知らないルスカ達はウインナーが「タコさん」だと覚える事となった。

 更にルスカがもう一つ大きめのお弁当箱を取り出す。

「ルスカ。なんだよ、これ?」

 ハリーがお弁当の中を見て訝しげな表情に変わる。
お弁当箱の中身は、少し小さめの俵型のおにぎりで敷き詰められていた。

「これはおにぎりじゃ! 旨いぞ。アカツキが皆で食べろと持たせてくれたのじゃ」

 ルスカが一つ手に取りハリーへ手渡す。ハリーは受け取るものの、食べようとしないのでルスカは自分の分を取り、小さな口を大きく開けて半分だけ食べて見せる。

「んー! 当たりじゃ、たこさんが入っていたのじゃ」

 半分噛ったおにぎりからは、ウインナーが顔を出していた。

 ハリーがルスカを見て、一口おにぎりを恐る恐る噛ってみる。

「旨ぇ……おい、ルスカ。これ、なんだ?」

 噛ったおにぎりをルスカに見せる。おにぎりからは薄紅色の鮭のフレークが。

「おお! それも当たりなのじゃ! アカツキが言うにはそれは、鮭という魚じゃ」
「魚……なのか。旨いな」

 ハリーの様子を見てセリーやユーキとユーリ、それにフレークもおにぎりを手にすると、一斉に口にした。

 主食がパンや麺のこの世界で、白米には子供達は興味を抱かず、中の具が何かと楽しんでいた。

「ありがとねぇ、ルスカちゃん。私のお弁当も分けてあげるねぇ」

 ルスカは顔がひきつり警戒する。激辛好きのセリーのことである。きっとお弁当も激辛だと。
しかし、蓋を開けてみると激辛臭が漂って来ない。
中身は普通のホロホロ肉の炒め物だった。

 一息つき安堵するルスカを見て、セリー以外の全員がルスカの気持ちに同調し一斉に頷いた。

 皆が頷く意味が分からず首を傾げるルスカだが、セリーがトイレに行くと離れた時、ハリーから理由を聞かされた。
それはセリーが学校に初めて行く日。
持ってきたお弁当から漂う激辛臭で、馬が暴れて中止になった事があると。
それ以降、セリーの激辛弁当は禁止されたのだと。

 フォークに刺さったホロホロ肉の炒め物を、口に放り込むと、ホロホロ肉との戦闘が始まる。

「あ、相変わらず噛みきれないのじゃ……」


◇◇◇


 お弁当を食べ終えた一行は再び馬車に乗り、首都へと向かう。

「そういや、今日は魔物見ねぇな。いつもなら姿くらい見るんだが」

 フレークがボソリと呟くとセリー達は目を凝らして森を見る。
この辺りの魔物はあまり狂暴でなく、姿を見た程度では襲って来ない。

 だからといって、警戒を怠る訳にもいかない。狂暴な魔物は少ないだけで居ない訳ではないのだ。

「フレークさん、本当に見ないねぇ」
「きっとルスカちゃんをルスカ様と間違えてるんだよ」
「きっとルスカ様とルスカちゃんを間違えてるんだよ」

 ユーリとユーキも森の中に魔物が居ないか探しながら、そう言うとルスカ以外の全員が大笑いする。

 ルスカだけは興味なさそうに、空を見上げていた。
あながち間違えてはいなかったから。


◇◇◇


 途中で更に一度、夜ご飯を食べ馬車は夜通し走り続ける。
夜ご飯を食べた後、ルスカ達子供達は馬車の適度な揺れに心地よく眠りにつく。

 ルスカが以前掘り起こした荒れ地を通り過ぎた辺りで、空はすっかり明るさを取り戻し、朝靄あさもやが晴れてきた頃、街道の先にグルメールの門が見え始めてきた。

「おおい、全員起きろ! グルメールが見えて来たぞ」

 フレークに起こされ、セリー達は目を擦りながら体を起こす。

「ルスカ、まだ寝てるじゃねぇか。おい! ルスカ……」
「寝させてあげようよぉ。きっとまだ眠いんだよぉ」

 ハリーがルスカを揺すろうとする手を、セリーが押さえた。

 ルスカは荷台の真ん中でセリー達に囲まれながら、夢の中から出ようとしなかった。


◇◇◇


「よし、着いたぞ。ほら、ルスカちゃんを起こして」

 首都グルメールに着き、こな辺りでは珍しい木造の建物の前に馬車を止める。

「……まだ、眠いのじゃ……ふわぁ」

 目を強く擦りながら、ルスカは馬車から降ろされる。

「「「「フレークさん、ありがとうございました」」」」

 ルスカ以外の全員がフレークに向かってお礼を言うと、ルスカは一言「……じゃ」とだけ、頭が据わらず立ったまま揺れていた。

「ほら、ルスカちゃん。ここが、私達の学校だよぉ」

 低い木の柵に囲まれた校庭の様な砂地と木造の建物が二つ。
校庭では朝早いのに遊んでいる子供達がいる。

「この横に長い建物が学校でぇ。この三階建ての建物が寮だよぉ」

 ルスカは、まだ眠いのか話を聞いて頷いているのかは不明だが、頭は何度も縦に揺らしていた。

「ほら、行こう。ルスカちゃん」

 セリーがルスカの手を繋ぎ引っ張るとゆっくりだが歩を進める。
ルスカの手提げ鞄は、ハリーが持ってくれていた。

 校舎に入ると一階のリンドウと書かれた木片のある教室へと五人は入っていく。

「ルスカちゃんは、ここねぇ。私の隣」
「! ここは……どこじゃ!?」

 今漸く頭が働き出したルスカは、教室をキョロキョロ見渡し、場所を確かめる。
やっと、教室だと気づいたルスカは、セリーに促されるまま席に着く。

「ほら、ルスカ」

 ハリーがぶっきらぼうな口調でルスカの手提げ鞄を返した。

 教室には五人しか居らず、隣のセリーから学校について色々教えてくれる。
各街ごとで教室が決まっている事や、寮の部屋が分かれているなど。

「そう言えば、アカツキは学校には先生がいるって聞いたのだが、どんな奴なのじゃ?」
「リロ先生? うーん、一言で言ったら頼りない、かなぁ」

 話を聞いていたハリー達は思わず大声で笑い始める。

 その時、教室の扉が開き一人の女性が入って来たのだった。
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