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第三章 迫る因果編
十八話 青年は覚えていない
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弥生、流星、カホは仄かに涙を浮かべて再会を喜んでいた。
「カホ、流星くん! ほら、私だけじゃなくてアカ──田代くんもいるのよ」
「え!? 田代?」
弥生に促されアカツキの方を見た流星は、目を丸くする。
「た、田代なのか!? でけぇー」
「田代くん、背ぇ伸びたね」
身長が百六十の二人は、百八十を越えるアカツキを見上げる。
「はは……お久しぶりです」
アカツキは乾いた笑いで二人に応えると視線を反らした。
「すまないな、思っていたより身長が伸びてて、すぐには気づかなかったよ。お前も言ってくれればいいのによ」
「はは……キャラじゃないですから」
再び乾いた笑いで応えるが、流星はさっきから素っ気ないアカツキの態度でピンとくる。
「……なぁ、俺の名前言ってみろよ」
アカツキは沈黙したままで、応えようとしない。
「おいおい、ひでぇよ。忘れたのかよ……」
「な、七年経ってますから……」
「わたしも流星も同じなんだけど。わたし達、すぐに田代くん、思い出したよ」
アカツキは忘れたわけではなく、ボッチだった為、ただ名前を覚えていないだけだ。
「ほらほら、アカツキくん。流星くんのこの太眉、覚えていない?」
見ていられず弥生が助け船を出してあげる。しばらく流星の眉をじっと見るアカツキ。
「あっ!」
「思い出したか!?」
「確か、野球部の……」
「そうそう!」
「……ゲジゲジさん!」
「誰だよ、それは!?」
ゲジゲジというのは、アカツキが心の中で勝手に呼んでいた渾名。
流星のフルネームは、工藤 流星。
元野球部で、体は小柄で細いが引き締まっている。
カホと弥生は、笑いを堪えて口を手で押さえていた。
落ち込む流星の横でカホは、次は私の番だと一歩前に出る。
カホには自信があった。
いつも弥生とは一緒にいるし、弥生ほどではないがモテる方だと。
何よりアカツキの側にいた時間は多い。
「田代くん、わたしは覚えているよね? 何せ隣の席だったし」
「あっ!」
「やった!」
「腰巾着さん」
「田代くん、ひどい!」
アカツキにとって、カホは弥生の側にいるイメージから心の中で腰巾着さんと呼んでいた。
カホのフルネームは、曽我カホル。
弥生とは中学から仲が良く、やよちゃん、カホと呼び合っていた。
「あー! もういいよ! 流星とカホで。今度はウッカリ忘れるなよ!」
覚えていないだけでウッカリ忘れたわけではないアカツキは少し困った顔をした。
洞窟に向かって歩き出した流星は全員を手招く。
「ほら、こんな所じゃなんだから入れよ」
流星を先頭にアカツキ達も後をついていくが、エリーや二つのギルドパーティーは意味がわからず、どうしようか悩んでいた。
「ぐぎゃ?」
赤髪のゴブリンがついて行かないエリー達を見て、不思議そうに小首を傾げる。
顔は小鬼と呼ばれるだけあり醜悪だが、その仕草にどことなく愛らしさを感じたエリー達は、急いでアカツキ達の後を追うのだった。
◇◇◇
洞窟内はひんやりと肌寒く、時折上から滴が落ちて来てアカツキ達を驚かせる。
しかし、クモの巣や虫などは見かけず、足元も時折ヌルッとするが、全体的には清掃されている節がある。
「結構綺麗だろ? カホが嫌がるからゴブリンに掃除させてみたら、いや本当、意外と綺麗好きになって積極的に毎日掃除するんだぜ」
流星の笑い声が薄暗い洞窟内に響く。
「さ、着いたぜ。大体いつも俺らはここで生活しているんだ」
徐々に狭くなっていく洞窟の通路を進むと、開けた場所に出てきた。
そこには、十体ほどのゴブリンが掃除をしたり、何やら獲物を捌いたりしている。
真ん中には、恐らくどこからか運んで来たのだろう平らな岩がテーブル代わりに、丸い岩を椅子代わりにテーブルの周りに置いてあった。
「椅子足りねぇけど、まぁ、かけてくれ。ちょっと濡れるけどな」
流星は入って来た入口の正面に腰をおろし、定位置なのだろう隣にはカホが座る。
流星の向かい合わせにアカツキが座ると、膝の上にルスカが、左右には弥生とアイシャが丸い岩に座った。
「ぐぎゃぎゃー?」
「ん? あ、ちょっとすまん」
流星の周りにノイズが走ると、背の高いゴブリンに変身して、話かけてきたゴブリンと二人で会話を始める。
弥生がカホに小さな声で問いかける。
「カホ、あれが流星くんのスキル?」
「うん。“擬態”ってスキル。姿だけじゃなくて会話も出来ちゃうの」
自分のスキルではないのに、どこか自慢気で、それが自然とカホと流星の関係を示していた。
「悪いな。この姿じゃないと、ゴブリンの言葉がわからねぇんだ。それと、そこの子供、アカツキと弥生の子か?」
「え、ち、ちが──」
「違います」
「違うのじゃ」
弥生は赤くなりながらも否定しようとするが、割り込む形でアカツキとルスカに即刻否定されて肩を落とす。
「なんだそうなのか。いや、ゴブリン達がその子供に怯えていてな。なんでだ?」
「あ、あはははは……」
怯えているのは、森で囲まれた時の出来事が原因だろう。
アカツキは、取り敢えず笑って誤魔化す。
「えーっと、それでお二人は一体どうしてゴブリンと一緒に?」
話を切り替えようと、今度はアカツキから二人に話題をってみた。
「あー、それな? いや、俺たちも初めからゴブリンと一緒じゃないぜ。元々最初にいたのはアイルって街さ」
「アイル?」
「アカツキさん。私たちがファーマーに来る途中、避けた街です」
アイシャがすかさず小声で耳打ちしてフォローする。
確かに来る途中、様子のおかしい街を避けてファーマーへとやって来た。
「ただ、やっぱりカホを守らなきゃならねぇ。強そうな奴に変化すれば避けれるけどな、それじゃダメだと思ってな。一人の魔導師を頼ったんだ」
「魔導師……ですか?」
「ああ、クリストファーっていう爺さんだ」
エリーやファーマーギルドのパーティーの人達は、クリストファーの名前に驚く。
クリストファーに師事した二人を賞賛の嵐だが、クリストファーにあまり良い印象を持たないアカツキ、ルスカ、アイシャの三人。
「え? そんなに凄い人なの?」
事情のわからない弥生は、周りがこんなに褒め立てるのだから凄い事なのだろうと感嘆する。
「まさか、ここでクリストファーさんの名前が出るとは……流星さん、続きをお願いします」
「あ、ああ」
「待って! 流星、その前に田代くんや、やよちゃんにあの事を……」
「あ、そっか。いやな、クリストファー爺さんに師事しに行った時、既に二人の弟子がいたんだ。一人はダラスっていう一番上の兄弟子」
ダラス。元々ワズ大公が最も信頼できる側近で、今はエルヴィス国王の側近でこのグルメール王国の重鎮をしておりアカツキ達も面識はある。
「そしてもう一人……それはな。麗華だ! 雨宮 麗華」
「え? レイちゃん? レイちゃんがいたの!?」
弥生は嬉しそうな顔をするが、アカツキの顔は渋い。
麗華の顔は覚えていないが、名前には覚えがあった。
弥生は誰にでも好かれて、仲良くなれる。
しかし、陰で八方美人だと悪口を言う者もいた。
麗華は、その内の一人だと言う噂が、ボッチのアカツキの耳にも入っていたからだ。
「ひとまず、麗華さんのことは置いておいて話の続きをお願いします」
「それで麗華と共に魔法を教えて貰ったんだが、その最中に一匹の、ああ、そこにいる赤髪のゴブリンな。あのゴブリンが怪我しているところに出くわしたんだ。
初めは怯えていたけど、ゴブリンに変化して魔法で怪我を治したら懐かれてな。仕方なしにここに連れてきたら、軍が出てきて巻き込まれたんだよ」
「なぜ、ゴブリンの味方を?」
「初めはなし崩しさ。ゴブリンの姿だった俺を襲ってきたからな。だけどアイツら、捕まえたゴブリンを嬲り殺しさ。だんだん頭に来てよ。だから……」
流星は腰の剣を抜くと、周りのゴブリン達が手元にある武器を取る。
「どういうつもりだ!?」
「アカツキ!」
ナックは咄嗟に剣を抜き弥生を守る為に弥生の壁になるように立ち、ルスカもアカツキを守る為に殺気を表に出そうとする。
「ルスカ、落ち着いてください!」
アカツキの一声でルスカは、殺気を引っ込めるが流星とカホを睨んだまま警戒する。
「お前ら、アイツらの仲間だろ? 大人しく捕まるなら何もしない」
「流星……」
流星もカホを守ろうと腕に抱き寄せ、少しずつ距離を取る。しかし、アカツキは微動だにせず椅子代わりの岩に座ったまま。
「アイシャさん、すいません。今回は報酬は無しになりそうです」
アカツキはアイシャに軽く頭を下げると、ルスカを膝の上から降ろし立ち上がり、エリー達ファーマーギルドのメンバーに呼び掛ける。
「私は、いえ、私たちはゴブリンに味方するつもりです。皆さんはどうしますか?」
アカツキの言葉に一番驚いたのはエリーだ。“私たち”と言うことはアイシャも含まれる。
そのアイシャはと言うと、こうなる事は予想範囲内なのか「報酬が……報酬が……」と呟くばかりで反対する素振りもない。
「ゴブリン達にも非はあるでしょう。ですが、今回の掃討は腑に落ちません。いたずらに一般の兵士が亡くなっていくだけです。すぐにでも終わらさないと」
アカツキの言う事はエリー達にもわかる。だが味方するのがゴブリンだ。
中々決断出来ずにいた。
「と言うわけで、私たちは味方します。構いませんか、流星さん」
「ふぅ……前から思ってた、田代って変な奴だなって。それから流星でいい」
「良かったぁ、やよちゃんと争わないで済んで」
流星は剣をしまいアカツキに近寄っていき、握手を求めてくる。
痩せて細いゴブリンの手を取って、アカツキは握手に応えた。
カホも弥生に抱きついていた。
「ギルマス、ヤーヤーの姉御。俺たち“茨の道”は味方することに決めたぜ。ゴブリンどうこうの話じゃない。あの軍をそのまま街に戻す訳にはいかない」
ハイネルの言う事も一理ある。ラーズ軍を街に戻すと、ますますファーマーの街は荒れることは、容易に想像出来る。
ヤーヤーとエリーはお互いに顔を見合わせると、ファーマーの街のためとエリーも“姫とお供たち”も味方する事に決めた。
「カホ、流星くん! ほら、私だけじゃなくてアカ──田代くんもいるのよ」
「え!? 田代?」
弥生に促されアカツキの方を見た流星は、目を丸くする。
「た、田代なのか!? でけぇー」
「田代くん、背ぇ伸びたね」
身長が百六十の二人は、百八十を越えるアカツキを見上げる。
「はは……お久しぶりです」
アカツキは乾いた笑いで二人に応えると視線を反らした。
「すまないな、思っていたより身長が伸びてて、すぐには気づかなかったよ。お前も言ってくれればいいのによ」
「はは……キャラじゃないですから」
再び乾いた笑いで応えるが、流星はさっきから素っ気ないアカツキの態度でピンとくる。
「……なぁ、俺の名前言ってみろよ」
アカツキは沈黙したままで、応えようとしない。
「おいおい、ひでぇよ。忘れたのかよ……」
「な、七年経ってますから……」
「わたしも流星も同じなんだけど。わたし達、すぐに田代くん、思い出したよ」
アカツキは忘れたわけではなく、ボッチだった為、ただ名前を覚えていないだけだ。
「ほらほら、アカツキくん。流星くんのこの太眉、覚えていない?」
見ていられず弥生が助け船を出してあげる。しばらく流星の眉をじっと見るアカツキ。
「あっ!」
「思い出したか!?」
「確か、野球部の……」
「そうそう!」
「……ゲジゲジさん!」
「誰だよ、それは!?」
ゲジゲジというのは、アカツキが心の中で勝手に呼んでいた渾名。
流星のフルネームは、工藤 流星。
元野球部で、体は小柄で細いが引き締まっている。
カホと弥生は、笑いを堪えて口を手で押さえていた。
落ち込む流星の横でカホは、次は私の番だと一歩前に出る。
カホには自信があった。
いつも弥生とは一緒にいるし、弥生ほどではないがモテる方だと。
何よりアカツキの側にいた時間は多い。
「田代くん、わたしは覚えているよね? 何せ隣の席だったし」
「あっ!」
「やった!」
「腰巾着さん」
「田代くん、ひどい!」
アカツキにとって、カホは弥生の側にいるイメージから心の中で腰巾着さんと呼んでいた。
カホのフルネームは、曽我カホル。
弥生とは中学から仲が良く、やよちゃん、カホと呼び合っていた。
「あー! もういいよ! 流星とカホで。今度はウッカリ忘れるなよ!」
覚えていないだけでウッカリ忘れたわけではないアカツキは少し困った顔をした。
洞窟に向かって歩き出した流星は全員を手招く。
「ほら、こんな所じゃなんだから入れよ」
流星を先頭にアカツキ達も後をついていくが、エリーや二つのギルドパーティーは意味がわからず、どうしようか悩んでいた。
「ぐぎゃ?」
赤髪のゴブリンがついて行かないエリー達を見て、不思議そうに小首を傾げる。
顔は小鬼と呼ばれるだけあり醜悪だが、その仕草にどことなく愛らしさを感じたエリー達は、急いでアカツキ達の後を追うのだった。
◇◇◇
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しかし、クモの巣や虫などは見かけず、足元も時折ヌルッとするが、全体的には清掃されている節がある。
「結構綺麗だろ? カホが嫌がるからゴブリンに掃除させてみたら、いや本当、意外と綺麗好きになって積極的に毎日掃除するんだぜ」
流星の笑い声が薄暗い洞窟内に響く。
「さ、着いたぜ。大体いつも俺らはここで生活しているんだ」
徐々に狭くなっていく洞窟の通路を進むと、開けた場所に出てきた。
そこには、十体ほどのゴブリンが掃除をしたり、何やら獲物を捌いたりしている。
真ん中には、恐らくどこからか運んで来たのだろう平らな岩がテーブル代わりに、丸い岩を椅子代わりにテーブルの周りに置いてあった。
「椅子足りねぇけど、まぁ、かけてくれ。ちょっと濡れるけどな」
流星は入って来た入口の正面に腰をおろし、定位置なのだろう隣にはカホが座る。
流星の向かい合わせにアカツキが座ると、膝の上にルスカが、左右には弥生とアイシャが丸い岩に座った。
「ぐぎゃぎゃー?」
「ん? あ、ちょっとすまん」
流星の周りにノイズが走ると、背の高いゴブリンに変身して、話かけてきたゴブリンと二人で会話を始める。
弥生がカホに小さな声で問いかける。
「カホ、あれが流星くんのスキル?」
「うん。“擬態”ってスキル。姿だけじゃなくて会話も出来ちゃうの」
自分のスキルではないのに、どこか自慢気で、それが自然とカホと流星の関係を示していた。
「悪いな。この姿じゃないと、ゴブリンの言葉がわからねぇんだ。それと、そこの子供、アカツキと弥生の子か?」
「え、ち、ちが──」
「違います」
「違うのじゃ」
弥生は赤くなりながらも否定しようとするが、割り込む形でアカツキとルスカに即刻否定されて肩を落とす。
「なんだそうなのか。いや、ゴブリン達がその子供に怯えていてな。なんでだ?」
「あ、あはははは……」
怯えているのは、森で囲まれた時の出来事が原因だろう。
アカツキは、取り敢えず笑って誤魔化す。
「えーっと、それでお二人は一体どうしてゴブリンと一緒に?」
話を切り替えようと、今度はアカツキから二人に話題をってみた。
「あー、それな? いや、俺たちも初めからゴブリンと一緒じゃないぜ。元々最初にいたのはアイルって街さ」
「アイル?」
「アカツキさん。私たちがファーマーに来る途中、避けた街です」
アイシャがすかさず小声で耳打ちしてフォローする。
確かに来る途中、様子のおかしい街を避けてファーマーへとやって来た。
「ただ、やっぱりカホを守らなきゃならねぇ。強そうな奴に変化すれば避けれるけどな、それじゃダメだと思ってな。一人の魔導師を頼ったんだ」
「魔導師……ですか?」
「ああ、クリストファーっていう爺さんだ」
エリーやファーマーギルドのパーティーの人達は、クリストファーの名前に驚く。
クリストファーに師事した二人を賞賛の嵐だが、クリストファーにあまり良い印象を持たないアカツキ、ルスカ、アイシャの三人。
「え? そんなに凄い人なの?」
事情のわからない弥生は、周りがこんなに褒め立てるのだから凄い事なのだろうと感嘆する。
「まさか、ここでクリストファーさんの名前が出るとは……流星さん、続きをお願いします」
「あ、ああ」
「待って! 流星、その前に田代くんや、やよちゃんにあの事を……」
「あ、そっか。いやな、クリストファー爺さんに師事しに行った時、既に二人の弟子がいたんだ。一人はダラスっていう一番上の兄弟子」
ダラス。元々ワズ大公が最も信頼できる側近で、今はエルヴィス国王の側近でこのグルメール王国の重鎮をしておりアカツキ達も面識はある。
「そしてもう一人……それはな。麗華だ! 雨宮 麗華」
「え? レイちゃん? レイちゃんがいたの!?」
弥生は嬉しそうな顔をするが、アカツキの顔は渋い。
麗華の顔は覚えていないが、名前には覚えがあった。
弥生は誰にでも好かれて、仲良くなれる。
しかし、陰で八方美人だと悪口を言う者もいた。
麗華は、その内の一人だと言う噂が、ボッチのアカツキの耳にも入っていたからだ。
「ひとまず、麗華さんのことは置いておいて話の続きをお願いします」
「それで麗華と共に魔法を教えて貰ったんだが、その最中に一匹の、ああ、そこにいる赤髪のゴブリンな。あのゴブリンが怪我しているところに出くわしたんだ。
初めは怯えていたけど、ゴブリンに変化して魔法で怪我を治したら懐かれてな。仕方なしにここに連れてきたら、軍が出てきて巻き込まれたんだよ」
「なぜ、ゴブリンの味方を?」
「初めはなし崩しさ。ゴブリンの姿だった俺を襲ってきたからな。だけどアイツら、捕まえたゴブリンを嬲り殺しさ。だんだん頭に来てよ。だから……」
流星は腰の剣を抜くと、周りのゴブリン達が手元にある武器を取る。
「どういうつもりだ!?」
「アカツキ!」
ナックは咄嗟に剣を抜き弥生を守る為に弥生の壁になるように立ち、ルスカもアカツキを守る為に殺気を表に出そうとする。
「ルスカ、落ち着いてください!」
アカツキの一声でルスカは、殺気を引っ込めるが流星とカホを睨んだまま警戒する。
「お前ら、アイツらの仲間だろ? 大人しく捕まるなら何もしない」
「流星……」
流星もカホを守ろうと腕に抱き寄せ、少しずつ距離を取る。しかし、アカツキは微動だにせず椅子代わりの岩に座ったまま。
「アイシャさん、すいません。今回は報酬は無しになりそうです」
アカツキはアイシャに軽く頭を下げると、ルスカを膝の上から降ろし立ち上がり、エリー達ファーマーギルドのメンバーに呼び掛ける。
「私は、いえ、私たちはゴブリンに味方するつもりです。皆さんはどうしますか?」
アカツキの言葉に一番驚いたのはエリーだ。“私たち”と言うことはアイシャも含まれる。
そのアイシャはと言うと、こうなる事は予想範囲内なのか「報酬が……報酬が……」と呟くばかりで反対する素振りもない。
「ゴブリン達にも非はあるでしょう。ですが、今回の掃討は腑に落ちません。いたずらに一般の兵士が亡くなっていくだけです。すぐにでも終わらさないと」
アカツキの言う事はエリー達にもわかる。だが味方するのがゴブリンだ。
中々決断出来ずにいた。
「と言うわけで、私たちは味方します。構いませんか、流星さん」
「ふぅ……前から思ってた、田代って変な奴だなって。それから流星でいい」
「良かったぁ、やよちゃんと争わないで済んで」
流星は剣をしまいアカツキに近寄っていき、握手を求めてくる。
痩せて細いゴブリンの手を取って、アカツキは握手に応えた。
カホも弥生に抱きついていた。
「ギルマス、ヤーヤーの姉御。俺たち“茨の道”は味方することに決めたぜ。ゴブリンどうこうの話じゃない。あの軍をそのまま街に戻す訳にはいかない」
ハイネルの言う事も一理ある。ラーズ軍を街に戻すと、ますますファーマーの街は荒れることは、容易に想像出来る。
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