追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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第三章 迫る因果編

二十一話 幼女、門を破壊する。もう慣れた

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「アカツキ、後は任せたのじゃ……」

 ルスカは、アカツキに抱えられたまま力尽き意識を失ってしまう。

「ルスカ!」

 ルスカの影も消えてしまい、無理をしていたアカツキにも負担が重くのし掛かり、その場で膝をついてしまう。
何とか立とうとするが足が震えて全く力が入らない。

「アカツキ!」
「田代!」

 そこにナックやゴブリンの姿の流星達が、アカツキ達を心配して駆け寄ってくる。

「大丈夫、田代くん!?」

 同じくして弥生の治療を終えたカホやヤーヤーもやって来た。

「他の人達は無事ですか!? ゴブリン達は!?」

 肉人形の攻撃を躱すのに夢中で、途中から他のことに意識が及ばなかったアカツキは、辺りを見回す。
多くの死体や動けない者が転がり、まさしく地獄絵図。
それでも、結果としてはマシなのだろう、流星がフォローの言葉をアカツキにかける。

「ゴブリンにもラーズ軍にも死者は出たけど、正直あの状況では少ない方だと思う」
「そう……ですか」
「何、落ち込んでやがる。お前らはよくやったよ」

 気落ちするアカツキに肩を貸したナックは、アカツキの背中を励ますように叩いてくる。

「それで。これからどうするおつもりなの?」
「ひとまず怪我人をゴブリンの巣に運ぼう。ファーマーの街だとゴブリン達は入れないし、見ようによっては軍を壊滅させたわけだし」

 流星は生き残ったゴブリン達に怪我人を運ぶ様に指示しにいく。

「あの……生き残りの中にはファーマーの顔見知りもいますから、手伝うよう伝えて来ます!」

 エリーの提案に賛同したハイネル達“茨の道”も一緒にゴブリン達を手伝いに向かった。

「それじゃ、俺達も向かうか。ヤヨイーは大丈夫か?」
「うん。私はカホちゃんに治療してもらったから」

 アカツキ達がゴブリン達の巣に向かった後には、多くの遺体が戦場に残されていた。


◇◇◇


 気を失ったルスカが目覚めたのは、それから三日が過ぎた頃だった。

「……ん」
「あ、ルスカちゃん、気がついた?」

 ルスカが重い瞼を開けると、眼前に迫る逆さまの弥生の顔が視界に入る。

「うわぁっ!! な、何なのじゃ!? って、イタッ!」
「痛いっ!」

 突然の事に驚き急に身体を起こしたルスカは、心配でルスカの顔を覗いていた弥生とおでこをぶつけてしまった。

「イタタッ……いきなり何するのじゃ!? はっ! まさかワシにチューしようとしたのじゃな! ワシにチューしていいのはアカツキだけじゃ!」
「しないわよ! って、アカツキくんチューしたの!?」
「ふふん。毎日しとるのじゃ! って、アイタッ!!」

 どうじゃと言わんばかりに胸を張るルスカの頭上にアカツキの拳骨が落ちる。

「ルスカ、起きていきなり息を吐くように嘘をつくんじゃありません。弥生さんも信じない!」

 何事と、ルスカが見上げた先には、半ば呆れ気味のアカツキが。
弥生も怒られて、気のない返事をする

「は~い」
「うー、痛いのじゃ……おっ? おっ!」

 頭を押さえながらしゃがむルスカをアカツキは抱き抱えると、優しく頭を撫でてあげる。

「ルスカ、あまり心配かけさせないでください。もう三日も寝ていたのですよ」
「三日……そうじゃ! あのあと一体どうなったのじゃ!?」
「今は怪我人の治療に追われています。ゴブリンもラーズ軍も。
街へはハイネルさんが様子を探ってくれています」

 アカツキがルスカを連れて洞窟の更に奥に入っていくと、ゴブリンと軍の一般の兵士が仲良く怪我人の世話をしている。

 魔物と人が手を取り合う光景など今まで見たことない。
驚いていたルスカだが、その表情はどことなく嬉しそうにも見えた。

「アカツキくん! ハイネルさんが戻ったって!」
「わかりました!」

 アカツキを呼びに来た弥生と共にハイネルの所に行くと、ハイネルと“茨の道”のメンバーは、切羽詰まった顔をしていた。

「どうかしたのですか?」
「あ、ああ。少し予想外の事があった。アイルの街が落ちたそうだ」

 グルメールからラーズ公領に入る入口の街がアイル。流星達が以前住んでおり、アカツキ達が不可思議に感じ避けた街である。

「落ちたって……一体誰に!?」
「それがな……ワズ大公率いる国軍という話だ」

 国軍、しかもワズ大公が自国の街をそれも自分の息子が治める街を落としたと聞き、皆驚くしかない。

 ただ疑問点も多い。

「なぁ、アカツキよ。この猫のギルマスの知り合いをワズ大公に知らせに行ったのって、五日前だよな? 早くないか?」

 ナックの疑問は、事情を知っている全員が思っていた。
ファーマーからグルメールまで急いでも一週間はかかる。
それも片道の話だ。

「理由はわかりませんが、恐らく私達が出発した後、出兵したのでしょう。でないと計算が合いませんし。
問題はアイルの街がことでしょう」

 アイルが落とされたという事は、アイルは国軍に反逆したということだ。
そして、アイルの街はラーズ公領であり、反逆はワズ大公の息子ラーズの意思である事を示す。

「このままでは、ファーマーの街が火の海に成りかねませんよ」
「アイシャせんぱ~い、どうしよ~、ギルドが無くなっちゃう~」

 アイシャの腰に泣きつくエリー。
しかし、それはエリーだけでなく、“茨の道”や“姫とお供たち”も普段はファーマーに住んでおり他人事ではなかった。

「最良なのは、ワズ大公がファーマーを攻める前に私達が接触して、穏便に済ませるのが一番だと思います。
すぐに出発しましょう。アイルが落ちた伝令がファーマーに来たということは、もう既に側まで来ているはずですから」

 流星とカホ、そして馬に乗れない弥生を残し、他のメンバーは自分の馬や、ラーズ軍から徴収した馬に跨がるとファーマーに向けて出発した。


◇◇◇


「アカツキ、ファーマーが見えたぞ! 門は……開いている!」

 先頭を駆けるナックがファーマーの街を視認出来る所まで来たアカツキ達は、馬を急かし速度を上げる。

「!!」

 ファーマーの正門から土煙が上がっている事に全員気付き、間に合わなかったと落胆する。

「まだ。まだです! ルスカ、体調はどうですか?」
「大丈夫なのじゃ!」

 アカツキの前に座るルスカは見上げて顔を見せると、胸を拳で叩きアピールする。

「それでは、ファーマーに入ったら正門を開けに行きましょう!」
「そんなことしたらワズ大公の国軍が街に雪崩込みますよ~」
「大丈夫ですよ、エリーさん。
ルスカ、ド派手に門を破壊しちゃってください。
ナックさんとハイネルさん達は、内側のラーズ軍の兵士の対処を。
アイシャさんとエリーさん、それにヤーヤーさん達は、壊れた門で怪我した人達の救出をお願いします!」

 一気にファーマーの門をくぐったアカツキ達は、一目散に大通りを通り正門に向かう。
正門では門の上に数十名ほどの兵士が、他の兵士は門を抉じ開けられないように押さえつけていた。

「ルスカ! なるべく、向こう側の兵士が尻込みする位派手なのを!」
「わかったのじゃ!!」

“大地の聖霊よ 我と汝の力をもって 大いなる城を築かん グレートウォール”
 
 黄色の光を門のすぐ側に放つと土が盛り上がり土壁が門を持ち上げていく。
兵士らはパニックになり逃げ出し、強引に持ち上げられた門は瓦解する。

 誰もがその光景に驚く中、アカツキ達の一行は最早この程度で驚くことはなかった。

 一方門の外で純白の鎧に身を包み赤いマントを羽ばたかせ馬に乗っていた壮年の男性は、目の前で持ち上げられていく門を見て目を丸くし口が開きっぱなしになっていた。

 もちろんワズ大公、その人である。周りの警護の兵士も警戒するのを忘れて唖然としていた。

 ワズ大公は、崩れていく元々自分の住んでいた街の門を見て、ちょっと泣いた。


◇◇◇


 正門が破壊されて為す術のないファーマーの街の兵士達は、軒並み捕縛される。

 大通りのど真ん中を凱旋するワズ大公の前には、アカツキ達が待ち構えていた。

「お疲れなのじゃ!」

 労いの言葉なのだろうが、ワズ大公には皮肉にしか聞こえず、どっと疲れが増した気がした。
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